目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:梅田望夫
¥836 (2022/11/27 18:44時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 絵が描けなくても絵画を見て「感動した」と思うのは自然だが、将棋を指せない人が対局を見て「感動した」と口にするのは憚れる現実
- 「伝統」に凝り固まっていた将棋界の因習を打破し、「純粋な勝負」としての将棋をスタートさせた羽生善治の功績
- 「指さない将棋ファン」をいかに増やすかという渡辺明の問題意識と、凄まじい研究の先にたどり着けるかもしれない「真理」
これまで考えたことのない「問い」を軸に、現代将棋の様々な話題を盛り込む作品であり、非常に面白い
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本書の中心となる問いは、「将棋の対局が『ルールを理解して指せる人間が観ないと面白くない』と受け取られてしまうのは何故か?」である。最近は「観る将」という、「ルールを理解しないまま将棋を観て楽しむ人」が増えており、この問いの意味を理解できない者もいるかもしれない。しかし本書が出版された時点では、ネット配信などの将棋を気軽に観られる環境はなかったはずで、「将棋」は今ほど身近に接することが出来るエンタメではなかったのだ。どちらかと言えば「自分でも指した経験のある将棋好きが熱心に観るもの」として受け取られていたはずだし、私もそんな印象を抱いていた。
そして、そんな将棋の捉えられ方に疑問を呈するのが本書なのである。
著者はシリコンバレー在住で、『ウェブ進化論』という新書が大ベストセラーとなった。著者自身、将棋を指しはするもののそこまで強くはなく、どちらかと言えば「将棋を観ること」を趣味にしているという。
著:梅田 望夫
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そんな著者が、「将棋を観ること」を起点に、将棋の楽しみ方や羽生善治の凄さについて語る作品というわけだ。私も、将棋のルールは分かるが全然強くない人間で、いわゆる「下手の横好き」という感じである。そんな人間でもメチャクチャ楽しめる1冊で、物凄く面白かった。
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本書は、著者が過去に出版した2冊の本、『シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代』『どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?――現代将棋と進化の物語』を合本し、さらに羽生善治との対談や対局のリアルタイム観戦記などを新たに収録した作品になっている。将棋に詳しくなくても、「ちょっとは興味がある」程度の関心があれば十分楽しめる作品だと思うので、是非手に取ってみてほしい。
「将棋を観ること」に対して、どうして私たちは高いハードルを感じてしまうのか?
先程も触れたが、本書の中心的なテーマに改めて触れておこう。この点については本書にも、
『シリコンバレーから将棋を観る』と『どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?』の二冊を貫く主テーマとは「将棋を観る」という行為についてである。
という形で明確に記されている。もう少し具体的に触れている箇所も引用しておこう。
将棋と言えばあくまでも「指す」もの、将棋とは二人で盤をはさんで戦うもの、というのが常識である。「趣味が将棋」といえば、ふつうは「将棋を指す」ことを意味する。そして将棋を指さない人、将棋が弱い人は、将棋を観てもきっとわからないだろう、と思われている。
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最近では、「藤井聡太がおやつに何を食べるのか」「対局中の棋士がどんな仕草をしているのか」など、将棋そのものに注目するわけではない「観る将」も増えてきているので、このような感覚は薄れているのかもしれない。一方で、「理解できる」という方もいるだろう。私も、元々はそう感じる側だった。自分は将棋が弱い、だからプロの対局を観たって分かるはずがない、と当然のように考えていたのだ。
しかし、本書のこんな記述を読んで、「なるほど、将棋に対してそのような感覚は確かにおかしい」と感じさせられた。
