目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- ISISの戦闘員と結婚した娘の子どもを取り戻せないのは、スウェーデン政府が反対しているから?
- 40ヶ国から4万人とも言われる若者がISISに自ら参加した現実は、やはりイカれていると私は思う
- 「イスラム教徒」全体の印象を下げかねない「娘の母親」の凄まじい言動
英断を下せないでいる各国政府のせいで、今も多くの孤児たちが劣悪な難民キャンプで危機的状況に置かれている
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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彼の娘アマンダは外国人と結婚し、その後スウェーデンを離れ他国で暮らし始める。彼女はスウェーデンで3人、そして別の国で4人、計7人の子どもを産んだのだが、その後アマンダと夫は死亡、7人の子どもたちは過酷な環境に留め置かれることになった。その事実はパトリシオの知るところとなり、彼は孫たちの救出に動き出す。パトリシオは、7人の孫がどこにいるのかを突き止め、さらに自身がその7人と血縁があることを証明する書類も用意した。しかし、孫は帰って来ない。パトリシオは自ら孫がいる場所の近くへと出向き、支援団体等を通じて孫を返してくれるよう日々主張しているのだが、未だ会うことさえままならないのである。
これが、作中でパトリシオが置かれていた状況だ。普通なら理解不能だろう。血縁があることを示す書類まで揃っているのに、孫が引き渡されないどころか、会うことさえ叶わないのだから。そしてその最大の理由が「ISIS」なのだが、実はアマンダは、「ISISに自ら参加した人物」なのである。ここは重要なポイントなので念を押しておくが、決して「結婚した夫が、後からISISの戦士だと判明した」みたいなことではない。アマンダはISISのことを十分理解した上で自ら参加を決め、ISISの戦闘員である夫と結婚もしたのである。
ISISについては説明の必要はないと思うが、一応しておこう。「イスラム国」とも表記される集団で、イスラム国家の樹立を掲げて武力行使も辞さない活動を行うイスラム過激派である。一時期、「ISISの理念に共感した若者が世界中からISISに参加している」と大きな問題となった。アマンダもそのような1人だったというわけだ。
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そして、「ISISに自ら参加した人々」の扱いに、世界は今も揺れている。パトリシオはスウェーデン人なので、本作ではスウェーデン政府の対応について触れられているのだが、スウェーデン政府は「ISISに自ら参加したアマンダの子ども」を「スウェーデン人」として救助すべきか、映画公開時点ではまだ方針を決めていなかった。そこには恐らく、国内世論も関係しているのだろう。スウェーデン国内では、「ISISの子どもをスウェーデンに連れて帰るな」という論調が強いそうだ。
そしてもちろん、スウェーデンだけではなく世界各国がこの問題を抱えている。映画の最後には、「今も多くの子どもたちが、各国政府の”英断”を待っている」と字幕で表記された。親の祖国の政府が救助を決断しないために、今も劣悪な環境に置かれている子どもたちがたくさんいるというわけだ。
そう、本質的な問題は当然「ISIS」にあるのだが、「孫の救出」という観点だけで見ると、最大の障壁は実は「スウェーデン政府」の方なのである。
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「娘がISISに自ら参加した」という事実を踏まえた上で、改めてパトリシオが置かれた状況について説明する
それでは、パトリシオとアマンダの関係も踏まえながら、パトリシオが置かれた状況について改めて説明したいと思う。
アマンダはある日突然、母親と共にイスラム教に改宗したのだそうだ。この時のことについてパトリシオは、「娘がどんな宗教を信仰しようが、娘が幸せならそれでいいと考えていた」と語っていた。これは、「娘がISISに入るのをどこかで止められなかったのだろうか」と後悔する流れの中で口にしていたものだ。
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イスラム教に改宗したアマンダは、どんどんイスラム教の考え方に染まっていったのだろう。やがて彼女は聖戦士主義者と結婚した。そして父親には内緒で、3人の子どもを連れてシリアへ向かい、そのままISISに入ったのである。
