目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:逢坂 冬馬
¥1,881 (2024/02/04 19:14時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「戦場」が人間を「怪物」に変えてしまう現実と、「戦場」を離れてもなお「人間」に戻れるわけではないという不条理
- 「生きるにせよ死ぬにせよ、そこに『明確な理由』が存在する」という事実に、ある種の羨ましさを感じてしまう
- 「『すべての選択肢が不正解』である理不尽な世界で何を選び取るのか」という決断に、個々の人間性が浮き彫りにされる
ジェンダーの問題も絶妙に入れ込みながら、異次元の世界における葛藤をリアルに描く、若き俊英による傑作
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とんでもない作品だった。「デビュー作の時点で、小説家としてあまりにも凄まじい」と感じさせる作家は、私が読んできた中でも何人かいるが、本書『同志少女よ、敵を撃て』もそんな1作である。「デビュー作にしては凄い」のではなく、「既にデビュー作の時点で、小説家として凄まじい」のだ。4000冊近くの本を読んできた私も、久々に度肝を抜かれてしまった。
そもそも扱われているテーマが「独ソ戦」である。著者の逢坂冬馬は1985年生まれで、私の2歳年下だ。当然、1941年から1945年に掛けての独ソ戦の記憶があるはずもない。そんな若手作家が、「戦争の緊迫感」「不可能とも思える作戦・戦術の遂行」「狙撃手としての心得」などについて、「とんでもなくリアリティがある」と感じさせる作品を紡ぎ出しているのだ。正直、ベテランの作家でも、ここまでの世界観を作り出すのは相当難しいのではないかと思う。
また本作では、実際に当時ソ連に存在したらしい「女性狙撃兵」が描かれる。登場人物の1人で、確認戦果309人という他の追随を許さない戦績を持つリュドミラ・パヴリチェンコは、巻末の参考文献の書名等から判断するに、実在した人物であるようだ。また作中には、「ソ連には女性狙撃兵が存在した」という事実を示す、様々な書籍からの引用が時折挿入されている。
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戦時中のことなのだから機密事項も多かっただろうし、「女性狙撃兵の育成」について現時点でどこまで明らかになっているのかは分からない。恐らく、まったく資料が存在しないなんてことは無いだろう。ただそうだとしても、女性狙撃兵たちの「訓練の日々や訓練外の日常」「抱き続ける葛藤や苦労」などをリアルに描き出すことはかなり困難ではないかと思う。
そのような凄まじく難しいテーマを扱いながら「とんでもなくリアルだ」とも感じさせる物語をデビュー作で書き上げた著者には、やはり喝采の気持ちしかないし、これからもその圧倒的な才能を駆使して面白い物語を紡いでいってほしいと思う。
「戦場」は、人間を「怪物」に変えてしまう
物語は、「否応なしに人生を破壊尽くされたセラフィマが、土壇場で女性狙撃兵を育成する訓練校の教官イリーナに命だけは救われ、そのまま強制的に女性狙撃兵としての人生を歩まされる」という形で進んでいく。当然と言えば当然だろうが、自ら望んで女性狙撃兵になろうと考えた者などいない。
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戦場は、過酷だ。
忘れるな。お前たちが泣くことが出来るのは、今日だけだ。
仲間の死を経験した者たちに、上官がこのように告げる場面がある。セラフィマはこの言葉を耳にした時、その正確な意味を理解できていなかった。単に、「次からは、甘えが許されなくなる」というぐらいの意味に受け取っていたのだ。
しかし、狙撃兵として実績を積み上げ、その圧倒的な実力から小隊が「魔女」と呼ばれるようになって初めて、彼女はようやく正しい意味を理解出来るようになった。
しかし実際は違った。今日を最後に、泣けないようになる。
要するに、「自分は『怪物』になってしまった」と自覚させられたのである。
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自分が怪物に近づいてゆくという実感が確かにあった。
しかし、怪物でなければこの戦いを生き延びることは出来ないのだ。
楽しむな、とイリーナは言った。自分は人殺しを楽しんでいた。