しかし考えてみれば、それも不思議な話なのである。
「小説を書く」人がいて「小説を読む」人がいる。「音楽を演奏する」人がいて「音楽を聴く」人がいる。「野球をやる」人がいて「野球を見る」人がいる。「小説を読む」「音楽を聴く」「野球を見る」のが趣味だという人に、「小説を書けないのに読んで面白いわけがないだろう」とか「演奏もできないのに聴いて楽しいはずがないよね」とか「野球をやらない人が見ても仕方がないでしょう」などと、誰も言わない。しかし将棋については「将棋を指さない人は、観ても面白くないでしょ、わからないでしょ」と言われてしまいがちだ。
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いかがだろうか? 私はこの文章を読んで、「確かにその通りだ」と感じた。同じような捉えられ方になるものは他にも世の中に存在するかもしれないが、少なくとも「将棋」の場合は、「やらない人間が観ても面白くないはず」という感覚が当たり前のように存在しているというわけだ。
ちなみにだが、私は将棋に限らず、「リアルタイムで行われていることを鑑賞する」という行為がそもそも得意ではない。将棋、スポーツ、F1、競馬などを鑑賞する趣味がまったくないのだ。好き嫌いというよりは、得意不得意の問題だと自分では思っている。何を観ても、「結果だけ教えてくれ」というような身も蓋もない感覚になってしまうのだ。だから、スポーツ鑑賞と将棋鑑賞における私自身の実感を比べているわけではない。なんとなく感覚的に、「スポーツと将棋では確かに受け取り方が異なる」と理解できるというわけだ。
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では、このような違いは一体どこから生まれるのだろうか? その点について著者は、イチローに言及した後で、こんな風にまとめている。
イチローのいる野球の世界は、テレビ画面を通すとあまりにもやさしく見えてしまう。だからファンが映像で「わかった気になって楽しむ」ことができる。それゆえに野球は、膨大なファン層を抱える人気スポーツたり得るのである。
どんなスポーツ競技も、また頭脳スポーツである将棋も、その奥の深さを、観ている者が完全に理解したり、感じとったりすることはできない。しかし野球が「テレビ画面を通すとやさしく見えてしまう」から「わかった気になって楽しめる」のに対し、放っておくと将棋は「あまりにも高度でわからない」という感覚を、観る側に呼び起こさせてしまう。
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確かにその通りだ。「野球を観ているおじさん」のステレオタイプなイメージを思い浮かべてみれば、「なんでそこで振らないんだよ!」「そんなボールも取れないのかよ!」と野次を飛ばす姿が出てくるだろう。もちろん野球経験者もいるとは思うが、少なくとも世の中の「野球を観ているおじさん」のほとんどが、プロよりも野球が下手なはずだ。それなのに、さも自分の方が巧手であるかのような視点で試合を観ることが出来る。著者が言う、「テレビ画面を通すとあまりにもやさしく見えてしまう」という感覚は、私の中にはないが、現にそういうおじさんが存在する以上、そのような「魔法」は存在するのだろう。そしてその「魔法」こそが、膨大な「野球ファン」を生み出しているというわけだ。
しかし将棋の場合はそうはならない。将棋の対局を鑑賞している者が、「どうしてそんなところに打つんだよ!」と怒っている姿はなかなかイメージできないだろう。それよりも、「えっ? どうしてそんなところに打ったんだ?」という困惑が先に来るのではないかと思う。これはつまり、「棋士が打った手はきっと正解なのだろうが、何故それが正解なのか自分には分からない」という表明だ。この感覚は、野球を観る人とはまったく異なるものだと思う。
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また、対談の中で羽生善治が口にするこんな言葉も印象的だった。
たとえば絵画なら、自分で絵が描けなくても「感動した」と言う自由が許されているわけです。システィーナ礼拝堂の「最後の審判」を見て感動した、と言って「おまえ、描けないだろう」とは言われないですよね。将棋を観て感動したと言うと「え、君どのくらい指せるの」となる(笑)。プロのように美しい将棋を自分で指せるようになるには、それこそ一生を費やさねばならない。そんな根性はないから観るだけのファンになるのだけれど、棋力が伴っていないと、発言は控えなくてはいけない。将棋の世界には、そんな暗黙の了解があったと思います。
