目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:モハマド・ラスロフ, 出演:ソヘイラ・ゴレスターニ, 出演:ミシャク・ザラ, 出演:マフサ・ロスタミ, 出演:セターレ・マレキ, 出演:ミシャク・ザラ
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この記事の3つの要点
「ヒジャブの付け方」を咎められ拘束された女性が死亡した実際の事件を背景に、市民デモが激しくなる中で混沌とする「家族」を描き出す物語 冒頭からしばらくは、「妻であり母であるナジメがおかしい」と思っていたのだが、次第にその印象は変わっていく 「ひと家族」という最小単位内での対立を描き出すことで、「イランという国家の縮図」をあぶり出す構成が見事
「パスポートを取り上げられていたモハマド・ラスロフ監督が徒歩でイランを脱出し、28日間掛けてカンヌ国際映画祭までたどり着いた」というエピソードも含め、とにかく衝撃的な内容である
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
マフサ・アミニの死がきっかけとなった実際の市民デモを背景にイランの現状を描き出す映画『聖なるイチジクの種』は、監督・役者・スタッフが人生を賭して生み出した凄まじい作品だ
これはちょっと凄まじい物語 だった。正直なところ、観る前はそこまで大きく期待して はいなかったのだが、実際にはちょっとビックリするぐらいの作品 だったなと思う。予告編では「自宅にあった銃が無くなった」ぐらいの情報しか出ていなかった ため(監督がどういう人なのかは知らなかったし、調べもしなかった)、「まさかこんな話になるとは」という感覚 がかなり強かったのである。
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実際に起こった市民デモを背景として組み込んだ物語
私はそもそも、「実際の出来事を扱っている」という事実さえも知らなかった 。本作で扱われている事件については、鑑賞中に何となく「そんなニュースを目にしたことがあるな」程度に思い出した のだが、「実際の出来事を扱っている」と判断できた理由は、「スマホで撮影したのだろう映像」が多数使われていた からである。もちろん、「そういう演出」という可能性もあるのだが、その後の展開なども踏まえつつ、「なるほど、あの事件が背景にあるのか」と認識した というわけだ。
それは、マフサ・アミニという女性が命を落とした事件 である。そして彼女の死に抗議する形で市民デモがあちこちで始まってい くことになったのだ。というわけで、まずはこの事件の背景 について説明しておこう。
本作『聖なるイチジクの種』の舞台は、イランの首都テヘラン である。イランはイスラム教の国 であり、作中で描かれている雰囲気からすると、イスラム教の中でも「コーランを厳守すべき」という圧力が強い国 なのだと思う。当然、「女性は外出時、ヒジャブを着用しなければならない」というルールについてもかなり厳格 で、不適切だと判断されると「道徳警察」に摘発 を受けてしまう。
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そんなイランで事件は起こった。2022年9月16日、ヒジャブの付け方の不備で道徳警察に拘束されたマフサ・アミニが、その後死亡した のだ。国は「心臓発作だった」と発表した が、彼女が警察に襲われているような姿を捉えた防犯カメラの映像 がネットで拡散しており、「仮に心臓発作で亡くなったのだとしても、その原因は警察による暴行だったはずだ」と考える人が増えていった のである。
そして、普段から国に対する不満を溜め込んできた市民が、彼女の死をきっかけに連帯し立ち上がった 。SNSで繋がる若い世代が中心となって抗議デモ を行い、「独裁者を倒せ!」「女性、命、自由」といったスローガンを多くの人が叫び始めた のである。
本作は、このような市民デモが起こっている中で展開される物語 であり、そして、そんな暴動の様子が様々なスマホ映像によって映し出されていく というわけだ。
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イランをどうにか抜け出した監督、イランからの出国が許可されない主演の2人
作中では、国営放送を家族で見るシーン が何度か映し出されるのだが、国営放送は当然この市民デモを「市民側が悪い」という形で取り上げていた 。デモに関わったと判断された者たちは問答無用で逮捕 され、それによって主人公イマンの仕事は殺人的に忙しくなっていく わけだが、その辺りの話はまた後でしよう。国としてはとにかく、市民デモを徹底的に弾圧する構え である。