女性たちだけではなく、戦場に立つ男たちもまた、次のように考える。
イワン(※ロシア兵を意味するドイツ側の俗語)という怪物と戦うには、自らも怪物にならねばならない。
それって、指揮官が悪魔だったからじゃない……この戦争には、人間を悪魔にしてしまうような性質があるんだ。
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多くの者たちが、「戦場にいる自分は『怪物』になってしまっている」という自覚を持ちながら闘いを続けているのだ。
一方で、当然だろうが、それを否定したい気持ちを強く抱く者もいる。
つまり、誰かがそれを殺す。殺す必要がある。誰が、いつ、どうやって殺したかなんて、誰も気にしない。……だから、私たちが殺したことにはならない。
自分たちが銃における引き金であって射手ではないことを教え、彼が敵はもちろん、NKVDやパルチザンを迷いなく撃てるように指南してやった。
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自分は重要な任務を担っている。誰かがやらなければならないことだ。それをたまたま自分がやっているだけ。だから自分は決して「怪物」などではない。多くがそのように考えるのだが、しかし、「そんな風に言い聞かせなければ自分自身を保てない」という自覚こそが、既に「怪物」の証拠であるようにも感じられる。何とも凄まじい環境だ。
そして、そんな風に「怪物ではない」と思い込みたがっている者たちさえも、思いがけない瞬間に自身の「怪物」を自覚させられてしまう。それは、セラフィマが記者からインタビューを受けるシーンにも現れる。
「ああ、最後に一つだけ聞かせて下さい」
振り向いて首を傾げる。
「撃った敵の顔を、夢に見ることがありますか?」
それは、国内の記者の問いとしては異質なものだった。
職責から離れた問い、個人に属する質問のようでもあった。
英雄にまとわりついた虚構の皮膜をめくり、皮膚に触れようとするような問い。
「一度もありませんね」
セラフィマが直截に答えると、記者は挨拶とともに落胆の顔を浮かべた。
真の姿に迫ることはできなかった、と考えたようだった。
ちがうんだよ、とセラフィマは思う。
私は本当に一度も、そんなことで苦しんではいないんだ。
「他人の死」に鈍感だという事実を、「戦場に立たない者」に自覚させられた瞬間だ。このように彼女たちは、「『怪物』である自分」に葛藤しながら戦場を、そして日常を生きていくことになる。
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狙撃兵は、「『戦場』を離れれば『人間』に戻れる」わけではない
「怪物」になるのを避けたいのであれば、「戦場」から離れるしかない。しかし難しいのは、「『戦場』から離れれば『怪物』にならずに済むが、決して『人間』に戻れるわけではない」ということだろう。この点にこそ、狙撃兵の特異さが存在すると言える。「狙撃兵が『戦場』を離脱した」という事実は、また違った意味を持つのだ。
例えば、凄腕の女性狙撃兵2人の会話が、それを示唆している。
共通することに気付いた。
彼女ら二人はともに死ぬことなく狙撃兵という立場から降りた。
二人は生きながらえたまま、撃ちあい、殺し合う戦場の一線から退いたことを運が悪かったと形容し、それを前提として会話していた。
背筋が凍る思いがしたとき、リュドミラが微笑んだ。
「ま、これが狙撃兵の、言ってみれば生き方だ」
あるいは、ある者がイリーナに、こんな問いを投げかける場面もある。
イリーナ、戦場で死ぬつもりがないのなら、君の戦争はいつ終わる。
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これらはすべて、「狙撃兵は戦場で死ぬものだ」という認識が前提になっていると言えるだろう。少なくとも、歴戦の強者と言っていい狙撃兵はそのように考えているのである。
狙撃兵というのは、ほとんど戦場でしか役に立たない能力を研ぎ澄ましていくのだから、次第に「戦場にいること」そのものが「生きる理由」になっていく。しかしそれは、とても脆い理由でもあると言える。がん細胞が自身の宿主の命を奪うことで自らの居場所を失ってしまうように、狙撃兵も「戦場」を失えばそのまま「生きる理由」を失ってしまうことになるからだ。そしてだからこそ、狙撃兵にとって「戦場」は「死を迎える場所」という認識になるのだろう。「『戦場』が無くなってしまう前に死ななければならない」というような、実に歪んだ思考に支配されていくのだと思う。