しかし、ISISに参加して以降も、娘からの連絡は続いた。作中には、パトリシオが娘から届いたメールを読み上げるシーンが度々ある。「パパのこと、愛してる」「反対されると思ったから言えなかった」「『私が悪いことをしている』とは、どうか思わないでほしい」など、「父親のことを愛してはいるが、自身の信念を曲げられはしない」という決意が随所に見え隠れする文面だ。そしてそんなメッセージと共にアマンダは、子どもたちの写真や動画もパトリシオに送っていた。恐らくこの写真も、「孫との関係」を証明する資料の1つになったのではないかと思う。
その後夫妻は戦闘中に死亡し、親を喪った子どもたちはアルホル難民キャンプに送られた。この時点で7人の孫たちは、1歳から8歳という年齢である。9000人が収容可能な広いキャンプなのだが、そこには孤児ばかりが8万人も収容されており、特に飲み水とトイレが圧倒的に足りていない。また死の間際、アマンダから「食料が足りない」と連絡がきており、孫たちは栄養失調状態にも陥っていた。一刻も早く助け出さなければならない。
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しかし、ここで立ちはだかるのがスウェーデン政府である。スウェーデンに限る話ではないが、とにかく各国とも「自国からISISに参加した者」の処遇に頭を悩ませていた。作中では、確かアメリカだったと思うが、各国に向けて「自国からISISに参加した者を自国の法廷で裁くべきだ」と主張するニュース映像が使われている。要するに「罰を与えるべきだ」という意味だろう。またスウェーデンの議員の中には、「ISISに参加した者の市民権を剥奪すれば、子どもたちの問題もスウェーデンとは関係なくなる」と主張する者もいた。こちらは「関わりたくない」という意思表示である。対応に苦慮している様が見て取れるだろう。
もちろんそこには、「国民からの反発」という難しい問題がある。パトリシオは孫の救出に対する支援を得たいという考えからメディアにも出演するのだが、ネット上の反応は厳しかった。パトリシオに批判的な意見も多く、「ISISの子どもたちと同じ幼稚園には通わせたくない」という心無い書き込みもあったくらいだ。私の感覚では、「ISISに参加した当人はともかく、子どもは関係ないだろう」と思うのだが、そう簡単には割り切れないということなのだろう。
パトリシオは、このような状況に置かれていたというわけだ。
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パトリシオは、娘が命を落とした直後から精力的に動き始めた。しかし状況は芳しくない。まずは赤十字やセーブ・ザ・チルドレンなど、思いつく限りあらゆる支援団体に連絡をしたのだが、助けを得ることは出来なかった。また同時並行で政府にも相談するのだが、「複雑すぎて協力出来ない」という反応が返ってくるばかり。事態を打開する方法がなかなか見つからなかったのである。
そんな中、ある人権派弁護士が協力を申し出てくれ、まずは孫たちの生存の確認が取れた。最悪の状況は回避できたと言える。しかし、やはり「救助し自国へ連れ帰る」のは容易ではない。様々な状況に接する中で、パトリシオは次第に、「スウェーデン政府を動かすしかない」という現実を理解するようになっていく。
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というのも、交渉相手であるクルド人自治政府が「スウェーデン政府との合意が必要」と主張しているからだ。
確かテレビから流れてくる音声だったと思うのだが、「難民解放前に、合意の適用範囲を拡大したいのだろう」みたいな字幕が表示された。この点について詳しく説明はされなかったので、具体的にはよく分からない。ただ私は、「クルド人自治政府は『難民』を何らかの交渉カードとして捉えており、各国政府から何らかの譲歩を引き出せない限り『難民』の解放に応じるつもりはない」という意味ではないかと受け取った。そうだとすれば、自治政府が「政府との合意」を求めてくるのは当然に思えるし、「パトリシオが何も出来ない膠着状態に置かれていた」という事情も理解できるように思う。
そう、本作『”敵”の子どもたち』は凄まじいことに、「何も出来ないパトリシオをひたすら映し出す作品」なのである。なかなかそんなドキュメンタリー映画は存在しないだろう。
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彼は元々スウェーデン国内で様々な活動を行っていた。しかし、やはり居ても立ってもいられなかったのだろう、少しでも孫の近くにいようとシリアとの国境付近にあるイラクのアルビルに赴き、そこで出来る限りのことをやろうと決断する。しかし結局のところ、どこにいたって変わりはしなかった。スウェーデン政府から許可が下りない限り、パトリシオは何も出来ないからだ。
