目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:ペドロ・アルモドバル, Writer:ペドロ・アルモドバル, 出演:ティルダ・スウィントン, 出演:ジュリアン・ムーア, 出演:ジョン・タトゥーロ, 出演:アレッサンドロ・ニボラ
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 癌を患い、安楽死を決意した親友から、「死の間際まで近くにいてほしい」と頼まれた場合、あなたならどうするだろうか?
- 「病気に負けないで、尊厳ある死を迎えるためには『安楽死』しかない」という「死生観」を導く理屈はとても理路整然としており、私は強く共感させられた
- 「生きていることへの喜びがない」「ただ身体が生存しているだけ」という状態でも、果たして「生きること」を選び続けなければならないのだろうか?
普段考える機会のない思考を通じて、「どう生きるべきか」について考えを深められる作品だと思う
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
「私が死ぬ時は隣の部屋にいてほしい」と、安楽死を望む親友から頼まれる映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』は、様々な問いを突きつける作品だ
実に興味深い作品だった。さらに、正直なところ全然観るつもりはなかったので、思いがけず良い映画に出会えたという感覚も強い。
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本作の予告編は劇場で何度も目にしたが、まったく観ようという気にはなれなかった。そもそも「どんな話なのか」も予告編からはよく分からなかったが(「安楽死」というキーワードが出てきていたかも覚えていない)、もし仮に話の筋が理解できたとしても観ようとは思わなかった気がする。主演の2人、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが(たぶん)有名な女優なので、「この2人が出演している」ということが伝わりさえすれば十分という判断だったのかもしれないが、少なくとも私にとっては、予告編としてまったく機能しなかった。ちょうど「観ようと思っている映画のストック」が切れ、それで、「じゃあこれでも観てみるか」みたいな消極的な感じで観ることにしただけである。
本作で描かれるのは、「ステージ3の子宮頸がんと診断された女性が、いかに『死』を迎えるかを考え実行に移す」という物語だ。ストーリー展開はほぼそれしか存在しないし、登場人物もほぼ2人だけ。これ以上ないというぐらいのシンプルな作品で、だからこそ魅力を伝えるのはなかなか難しい。本編を観て、「確かにこれは、予告編を作るのが難しい作品かもしれないな」と感じた。
さて、本作においてとにかくメチャクチャ良かったのが、がんと診断されたマーサを演じたティルダ・スウィントンである。凄まじく良くてびっくりした。正直私は、彼女のことをこれまでちゃんと認識したことがなかったのだけど、これからはちょっと注目してしまうと思う。本作はまさに彼女の存在感で成り立っていると言っていいように思うし、彼女が演じたマーサという役柄も実に興味深い存在だった。
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それでは、まずは内容を紹介するところから始めることにしよう。
映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の内容紹介
物語は、作家のイングリッドが書店でサイン会をしている場面から始まる。彼女は昔から「死」を恐れる気持ちを強く持っていたそうで、そんな自身の感覚をテーマにした小説を上梓したばかりなのだ。するとそのサインの列に、旧友のステラが並んでいることに気づいた。別件で近くまで来る用事があり、立ち寄ってみることにしたという。
そしてイングリッドはステラから、マーサが癌センターに入院していると聞かされた。イングリッドは旧友の現状に驚く。彼女は、マーサが入院していることも、癌を患っていることも知らなかった。長い間連絡を取らずにいたからだ。
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そこでイングリッドはすぐに、マーサが入院しているマンハッタン癌センターへと向かった。彼女はやせ細った状態で、ベッドの上に横たわっている。診断はステージ3の子宮頸がん。マーサは当初、治療を拒否するつもりだったそうだが、その後、「まだ人生のステージを下りるタイミングではないかもしれない」と思い直し、現在治療を受けている最中だ。
しかし一方でマーサは、「自身の癌が完治することは恐らくないだろう」とも理解していた。そしてだからだろう、彼女は「死を前にすると、生きていることが残酷に思える」と弱音とも取れることを口にする。親友の発言を受けて、どうにか勇気づけようと言葉を返すイングリッド。しかし彼女は解釈を間違えていた。マーサは「死を恐れて狼狽えている」のではなく、「どうせ回避できない死であるならば、身も心も平穏な状態で、少しは威厳を保った状態でこの世を去りたい」と考えていたのである。
こんな風に2人は、病気の話から会話を始め、そしてそれからは、会っていなかった時間を埋め合わせるかのようにお互いの話をし続けた。中でも2人は、マーサの娘ミシェルの話に時間を割く。NYタイムズの戦場記者として長く働いてきたマーサは、「母親としては失格だった」という自覚を持っている。一方ミシェルはというと、シングルマザーの母親(マーサ)が父親について何も教えてくれないことにずっと苛立ちを募らせてきたようだ。
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そんな母娘のわだかまりは、マーサの癌が判明した時にも浮き彫りになった。マーサが家族に「治療を受けるつもりはない」と話をした際、ミシェルは「あなたの選択だから」と突き放すような言い方をしたというのである。マーサとミシェルの間には、今も距離があるそうだ。