あまりにも異常で狂気的であり、理解の及ばない世界と言えるだろう。
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そして、そんな矛盾だらけの世界を生きざるを得ないからこそ、セラフィマたち個々の生き様が印象的な形で描かれることにもなる。黒一色の世界に微かな灯りが転々としているような、そんな仄かな希望が感じられるのだ。「『地獄』みたいな、誰もが『怪物』にならざるを得ないような世界の中でも、人間は『人間らしさ』を手放さずに生きていけるのかもしれない」と思わせる、「希望」と呼んでいいのか悩むほどの微かな光が映し出されていくのである。
セラフィマが戦争から学び取ったことは、八百メートル向こうの敵を撃つ技術でも、戦場であらわになる究極の心理でも、拷問の耐え方でも、敵との駆け引きでもない。
命の意味だった。
失った命は元に戻ることはなく、代わりになる命もまた存在しない。
学んだことがあるならば、ただこの率直な事実、それだけを学んだ。
そしてこのような彼女の感覚には、「狙撃兵になる以前の世界の酷さ」も含まれていると考えていいだろうと思う。というのも、「そんな過酷な環境に身を置かなければ『命の意味』を理解できないほど、人間があっさりと死んでいく日常を生きていた」と言えるからだ。
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あらゆる意味で「異常」でしかない世界なのである。
誤った考えだろうが、「生きるにせよ死ぬにせよ、そこに『理由』が存在するなら素敵」だと感じてしまう
さて、狙撃兵たちには「生きる理由」も「死ぬ理由」もある。もちろんそれは、「戦場」という圧倒的な不条理を大前提とした、あまりに仮初なものでしかない。しかしそれでも彼女たちには、生きるにせよ死ぬにせよ、そこには「理由」があると言っていいだろう。
そしてそれは、ある意味で悪くないと私には感じられてしまう。少なくとも、「生きる理由」も「死ぬ理由」も大して持たずに生きている私にはそう映るのだ。このような考えはもしかしたら、不謹慎と受け取られるかもしれないが。
少女たちは、「戦いたいか、死にたいか」という凄まじい2択を突きつけられ集められた。どちらもまったく選びたくない選択肢だが、そこで「戦うこと」を選択した者たちが、新たに「狙撃兵」としての人生をスタートさせていくことになる。
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そんな彼女たちが「死ぬ理由」はとても明白だ。
現代の戦争では、機銃兵も砲兵も爆撃手も軍艦乗りも、あらゆる兵科は集団性とそれによる匿名性の陰に隠れることができる。しかし、お前たち狙撃兵にそれはできない。常に自分は何のために敵を撃つのかを見失うな。それは根本の目標を見失うことだ。そこで死を迎える。
彼女たちは、訓練校を卒業する際に改めて「何のために戦うか、答えろ」と上官から問われる。この問いに明確な答えを持っているかどうかが、ある意味では「最終試験」というわけだ。戦争に従事する他の者たちと比較して、「狙撃兵」は圧倒的に「個」として戦場に立たざるを得ない。だからこそ、「戦場に立つ理由」を明確に抱いていなければ、そこに居続けられないのである。
「居続けられない」というのは要するに、「死」を意味するというわけだ。
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また、容赦なくこんな言葉を突きつけられもする。
同志リュドミラは偉大な狙撃兵であるが故に生還した。お前たちは誰一人として、リュドミラ・パヴリチェンコではない。敗北は死だ。お前たちは、負けたときは死ぬ。
あるいは、狙撃兵であるが故の特殊性が指摘される場面もある。
通常の技術者は失敗を繰り返して熟練に近づく。だが我々の世界に試行錯誤は許されない。
つまり、「失敗は即、『死』を意味する」というわけだ。
作中では当然、狙撃兵たちの「死」も描かれる。仲間が命を落とす度に、「狙撃兵として生きることの難しさ」、そして「狙撃兵として死ぬことの容易さ」が突きつけられると言っていいだろう。
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しかし見方を変えれば、「彼女たちが死に至った理由は明白だ」とも捉えられる。そしてそのことは、私には悪くないことのように思えてしまう。特に理由も無く何となく死を迎えるよりは、「生を全うしている」という感じがするからだ。
