目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 本作の監督オリバー・ストーンが過去に撮った映画がきっかけで、ケネディ暗殺に関する資料が一般公開されることになった
- 「魔法の銃弾」を含む様々な「違和感」が、徹底した証拠調べによって浮き彫りにされていく
- 「ケネディ大統領が暗殺された理由」の推定を行うことで、「ケネディ大統領がいかに素晴らしい人物だったか」が明らかになるラストの展開も素晴らしい
もちろん真相は分からないわけだが、「このようなことがあったのだろう」というかなり確度が高い推定が提示される、非常に興味深い作品だ
自己紹介記事
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凄まじく面白い作品だった。もちろん、人が亡くなった事件を題材にしたドキュメンタリーなので、「面白かった」という感想は不謹慎かもしれない。ただ正直なところ、かなりワクワクさせられてしまった。本作を観るだけで、「ケネディ暗殺」と「アメリカ国家」についてかなり理解が深まるのではないかと思う。実に興味深い作品だった。
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本作の調査のベースとなる「資料」は一体どこから出てきたのか?
本作『JFK/新証言』はとにかく、「徹頭徹尾、証拠を基にして議論が展開される」という点が素晴らしかった。基本的には全編を通じて、「証拠から仮説を導き出す」というやり方を取っているのだ。確かに、映画の最後に描かれる「ケネディ大統領はなぜ暗殺されたのか?」という推測だけはやはり、「そこにはこのような陰謀があった」という仮説ありきの展開に感じられた。しかし、この点こそ「本作で監督が描きたかったこと」だと思うのでまあ仕方ない。そしてそれ以外の個別の話題については、「存在する証拠から、何が起こったのか仮説を組み立てていく」というスタイルになっているのである。まずこの点がとにかく素晴らしかった。
というわけでまずは、1つ疑問を潰すところから始めよう。「その『証拠』はどこから出てきたのか?」についてである。
ケネディ暗殺は1963年に起こった。そして本作『JFK/新証言』が本国アメリカで公開されたのが恐らく2021年である。およそ60年前の出来事だ。ケネディ暗殺に関してはこれまでにも様々な形で調査が行われてきたし、「新証拠などあるはずがない」と考えるのが自然だと思う。しかし本作を観ると、そうではないことが理解できるだろう。様々な事情から「新たな証拠」が大量に公開されたからである。というわけで、その辺りの事情から説明していこうと思う。
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そしてその話をするにはまず、「『ケネディ暗殺』に関する公式の調査がどのように行われてきたのか?」に触れておく必要がある。
暗殺直後、「ウォーレン委員会」という名の調査委員会が作られた。最高裁長官や上院・下院議員、元CIA長官などが集まった組織である。彼らは様々な証拠を調べ検討し、最終的に全26巻にも及ぶ膨大な調査報告書を提出した。その際の結論が、一般的によく知られているだろう「オズワルドによる単独犯」である。オズワルドは事件直後に拘束された後、郡刑務所への移送のため車に乗り込む直前に銃撃され死亡した。一般的にはこの、「オズワルドが単独でケネディ暗殺を実行した」という仮説が広く知られているはずだ。
さて、ウォーレン委員会が結論を出したものの、すぐにこの「ウォーレン報告書」に対する次々と様々に浮かんできたのである。そのためそれ以降も、「チャーチ委員会」や「下院暗殺問題調査特別委員会」など様々な調査委員会が立ち上がり、ウォーレン報告書の再検討が行われていった。ただ、理由は定かではないものの、アメリカはある時点で「50万にも及ぶ全資料を、2029年まで非公開とする」という決定を下したのである。私からすると、この時点で「何か怪しい」と感じたのだが、いかがだろうか? 「資料を非公開にする」ことの必然性が、私にはまったく理解できなかった。