確かに、絵なら「おまえ、描けないだろう」とは言われないが、将棋だと「え、君どのくらい指せるの」という反応になってしまう感じは理解できる。本書の面白さは、何よりもまずこの点に気づかせてくれたことだと言っていいだろう。私自身、「将棋はそういうものだ」と当たり前のように考えており、他の何かと比較するとこれほど変なのだということに気づかなかった。それが何であれ、「当たり前」だと思いこんでいる対象には、なかなか疑問を抱くことができない。本書で示される「将棋だけは何故『指せないと面白くない』と思われるのか」という問いは、そういう意味で非常に新鮮に感じられた。
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むしろ将棋の方が「観る面白さ」が高いのではないかという指摘
このように将棋はハードルの高さを感じさせてしまうわけだが、羽生善治は、「テレビやネットを通じて観る」という点において、将棋は他のどんなものよりも面白みがあるはずだ、という発言をしている。
ところがテレビで見ているときは、そんなことは見えないわけですよ。投げる瞬間、捕る瞬間だけ。球場にある、そのスポーツの全情報量と、テレビが切り取って見せている情報量とに、差がありますよね。非対称というか、全然違うわけです。ところがね、将棋というのはそこが同じなんです。だからそこは、すごく可能性を感じるんです。全員が同じ局面で同じことを観ていられる、共有できる。
これも「なるほど」と感じさせる指摘だと思う。
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野球に限らずだと思うが、このように一般的なエンタメの場合、「現場の全情報」が「画面」を通すことによって激減してしまうことになる。
しかし将棋はそうではない。もちろん、実際に対局場にいるからこそ感じられる「独特の緊張感」みたいなものまではなかなか伝わらないかもしれないが、それでも、将棋の場合は、「現場の全情報」が「画面」を通してすべて伝わる。プレイヤーと観客が、同じ情報を共有できるというわけだ。
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そしてだからこそ、羽生善治はこんな風にも言う。
極端な話をすれば、ルールがわからなくたって、観ていればそれなりに面白いと思うんです。もちろんルールを知っていたら尚更、将棋の多面的な面白さに行き着くってことがあるんですけど、たとえ基本的なことを知らなくても、ただ観るものとしても、まあ、何かしらの価値はあるのではないかと思っています。
この点について羽生善治が具体的なことに言及しているわけではないが、私なりに勝手に解釈して説明を加えてみたいと思う。
例えば野球の場合、「現場の全情報」の内の一部を切り取ってカメラに収めなければならない。そして当然のことながら、「野球ファンが観たいと感じるもの」が優先して映し出されることになるだろう。つまり逆に言えば、野球のルールをまったく知らない者がテレビで野球観戦をする場合、「何故この場面をカメラが映しているのか」を理解できない状況もあるのではないかと思う。「ルールを理解している野球ファン」の目線で情報が切り取られているのだから、その映像は、ルールを知らない者には意味不明に映る可能性は十分にあるだろう。
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野球でイメージできなければ、まったくルールを知らないどこか外国のスポーツをテレビで観ていることを想像してみてほしい。それが球技だとして、例えばボールの行方をカメラが追わない場面があった場合、観ている側は「???」となるだろう。恐らく何らかのルールが存在し、ボールの行方以上に注目すべきポイントがあるからこそそのような映像になっていると推定はできるが、ルールを知らなければ詳しい状況は理解できない。このように、情報が「非対称」であることは、「観る」という行為に直接的に影響を与えるのだ。
しかし先述した通り、将棋の場合は「現場の全情報」が映し出される。「ルールを理解している将棋ファン」の目線で情報が取捨選択されるのではなく、プレイヤーと同等の情報を観客も得られるのだ。ということは、「どの情報に注目するか」は観る側の選択次第ということになるだろう。
こう考えると、「ルールを知らなくても『ただ観るもの』として価値がある」という感覚も理解しやすくなるだろうと思う。非常に面白い指摘だと感じた。