さて、そんなイランにおいて、本作『聖なるイチジクの種』のような映画を製作して無事なはずがない 。監督のモハマド・ラスロフは、本作の公開以前の時点で既に、「イラン政府を批判した」という罪で禁錮8年とむち打ちの有罪判決が下っていた ようだ。その判決が確定した時点で本作の撮影は終了していたそうで、そのため彼は徒歩で国外へと脱出(ずっと以前にパスポートを没収されていたのだ)、28日間かけてカンヌ国際映画祭の地へと辿り着き、そこで喝采を浴びた という。そして、そのままドイツへの亡命を果たす ことができたそうである。
本当に、身の危険を顧みずに映画を作り続けている というわけだ。
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さらに、公式HPには次のような文章が掲載されていた 。これを読んだ上で本作を観ると、見え方がまた少し変わってくる んじゃないかと思う。
イスラーム共和国の諜報機関が私の映画製作について情報を得る前に、なんとかイランを脱出することができた俳優も多数います。けれども、今もイランには俳優や映画のエージェントがたくさん残っていて、諜報機関から圧力がかかっています。長い取り調べを受けたり、家族が呼び出されて脅されたりした人もいます。この映画に出演したことで、彼らは起訴され、出国を禁じられました。カメラマンの事務所は強制捜査に遭い、機材はすべて押収されました。音響技師がカナダへ出国することも妨害されました。諜報機関は映画クルーの取り調べの際、私にカンヌ国際映画祭からの撤退を促すよう要求しました。クルーに対し、映画のストーリーを認識しないまま私に操られてプロジェクトに参加させられた、と丸めこもうとしていたのです。
公式HPには他にも色々と書かれており、例えば、イマンとナジメを演じた役者は共に、本作とは関係なく元々イランからの出国が禁じられていた そうだ。イマンを演じた役者の場合は恐らく、モハマド・ラスロフ監督の過去作への出演が原因 ではないかと思う。また、ナジメを演じた女優は元々活動家としての一面も持っており、実刑判決を受けたこともある そうだ。スタッフも含め、皆相当の覚悟を持ってこの撮影に臨んだ のだろうと思う。本当に凄まじい話である。
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こういう事実を知った上で観ると、「本作のほとんどが、『室内』か『テヘランから離れた辺鄙な場所』で撮影されている」ことにも納得できる だろう。とてもじゃないが、「撮影許可」など得られるような状況ではなかったはず だからだ。市民デモの様子をスマホの映像で代用したのも、そうせざるを得なかったから だろう。
しかし本作は、そういう制約の存在を特に感じさせることのない構成 になっており、その辺りとても見事だっ たなと思う。そしてさらに、そんな厳しい状況に置かれてもなお「映画製作」を止めなかったその情熱や信念の強さみたいなものにも圧倒させられてしまった 。
映画『聖なるイチジクの種』の内容紹介
イマンは、20年間勤めた革命裁判所でようやく昇進の機会を得る 。それまではずっと、「被疑者を起訴するための証拠集め 」を行っており、「被疑者から恨みを買う可能性がある」ため、2人の娘にすら仕事内容を打ち明けられずにいた のだ。正直なところ、昇進後の調査官という立場も恨まれる存在であることに変わりはない のだが、調査官になれば3LDKの官舎に住める 。そこで妻ナジメの勧めもあり、このタイミングで大学生のレズワンと高校生のサナの2人に自身の仕事について話すことに決めた のだ。
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しかし慎重な母ナジメは2人に、「SNSへの投稿は禁止」「付き合う友人は選びなさい」と厳しく諭す 。政府に対して批判的な意見の多いイランでは、革命裁判所は「体制側」の存在として嫌われる ことが多い。そのため、少しでも隙を見せたらすぐに糾弾されかねない のである。「もしもの時のことを考えて、常に”清廉潔白”でいなければならない 」と口にする母親に対して、娘たちは顔をしかめてみせた 。
さて、念願だったはずの昇進を果たした イマンだったが、しかし彼はすぐに厳しい現実に直面させられる 。というのも、調書が5巻もある事件の被疑者をすぐに死刑で起訴しろと命じられた のだ。彼は直属の上司であるカデリに、「そんなこと出来るわけがない 」「これまで20年間真面目に仕事をしてきた。なのに、調書を読む時間もないまま起訴だなんて 」と拒絶する。しかしカデリは手元のメモに「盗聴されている 」と書き、イマンを食事に誘った。
カデリの話によると、ボスはイマンを嫌っており、本当はボスの直属の部下を昇進させたがっていたのだが、色んな状況があり、最終的には自分が推したイマンが調査官のポストに就くことになった のだそうだ。だからこそ、イマンにはミスは許されない 。ボスは常に、イマンを失脚させるネタを探している からだ。つまり、起訴状へのサインを拒絶したら、イマンもカデリも失墜する のである。ようやく広い官舎に移れ、娘たちも喜んでいる中、今の立場を失うなんて想像も出来ない 。そのためイマンは、信念を曲げざるを得なかった のだ。
