目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ムロツヨシ, 出演:岸井ゆきの, 出演:若葉竜也, 出演:吉村界人, 出演:淡梨, Writer:𠮷田恵輔, 監督:𠮷田恵輔, プロデュース:柴原祐一, プロデュース:花田聖
¥700 (2022/10/18 20:02時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
田母神に同情してしまうが、ゆりちゃんを完全に「悪」と捉えるのも難しい
些細な不運・不幸を積み重ねることで巨大な亀裂を描き出す構成・展開が見事な映画
この記事の3つの要点
- 献身的な協力を惜しまなかった田母神が、あっさり関係性を切られてしまう展開から、人間関係の難しさを様々に考えさせられた
- 人生において何を優先するかの違いによって、物語の受け取り方が変わる
- 私が「YouTuber」を「クリエイター」と呼びたくない理由
ムロツヨシと岸井ゆきのの存在感が絶妙だったな、ポップでありながら深く考えさせられる作品
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エンタメ作品としてももちろん面白かったですが、とにかくメチャクチャ考えさせられる映画でした。
この映画で描かれてるような状況って、世界中あらゆる場所で起こっててもおかしくないもんね
しかも、「田母神」と「ゆりちゃん」のどちら側に立つかで受け取り方がまったく変わるところも面白い
映画を観た人の受け取り方は様々だと思いますが、間違いなく言えるのは、「映画制作側は『田母神』に同情的だ」ということです。少なくとも私は、映画全体がそのように描かれていると感じました。そして恐らくそれは、「『田母神』に同情する人の方が多いはずだ」という感覚から来るものだと思います。私もその1人で、後半における「田母神の暴走」も、「そんな風になっちゃうのはしょうがないよなぁ」という感覚で捉えました。
ただ、冷静に考えた時、「ゆりちゃんの振る舞い」の善悪を問うことは難しいとも感じます。
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例えばこんなことを考えてみましょう。幼い頃からピアノが天才的に上手かった子どもがいるとします。その子は初め、家の近くにあるピアノ教室に通っていました。というかむしろ、そこで初めてピアノと出会い、楽しさに目覚め、その才能が花開いていったということにしましょう。そのピアノ教室は、その子に「ピアノの世界の魅力」を存分に伝え、羽ばたく大きなきっかけを与えたというわけです。
しかし次第に、町のピアノ教室ではもはやその子に何も教えてあげられなくなってしまいます。あまりに成長のスピードが早いからです。そこでその子は、ピアノの楽しさを実感させてくれたそのピアノ教室を離れ、より高いレベルの教育を受けるられる場所へとステージを変えました。
さて、この話を読んで、「『ピアノの楽しさ』を教えてくれたピアノ教室から離れちゃうなんて酷い」と感じる人はまずいないでしょう。誰もが、「それは仕方がないことだ」と感じるだろうと思います。そして、あらゆる要素をフラットに捉えた場合、この映画で描かれる状況もまた、基本的にはこの話と同じだと私は感じるのです。
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「より高いレベルで闘うために、今いる世界を離れる」っていう物語だからね
もしあなたが、「ピアノ教室から離れた子ども」には「仕方ない」と感じ、映画『神は見返りを求める』の「ゆりちゃん」には「酷い」と感じるとすれば、その違いを生み出す「何か」がそこにはあるはずです。
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そして私は、その要素が「YouTuberという存在」そのものにあると思っているのですが、その辺りについてはこの記事のラスト付近で触れたいと思います。
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イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)は、人数合わせのために連れてこられた合コンでゆりちゃん(岸井ゆきの)と出会う。ゆりちゃんはYouTuberなのだが、努力の割には再生回数も登録者数もまったく伸びない。いわゆる「底辺YouTuber」である。
合コンで出会っただけの2人が深く関わるようになったきっかけは、ゆりちゃんのあるお願いだった。イベント会社に勤めているのだからと、彼女は田母神に「何か使える着ぐるみはない?」と尋ねたのだ。これをきっかけに田母神は、ゆりちゃんの動画投稿にかなり積極的に関わるようになる。車の運転や必要なものの手配、着ぐるみに入ってのダンスなど、休日を利用してゆりちゃんを強くバックアップしていったのだ。編集があまり得意ではないというゆりちゃんに代わって、テロップをつけるなどの仕上げの作業までやってあげていた。