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また本書には、トッププロ棋士の1人である渡辺明についても取り上げられている。将棋界には、中学卒業前にプロ棋士になった超天才が5人おり、彼もその内の1人だ。他の4人は、加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、藤井聡太である。錚々たるメンツと言っていいだろう。
そんな渡辺明は、『頭脳勝負』という新書を出版しており、その中で早くも、「指さない将棋ファン」「将棋が弱くても観ることを楽しむファン」を増やさなければならないと問題意識を示していたという。
著:渡辺明
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そんな意識を持っているからこそ、彼自身も様々な取り組みを行っている。例えば、自身のブログを開設し、棋士の日常を綴るなど対局場以外の姿も見せるようにした。また、「対局翌日に本音で解説する」という画期的な取り組みも始めている。勝った対局だけではなく、負けた対局であっても、何を考えどのような意図で指していったのかを自らの言葉で語るのだ。観客は「現場の全情報」を知ることが出来るわけだが、当然、「棋士の頭の中」まで覗くことはできない。だからこそ、彼の行動は、「将棋を観ること」を補完する非常に重要な要素だと言っていいだろう。
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羽生善治が将棋界にもたらした「革命」
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本書のもう1つのテーマは、「羽生善治はどれほど凄い棋士なのか」である。もちろん、前人未到の記録を次々と成し遂げているという知識は、将棋にさほど詳しくない人でもニュースなどで見知っているだろうし、「凄いことは十分分かっている」と感じる人も多いかもしれない。しかし本書には、「なるほど、そんな『革命』も起こしていたのか」と感じさせるような驚きのエピソードも紹介されていた。
それが「序盤の進め方」である。
その説明の前に、羽生善治が現状を打破する以前の将棋界について書かれた記述をまずは引用してみよう。
羽生さんが初めて七冠になったとき(著者注:1996年)は、将棋界全体の戦法の幅が狭く、どんな戦型でも中盤は指定局面になることが多かった。プロが序盤で個性を発揮できない時代だったわけです。
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羽生に現代将棋の本質について尋ねるとき、決まって彼が語るのは、つい最近まで「盤上に自由がなかった」ということである。(中略)羽生が問題視していたのは、将棋界に存在していた、日本の村社会にも共通する、独特の年功を重んずる伝統や暗黙のルールが、盤上の自由を妨げていたことだった。
将棋に詳しい人なら知っていると思うが、そうではない方には少し説明が必要だろう。
日本の将棋文化は、非常に長い伝統を持っており、現在のようなルールが確立したのは室町時代とされている。そしてそれが何であれ、長く続けば続くほど、「暗黙のルール」みたいなものが生まれてしまいがちだ。将棋の場合、「序盤における駒の進め方」もその1つである。将棋は長らく、「終盤戦でのぶつかり合いで勝負が決する」と考えられており、それ故、序盤は「こういう駒の動かし方が普通だよね」という、いわゆる「定跡形」と呼ばれる形になることが多かった。というか、「そのように指すべきだ」という圧力みたいなものさえあったという。現在のような「純粋な勝負」というよりも、空手や茶道など「型」「礼儀」が重んじられる世界だったのだろう。そんなわけで、「序盤はこんな風に展開させるのが当然である」という「暗黙のルール」が、羽生善治がプロ棋士になった頃まで連綿と続いていたというわけだ。
しかし彼は、その風潮に毅然として異を唱えた。羽生善治は1994年に初めて名人位に挑戦したのだが、その際なんと、「普通の定跡形は指さない」と宣言し、その通りに将棋を指したのである。
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しかしそんな振る舞いに対して、将棋界の重鎮達は荒れ狂ったという。本書に書かれている「批判」を抜き出してみよう。
- 将棋界の第一人者たるもの、少なくとも若いときには居飛車党の正統派でなければならない。歴代の名人は皆そうだった