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一方で、イマンの昇進と重なるようにして、テヘランでは市民デモが頻発していった 。テレビも盛んに、暴動の様子を伝えている。サナが通う高校は暴動のため休校 となり、そしてさらに、レズワンが通う大学では、構内で発生した暴動に巻き込まれる形で、レズワン唯一の親友であるサダフが顔に散弾銃を被弾、大怪我を負ってしまった のだ。
レズワンはサダフをとりあえず家に連れて帰ろうとした のだが(サダフが「病院に行ったら逮捕される 」と危惧していたため)、そこには1つ問題があった 。その少し前のこと、寮住まいのサダフを家に泊めた ことがある。翌日まで寮が閉鎖されるため行き場がなかったサダフの手助けになれば と思ったのだ。しかしそのことを、母ナジメは良く思わなかった 。夫がどんな反応をするのか分からなかった からだ。レズワンは「二度とこんなことはしない 」「父親が帰ってきたら寝室から出さない 」ことを約束することでどうにかサダフの宿泊を許可してもらった 。
そんなことがあったため、普通にはサダフを家に連れてはいけなかった のである。そのため、家にいたサナが機転を利かせて一旦母を家から遠ざけ、その隙にサダフを家に連れ込む ことが出来た。しかし、「親には連絡しないでほしい」と懇願するサダフ には、とりあえずの応急処置を施してあげるぐらいのこと しか出来ない。
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市民デモは日々激しさを増し 、娘2人がチェックするSNSには警察による横暴を記録した映像が多数アップ されている。一方で、国営放送は国に都合の良い情報しか伝えようとしない 。こうして、SNSでの情報を元にしてデモ側にシンパシーを感じている姉妹 と、夫の仕事上の立ち位置を踏まえ、さらに「そもそも夫・父親には敬意を払うべき」という感覚を持っているナジメ との間に溝が生まれ始めていく 。
さて、一家の大黒柱であるイマンは、暴動を機に仕事が殺人的に忙しくなっていった 。1日の逮捕者が200~300人 、起訴するかどうかの判断を1件2~3分 でこなさなければならないという、もの凄くハードな環境 に置かれていたのだ。そのため、彼は家族を顧みる余裕をどんどんと失っていき 、そして、そんなイマンに対してナジメは憤りを感じ始める 。元々は「家族の幸せ」のためになるはずだった昇進が、「家族をバラバラにするもの」になり始めている からだ。
そしてまさにそのような状況で、重大な”事件”が起こる 。昇進に伴ってイマンに貸与されていた拳銃が紛失してしまった のだ。イマンの記憶では家に持ち帰ったことは確か なのだが、どう探しても見つからない 。拳銃の紛失はそもそも懲役6ヶ月から3年の実刑 なのだが、それ以上に、昇進からわずか2週間での失態は信用を失墜させてしまう 。上司の責任 も追及されるだろう。だから、何が何でも探し出さなければならない 。そのためイマンは、妻と娘たちを疑いとんでもない行動に出る のだが……。
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初めは「ナジメがおかしい」のだとばかり思っていた
本作はもちろん、まず「現実の凄まじさ」みたいな部分に圧倒される物語 だと思う。市民デモの高まりや、イランという国家の運営のされ方など、様々な現実が入り交じることで混沌 としていく。一応、誰もが「正義」を実現しようと行動しているはず なのだが、その気持ちや行動が絶妙にすれ違っていくことでズレが積み重なり、最終的には巨大な溝になっていってしまうような恐ろしさ が、絶妙に描かれていたと思う。
しかし本作は決して、「圧倒的にヤバい現実を舞台にしている」という点だけに依存しているわけではない 。もしそうだとすれば、ドキュメンタリー映画の方がより一層観客を圧倒するはず だ(実際にはイランでは撮れないだろうが )。本作はむしろ「フィクションだからこその凄まじさ 」みたいなものに溢れていて、個人的にはそちらの方により強く惹きつけられた ように思う。
そしてその中心にいるのがナジメ である。
さて、映画が始まってからしばらくの間、私は「ナジメがちょっとおかしいんだ」と考えていた 。というわけで、しばらくその辺りの話をしていこうと思う。