しかし、どれだけやってもゆりちゃんのチャンネルは一向に人気が上がらない。2人で1年以上一緒に頑張ってきて、ようやく入ってきた広告収入はたったの1500円。それでも田母神は、頑張っているゆりちゃんの手伝いが出来るだけで楽しかったし、幸せだと感じられる日々だった。
そんな状況に変化をもたらしたのは、田母神の同僚・梅川。彼はYouTuberのイベントを仕切っており、軽い気持ちで、面識のあった大人気YouTuber・マイルズの2人にゆりちゃんを紹介したのだ。その後、マイルズによる”体当たり企画”のコラボ動画が大バズリし、ゆりちゃんは一躍人気YouTuberの仲間入りを果たすことになる。
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ゆりちゃんのチャンネルが人気になってからも、田母神は彼女の手伝いをしていたのだが、ゆりちゃんは、新たに加わった優秀なデザイナーを頼るようになっていく。このデザイナーをブレーンに、これまでとはまったく違うクオリティの動画を制作するようになったため、センスの古い田母神はむしろ邪魔になってしまった。
ゆりちゃんは、「これまで手伝ってくれたこと」には大変感謝していると言いつつ、「これからはもう関わらないでほしい」と田母神に告げるのだが……。
「人生において、何を優先するか」という価値観の違い
映画の中盤以降、田母神は「ゴッドT」という名前で、自分をあっさりと切り捨てたゆりちゃんに先に積極的に復讐をしていきます。そうなって以降の展開については、「共感できない」という方ももちろん出てくるでしょう。しかし、田母神が「ゴッドT」になってしまうまでの展開においては基本的に、観客は田母神に同情的だろうと思います。
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ゆりちゃんが、まさに「豹変」としか言いようがない変貌を遂げるからね
ゆりちゃんの気持ちも分からないわけじゃないけど、それにしても酷くない? って思うわ
映画では途中から、田母神とゆりちゃんの会話がまったく噛み合わなくなってしまいます。ファミレスでの会話の場面がその最たるものでしょう。この場面で田母神は「気持ち」を求めています。
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与えたものに対して、返そうという気持ちはないのか。
こう口にする田母神に対してゆりちゃんは、
お金がほしいってこと? それって見返りを求めてるってことじゃないの?
と返すのです。
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ゆりちゃんが「分かってて気づかないフリをしてる」のか「ホントに分かってない」のかが捉えがたい
色んな解釈が可能だと思いますが、「田母神が『気持ち』を求めていることをゆりちゃんは理解している」と受け取ることもできるでしょう。ゆりちゃんはもう田母神に対して何の「気持ち」もない、しかしさすがにそう口にするのは憚られる、だから「『気持ち』が欲しいことに気づかないフリをして、『お金』の話をしている」というわけです。男女の別れ話のように、「口に出している言葉」と「本心」が絶妙に重ならず、そのような言葉をやり取りすることでさらに心が離れ、修復の糸口さえも失ってしまう、という状況なのだとすれば、その描き方が絶妙だと感じました。
さて、そんなわけでここでのポイントは、「ゆりちゃんが田母神への『気持ち』を失ったこと」だと言っていいでしょう。そして、その是非によって『ゆりちゃんの行動の善悪』を判断する」と考えるのが自然なように思います。
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もちろん、「他人に対する気持ち」は様々な理由で変わり得るし、「豹変」としか言いようがない変化であっても、その人なりにやむを得ない事情があったりもするでしょう。ただこの映画では、ゆりちゃんが人気YouTuberになる以前、2人で頑張って良い動画を作ろうとしている時期の「幸せそうな映像」がたくさん流れます。ある場面では、「私にはこんなことしかお礼をしてあげられない」みたいなことを言って、ゆりちゃんが服を脱ぎ始めたりもするのです。この2人のやり取りから、少なくとも田母神と観客は、「初期の頃は、田母神とゆりちゃんの気持ちは通じ合っていた」と受け取るのが自然に思います。
もちろん、「そういう演出の映画」だってことは十分分かってるけどさ
前半が幸せそうであればあるほど、後半との落差が際立つからね
私は基本的に、新しい世界で闘うためにゆりちゃんが田母神を切る決断をしたことは正解だったと思っています。唯一の正解ではないでしょうが、複数ある正解の内の1つではあると思うし、そういう選択をした彼女を責める気にはなれません。ただ、あんな風に手酷く切り捨てるような真似をしなくても良かったはずです。もちろん、ゆりちゃんの振る舞いが酷いからこそ、後半の「ゴッドT」が成立するわけで、そういう「物語の要請上の必然」という側面は間違いなくあるでしょう。ただ、田母神とゆりちゃんのような関係は実際に存在し得るし、だからこそ、「世界中に存在するだろうゆりちゃん」には、「『世界中に存在するだろう田母神』にもう少し優しくしてやってくれ」と感じてしまいました。