「世界中の若者がISISに参加している」という問題が報じられた時、私はここまでの事態を想定できていなかった。考えてみれば容易に想像出来たようにも思うが、やはりISISを遠い異国の問題と捉えていたのだと思う。以前よりもはISISのニュースを見聞きする機会は減ったが、それでも、「現在進行形で各国がこのような難問を抱えている」のだと改めて理解することが出来た。
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本作によると、世界40ヶ国から4万人がISISに参加したと推定されているらしい。凄まじい人数だと思う。私は、「若者がISIS入りしている」という報道を目にするようになった頃から、「何をどう判断したら『ISISに入ろう』などという考えに至るのか」がまったく理解できなかった。私は別に「イスラム教」を否定しているわけではない。イスラム教を信仰するのは全然いいが、それと「ISIS入り」はまったく話が別だろう。
アマンダがパトリシオに送ったメールの文面からすると、「無理やりISISに入れられた」みたいなことではないようである。自らの意思でISISへの参加を決めたということなのだろう。そして、だからこそ恐ろしいと感じられる。この問題が報じられた当時から、「ISISはSNSの戦略が上手い」と指摘されていたが、逆に言えば「SNSの使い方が上手かったら、ヤバい組織にもあっさり入っちゃうわけ?」とも思えてしまう。そんなことでいいのだろうか?
世の中の情報量が増えすぎたため(「我々が1日に触れる情報量は、平安時代の人々が一生の間に触れる情報量と同じ」みたいな話を読んだことがある)、「何らかの基準」によって情報をふるいにかけなければならなくなっている。そして、その「基準」をどう設定するかによって「見えている世界」が全然違ってくるというわけだ。情報化社会を生きる私たちにとってこれは避けがたい現実ではあるのだが、しかしそれにしたって、「西洋圏を含む40ヶ国から4万人がISISに参加した」という事実はやはり狂っていると思う。
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さて、よく分からないのが日本の状況である。その「40ヶ国」に、日本は含まれていないのだろうか? そんなことはないと思うのだが、少なくとも私は、日本国内の報道で「パトリシオのような状況に置かれている人」の存在に触れたことはない。ちなみに、アルホル難民キャンプにいる8万人の孤児の内、スウェーデン人の子どもは80人ほどいると推定されているらしく、そのためスウェーデンでは、パトリシオが行動を起こす以前からこの問題を取り上げていたそうだ。しかし、パトリシオが孫の救出に動き始めたことで一層大きく取り上げられるようになったのだという。スウェーデン人の子どもが80人もいるなら、日本人の子どもだってそれなりにいてもおかしくないように思うのだが、どうなのだろうか。
さて、それではここで、この状況に対する私の考えを明らかにしておこう。基本的には、「当人はともかく、子どもたちは救助されるべきだ」と考えている。
「ISISに参加した当人」に対する処遇は、正直何でもいいと個人的には思っている。恐らく、「信教の自由」と「テロへの関与」をどう評価するかによって対応が分かれるだろう。私は、当人に対する処遇が厳しいものになっても、それは仕方ないと考えている。「今後同じような事態を引き起こさない」という意思を持って厳正な対処をするというのならそれは真っ当だと感じるし、逆に「ISIS入りしたか否かではなく、ISIS内でどのような活動を行っていたかで処遇を変える」というならそれでもいいと思う。当人に対する処遇には、正直私は関心がない。
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ただ、子どもたちは別だろう。彼らはまったく何も悪くないのだ。作中でもパトリシオは、「ISISで闘った2人の話ではないんです。何の罪もない7人の子どもたちの話なんです」と口にしているのだが、本当にその通りだと思う。もちろん、「『ISISの子どもたち』を受け入れたくない」という感情的な拒絶感が理解できないわけではない。しかし、やはりここはきちんと理性的に判断し、「子どもに罪はない」と考えて受け入れるべきではないかと思っている。
さて、ここまで私は、「本作がどのような帰結を迎えるのか」に触れないように記事を書いてきた。しかしここからは、後半以降の展開にも触れたいと思う。なので、「これ以上内容を知りたくない」という方は、ここで記事を読むのを止めてほしい。個人的には、結末を知った上で本作を観ても衝撃的であることに変わりはないと思うが、念のため忠告しておくことにする。
喜ばしいことに、パトリシオは無事に7人の孫を救出し、本国スウェーデンへと連れて帰ることが出来た。しかし、これで終わりではない。むしろ「新たな闘いの始まり」と言っていいだろう。パトリシオ自身も、「彼らを育てるのは、救出すること以上に困難だろう」と口にしていた。どういうことか想像できるだろうか?