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まずはやはり、レズワンの親友サダフに対する態度が気になった 。ナジメは、「寮が閉鎖しているからサダフには行き場がない」という事情を知った上でなお彼女を家から追い出そうと考える 。また、暴動後にサダフを匿っていることを知ったナジメは、自宅で出来る最低限の手当こそしてあげるものの、その後は彼女を自宅に留めず寮へと追い返してしまう 。
サダフが大学で被弾した際、レズワンもすぐ傍にいた 。だからレズワンは、「サダフは暴動に参加していたわけではなく、たまたま巻き込まれただけだ」ということを知っている 。しかし彼女がそう母親に訴えても、ナジメは「無実なら、大怪我を負わせるような捕まえ方はしないでしょ」と、まるで警察のやり方を擁護するかのような主張 をするのだ。
また、暴動の様子を伝えるテレビを観ている時にも価値観の違いが浮き彫りにされる 。SNSを見ている娘たちは、「テレビは警察の暴力を報じない」と国営放送による情報統制を訴える が、ナジメは「テレビが嘘をつくはずがない 」と言い返すのだ。日本でも、上の世代の人ほど「テレビ」を殊更に信じる傾向 があるように思うが、そういうのとは違う何かを感じ、少し違和感を覚えてしまった 。
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そもそもナジメは、夫イマンの主張には基本的に逆らわない し、娘2人には「私の父親は飲んだくれのギャンブル中毒だった。それと比べたらパパは本当に頑張っているんだから、もっと敬意を払いなさい」と説教する ほどである。娘2人はSNSを通じてデモ側にシンパシーを感じているため、体制側の”犬”みたいに革命裁判所に忠誠を誓っているのだろう父親に嫌悪感を抱く ようになるのだが、ナジメは父親に対する娘たちのそんな態度を改めさせようとする のだ。
本作の物語は一応、「家の中で銃が紛失した」という要素がメインになると思う のだが、展開がそこに至るまでにはとにかく時間が掛かる 。本作は167分もある大作 なのだが、私の体感では、物語の中盤ぐらい、大体80分ぐらいが経過した辺りでようやく「銃の紛失」の話になる印象 だった。そこに至るまでの間はとにかく、「ナジメと娘たち」、そして「ナジメとイマン」の関係性について、様々な観点から掘り下げていく という感じである。
そして、「銃の紛失」に至るまでに描かれるナジメの印象は、とにかく「こいつ、ヤバっ」だった 。もっと具体的に書けば、「夫を盲信している妻が、世界標準で見たら平均的な感覚を持っているはずの娘2人を、旧弊な価値観へと押し留めようとしている」みたいに見えていた というわけだ。
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しかし面白いことに、そんな印象は少しずつ変わっていく のである。
もしかしたら、ナジメこそが最も理性的だったと言えるかもしれない
さて、「ナジメはもしかしたらまともなのかもしれない」という感覚は、「銃の紛失」以前にも少しだけ感じていた 。それはこんな場面である。
ナジメが夫のイマンに、レズワンの親友サダフの話をしていた時 のこと。彼女は夫に、「サダフのことを助けてあげてほしい」と頼んでいた 。サダフは結局その後逮捕されてしまった ため、調査官である夫ならどうにか対処できるのではないか と考えての訴えである。まあ、やはりそれは難しそう だという話になるのだが、この時のナジメの言い方が印象的だった 。レズワンには「無実なら、大怪我を負わせるような捕まえ方はしないでしょ」と言っていた にも拘らず、夫に対しては「彼女は本当に無実なのよ」と主張していた のだ。
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この時私は「正反対のこと言ってるじゃん 」と感じた。ただ、夫の協力を得ようとしたら「助けるべき人物が無実であること」は絶対条件 だとも思うので、「そういうことも踏まえて『無実』と断言したのかもしれない 」みたいに私は受け取ったのだろう。だからそれ以上深く考えはしなかった のだと思う。
ただ、「銃の紛失」騒ぎが起こり 、そのせいでイマンがメチャクチャ追い詰められていく過程で、少しずつナジメのスタンスが理解できる ようになっていく。彼女は実は、「イカれているようにしか見えない振る舞い」を率先して行っていただけ なのだ。ただ、その理由についてはここでは詳しく触れない ことにしよう。映画のラスト付近で、ナジメが娘2人に「◯◯だから」とその真意を説明する場面 があるのだが、私はそれを聞いてようやくナジメの行動の意味が理解できるようになった のである。
つまりナジメは、常に「最善」を目指して努力し続けていた というわけだ。言動は奇妙に思える かもしれないが、それはそうせざるを得なかっただけ であり、実際には誰よりもまともで、誰よりも頭を使い、常に「最善」を追い求め続けていた のである。