一方、彼女たちは戦場で「生きる理由」も見出す。まあそれは、「撃つ理由」とでも言うべきものだが。
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「戦争」というのは圧倒的に「悲惨さ」を纏った状況であり、その点を抜きにして何かを考えることにほとんど意味など無いと理解している。しかし、ある種の思考実験としてその「悲惨さ」を脇に置いてみた時、「『死ぬ理由』も『生きる理由』も明確に抱くことが出来る」という状況は、私には決して悪くないことのように感じられるのだ。
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その後、セラフィマ、シャルロッタ、アヤ、ヤーナ、オリガにイリーナを加えた6人が、最高司令部直属の第三九独立小隊として編成された。そして彼女たちは、「狙撃兵にとっての天国……すなわちこの世の地獄」と称される市街戦へと投入されることになり……。
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逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』の感想
戦場における女性たちの濃密な関わり、そして「すべての選択肢が不正解」の中で何を選ぶべきかという葛藤
物語は主に、同じ訓練校の同期たちの訓練の奮闘と、後にイリーナを加えて編成される小隊での闘いの姿が描かれ、1人ひとりの個性がきちんと際立つように構成されている。個々の考え方を背景にした対立や協力、そしてそのような関わりを経た上での変化や成長が濃密に描かれているというわけだ。
まずは何よりも、そんな彼女たちの関わり方がとても素晴らしいと感じた。
戦争とは直接関わりのなかったセラフィマたちは、訓練や戦闘の過程で怒り、悲しみ、諦めなどを経験し、呆然とすることもあれば我を忘れることもある。さらにその中で、自身のエゴや怪物性が自覚させられることになるというわけだ。一方で、同期たちとの関わり方も大きく変化していく。戦時下であるが故に、「最悪」としか言いようのない関わり方からスタートした彼らの関係性は、時間の経過と共に少しずつ変質していき、出会った頃には想像も出来なかったようなある種の「親密さ」を帯びるまでになる。しかし、特殊な環境で生きざるを得ないが故に、それは決して「仲良し」という状態になることはない。そんな「異質で複雑で濃密な関係性」を実に見事に描写していると感じた。
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具体的には触れないが、セラフィマはターニャの話を聞くことで、「『選べなかった』という怒りが、『自ら選んだ』という納得へと変わる」という経験をすることになる。彼女は様々な状況で多くの人物と関わりを持つことで、その度ごとに自身の考えや価値観を変化させていくわけだが、その中でもこのラストのやり取りは、とても印象的なものに感じられた。
さらにこのやり取りは、セラフィマが「戦後をどう生きるか」を考える際にも影響したはずだ。もちろん、ターニャとの話だけで決断に至ったわけではないだろうが、「『戦場』を離脱した後どのように生きていくべきか」についての1つの大きな指針となったことは確かだと思う。
さて、個人の決断の話で言うなら、「『すべての選択肢が不正解』である理不尽な世界において、『どの不正解を選ぶのか』という決断に個々の生き様が反映される」という点もまた、とても印象的だった。
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彼女たちの目の前に存在する選択肢は、結局のところ「すべてが不正解」なのだから、当然、他人の決断に対して「どうしてそんなことを?」という批判が常に成立し得る。実際、本書の登場人物たちも様々な場面で、「その決断が正しいとは思えない」と相手を説得しようとするのだ。
もちろんそれは、相手のことを思っての説得であり、ある意味で「友情」を抱いているからこその行動なのだが、同時に、「どうせすべてが不正解なのだから、何を選んでも変わらないだろう」という感覚にもなった。例えば、具体的な状況には触れないが、
最後までこの家と運命を共にする。