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孫たちは、年齢によって期間は様々だが、皆一定期間ISISで生活をしていた。そのため、「ISISの当たり前」が生活の中に染み付いているのである。例えば、ある子は注射の際、「アッラーは偉大なり」とアラビア語で叫んでいた。このような振る舞いはやはり、スウェーデン国内で色々な衝突を招き得るだろう。また、長男は父親の死を直接目撃したというし、シリアでは全員栄養失調に陥るほど過酷な環境に置かれてもいた。
だから、環境がスウェーデンに移ったところで、すぐに何かが大きく変わるわけではない。そんな子どもたちを育てるのは相当に大変だろうが、それでもパトリシオは「愛を注ぎ続ける」と決意を語っていた。とは言うものの、法律上パトリシオには養育権は存在しない。そのため、7人の孫たちはそれぞれ別の里親へと振り分けられ、パトリシオは彼らを定期的に訪ねる形で関わるという形になっているそうである。
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さて、本作を観ていて私が最も驚かされたのは、孫たちを救い出した後に出てきた「アマンダの母親」である。もちろん「パトリシオの妻(なのか元妻なのか)」なのだが、作中でパトリシオは一度もそのような表現を使っていない。最後まで「アマンダの母親」あるいは「子どもたちの祖母」という言い方をしていたのである。さて、冒頭でも書いた通り、アマンダと共に母親もイスラム教に改宗した。彼女はISISとは関わらなかったそうだが、しかし、今も熱心にイスラム教を信仰していることに変わりはない。
パトリシオが孫たちを救助したことはマスコミでも大いに取り上げられたので、彼女の耳にもその事実が届いたのだろう。恐らくパトリシオから伝えたわけではないと思うのだが、ある日パトリシオの元に彼女から連絡が来たのである。パトリシオは当然、孫たちと会わせることに不安を抱いていた。しかし、彼女が少しの間孫たちと一緒に暮らしていたことも知っており、「孫たちには彼女が必要だ」と判断。滞在しているイラクのホテルに彼女を呼ぶ決断をした。そんなわけで彼女はしばらくの間、パトリシオと共にホテルの一室で孫たちの世話に関わることになったのである。
ただ、パトリシオと孫たちを支援する団体は、この事態に懸念を示す。「彼女の存在は子どもたちにとって脅威になる」と忠告したのである。もちろんパトリシオもそのことは重々承知していた。何せ彼女は、今もイスラム教徒なのである。「イスラム教徒=危険な人物」という捉え方は欧米諸国の偏見なわけだが、しかしそのような偏見が残っていることもまた事実だ。だから、どれだけ「ISISとは無関係」と訴えたところで、イスラム教徒である彼女の存在はマスコミの格好の獲物となるだろうし、そのためパトリシオも当初から、「いずれ彼女はこの部屋を去らなければならない」と考えていた。しかし、パトリシオがその考えを彼女に伝えると口論が始まってしまう。彼女は、「自分が子どもたちの世話から排除されることに納得できない」と考えているのである。
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まあ、その主張はまだ理解できるだろう。血の繋がった親族であることは確かだし、彼女も彼女なりに7人の孫たちの安否を心配してもいたからだ。「そうは言っても、イスラム教徒である自身が世間からどう受け取られるのかちょっとは考えろよ」と私は感じてしまうのだが、それでも、「家族として、孫たちと関わりたい」という気持ちは理解したいと思う。
しかし彼女は、「さすがにそれは許容できない」と感じさせるような行動を起こすのだ。
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最初に驚かされたのは、祖母のスマホに入っていた「イスラム教のお祈り」の音声を、孫の1人が自らセレクトして再生した場面である。この時パトリシオは、「絶対にダメだ」と孫を止めた。ただでさえ彼らは世論の厳しい目にさらされているのだ。信仰の自由は当然あるわけだが、彼らがスウェーデンに戻り平穏に暮らしていく上でイスラム教とは距離を取る必要がある。パトリシオは当然そのように判断しているし、だからこそ「絶対にダメだ」と制止したわけだ。