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しかし実は、話はここから面白くなっていく。本作『JFK/新証言』の監督オリバー・ストーンは、1991年に『JFK』という映画を撮っている。ドキュメンタリー映画ではないのだが、「ケネディ暗殺」を題材にした作品であり、アカデミー賞で2部門受賞を果たすなど大いに評価された。そしてこの映画をきっかけに、アメリカでは再び「ケネディ暗殺」が脚光を浴びることになったのだ。
そして、タイミングを考えても明らかに映画『JFK』の影響だろう、1992年にアメリカ議会は「JFK大統領暗殺記録収集法」を可決した。そしてこの法律によって、「2029年まで非公開」と決まっていた資料の解除が決定したのである。さらに「暗殺記録審査委員会(ARRB)」の設置も決まり、多額の予算と4年間という期間が与えられた。ARRBは、「ケネディ暗殺事件に関する様々な資料の収集と公開を行う組織」である。そして彼らは、集めたすべての資料を国立公文書館に寄贈した。これによって、一般人でも「ケネディ暗殺に関する資料」のほとんどを閲覧できるようになったのである。
つまり、本作『JFK/新証言』における調査のベースとなるのがこれらの資料、つまり、「長年非公開だったもの」と「ARRBが新たに収集したもの」というわけだ。このような背景を知ると、「新たな調査によって、今まで知られていなかった事実が明らかになるかもしれない」と期待できるのではないかと思う。さらに本作では、資料に書かれていることを補強する証人も登場する。そしてその多くが、「本人から直接聞いた」と証言しているのである。これによって、信憑性はさらに高まっていると言えると思う。
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資料に関して本作では、次のようなエピソードが紹介されている。ARRBはあるタイミングで、アメリカ国内のあらゆる機関に「ケネディ暗殺に関する資料をすべて提出した」という宣誓書を提出させたのだが、「大統領警護隊」だけが宣誓を拒否したというのである。その理由については別途触れられていたのだが、それはともかく、この事実により「『大統領警護隊』以外の機関は、ケネディ暗殺に関する資料をすべて提出した」と言えることになるのだ。
もちろん、資料がすべて保存されてきたとは限らない。事件直後のどさくさに紛れて意図的に破棄したり、あるいは誤って紛失したりしたものだってきっとあるだろう。とはいえ少なくとも、「政府機関からはこれ以上、ケネディ暗殺に関する資料は出てこない」ことは確定しているのだ。そして、そう言っていいほどに集まった資料を基にして、ケネディ暗殺の謎に迫っていこうというのが、本作の趣旨なのである。
後は「調べる者の腕次第」というわけだが、「証拠の充実度」という観点だけで言えば、これほどの規模の調査記録はなかなか存在しないのではないかと思う。そして実際に、興味深い話が次々に出てくるのである。
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「魔法の銃弾」はどこから出てきたのか?
最初の話題は、ケネディ暗殺事件においてはよく取り上げられる「魔法の銃弾」についてだ。それではまず、「魔法の銃弾」とは一体何なのかの説明から始めていこう。
「オズワルド単独犯説」においては、「銃撃現場付近にある『教科書ビル』と呼ばれる建物の6階からケネディ大統領を撃った」とされている。そしてその部屋には、3発の空の薬莢が残されていた。つまり、「オズワルド単独犯説」が正しいとすれば、3発の銃弾のみでケネディ大統領ほかすべての傷が説明できなければならないことになる。ケネディ大統領が乗っていた車に残っていた銃弾は2発。つまり、3発の内1発は命中しなかったのである。残り2発の内、1発はケネディ大統領の頭部に当たり致命傷となった。残りは1発。後部座席に座っていたケネディ大統領と、その前方に座っていたコナリー知事には、他に合計7つの傷の存在が知られている。そのため、「1発の銃弾が、7つの傷を生み出した」とするのが「魔法の銃弾」と呼ばれる仮説なのだ。