ゆりちゃんとの関係が悪化するのと並行して、田母神の周囲の状況も悪くなっていく
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この物語が上手いのは、ゆりちゃんとの関係が悪くなっていくのと同時に、田母神の周囲の状況も悪化していくという点です。これは、「物凄くお人好しの田母神」が「ゴッドTという復讐の権化」に変身してしまう説得力を持たせるための要素として組み込まれているのだと思います。田母神のキャラクターであれば、「ゆりちゃんから手酷く関係を切られた」というだけでは、「ゴッドT」に変貌するような怒りを発揮することはなかったはずだからです。
私が田母神の立場でも、あの場面ではゆりちゃんに助けを求めるだろうなぁ
田母神には「自分は彼女に助けを求めてもいいぐらいのことはやってきた」って感覚があっただろうしね
田母神は、ゆりちゃんが人気YouTuberになっていくのと同時並行で、お金の問題にさいなまれるようになります。別にギャンブルなどの借金ではなく、田母神が良い人であるが故に窮地に追い込まれてしまうのです。そんな状況であれば、YouTuberとしてかなり稼げるようになっただろうゆりちゃんに助けを求めたくもなるでしょう。なにせ、ゆりちゃんがそうなれたのは、底辺の時期を2人で乗り切ったからです。だから、田母神を助ける余裕があるだろうゆりちゃんに、「ちょっと返してもらう」ぐらいの気持ちでいたのだと思います。
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映画では具体的に描かれる場面はありませんが、恐らく田母神は、ゆりちゃんに自身の窮状を伝えていないはずです。「伝えなくてもゆりちゃんは助けてくれるはず」という感覚があったからでしょう。ゆりちゃんも、田母神の現状を正しく理解していれば、また振る舞いが違ったかもしれません。しかし結果として、助けを求めた田母神の手を、ゆりちゃんは冷たく振り払うのです。
これが、田母神を「ゴッドT」へと変えてしまった決定打だったと言っていいでしょう。
ホントに、何かがちょっと変わっていれば、全然違う関係性になったんだろうなぁって気がする
このように映画『神は見返りを求める』では、人間関係がとても絶妙に描かれていきます。同情される側であるはずの田母神が「ゴッドT」になってしまうことで世間や観客の「共感」から遠ざかるところや、どう考えても「酷い」としか言いようがないゆりちゃんの振る舞いを完全に「悪」とは捉えきれないところなど、善悪をはっきりできない感じが実に良く出来ていると思いました。
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私は「YouTuber」を「クリエイター」と捉えたくない
さて、冒頭で私は、「まったく同じ状況を描いているはずなのに、『ピアノ教室』はセーフで『ゆりちゃん』はアウトに感じられる」という話を書きました。そしてその理由を「YouTuberという存在」と示したまま終わっています。次はこの辺りの話に触れていきましょう。
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私が、ゆりちゃんの振る舞いを「許容しにくい」と感じる大きな理由の1つが、「ゆりちゃんが闘おうとしている世界が『YouTube』である」という点にあると考えています。というのも私は、「YouTuber」という存在をどうしても「クリエイター」とは捉えられないからです。
もちろん、「クリエイター」と呼べる「YouTuber」もいるけど、「YouTuber」だからと言って「クリエイター」とは限らないって思う
「クリエイター」かどうかは、「才能が生み出している」と捉えられるか否かに関係すると私は思っています。そして、「ピアノ演奏」は間違いなく「才能」だと思えますが、「YouTube動画制作」は私にはどうしても「才能」には感じられないのです。
映画の中に、非常に印象的な場面がありました。ブレーンとして頼りにしているデザイナーから、ゆりちゃんがこんな風に言われるシーンです。
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ゆりちゃんがしていることなんて、誰でもできるんだから。
これは要するに、「出役がやっていることは重要ではない」という意味でしょう。ゆりちゃんが人気YouTuberになれたのは、「体を張ったコラボ動画」や「センスの良いデザイナー」のお陰です。もちろん、ゆりちゃん自身に魅力が無ければ話にならないわけですが、同時に、ゆりちゃんの魅力だけではどうにもならないとも言えます。ゆりちゃんのチャンネルが人気なのは、ゆりちゃん自身の力というよりはブレーンの力であり、「誰でもできるんだから」という言葉はまさにその事実を指摘していると言っていいでしょう。
もちろんそのことは、ゆりちゃん自身が一番良く分かってるだろうし、だからこそ辛いよねとも思う
ゆりちゃんもたぶん「承認欲求」からYouTuberを始めたタイプだと思うけど、結局、人気YouTuberになっても「承認欲求」が満たされにくいんだろうなぁ
