目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:アンドリュー・ガーフィールド, 出演:サム・ワーシントン, 出演:テレサ・パーマー, 出演:ヴィンス・ヴォーン, 出演:ヒューゴ・ウィーヴィング, Writer:ロバート・シェンカン, Writer:アンドリュー・ナイト, 監督:メル・ギブソン, プロデュース:ビル・メカニック
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 信念を貫き通すことはいつの世であっても難しいし、だからこそ称賛される
- キリスト教徒として、人を殺すのではなく救うために従軍を決断したデズモンド・ドス
- 除隊を促されるほど受け容れられずにいたデズモンドは、それでも諦めずに信念を貫いた
実話を基にした物語だとは信じがたいほど、デズモンドはとんでもないことをやってのける
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『ハクソー・リッジ』が描き出す、「最も過酷な戦場」の1つで、武器を持たずに信じがたい成果を挙げた兵士の凄まじい生き様と信念
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「ハクソー・リッジ(のこぎり崖)」とは、沖縄「前田高地」の米軍側の呼び方だ。垂直の崖を登って攻略しなければならない立地であり、第二次世界大戦において最も過酷な戦場の1つと言われた場所でもある。日米双方の兵士がかなりの接近戦を繰り広げ、多くの命が失われた。
そんな戦場を武器を持たずに駆け回り、類を見ない成果を挙げた人物がいる。それが、この映画の主人公デズモンド・ドスだ。実在した兵士であり、「誰にもできないことをやってのけた」と称賛された人物である。
彼の物語は、「人間はいかに信念を貫くことができるのか」を示すものだ。この映画は、「戦争の悲惨さ」を伝えるものとしてだけではなく、「信念を貫き通すことの重要さ」を改めて実感させてくれるものとして受け取られてほしいと思う。
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「『戦争』と矛盾する『信念』」を捨てずに貫き通した兵士の凄まじい決意
でも、信念を曲げたら、僕は生きていけない。
私も、どちらかと言えば、自分がこうと決めたことはなるべく貫きたいと思うタイプだ。途中で諦めることも、路線変更することもあるが、そういう時にはなんとなく、自分自身に対して不甲斐なさみたいなものを感じてしまう。なるべく無理せず生きたいので、実際には信念を曲げてばかりではあるのだが、気分だけはいつも「初志貫徹」を目指している。
しかし、デズモンドが口にする「生きていけない」は、本当に言葉通りの意味だ。彼は、信念を曲げるくらいなら死んだ方がマシだと考えるほど、強い信念を持つ人物なのである。
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人の信念を変えることなど、戦争にだって出来やしない。
信念はなかなか目には見えないし、いくらでも口にすることができてしまう。だからこそ、その「信念」が試される時にどう振る舞うかで真価が決まると言っていい。そしてデズモンドは、「戦争」という、あまりに大きく、「信念」を曲げたとしても誰も責めないであろう状況下においても、自身の「信念」を手放さなかった。
これは凄まじいことだ。
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信念を貫く者たちの逸話は、様々な形で後世に伝えられる。戦後日本で闇市の闇米を食べることを拒否して餓死した裁判官。「失敗ではない、上手くいかない1万通りの方法を見つけたのだ」と語るエジソン。出光興産創業者の出光佐三をモデルにしたとされる『海賊とよばれた男』は、売る油は一滴もないのに、社員全員1人もクビにはしないと決意する場面から始まる。
著:百田尚樹
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これらは、やはり「凄すぎるエピソード」だからこそ語り継がれるわけで、日常そうそうあることではない。自分が彼らほど信念を貫くことができないとしても、自分を悪く思う必要などないだろう。
しかしやはり、そのような逸話に触れると、「自分もこんな人間でいられたらいい」と思わされてしまう。
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お前なしでは戦えない。
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最終的にデズモンドは、これほどまでに評価されるのである。自分もそんな生き方ができたらと、少し羨ましくなった。
もちろん、信念を貫くことで不遇の人生を歩むことになってしまった人も一方でたくさんいるはずだ。そのようなエピソードはどうしても取り上げられる機会が少ないので、結果として「信念を貫くことで好転した事例」ばかりが広まることになる。それは決して良い状態とは言えないだろう。特に現代では、正義感からの行動が理不尽な逆上を引き起こし、結果的に多大な被害をもたらす事件も報道などでよく目にするから怖い。「信念」も、相手を見て発揮しなければならない時代というわけだ。
それでも、信念を貫くことでしか成し遂げられないこともあるし、誰もが信念を捨ててしまえば真っ当な社会は成り立たない。
でも、お前の信念は本物だと信じている。