しかしパトリシオのこの行動を、アマンダの母親が非難した。「私じゃなくて、子どもが再生したんだ」と孫の意思を尊重するように要求し、さらに、「この子たちはムスリムよ」と「イスラム教徒としてのアイデンティティ」を失わせまいとする意思を明確に示すのである。
私はこの行動に驚かされてしまった。確かに、イスラム教徒として孫にイスラム教に親しんでほしい気持ちを持つことは当然だろう。けれど、もはやそういう次元の問題ではない。最大の問題は「孫たちがスウェーデンで受け入れられるか否か」であり、そしてパトリシオの元に批判の声が届いている以上、良かれ悪しかれ孫たちは「イスラム教」から遠ざからざるを得ないのだ。これは最低限の認識と言っていいだろう。
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ただ、百歩譲ってこの行動も許容するとしてみよう。正直、一般的な日本人としては「信仰」のことはイマイチ理解しにくい部分があるし、「親族に宗教的な結びつきを求める」みたいなことは、「信仰」が日常に根付いた土地では当然の振る舞いかもしれないからだ。
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さすがにこの発言はアウトだと思う。もちろん、彼女がそのように認識していること自体は別に良い。頭の中で何を考えようと自由だ。しかしその認識をパトリシオにも強要するのは許容できないし、まったく意味が分からない。さすがにちょっと驚愕させられてしまった。
彼女がもう少し節度を持ち、「イスラム教徒としてどのように見られているのか」に自覚的であれば、ほとんど可能性はなかったにせよ、「孫たちと関わり続ける未来」もあり得たかもしれない。しかし彼女は、その無神経な言動により、自らその可能性を潰してしまったのである。私には本当にまったく理解できない言動だった。
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さらに、彼女の振る舞いは彼女自身にマイナスをもたらしただけではなく、「イスラム教徒」全体の印象を悪化させたはずだと思う。私はそもそも、キリスト教も含め「宗教全般」にあまり良い印象を抱けないのだが、まあその話はとりあえずここでは置いておこう。一般的にはどうしても、9.11やISISのイメージと直結してしまうこともあり、「イスラム教」は良くないイメージで見られてしまうことが多いはずだ。しかも、本作で映し出される現実は各国政府が抱えている問題でもあり、注目度は非常に高いだろうと思う。そういう状況の中で、イスラム教徒だと表明している彼女がこのような振る舞いをしてしまえば、「イスラム教」に否応なしに付きまとってしまう悪い印象が一層強化されることは明らかと言えるだろう。
それもあって、どんな状況にも冷静に対処するパトリシオがとても印象的だった。もちろん「パトリシオを描く映画」なのだから、パトリシオが取り乱したりしているシーンはカットしているのかもしれないが、なんとなくそんなことはないように思える。というか、あくまでも本作を観た限りの印象ではあるが、このような冷静さを保っていたからこそ、”奇跡的に”孫を取り戻すことが出来たとさえ言えるかもしれない。
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最後に
本当にあまりにも凄まじい現実が描かれる作品で、そのことをまったく知らなかった自分にも驚かされてしまった。本作で扱われる問題は、まさに現在進行形だ。各国政府がどのような決断をしたのか(あるいは、していないのか)は分からないが、手をこまねいている内に、難民キャンプでは多くの子どもたちが命を落としているのである。
そんな現実から目を背けていいはずがないだろう。
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