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そしてそんな事実が明らかになることで、物語の全体像も少し違って見えてくる んじゃないかと思う。「誰がどのように『正義』を実現しようとしているのか? 」に関して、映画冒頭での印象と、映画後半に入ってからのそれとではかなり差が出てくる はずだ。
本作はそんな、ナジメを中心とした「家族の物語」がなかなかに狂気的 であり、そしてそれ故に興味深い作品に仕上がっている のではないかと感じさせられた。
私にはちょっと許容しがたかった、「神」と「法律」についての議論
さて、「正義」に関係する話 として本作では、「神」と「法律」に関する議論 が登場する。私はそもそも、イスラム教に限らず「宗教」全般を嫌悪しているため、イマンの主張にはまったく与することが出来ない が、議論としてはとても興味深かった 。
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私の理解では、イスラム教を国教に据えている国は、国家全体のルールも相当コーランに依存している印象 がある。例えば、イランの刑罰としてよく「むち打ち」が出てくる が、これも恐らく、コーランにそういう刑罰が記載されているから だと思う。となればコーランは、日本で言う「日本国憲法」に限らず「刑法・民法」にも強く影響する存在 と考えていいだろう。
つまりイランでは「コーラン」=「法律」 であり、だからこそ次のような会話も成立する のである。
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確かこの後、ナジメが「パパに逆らうんじゃない」みたいなことを言ってこの会話は終わった 。では、このやり取りから何が理解できるだろうか。まず3人とも、「『コーラン』=『法律』である」という共通認識は持っている と思う(娘2人はそのことを許容してはいない と思うが)。ただ、イマンは「『コーラン』は『神の教え』である」と考えていて、娘たちはそれを疑っている 。イマンは、「『法律』とは『コーラン』のことであり、『コーラン』は『神の教え』なのだから疑う余地などない 」と思っているわけだが、娘たちは「『コーラン』が『法律』なのは一旦許容するとしても、『コーラン』が『神の教え』である保証などないのだから、『コーラン』(つまり『法律』)が間違っている可能性だってある 」と考えているというわけだ。
先述した通り、私は「宗教」全般に嫌悪感を抱いている ので、当然、娘たちの感覚に賛同してしまう 。イマンの主張は、私にはまったく意味不明 である。しかし一方で、「信仰」がイマンのようなスタンスによって今日までの長きに渡り継続されてきたことも理解している つもりだ。私はイマンの価値観には賛同できないが、イマンのような思考の方が長い歴史を有している わけで、それを「不合理だから」で一刀両断するのも正しくないかもしれない 。
さて、別の場面でもイマンは「神の教え」について言及 していた。色んな事情が重なったこともあり、イマンとナジメがサナに対して、「髪を青くしてもいいし、爪を塗っても良い」と歩み寄る場面 がある。しかしその後2人になると、イマンはナジメに「サナは髪を青くしたいのか」と嘆息する のだ。ナジメは「時代が変わったよね」と夫を諌めようとする のだが、それに対してイマンはこんなことを口にする のである。
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私としては本当に嫌悪するしかない感覚 なのだが、恐らくこれが、イランという国家を統治する者たちのベースとなる考え方なのだろう とも思う。作中では「神権政治打倒!」というデモ隊によるシュプレヒコールの声が響く場面 があるのだが、この「神権政治」を私は、「コーランの記載に準じて国家運営を行う」という意味だと理解している 。そしてイランの若者たちは、そんな国家のあり方に対して不満を募らせている というわけだ。他の国のことを知るのが容易ではなかった時代ならともかく、SNSで世界中の情報に触れられる時代においては、特に若者がそういう不満を溜め込んでいくのは当然 だろう。
結局のところ、イランが抱える本質的な問題はここにある のだし、本作『聖なるイチジクの種』は、「父娘の対立」に重ねる形でそんな問題を炙り出している のだと思う。そしてそう捉えるなら、この4人家族は「イラン」という国の現状を象徴している とも言えるだろう。父親が「体制側」、そして娘2人は「体制批判側」 であり、そして、初めはそんな風にはとても見えないだろうが、そんな両者のバランスを絶妙に取ろうとしている「中間層」みたいな存在をナジメが担っている と考えると分かりやすいだろう。