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ウォーレン報告書によると、その「魔法の銃弾」の軌道は次のようになっている。まずケネディ大統領の首の後ろから入り、喉から抜けた。そしてその後、前方に座っていたコナリー知事の背中を貫通、手首を経由して最終的に太ももで止まったというのだ。普通に考えて、「ンなアホな」と感じる話ではないだろうか? そして、「こんなムチャクチャな話を押し通そうとしているということは、『オズワルド以外の狙撃犯』の存在を隠そうとしているのではないか」という疑惑が存在するのである。
「証拠物件399」という正式名称を持つこの「魔法の銃弾」は、「病院職員がコナリー知事の体内から取り出し、最終的にFBIのフレイザーという人物の手に渡った」と記録されている。そしてこの「魔法の銃弾」に関して、実に興味深い発見がなされたのだ。それを見つけ出したのはなんと一般人である。まさに、資料が広く公開されたからこその展開と言えるだろう。
では、「魔法の銃弾」に関してどのようなことが新たに分かったのか? その説明のためにはまず、「証拠保全」について触れるなければならない。
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「証拠保全」とは、「ある証拠品の『同一性』を明らかにするための記録」である。裁判所からすれば、「コナリー知事の体内から取り出された銃弾」と「裁判で証拠として提示された銃弾」が同じかどうかなど知りようがない。そこで、「その証拠品は裁判までの間、どのような経緯を経て保管されるに至ったのか」という記録が重要になるのである。というか、「証拠保全」の記録によって「同一性」の証明が出来なければ、裁判において「証拠」としては認められないのだ。そのため、例えば「魔法の銃弾」の場合なら、「病院職員からFBIに渡るまでに誰が何時何分に受け取ったのか」が事細かに記されているのである。
ではその「証拠保全」をチェックしてみよう。最後に受け取ったFBIのフレイザーは、受け取りの時間を「19:30」と記録している。しかし実に奇妙なことに、彼の前に銃弾を受け取った人物は、「20:50」と記録しているのだ。直前の人物が「20:50」に受け取った銃弾を、フレイザーが「19:30」に手にすることは、絶対に不可能である。
また記録によると、トッドという人物が受け取った時点からフレイザーに至るまでの4人それぞれが、銃弾に自身のイニシャルを記載したという。これも「同一性」の証明のために重要な手続きである。しかし、「証拠物件399」として保管されている「魔法の銃弾」には、トッドのイニシャルが記載されていないのだ。
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これらの事実から、次のようなことが容易に推定できるだろう。「銃弾がどこかですり替えられたのではないか」という可能性だ。もちろん、これだけを以って「オズワルド単独犯説はおかしい」とは言えないだろう。しかし少なくとも、「犯行直後に、『銃弾をすり替えなければならない』と考え実行した警察・FBI関係者がいた」ということは確かだと言えると思う。この点だけを考えてみても、「何らかの陰謀の存在」を感じさせられるのではないだろうか。
「魔法の銃弾」や「オズワルドが撃ったとされる銃」に関する様々な疑惑
さらにこの「魔法の銃弾」には、他にも疑わしい点がある。7つもの傷を与えたとされているのに、銃弾そのものにほとんど傷が存在しないことだ。
この点に関しては、ある法医学者が行った実験が紹介されていた。「証拠物件399」と同一の銃弾を100発用意し、「死体の背中から手首に射出した場合」の銃弾の変形を調べたのだ。これは「魔法の銃弾」が辿ったとされる経路の一部分、「コナリー知事の背中を通り手首を抜けた」という状況の再現である。
そしてなんと、100発すべてで先端が大きく変形したというのだ。このように「背中から手首への貫通」だけでも先端が潰れてしまうのである。となれば、より長い経路を辿ったとされる「魔法の銃弾」が無傷のままのはずがないだろう。この点を踏まえても、すり替えられた可能性が考えられるのである。
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実際ウォーレン委員会においても、この「魔法の銃弾」の解釈については意見が割れたそうだ。委員を務めた何人かが、後にそのことを告白している。しかし委員会は最終的に、「オズワルド単独犯」と結論付けたのだ。