と主張した人物の決断もまた、そんな「不正解」を選んだものと言っていいだろう。明らかに「狂気」でしかない選択ではあるのだが、どうせ「正解」など存在しないのだから、どんな選択もほとんど等価だと考えていい。だったら、個人の価値観を最大限に反映させた選択をすればいいし、まさにそれが如実に現れたシーンだったと感じた。
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「ジェンダー問題」も描かれる
さて本作には、「性差別」もテーマとして内包されている。具体的には触れないが、タイトルになっている「同志少女よ、敵を撃て」という想いもまた、ジェンダー的なテーマを背景にしたものなのだ。
戦争をテーマにした作品である以上、ある意味で”当然”と言えるかもしれないが、本作では「戦場で女性が犯される」「売春宿で軍人相手に奉仕させられる」といった「性差別」も描かれる。これを「当然」と捉えていてはいけないが、しかし、一昔前の戦争で事実そのようなことがあったのだから、「戦争」をテーマにする以上、このような「性差別」が扱われることは避けられない。
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また、大隊と今後の作戦について打ち合わせをしている場面でも似たような状況が描かれる。当然のことだが、狙撃兵はより危険な地点へと進んでいって敵を撃つ。それが狙撃兵の役割であり、だからこそ彼女たちは大隊にそのように説明する。しかしそれを聞いた隊長が複雑な表情を滲ませたことをセラフィマは見逃さなかった。そして、同じことを感じ取ったイリーナがこう問いただすのである。
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戦時下であること、さらに「女性狙撃兵」が非常に特殊な存在であることを踏まえると、イリーナからの指摘がより一層厳しいものに感じられたかもしれない。そして彼女たちは、「男性が女性のことを無意識レベルで下に見ており、そういう自覚が無いまま女性差別的な言動をしてしまう」という状況に、非常に敏感なのである。
このような「ジェンダー問題」に、当時の一般的な女性がどのような問題意識を抱いていたのか、あるいは抱いていなかったのか、その辺りのことは私には分からない。しかし本書で描かれる女性たちの場合は、「能力的には男性よりも遥かに上である」という自負があり、そう考えて当然なほどの実績も持ち合わせている。そしてそれ故に、「男性からの蔑視感情」にも気づきやすかったと言えるだろう。そういう感覚を物語の中に組み込む感じがとても上手いとも感じた。
特にセラフィマは、訓練校の卒業試験で「なぜ戦うのか」と問われた際に「女性を守るため」と返したこともあり、他の同期と比べても一層、「このような環境下で女性がきちんと守られているか」に敏感になっていると言っていいだろう。
しかしそんなセラフィマも、戦闘を重ねることによって葛藤を抱かされてしまう。
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女性を助ける。そのためにフリッツ(※作中では「ドイツ兵」を指す言葉)を殺す。自分の中で確定した原理が、どことなく胡乱に感じられた。
このような感覚になったのは、セラフィマが抱いていた「女性」という存在があまりにも漠然としすぎていたからだろう。
セラフィマが「女性を守るため」と答えた時には、その「女性」には具体的なイメージが付随していなかったのだと思う。というかそもそも、「女性を守るため」というのは、「復讐を果たすため」という本当の理由を伏せておくための都合の良い言葉でしかなかったのだろう。
しかしセラフィマは事ある毎に、自身が発した「女性を守るため」という言葉を思い返すことになる。そして少しずつ、自分が「守るべき」と考えたその「女性」という概念が、「様々な価値観を含む集合体」なのだと理解していくのだ。
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このような視点はまさに、現代においてもとても有効だろう。「ジェンダー問題」と一括りにして捉えたところで、何も見えてこないし解決するはずもない。しかし実際は、そういう捉え方をベースに、「見た目や体裁だけをとにかく綺麗に整える」みたいな提言ばかりがなされている印象がある。正直、そんなことでは何も変わるはずがない。