私の信念は「本物」にはなりきれないかもしれないが、それでも、「信念を貫く側」に留まれるように努力したいと思っている。
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映画『ハクソー・リッジ』の内容紹介
デズモンドは、信心深いキリスト教徒の家に生まれ、「第六戒 汝、殺すなかれ」こそ最も大事な戒律だと教え込まれて育った。そんな彼は、「人を救う」ために家族の反対を押し切って入隊を決意する。最初から彼は「銃を持つことができない」と説明し、「良心的兵役拒否者」という立場で入隊が認められることになった。
早速デズモンドは訓練を開始するが、銃撃の訓練で問題が起こる。銃を持てという上官の命令を断ったのだ。銃を持てないことを伝えた上で入隊したはずのデズモンドに、上官は、「ここにいる以上は俺の命令に従え」というスタンスで対峙する。
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隊としても、デズモンドに無理やり銃を持たせられはしない。しかしそれでは隊全体の規律が乱れるし、命を預け合う者同士の信頼関係にも関わる。扱いの難しいデズモンドは除隊を勧められてしまうのだが、彼は、「人を殺すためではなく、人を救うために志願したのだ」と訴え続けた。決して諦めることなく、厳しい状況にも耐え続ける。
そんなデズモンドを評価する人物も中にはいた。そして様々な人たちの尽力のお陰もあって、ついにデズモンドは「武器を持たない衛生兵」として戦場に立つことを認められたのである。
場所はハクソー・リッジ。切り立った崖に吊るされた縄梯子を這い上がり、その頭頂部で激戦が繰り広げられた。デズモンドは信念を貫き、すぐ隣に「死」が迫る酸鼻を極める状況下でも、武器を持たずに駆け回ることを止めない。負傷者は止めどなく現れ、これ以上は無理だと米軍は撤退を余儀なくされるのだが……。
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映画『ハクソー・リッジ』の感想
物凄い映画だった。デズモンドの人間性も、戦場の描き方も凄いのだが、「戦争はこれほどまでに悲惨なのだ」と実感させるという意味でも非常に胸に刺さる映画だと思う。
この記事では、「デズモンドの最も凄まじい功績」については実は触れていないし、これ以降も触れるつもりはない。彼がいかに規格外の存在なのかは、是非映画を観て確かめてほしいと思う。本当に、「こんな人間いるのだろうか」「そんな振る舞いありえないだろ」とずっと思わされる鑑賞体験だった。
「正気なら、武器を持って戦え」
「なら正気じゃなくていい」
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「戦争」という状況下では、「何が正常なのか」という感覚は平時とまったく異なるので、どちらが正気なのか簡単には判断できない。しかし少なくとも、「仲間から『正気ではない』と判断されても構わない」という覚悟でデズモンドは戦場に立っている。彼が戦場で何をしたのかを知ると、その覚悟の凄まじさがさらに理解できるだろう。
ハクソー・リッジでのデズモンドの活躍が描かれるのは映画の後半だ。前半では、デズモンドはかなり酷い扱われ方がされる。「銃を持たない」と宣言する彼に、隊の者たちが容赦のない振る舞いをするのだ。彼らの言動を「正しい」と言いたくはないのだが、しかし一方で、彼らがデズモンドを除隊させようとした気持ちも分からないではない。
私自身はそのような環境に身を置いたことはないが、海難救助やエベレスト登頂など「自分の命を他人に預ける」状況においては、やはり信頼関係が重要になるだろう。「信念に基づいて銃は持たない」と主張する人間に命を預けられるかと言われるとなかなか難しい。上官も、「ここにいる者たち全員の命の問題だ」とデズモンドを説得しようとする。確かに言う通りだろう。乱暴な振る舞いはともかく、デズモンドを除隊させようとしたこと自体は誤りだとは思えない。
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さて、そんな彼らが、ハクソー・リッジの戦闘で、デズモンドを”待った”のである。具体的には書かないが、非常に素晴らしいシーンだったと思う。仲間を待たせてまでデズモンドが行っていたことは、米軍にとって意味を持つものではなかったが、デズモンドにとっては大事なことだったのだ。つまり、かつてデズモンドを除隊させようとした者たちは、デズモンドの信念が「本物」だと認め、「デズモンドがやりたいと考えていること」を行う時間を全員で許容したのである。
またこの映画は、戦闘シーンの臨場感が凄かった。実際の戦場を知っているわけではないが、「まるで戦場にいるかのような感覚」を何度も味わわされたのだ。自分はただ映画館で映像を観ているだけ、自分には銃弾は間違いなく飛んでこない、と頭では分かっていても、身体が恐怖を感じてしまうような映画だった。
画面越しでさえ恐ろしさを感じさせられるそんな戦場に、銃を持たずに立ち続けたというのだから、やはり常軌を逸していると感じる。とても信じられることではないし、デズモンドの凄さが改めて理解できるように思う。
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いつの世も、このような人物こそ真っ先に称賛されるべきだと思うし、多くの人の記憶に残ってほしいと感じた。
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