シンプルに状況を捉えれば、「4発以上の銃弾が使用された」と考えるのが自然だろう。この点に関しては、後で触れる「どこから撃たれたのか?」に関する検証からも判断できるはずだ。しかし当然のことながら、「4発以上の銃弾が使用された」となれば、「オズワルド単独犯説」は100%成り立たない。そして恐らく、それでは困る人物がウォーレン委員会の中にいたのだろう。そのため、3発の銃弾だけですべての状況を説明するための「魔法の銃弾」が生み出されたということなのだと思う。
さらに疑惑は、銃弾だけではなく銃にも向けられている。「ケネディ大統領を撃ったとされる銃」は教科書ビル内に残されていたのだが、その銃と、「オズワルドが所有していたとされる銃」がどうも違うのだ。
「オズワルドが所有していたとされる銃」は、彼の妻が撮った写真に写っている。そして、銃に詳しい人間が見れば明らかなのだそうだが、「スリング」と呼ばれる部品の位置がまったく違うという。つまり、「ケネディ大統領を撃ったとされる銃」はそもそも、オズワルドの持ち物ではない可能性があるというわけだ。
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さらに奇妙な話がある。「オズワルドが銃を持つ写真」は3枚存在しているのだが、その内の1枚について妻が「撮った記憶がない」と証言しているというのだ。そして、その「撮った記憶がない写真」だけ、オズワルドは指輪を嵌めているというのである。作中では明確な言及はなかったが、ネットでざっくり調べてみると、当時から「顔だけ合成した写真ではないか」と疑われていたそうだ。
「オズワルド単独犯説」は、「魔法の銃弾」の不自然さだけではなく、銃に関する疑惑によっても疑問視されるようになったのである。
オズワルドは当日、教科書ビルにいたのだろうか?
「オズワルドは犯行に関わっていたのか?」という疑問に関しては、「彼は当日、教科書ビルにいたのだろうか?」という観点からの検証も行われている。
公開された証拠の中に、ヴィクトリア・アダムスという女性の証言があった。彼女はオズワルドと顔見知りで、さらに事件当日、教科書ビルの4階にいた人物でもある。そして事件について聞かれた際、「銃撃直後、階段を下りている最中にオズワルドに会った」と証言したと記録されていた。
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さて、さらに証拠を精査したことで、「ヴィクトリアの証言を記録した音声テープが行方不明になっている」という事実が判明する。彼女の証言は、その音声テープを文字起こしした紙の記録しか存在しないというわけだ。となれば、実際にどんな証言をしたのか確認したくなるものだろう。そこで、音声テープの紛失を突き止めた人物がヴィクトリアを探し出し、直接話を聞いたのである。
すると驚くべきことが判明した。なんと彼女は警察の聴取に、「オズワルドには会っていない」と証言したというのである。しかし、そう主張しても誰も相手にしてくれなかったそうだ。だとすれば、音声テープは意図的に破棄され、「オズワルドに会った」という証言が何者かによって捏造されたと考えるのが妥当だろう。
さらに、35年間非公開だったある資料から、ヴィクトリアの上司であるガーナーという人物の証言も新たに判明した。事件当日は、銃撃の2分後には既に、警察官が教科書ビルに立ち入っている。そしてヴィクトリアとガーナーは共に、「警察官が来る前に階段を下りた」と証言しているのだ。この証言についても、ガーナー本人に直接会い、「事実だ」と確証を得ている。
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さて、この証言は一体何を示唆しているのだろうか。ヴィクトリアは「銃撃直後に裏の階段を使用したが、オズワルドの姿は”見なかった”」と主張している。そして「警察官が来る前に教科書ビルから立ち去った」という事実から、「銃撃”直後”に」という彼女の証言が裏付けられていると言えるのだ。これにより、「オズワルドが銃撃した後、誰にも見られずに教科書ビルから立ち去った」という可能性はかなり低いと考えられるだろう。このようなことを考え合わせると、「もしかしたら、オズワルドは事件当日、そもそも教科書ビルにいなかったのではないか?」という可能性さえ出てくることになるのだ。
ケネディ大統領は、本当に「後ろ」から撃たれたのか?