本作は戦時下を舞台にした物語であり、もう少し抽象的に捉えるなら、「『あらゆる異常性が許容され得る』という共同幻想を抱く者たちの現実を描く作品」だと言えるだろう。そしてそれは、「綺麗に整える」みたいなこととはまったく無縁の世界でもあるのだ。そのような極端な世界で発露される「あらゆる虚飾を剥ぎ取った振る舞い」にこそ「ジェンダー問題」の本質があるように私は感じるし、そういう意味でもこの物語は読むべき価値があると言えるのではないかと思う。
またこのような考え方は、「ジェンダー問題」だけではなく「戦争」そのものに対しても適用出来るだろう。私たちはどうしても、「戦争」を漠然とした具体性の無いものとして捉えてしまいがちだが、それではそこに内包される「悲惨さ」を想像することは難しくなる。本作はそんな「戦争」を「女性狙撃兵」というかなり特殊な視点から描き出す作品であり、その特異な視点が「戦争の異常さ」をまた違った形で浮かび上がらせていると思う。そういう作品としても受け取られるべきだろうと感じた。
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さて最後に、作品の本筋とはあまり関係ないが、私にとってとても印象的だった場面があるので、それに触れて終わろうと思う。
セラフィマはある事情から、ジューコフ上級大将と会うことになる。これはある意味で、とても危険な行為だった。ジューコフ上級大将とのやり取りが終わって部屋を出たセラフィマに、上官であるイリーナが「自分から死にに行くな」と叱責するほどの行為なのである。
ではセラフィマは、そんなジューコフ上級大将と一体どんな話をしたのだろうか。
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彼がセラフィマに、「ナチはソ連を絶滅させようとしているし、だからこそ我々は奴らを徹底的に攻め落とさなければならないのだ」と話した上で、さらに次のように言う場面がある。
「レニングラードに転戦した時期、(中略)そして士気阻喪に陥った将校どもを処刑した。勝手に逃亡を試みたり、あるいは投降しようとした奴らだ」
ジューコフは振り向いた。
温和な教師ではない。冷徹な高級将校の顔がそこにあった。
「それがレニングラードの人民を守るために必要だからだ。それは他の戦線でも変わりはしない。ナチに交渉は通じない。これは通常の戦争ではない。軍隊が瓦解すればすべての人民は虐殺され、奴隷化させられる。故に、組織的焦土作戦を用いて撤退する局面を除いては、踏みとどまって防戦することが、唯一ソ連人民が生き残る術なのだ。逃亡する兵士は、もはや敵であり、ファシストの手先なのだ」
この主張内容が正しいのかどうか、私には判断できない。しかし先に引用したものも含め、ジューコフ上級大将の話しぶりを読んで理解できたことがある。
それは、「彼はとても真っ当で冷静な判断によって『戦争』という解を導き出している」ということだ。この事実は、「戦争」の恐ろしさをより強く実感させるものだと感じた。
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私たちは、ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナの戦争などと同じ時代に生きている。そしてやはり、私たちはこれらの状況を、「まともな理屈から生まれたものではない」と信じたいはずだ。「プーチン大統領がイカれている」とか、「長年に渡る宗教のいがみあいがこじれている」など、「理性的な判断がなされていればそうはなっていないはずだ」という風に捉えたいと、少なくとも私は考えてしまう。
しかしジューコフ上級大将の話しぶりからは、そうではないことが伝わってきた。彼は、その時点で手に入るすべての情報を精査し、「国家人民を守る」という自らのスタンスも考慮した上で、「弱気になった将校は処刑すべきだ」という結論を導き出し、実行しているのだ。「我を忘れて」とか「怒りに震えて」みたいなことではないのである。そのことが、とても恐ろしく感じられた。
作中で描かれる人物の多くは非常に理性的で、人間味も持ち合わせている者ばかりである。しかしそんな人でさえ、「『戦争』という『異常な最適解』」に行き着いてしまうというわけだ。
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著:逢坂 冬馬
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