- 名人戦のような大舞台では、将棋の純文学たる矢倉を指すべきだ
- 大舞台で先手を持って大先輩を相手に飛車を振るなんて
将棋に詳しくない人には初見の単語も出てくると思うので、イメージを掴むには難しいかもしれない。例えば野球で例えるなら、「先頭打者の初球は真っ直ぐのストレートを投げるべきだ」「ピッチャー初年度からスプリットを投げるのは邪道だ」「大先輩に対して外角ギリギリの球を投げるなんて失礼だ」みたいな感じの反応と言えるのではないかと思う(私が野球に詳しくないので自信はないが)。
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多少将棋に詳しい、比較的新参の(古参ではない)将棋ファンであれば、これらの主張を「は?」と感じるだろう。私も、そう感じる。それはやはり、私たちが「将棋」を「純粋な勝負」だと考えているからだと思う。そして、「将棋は『純粋な勝負』である」という”当たり前”の感覚を将棋界にもたらした人物こそ、羽生善治なのである。
後手が想定局面まで安易に先手に追随するという怠惰を廃しさえすれば、その先に将棋の未来が広がっているに違いない。そう、羽生は問題提起したのだった。
既に現代の将棋しか知らない私たちにはなかなかイメージしにくいが、30年ほど前までの将棋界では「伝統」の方が重んじられており、「棋士が自由に駒を動かすこと」が制約されていたというわけだ。そして、そんな「伝統」をその圧倒的な実力で打ち破り、それによって「現代将棋」への道筋を生み出したことこそが、彼の非常に大きな功績だというのである。実際に、
1994年には「邪道」だった「先手7六歩 後手3二金」は、盤上の自由が行き渡った現在では、当たり前の展開の一つになり、不確かな価値観に基づいた「邪道」などという曖昧な言葉は、将棋界から消え去った。
というような具体的な変化についても本書には記されている。現代将棋においては、「AIソフトを使った研究」との兼ね合いで「邪道」という言葉が出てくる可能性はあると思うが、「将棋の伝統」に照らして「邪道」と判断されるようなことは恐らくもうないだろう。
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羽生善治のそのようなスタンスは、彼自身の将棋に対する向き合い方にも滲み出ている。
いちばんの違いは時代における戦い方で、大山先生は人と戦っていたけれど、羽生さんは将棋そのものと戦っている。たとえば、羽生さんは相手のミスを期待するのではなく、できるだけ長く均衡が保たれた局面が続いて、将棋の真理に近づければいいと思っている。
どうやら羽生は、一局の将棋の勝ち負けや、ある局面での真理とかそういう個別のことではなく、現代将棋の進化のプロセスをすべて正確に記録しないともったいない、それが「いちばんの問題」だ、と言っているのである。どうも彼は、一人だけ別のことを考えているようなのだ。
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ここにはある種の捻れがあるように感じられる。当然のことながら、「伝統」を重んじていた者たちにしたところで、最終的には「相手との対局に勝つ」ことが目的だったはずだ。だからこそ、相手のミスを期待するような心理戦を仕掛けたりもしていたのである。しかし、将棋を「純粋な勝負」へと転換させた当の本人は、勝ち負けよりも「将棋の可能性」の方に関心を持っているというのだ。
だからこそ、普通では考えられない行動も取る。
何人かの棋士が口を揃えて言うのは「最近の羽生は、番勝負(真剣勝負)でリードすると実験をする」ということである。その時点で羽生が抱いている「将棋の真理を巡る仮説」を検証する場としてタイトル戦の大舞台が使われるという意味だ。
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普通の棋士であれば、そのような大舞台では「どうやって相手に勝つか」しか考えられないだろう。しかし羽生善治は、「将棋の真理にたどり着くための実験を行っているように思える」というのだ。まさに異次元の闘い方をしていると言っていいだろう。
羽生は、きっと若き日に七冠を制覇する過程で、一人で勝ち続けるだけではその先にあるのは「砂漠の世界」に過ぎず、二人で作る芸術、二人で真理を追究する将棋において、「もっとすごいもの」は一人では絶対に作れないと悟ったのだ。そして「もっとすごいもの」を作るには、現代将棋を究める同志(むろんライバルでもある)が何よりも重要だと確信した。「周りに誰もいなければ(進むべき)方向性を定めるのがとても難し」いからである。そして、同志を増やすという目標を達成するための「知のオープン化」思想が、そのとき羽生の中で芽生えたのだと考えられる。