驚くべき話はまだ続く。それに関する証言をしているのは、事件当日にケネディ大統領が運ばれた病院で救命措置を担当した医師の1人ペリーである。
ケネディ大統領には、救命措置のため気管切開が行われた。呼吸のための気道を確保するのが目的だ。そしてペリーは当然、その時にケネディ大統領の喉の状態を目視しており、彼がその喉の傷について「前から撃たれたものだと思った」と証言したという記録が残っているのである。
さてここで、「魔法の銃弾」の話を思い出していただこう。ケネディ大統領の喉の傷は、「背中から入った銃弾が喉から抜けた際に出来たもの」とされていた。しかし、当日救命に当たった医師は、「前から撃たれたものだと思った」と証言しているのだ。この証言によっても「魔法の銃弾」の仮説が成り立たなくなると言えると思う。やはり「オズワルド単独犯説」には無理があると考えるべきだろう。
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しかし、医師がそのような証言をしていたのであれば、どうして問題にならなかったのだろうか? その理由ははっきりしている。実は、ペリーは後に、「後ろから撃たれたのだと思う」と証言を訂正しているのだ。さらにこの証言の撤回の背景には、大統領警護隊からの圧力があったことも明らかになっている。映画に登場するある人物が証言していたのだが、彼はムーアという人物から、「上司に命令されてペリーに圧力を掛けた」と直接打ち明けられたことがあるというのだ。
「前から撃たれたこと」を補強する証拠は、実は他にもある。「ケネディ大統領の後頭部に大きな穴が空いていた」という証言が複数存在するのだ。この「後頭部の大きな穴」もまた、「前から撃たれたこと」を示唆する明確な証拠と言っていいだろう。
この点に関しては、「検視の際に撮られた後頭部の写真」が公表されたことで一層の問題を引き起こすことになる。というのも、その公表された写真には、「後頭部の穴」は存在しないからだ。ケネディ大統領の頭の状態を実際に目にした者たちが、「自分が見たものとは違う」と、その写真についての違和感を表明してもいる。ここでも、何か「細工」が行われた可能性が高いと言えるだろう。
また、「ケネディ大統領の脳の写真」も残っているのだが、この写真を見た専門家は、「2週間ぐらい防腐剤に漬けられていたような状態」と判断したという。事件後、遅くとも3日以内には脳の解剖が行われているはずなので、写真に映る脳が本当に2週間も防腐剤に漬けられていたとすれば、やはり「別物」と判断せざるを得ないだろう。
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では、保管されている「脳の写真」は一体誰が撮ったものなのだろうか? 調査の結果、恐らくクヌードセンという人物だろうと判明したという。彼は既に亡くなっているのだが、彼が生前口にしていたこととして本作では、「頭頂部全体が無かった」という妻の証言が紹介されていた。
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法医学者を丸め込むことなど可能なのか?
しかし、「そもそもだが『脳の入れ替え』など可能だったのか」という点が疑わしいと感じる人もいるだろう。なにせ、検視や解剖を行うのは法医学者である。であれば、仮に「オズワルド単独犯説」を推し進めたい人物・組織が存在したとして、自分たちに都合の良い結論を導くには、法医学者を丸め込む以外にないはずだ。しかしそんなこと、果たして可能だったのだろうか? この点についても細かく調査が行われている。
まずは「検視が行われた場所」に関する疑問から潰していこう。ケネディ大統領が暗殺されたのはテキサス州のダラスである。しかし、検視・解剖が行われたのはメリーランド州だった。直線距離で約2000kmも離れている。日本で言うと、羽田空港から石垣島までが約2000kmだそうだ。暗殺された場所から相当離れた場所で検視・解剖が行われたことになる。
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もちろんのことながら、事件当日のダラスにも優秀な法医学者はいた。ダラスでは検視・解剖が行えなかったわけではないのだ。というかそもそも法律で、「死亡した場所で検視・解剖を行わなければならない」と決められてもいるのだ。にも拘らず、関係者はその法律を無視してでも、ケネディ大統領の遺体を遠く離れたメリーランド州まで運びたかったのだ。
さらに、メリーランド州にいた指折りの法医学者には何故か声が掛からなかった。事件当日、呼び出しがあれば1時間以内に駆けつけられる場所にいたにも拘らずである。そして何故か、何年も検視・解剖を行っておらず、それどころか銃殺遺体を一度も担当したことがない医師たちに託されたというのだ。このような裏事情を知ると、「自分たちに都合の良い結論が出せるように法医学者が選定された」と考えるのが自然に感じられるだろう。