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このように、4人家族というごく小さな単位における様々な対立が、「イランという国家が抱える混乱そのもの」を反映している 感じがあって、そのこともまた印象的な作品だった。「家族の物語」として捉えた場合、本作はあまりにも「狂気的」 なのだが、「実はイランという国家の現状を反映している」と捉えれば、その「狂気」の見え方も変わってくる というわけだ。
そんなわけで、現実をそのまま映し出すドキュメンタリー的な部分も興味深かったが、フィクション部分もとても面白い作品 だった。
映画『聖なるイチジクの種』のその他感想
最後まで観れば作品の構図が色々と分かるわけだが、リアルタイムに物語を追っている時には違和感を覚える部分が結構多かった ように思う。というか、本作のメインの描写であるはずの「銃の紛失」がなかなか描かれなかったり 、それ以降の展開も、「誰が銃を盗んだのか?」に焦点が当たるのかと思いきやそうではなかったり して、何となく予想を裏切る感じが面白い 。また、先程長々と書いた通り、「ナジメの印象がどんどん変わってく」みたいな部分も印象的 で、様々な要素が詰め込まれた魅力的な作品 だったなと思う。
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また本作では、ラストのラストで「ある人物が、銃を持ってある人物と対峙する」という展開 になる。このような場合、私は普段「撃つなよ!」と思いながら観ていることが多い ように思う。普通に考えれば、「撃たなければならないが撃ちたくはない」みたいな葛藤を描くことが物語的なセオリー だろうし、だとすれば、観ている側としてはやはり、「撃つなよ!」という感覚を抱くのが「製作側が望む正解」 であることが多いはずだ。
ただ本作の場合まったく逆で、私は「撃て!撃て!撃て!」と思いながら観ていた し、それは自分でもかなり意外だった 。とはいえ、本作のこのシーンにおいてはそういう見方が「正解」 であるように思うし、そうなるように上手く誘導されていたのだとしたら流石 だなとも思う。
さて最後に。本作のタイトルにもある「聖なるイチジク」について、本作冒頭でこんな説明が表示される (これは劇場でのメモが追いつかなかったので、ネットで調べて文面を拾った )。
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聖なるイチジクの木の一生は独特だ。種子は鳥の糞に混ざり、他の木に落ち、発芽すると地面に向けて根を伸ばす。そして宿主の木に枝を巻き付け、締め上げ、最後には独り立ちするのである。
https://numero.jp/cinema-news-20250215/p6
そもそも「聖なるイチジク」という名前の植物が存在するのかどうかよく分からない のだが(「聖なるイチジク」で調べると検索結果には本作に関する情報がズラッと並んでしまうため)、「イチジク」で調べると、「仏教やヒンドゥー教では『聖なる木』とされる」「エデンの園にあった果物で『原罪』のシンボル」などの話 が出てきた。色んな宗教において特別な意味を持つ果物 であるようだ。しかしざっくり調べた限りにおいては、イスラム教においてどんな意味を持つのかはよく分からなかった 。
また本作を観ても結局、何が「聖なるイチジク」であり、何が「種」なのか、私は理解できていない 。ただ、何となく「目を引くタイトルだな 」とは思うし、さらに「宿主の木に枝を巻き付け、締め上げ、最後には独り立ちする」という説明も本作の雰囲気に合っている感じ がして、タイトルとして秀逸 だった。そういう外枠の部分も含めとても良く出来た作品だったなと思う。
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【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
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核戦争ギリギリまで進んだ「キューバ危機」。その陰で、世界を救った民間人がいたことをご存知だろうか?実話を元にした映画『クーリエ:最高機密の運び屋』は、ごく普通のセールスマンでありながら、ソ連の膨大な機密情報を盗み出した男の信じがたい奮闘を描き出す
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アフガニスタンを追われた家族4人が、ヨーロッパまで5600kmの逃避行を3台のスマホで撮影した映画『ミッドナイト・トラベラー』は、「『難民の厳しい現実』を切り取った作品」ではない。「家族アルバム」のような「笑顔溢れる日々」が難民にもあるのだと想像させてくれる
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【衝撃】『殺人犯はそこにいる』が実話だとは。真犯人・ルパンを野放しにした警察・司法を信じられるか?