将棋を「純粋な勝負」に転換させたのは、そうしなけば「真理」に到達できないと考えていたからというわけだ。だから羽生善治は時に、自身が勝利した対局において相手に怒ることさえあるという。「どうしてそこで止めてしまうんだ」という怒りである。確かに勝敗は決しているのかもしれない。しかし、この将棋はまだ先があるはずだ。そこまで行けば、何か見えてくるものもあるかもしれない。しかしあなたが投了してしまえば、その深淵に到達できないではないか。だからこんな形で投げ出すな。そんな怒りを抱いているのではないかと著者は想像するのである。
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このような視点で捉えると、羽生善治という棋士がいかに異端的な存在であるかが理解できるだろうと思う。
現代将棋における急速な変化と、それに対する危機感
「AIが将棋界をいかに激変させているか」については、『天才の考え方』の記事で詳しく触れている。「現代将棋の変化」という意味では、AIがもたらした影響力はとてつもなく大きなものなのだ。
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一方、『羽生善治と現代』では、「AIソフトを使わない研究」に焦点が当てられている。「伝統」の軛が取り払われたことで、それまであまり研究されてこなかった序盤・中盤にも次々とメスが入り、プロ棋士たちの手で新たな知見・発想がどんどんと生み出されていった。2008年、羽生善治が「永世名人」の有資格者となった時、彼は「ここ10年は今までの将棋の歴史のなかで一番変化が大きい時代」と語ったという。羽生善治が切り開いた「将棋の『真理』を探究する道」に多くの者が続いたことで、将棋界は「日進月歩の研究が古い定跡を駆逐する世界」へと変貌したというわけだ。
そのような変化についての様々な記述が本書にはある。
序盤の最新研究における知識の差が勝負に直結してしまう、その比率が上がっている、ということなのだと思います。
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しかし2手目でこんなことになるとは……。こういう時代になるとは、思いもしませんでした。
以前、羽生が私に「最近は、公式戦の結果だけを見ていっても、将棋の真価を追うことができなくなってしまった」と話していたことがある。
そして、そのような変化を生み出す「棋士」という存在について、その異質さを表現するこんな文章も印象的だった。
ふつうは、技術が進歩する速度に合わせて人間がどう変わるべきかを必死で考えて追いつこうとするものなのに、将棋の世界では、棋士という人間そのものが技術を体現した存在であり、人間が進歩する力、推進力にこそすべてがある。そう考えるとあらためて、棋士たちの頭脳のすさまじさ、他の世界との異質さを感じざるを得ない。
先程も触れた通り、現在では「AI」の影響力が凄まじく、「棋士という人間そのものが技術を体現した存在」という記述にも修正の余地はあるだろうと思う。しかしどれだけAIが台頭したところで、それを理解し使いこなせる者がいなければ「真理」にはたどり着けないはずだ。「理屈は分からないが、AIが導き出したこの手は強い」という状況はいくらでも生まれ得るだろうが、それは単に「勝負に勝てる」というだけであり、「真理への到達」ではない。「真理」へ到達するためには、プロ棋士たちの高度な頭脳が必要になるというわけだ。
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つまり、誰か優れた人が出てきてその人だけがイノベーションを起こすというのじゃなくて、イノベーションを生み出しやすい土壌をこそ作らなければならない。逆に、そうした土壌がなくなってしまうと、どんなにいいアイデアを持った人がいても、そこからは花が咲かない、誰も咲かすことができない。
と言い、さらに「創造性以外のものは簡単に手に入る時代になった」とも語っている。
そして、
何かを作り出すのは無駄な作業に見えるけど、一番大事なことなんじゃないか。
と主張するのである。このような彼のスタンスこそが、羽生善治という人間をトップランナー足らしめているのだと感じさせられた。
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