また検視の話では、ちょっと笑ってしまうような話も紹介されていた。実にお粗末な話である。
検視の最中、医師たちは背中に銃創を見つけた。しかし、肝心の銃弾が見つからない。これはとても大きな問題だ。しかしここで、まるでドラマのワンシーンであるかのようにFBIから電話が掛かってきた。「ケネディ大統領が載せられていたストレッチャーの上に銃弾があった」と報告を受けたのである。
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さて、この時点で医師たちは、「ケネディ大統領の喉に傷がある」という事実に気づいていなかったそうだ。「そんな状況、あり得るのだろうか?」と感じたが、先述の通り「救命措置のために気管切開が行われていた」わけで、それで傷の存在に気づきにくかったのかもしれない。まあその辺りの事情はともかく、「背中の銃創」と「ストレッチャー上に残っていた銃弾」の2つから医師たちは、「人工呼吸中に背中に残っていた銃弾が抜け落ち、そのままストレッチャーの上に残ったのだろう」と考えたのだそうだ。ちなみに、本作に登場した医学の知識を持つ人物は、彼らのこの推論を「あり得ない」と一刀両断していた。医師としてまともな判断ではないということのようだ。
その後医師たちは、救命を行ったダラスの病院に問い合わせたことで、初めて「喉の銃創」の存在を知ることになった。こうなると、先程の推論では状況を上手く説明できない。そこで医師たちは改めて、「背中から入った銃弾は喉から抜けたが、ワイシャツで遮られて貫通せず、ストレッチャーに載せられている際に落ちた」と考え直したのである。
しかし、当然この推論も捨てなければならなくなった。何故なら、「魔法の銃弾」の仮説が登場したからである。こうなってくると、ストレッチャーで見つかった銃弾の存在意義が分からなくなるだろう。そして、今説明したような医師の検視結果を踏まえた上で、改めて「魔法の銃弾」の仮説に触れられる。そしてその中で、「ケネディ大統領の首元で勢いを失い止まっていたはずの銃弾が急に勢いを取り戻し、前方に座っていたコナリー知事をも貫通した」みたいなナレーションが流れるのだ。私はこのナレーションを聞いて、思わず笑ってしまった。
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このように、特に「銃弾」に関する説明は、二転三転どころではない変転を遂げたのである。「ストレッチャーの上で銃弾が見つかった」という事実を踏まえれば、そもそも「魔法の銃弾」の説明が成り立つはずもないのだが、その辺りのことを無理やり捻じ曲げて「オズワルド単独犯説」を推し進めたということだろう。状況を知れば知るほど、「その説明はさすがに無理があるだろう」と感じずにはいられなかった。
本作『JFK/新証言』はこのようにして、「明らかに不審な状況」を次々にあぶり出していくのである。
私は正直なところ、元から「ケネディ暗殺に関する情報」に詳しかったわけではないので、本作で提示されている仮説がどこまで、「情報公開がなされてから判明したもの」なのかは分からない。根拠はないが、以前から仮説として存在していたものも含まれているのではないかと思う。しかし冒頭でも触れた通り、本作の重要なポイントは「その仮説が、証拠によって裏付けられている」という点であり、「信憑性」という意味で、他の「ケネディ暗殺に関する検証」とは一線を画すと言えるのではないかと感じた。
オズワルドが事件前からマークされていた可能性と、ケネディ大統領が暗殺された理由について
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本作では冒頭からずっと、「証拠を基にした状況の洗い出し」と、「新たな仮説の提示」が行われるのだが、それが一段落すると、次に、犯人とされているオズワルドに関する情報が深堀りされていく。正直、このオズワルドに関する部分は上手く捉えきれず、ちゃんとは理解できなかったのだが、それでも「興味深い」と感じられる話が色々とあった。
中でも、「ケネディ暗殺の4年も前から、オズワルドはCIAの重要監視人物リストに載っていた」という話は初めて知ったし、なんとなく重要なポイントな気もする。うろ覚えだが、確か「親キューバ運動に関するチラシを配っていた」みたいなことで目をつけられたのだったと思う。しかし奇妙なことに、ケネディ暗殺の数週間前に、重要監視人物リストから外れたというのである。これもまた、単なる偶然で片付けるにはタイミングが合いすぎている話だろう。