タイトルを伏せられた覆面本「文庫X」としても話題になった『殺人犯はそこにいる』。「北関東で起こったある事件の取材」が、「私たちが生きる社会の根底を揺るがす信じがたい事実」を焙り出すことになった衝撃の展開。まさか「司法が真犯人を野放しにする」なんてことが実際に起こるとは。大げさではなく、全国民必読の1冊だと思う
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【実話】「ホロコーストの映画」を観て改めて、「有事だから仕方ない」と言い訳しない人間でありたいと…
ノルウェーの警察が、自国在住のユダヤ人をまとめて船に乗せアウシュビッツへと送った衝撃の実話を元にした映画『ホロコーストの罪人』では、「自分はそんな愚かではない」と楽観してはいられない現実が映し出される。このような悲劇は、現在に至るまで幾度も起こっているのだ
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在日コリアン4世の監督が、北朝鮮脱北者への取材を元に作り上げた壮絶なアニメ映画『トゥルーノース』は、私たちがあまりに恐ろしい世界と地続きに生きていることを思い知らせてくれる。最低最悪の絶望を前に、人間はどれだけ悪虐になれてしまうのか、そしていかに優しさを発揮できるのか。
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【弾圧】香港デモの象徴的存在デニス・ホーの奮闘の歴史。注目の女性活動家は周庭だけじゃない:映画『…
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【民主主義】占領下の沖縄での衝撃の実話「サンマ裁判」で、魚売りのおばぁの訴えがアメリカをひっかき…
戦後の沖縄で、魚売りのおばぁが起こした「サンマ裁判」は、様々な人が絡む大きな流れを生み出し、最終的に沖縄返還のきっかけともなった。そんな「サンマ裁判」を描く映画『サンマデモクラシー』から、民主主義のあり方と、今も沖縄に残り続ける問題について考える
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【感想】映画『野火』は、戦争の”虚しさ”をリアルに映し出す、後世に受け継がれるべき作品だ
「戦争の悲惨さ」は様々な形で描かれ、受け継がれてきたが、「戦争の虚しさ」を知る機会はなかなかない。映画『野火』は、第二次世界大戦中のフィリピンを舞台に、「敵が存在しない戦場で”人間の形”を保つ困難さ」を描き出す、「虚しさ」だけで構成された作品だ
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【残念】日本の「難民受け入れ」の現実に衝撃。こんな「恥ずべき国」に生きているのだと絶望させられる…
日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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【驚愕】正義は、人間の尊厳を奪わずに貫かれるべきだ。独裁政権を打倒した韓国の民衆の奮闘を描く映画…
たった30年前の韓国で、これほど恐ろしい出来事が起こっていたとは。「正義の実現」のために苛烈な「スパイ狩り」を行う秘密警察の横暴をきっかけに民主化運動が激化し、独裁政権が打倒された史実を描く『1987、ある闘いの真実』から、「正義」について考える
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【勇敢】”報道”は被害者を生む。私たちも同罪だ。”批判”による”正義の実現”は正義だろうか?:『リチャ…
「爆弾事件の被害を最小限に食い止めた英雄」が、メディアの勇み足のせいで「爆弾事件の犯人」と報じられてしまった実話を元にした映画『リチャード・ジュエル』から、「他人を公然と批判する行為」の是非と、「再発防止という名の正義」のあり方について考える
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【権利】衝撃のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、「異質さを排除する社会」と「生きる権利」を問う
「ヤクザ」が排除された現在でも、「ヤクザが担ってきた機能」が不要になるわけじゃない。ではそれを、公権力が代替するのだろうか?実際の組事務所(東組清勇会)にカメラを持ち込むドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』が映し出す川口和秀・松山尚人・河野裕之の姿から、「基本的人権」のあり方について考えさせられた
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【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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【絶望】権力の濫用を止めるのは我々だ。映画『新聞記者』から「ソフトな独裁国家・日本」の今を知る
私個人は、「ビジョンの達成」のためなら「ソフトな独裁」を許容する。しかし今の日本は、そもそも「ビジョン」などなく、「ソフトな独裁状態」だけが続いていると感じた。映画『新聞記者』をベースに、私たちがどれだけ絶望的な国に生きているのかを理解する
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【正義】マイノリティはどう生き、どう扱われるべきかを描く映画。「ルールを守る」だけが正解か?:映…
社会的弱者が闘争の末に権利を勝ち取ってきた歴史を知った上で私は、闘わずとも権利が認められるべきだと思っている。そして、そういう社会でない以上、「正義のためにルールを破るしかない」状況もある。映画『パブリック』から、ルールと正義のバランスを考える
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【意外】東京裁判の真実を記録した映画。敗戦国での裁判が実に”フェア”に行われたことに驚いた:『東京…