さて、ここまでで私が主張してきた「『YouTuber』を『クリエイター』と捉えたくない」という話は、「出役だけではなく、チーム全体として考える」ことで解消できるでしょう。出役が「クリエイター」でないとしても、そのチャンネルに関わるチーム全体は「クリエイター」だと言えるという解釈です。
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しかし、私の中にはさらに、「YouTuber」を「クリエイター」と捉えたくない理由があります。これについても映画の中で印象的な場面がありました。ゆりちゃんがサイン会の場でファンの女の子に向かってこんな風に呟くのです。
でも、映画や音楽みたいに、時代を超えて残るものじゃないから、寂しいよね。
「自分に才能があるわけじゃない」ってだけじゃなく、「作ってるものも消費されるだけ」って理解してるってことだよね
そんな気分になっちゃうなら、何故YouTuberであり続けようとするのか、結構不思議だなって思う
これに対してゆりちゃんのファンは、「残るものって、そんなに偉いんですか?」と不思議そうに返します。ファンからすれば、日々「楽しい」と感じられる動画を作ってくれることがありがたいのであって、それが未来に残るかどうかなんて関係ないのです。また公式HPには、このセリフについての裏話が書かれていました。当初YouTuberに対して偏見を抱いていた監督が、取材を進める中で考えが変わり、YouTuberに対するリスペクトを込めべく、この「残るものって、そんなに偉いんですか?」というセリフを組み込んだのだそうです。
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さて、今の若い世代の人たちは、YouTuberやTikTokerを「クリエイター」と呼ぶことに恐らく抵抗はないでしょう。たぶんそこには、「バズらせるものを生み出す人は凄い」という敬意みたいなものがあるのだろうと思います。ただ、年齢的にもう「オジサン」である私には、そういう感覚がまったくありません。私はどうしても、「こういうメッセージを届けたい」「こういう現実を知らしめたい」「こういう感覚に気づいてもらいたい」など、「楽しい」とか「バズった」とかだけではない何らかの要素が込められたものこそ「創作」と捉えたいし、そういうものを生み出す人こそ「クリエイター」と呼びたいと感じてしまうのです。
こういう感覚は、これから益々通じにくくなっていくんだろうなぁって思うよね
最近の世の中の変化で、一番「嫌だな」って感じることかもしれない
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またYouTubeの場合、「再生回数」以外に評価の指標が存在しないこともまた、「創作」と呼びたくないポイントだったりします。音楽でも映画でも小説でも芸術でも、「どれだけ売れたか」「どれだけ見られたか」以外に、それぞれを客観的に評価する基準みたいなものがある程度確立しているはずです。ただYouTubeの場合は、「再生回数」1択だと思います。そうなると、「ベストセラーになった小説はすべて面白い」とか「興行収入が大きい映画はすべて傑作」と言っているような違和感がどうしても生まれてしまうでしょう。
もしかしたら今はまだ過渡期なだけで、YouTubeも他の様々な分野と同様に、「その良し悪しを判断する客観的な指標」みたいなものが出てくるかもしれません。ただ、その期待はちょっと薄いでしょう。「客観的な指標」が生まれるかどうかは要するに、「学問になり得るか」と似た問いだと私は思っています。そして恐らくYouTubeは「学問」にはならないでしょう。たぶん、「消費されるもの」としてその存在が続くだけだと私は感じています。
もし「YouTuber」を「クリエイター」と捉えるのであれば、ゆりちゃんの振る舞いは、冒頭で例示したピアノの話と同じだということになり、ゆりちゃんの言動に対する違和感は大幅に減少するかもしれません。つまり、「YouTuber」を「クリエイター」だと考える人がこの映画を見れば、ゆりちゃんに共感する見方になるのだろうと思います。だとすれば、私の捉え方とはまったく異なるものであり、そういう意味でも多様な捉え方が可能な映画であると感じられました。
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出演:ムロツヨシ, 出演:岸井ゆきの, 出演:若葉竜也, 出演:吉村界人, 出演:淡梨, Writer:𠮷田恵輔, 監督:𠮷田恵輔, プロデュース:柴原祐一, プロデュース:花田聖
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映画は、田母神とゆりちゃんメインに展開されていきますが、あまり登場しない梅川が最も印象的だったかもしれません。彼はとにかく、最初から最後まで「クズ感」満載といった振る舞いを貫き通します。映画の後半で、田母神・ゆりちゃん・梅川の3人で話をする場面があるのですが、田母神もゆりちゃんもかなりヤバさを放つ中で、梅川の異常さが際立つシーンでした。そして、そのことが明白に描かれることでスッキリ感を得られる場面でもあります。