また、冷戦下にあった当時は、「ソ連に亡命を果たしながら、再びアメリカに戻ってきた人物」は当然、CIAによる執拗な尋問を受けざるを得なかったのだが、オズワルドはその唯一の例外だったという説明もされていた。つまり、一度ソ連に亡命を果たし、その後アメリカに戻ってきたものの、CIAの尋問を受けなかった唯一の人物だというのである。これも事件に関わる情報なのか何とも判断しにくいのだが、少なくとも「オズワルドが興味深い経歴を有している」ことは間違いないと言えるだろう。
さらに、うろ覚えではあるのだが、確か「ケネディ大統領は暗殺の少し前から脅迫を受けており、暗殺未遂も2度経験している」という話が出てきたような気がする。そして「その暗殺未遂に関与したと目されているヴァレという人物には、オズワルドとの共通点がある」という話も興味深かった。どちらも、「ケネディ大統領のパレードが行われる予定の街に、暗殺(あるいは暗殺未遂)の直前に引っ越してきた」「暗殺に適した高いビル内に職場がある」という点が共通しているのだ。
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ここから、次のような”妄想”も可能になる。仮に「ケネディ大統領の暗殺を目論む組織」があったとして、彼らは自分たちが疑われないように身代わりを用意しようと考えるだろう。しかし、大統領の暗殺はやはり困難なミッションであり、パレードの最中を狙うにしても、どの街で成功するか分からない。そこでその「組織」は、どの街でケネディ大統領の暗殺が成功しても「スケープゴート」が用意できるように、オズワルドやヴァレのような人間をあらかじめそれぞれの街に配していたのではないだろうか。本作では、そのような示唆がなされるのである。これはもちろん、証拠に基づかない”妄想”に過ぎないが、説得力を感じさせられる話だとも感じた。
そして本作では最後に、「ケネディ大統領はなぜ暗殺されたのか?」という理由に迫ろうとしている。この点に関してはどうしても、「ケネディ大統領は、国家的な陰謀によって暗殺された」という仮定を前提に、その仮定に合う状況証拠を繋ぎ合わせたような印象だったが、まあそれは仕方ないだろう。仮に「国家ぐるみの関与」があったとすれば、証拠を基にその事実を炙り出すことは相当困難なはずだからだ。
とはいえ本作の場合、それまでの検証が実に見事だったこともあり、最後に描かれる「暗殺された理由」についても、「こういう背景があったのかもしれない」と思わせるような説得力が感じられたと言える。さらに本作の場合、「暗殺された理由」そのものよりも、それを深堀りすることによって「ケネディ大統領の偉大さ」が伝わるような構成になっていたことに意味があると感じた。
もちろん、そのような展開についても「ケネディ大統領を礼賛しすぎている」と受け取る人もいるだろうし、様々な捉え方があるだろうと思う。ただ本作では、「ケネディ大統領の功績」に関しても、ARRBが収集した資料によって明確に裏付けがなされた事実が紹介されている。その資料に関して作中に登場したある人物は、「ARRBの偉大な功績だ」と語っていた。暗殺の調査による意外な副産物と言えるだろう。
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ケネディ大統領がなぜ暗殺されたのかはともかくとして、本作を見て強く感じられるのは、「ケネディ大統領は世界を正しく平和に導くために尽力した」ということだろう。そのビジョンや行動力は凄まじいものがあると言える。もしケネディ大統領が暗殺されず、そのまま大統領を務めていたら、世界はどのように変わったのだろうかと想像させられてしまった。
そしてやはり、「ケネディが望んだような『平和』の実現を阻止したいと考えていた勢力が暗殺を計画したのではないか」と想像したくなってしまう。仮にそれが真実なのであれば、「アメリカ」という国家の恐ろしさを改めて思い知らされる作品とも言えるだろう。
何とも凄まじい作品である。
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映画で示された証拠を基に考えれば、「オズワルド単独犯説」は明らかに否定されるだろうと思う。まあ、そんなことは以前から指摘されていただろうし、「オズワルド単独犯説」を信じている者などそもそもほぼいないとは思う。となれば、「暗殺に直接的に関わった別の人物がいる」ことになるし、その人物の痕跡が一切残らないように事件を収めるには、何か巨大な組織の関与が不可欠だという想像もかなり妥当だろう。そして、そのような「疑念」を国民に持たれた状態で国家運営を行うのはなかなか難しいように思う。であれば、何かしらの形で「真相」が明らかになる方が、アメリカにとってもメリットがあるのではないだろうか。