歴史に詳しくない私は、「東京裁判では、戦勝国が理不尽な裁きを行ったのだろう」という漠然としたイメージを抱いていた。しかし、その印象はまったくの誤りだった。映画『東京裁判 4Kリマスター版』から東京裁判が、いかに公正に行われたのかを知る
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【勇敢】後悔しない生き方のために”間違い”を犯せるか?法に背いてでも正義を貫いた女性の生き様:映画…
国の諜報機関の職員でありながら、「イラク戦争を正当化する」という巨大な策略を知り、守秘義務違反をおかしてまで真実を明らかにしようとした実在の女性を描く映画『オフィシャル・シークレット』から、「法を守る」こと以上に重要な生き方の指針を学ぶ
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【情熱】「ルール」は守るため”だけ”に存在するのか?正義を実現するための「ルール」のあり方は?:映…
「ルールは守らなければならない」というのは大前提だが、常に例外は存在する。どれほど重度の自閉症患者でも断らない無許可の施設で、情熱を持って問題に対処する主人公を描く映画『スペシャルズ!』から、「ルールのあるべき姿」を考える
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【驚愕】「金正男の殺人犯」は”あなた”だったかも。「人気者になりたい女性」が陥った巧妙な罠:映画『…
金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
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【情熱】常識を疑え。人間の”狂気”こそが、想像し得ない偉業を成し遂げるための原動力だ:映画『博士と…
世界最高峰の辞書である『オックスフォード英語大辞典』は、「学位を持たない独学者」と「殺人犯」のタッグが生みだした。出会うはずのない2人の「狂人」が邂逅したことで成し遂げられた偉業と、「狂気」からしか「偉業」が生まれない現実を、映画『博士と狂人』から学ぶ
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【実話】正論を振りかざす人が”強い”社会は窮屈だ。映画『すばらしき世界』が描く「正解の曖昧さ」
「SNSなどでの炎上を回避する」という気持ちから「正論を言うに留めよう」という態度がナチュラルになりつつある社会には、全員が全員の首を締め付け合っているような窮屈さを感じてしまう。西川美和『すばらしき世界』から、善悪の境界の曖昧さを体感する
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【再生】ヤクザの現実を切り取る映画『ヤクザと家族』から、我々が生きる社会の”今”を知る
「ヤクザ」を排除するだけでは「アンダーグラウンドの世界」は無くならないし、恐らく状況はより悪化しただけのはずだ。映画『ヤクザと家族』から、「悪は徹底的に叩きのめす」「悪じゃなければ何をしてもいい」という社会の風潮について考える。
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【天才】『三島由紀夫vs東大全共闘』後に「伝説の討論」と呼ばれる天才のバトルを記録した驚異の映像
1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
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【絶望】子供を犯罪者にしないために。「異常者」で片付けられない、希望を見いだせない若者の現実:『…
2人を殺し、7人に重傷を負わせた金川真大に同情の余地はない。しかし、この事件を取材した記者も、私も、彼が殺人に至った背景・動機については理解できてしまう部分がある。『死刑のための殺人』をベースに、「どうしようもないつまらなさ」と共に生きる現代を知る
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【衝撃】森達也『A3』が指摘。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は社会を激変させた
「オウム真理教は特別だ、という理由で作られた”例外”が、いつの間にか社会の”前提”になっている」これが、森達也『A3』の主張の要点だ。異常な状態で続けられた麻原彰晃の裁判を傍聴したことをきっかけに、社会の”異様な”変質の正体を理解する。
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【加虐】メディアの役割とは?森達也『A』が提示した「事実を報じる限界」と「思考停止社会」
オウム真理教の内部に潜入した、森達也のドキュメンタリー映画『A』は衝撃を与えた。しかしそれは、宗教団体ではなく、社会の方を切り取った作品だった。思考することを止めた社会の加虐性と、客観的な事実など切り取れないという現実について書く
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【衝撃】壮絶な戦争映画。最愛の娘を「産んで後悔している」と呟く母らは、正義のために戦場に留まる:…
こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
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三権分立の一翼を担う裁判所のことを、私たちはよく知らない。元エリート裁判官・瀬木比呂志と事件記者・清水潔の対談本『裁判所の正体』をベースに、「裁判所による統制」と「権力との癒着」について書く。「中世レベル」とさえ言われる日本の司法制度の現実は、「裁判になんか関わることない」という人も無視できないはずだ
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