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また、そんな梅川以上にイカれていると言えるのが、YouTuber・マイルズの2人です。「病院で動画撮影をしている場面」を含め、出てくる度に「YouTuberのヤバさ」みたいなものを分かりやすく表現していると感じました。「こういう存在を『クリエイター』と呼びたくない」という感覚も、きっと私の中にあるのだろうと思います。
「お人好し」から「復讐の権化」まで見事に演じるムロツヨシは最高だったし、「底辺YouTuber」から「人気者」へと絶妙に変貌する岸井ゆきのも素晴らしかったです。ゆりちゃんは、前半と後半ではまるで別人なのですが、その「別人感」を岸井ゆきのがぴったり演じていると感じました。言い方は悪いかもしれませんが、ゆりちゃん役を演じたのが「分かりやすい美人」だと、こうはいかなかったでしょう。両極をどちらもしっくり来る形で体現する岸井ゆきのはお見事でした。
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少しだけ不満を挙げるとすれば、「『これ以上ないどん詰まり』に行き着いた田母神・ゆりちゃんの『もう少し先』を見たかった」と感じました。「こんな展開を望んでいた」みたいな希望は特にないのですが、あの時点から2人がどうやって次の一歩を踏み出していくのか、その可能性が垣間見えてほしかったと思います。
ただ、とにかく複雑に感情を揺れ動かされたし、また、難しいことを考えなくてもポップに楽しめる作品でもあり、とても面白かったです。
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「片想いの相手には近づけないから、その恋人を”奪おう”」と考える主人公・木村愛の「狂気」を描く、綿矢りさ原作の映画『ひらいて』。木村愛を演じる山田杏奈の「顔」が、木村愛の狂気を絶妙に中和する見事な配役により、「狂気の境界線」をあっさり飛び越える木村愛がリアルに立ち上がる
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小学5年生から統合失調症を患い、社会の中でもがき苦しみながら生きる卯月妙子のコミックエッセイ『人間仮免中』はとんでもない衝撃作。周りにいる人とのぶっ飛んだ人間関係や、歩道橋から飛び降り自殺未遂を図り顔面がぐちゃぐちゃになって以降の壮絶な日々も赤裸々に描く
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映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、「マンガ家夫婦の不倫」という設定を非常に上手く活かしながら、「何がホントで何かウソなのかはっきりしないドキドキ感」を味わわせてくれる作品だ。黒木華・柄本佑の演技も絶妙で、良い映画を観たなぁと感じました
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私は「見て分かること」に”しか”反応できない世界に日々苛立ちを覚えている。そういう社会だからこそ、映画『流浪の月』で描かれる文と更紗の関係も「気持ち悪い」と断罪されるのだ。私はむしろ、どうしようもなく文と更紗の関係を「羨ましい」と感じてしまう。
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SNSの登場によって「批判が容易な社会」になったことで、批判を恐れてポジティブな言葉を口にしにくくなってしまった。そんな世の中で私は、「理想論だ」と言われても「誰かを助けたい」と発信する側の人間でいたいと、『竜とそばかすの姫』を観て改めて感じさせられた
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ともすれば「エロ本」としか思えない浅野いにおの原作マンガを、その空気感も含めて忠実に映像化した映画『うみべの女の子』。本作が一体何を伝えたかったのかを、必死に考察し全力で解説する。中学生がセックスから関係性をスタートさせることで、友達でも恋人でもない「名前の付かない関係性」となり、行き止まってしまう感じがリアル
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「どこにでもいる普通の女性」が「横領」に手を染める映画『紙の月』は、「日常の積み重ねが非日常に接続している」ことを否応なしに実感させる。「主人公の女性は自分とは違う」と考えたい観客の「祈り」は通じない。「梅澤梨花の物語」は「私たちの物語」でもあるのだ
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理不尽・ストレス・イライラする【本・映画の感想】 | ルシルナ
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