とはいえ、仮に「オズワルド以外の銃撃犯」がいたのだとしても、もう口封じのために殺されているはずだ。そして、「私がやりました」という告白でも無い限り真相が明らかになることはないだろうから、「何が起こったのか」を知ることは絶望的と言えるだろう。しかし、何かの拍子に思いがけず真相が明らかになるみたいなことがあるかもしれない。そういう僅かな可能性を期待したいと思っている。
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アメリカで死刑囚の支援を行う団体を立ち上げた若者の実話を基にした映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、「死刑制度」の存在価値について考えさせる。上映後のトークイベントで、アメリカにおける「死刑制度」と「黒人差別」の結びつきを知り、一層驚かされた
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台湾のろう学校で実際に起こったいじめ・性的虐待事件を基に作られた映画『無聲』は、健常者の世界に刃を突きつける物語だ。これが実話だという事実に驚かされる。いじめ・性的虐待が物語の「大前提」でしかないという衝撃と、「性的虐待の方がマシ」という選択を躊躇せず行う少女のあまりの絶望を描き出す
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ナチスドイツナンバー2だった宣伝大臣ゲッベルス。その秘書だったブルンヒルデ・ポムゼルが103歳の時にカメラの前で当時を語った映画『ゲッベルスと私』には、「愚かなことをしたが、避け難かった」という彼女の悔恨と教訓が含まれている。私たちは彼女の言葉を真摯に受け止めなければならない
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【事件】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
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タイトルを伏せられた覆面本「文庫X」としても話題になった『殺人犯はそこにいる』。「北関東で起こったある事件の取材」が、「私たちが生きる社会の根底を揺るがす信じがたい事実」を焙り出すことになった衝撃の展開。まさか「司法が真犯人を野放しにする」なんてことが実際に起こるとは。大げさではなく、全国民必読の1冊だと思う
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「正しい」と主張するためには「正しさの基準」が必要だが、それでも「規制されていないことなら何でもしていいのか」は問題になる。3枚の立て看板というアナログなツールを使って現代のネット社会の現実をあぶり出す映画『スリー・ビルボード』から、「『正しさ』の難しさ」を考える
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権力を持つ者のタガが外れてしまえば、市民は為す術がない。そんな状況に置かれた時、私たちにはどんな選択肢があるだろうか?白人警官が黒人を脅して殺害した、50年前の実際の事件をモチーフにした映画『デトロイト』から、「権力による不正義」の恐ろしさを知る
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「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
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【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
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『八月十五日に吹く風』は小説だが、史実を基にした作品だ。本作では、「終戦直前に原爆を落としながら、なぜ比較的平穏な占領政策を行ったか?」の疑問が解き明かされる。『源氏物語』との出会いで日本を愛するようになった「ロナルド・リーン(仮名)」の知られざる奮闘を知る
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自由に選択し、自由に行動し、自由に生きているつもりでも、現代社会においては既に「自由意志」は失われてしまっている。しかし、そんな世の中を生きることは果たして不幸だろうか?異色警察小説『巡査長 真行寺弘道』をベースに「不幸になる自由」について語る
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