しばらくしてマーサは、自ら「実験台」という表現を使いつつ、医師から勧められた新しい治療法を試したこと、そしてその結果があまり良くないことをイングリッドに話す。マーサは「少しでも希望を抱いてしまった自分がバカだった」と嘆き、そしてこの出来事が引き金となったのだろう、彼女はある大きな決断を下したのである。
イングリッドはその後、マーサから驚きの計画を聞かされた。マーサはなんと、闇サイトで安楽死用の薬を手に入れており、癌でやられる前に自ら始末をつけると決めたというのだ。ただその一方で、これまでに戦場で多くの死に触れてきた彼女は、「死にゆく者の傍には必ず誰かがいた」という記憶も強く持っていた。そんなこともあり彼女は、「自分が死を迎える時も、誰かが傍にいてくれたら嬉しい」と考えているのだ。
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そしてその役回りをお願いしたいと、イングリッドは頼まれたのである。
決して、「安楽死の手伝いをしてほしい」なんて話ではない。薬は自分で飲むし、いつ安楽死するのかも教えない。警察から疑いを掛けられると思うが、罪に問われない最大限の配慮はする。「だから、隣の部屋にいてほしい」というお願いなのだ。
イングリッドは普通の人以上に「死」を恐れる気持ちを強く抱いている。そしてだからこそ、いくら親友の頼みだとはいえ、「死の直前まで一緒にいてほしい」なんて話をすぐに快諾することは出来なかった。しかし悩みに悩んだ末に、最終的にはその提案を受け入れる決断をし……。
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ティルダ・スウィントンが演じたマーサの存在感が実に圧倒的で興味深かった
本作は、先述した内容紹介でほぼすべてを説明し切ったと言っていいぐらいの物語で、とにかくシンプルである。前半は「マーサと再会したイングリッドが、マーサの過去・現在・未来の話を色々と聞き、親友からの重い提案を受け入れる」という流れであり、そして後半は、「マーサが借りた森の中の家で2人が静かな日々を過ごす」だけなのだ。本当にそれ以上でもそれ以下でもなく、展開と言えるほどのストーリーがあるわけではない。
ただ何度も書いている通り、とにかくマーサが魅力的な人物であり、さらにそんなマーサをティルダ・スウィントンが素敵に演じていたので、素晴らしい作品に感じられたのだと思う。
私がマーサのどこに惹かれたのかというと、まずは「男っぽさ」みたいな部分な気がする。「男だから/女だから」みたいな話はあまりしたくないのだが、ただ本作においては、「子宮頸がんという女性特有の癌を患った女性が、見た目も振る舞いもどこまでも男性的である」という要素が、作品の魅力の1つとして機能していたように思う。
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彼女はある場面で、こんな話をしていた。
女性の戦場特派員はとにかく少ない。戦争は男のものだからね。ある意味では男として生きなければならなかったわけだけど、それは私にはとても簡単なことだった。
マーサは両サイドを刈り上げたような短髪で、また、表情や顔の雰囲気には「強さ」がにじみ出ている感じがあり、見た目的にとても男っぽい。そしてその風貌は、彼女にとっては「生きやすさ」みたいなものに繋がっていたようだ。女性の世界で生きていくよりも男社会の方が馴染みやすかったということなのだろう。とすれば勝手な想像でしかないが、彼女の中には「そんな自分が、まさか子宮頸がんとはね」みたいな感覚さえあったかもしれない。
さらにマーサは、「母親」という役割に上手く収まれずにいる。彼女はちょっと色々あって、20代の頃に望まぬ形で妊娠・出産を経験しシングルマザーになった。その後、「ペーパーマガジン」を皮切りに夜のNYで記者として奔走するようになり、「とても子育てなんかしていられない」という状態になっていく。「母親」よりも「仕事」を取ったというわけだ。現代では「仕事を優先しているから男っぽい」なんて発想はむしろ古いものと受け取られるだろうが、彼女が現役バリバリだった頃にはやはりまだ、「女性は家で子育て」みたいな価値観の方が支配的だったはずだ。そしてそういう時代においても彼女は、仕事に没頭する道を選んだのである。
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さて、そんなマーサの思考は実に理屈っぽく、この点でも男性的だと感じさせられた。作中では「死生観」についての彼女の思考が強く表に出るのだが、イングリッドには許容できない彼女のその思考は、客観的にはとても理屈が通っているように感じられるんじゃないかと思う。もちろん、「男は理屈、女は感情」みたいな話もステレオタイプすぎるが、とはいえそういう傾向はそれなりにはあるはずだ。そして、マーサの価値観にはとにかく「感情」がまったく入りこまない。隙のない理屈で押し通そうとするところも、個人的には凄く好きだなと思う。
またマーサに対しては、まさにその「死生観」そのものにも興味を抱かされた。私自身が普段から考えていることと結構近いものがあり、とても共感させられたのだ。もちろん、「安楽死」という選択肢を過激だと感じる人は一定数いるとは思うが(ただ私は、「安楽死」が制度として存在してほしい派である)、それはともかく、「尊厳ある死を目指したい」という感覚については頷ける部分が大きいんじゃないかと考えている。
彼女が語るその「尊厳ある死」という感覚は恐らく、娘ミシェルの父親であるフレッドのその後の話を知ったこととも関係しているのだと思う。マーサは長くフレッドと連絡を取っていなかったのだが、ミシェルがあまりにも父親についてしつこく聞いてくるため、その後の消息を調べてみることにした。すると、フレッドが事故で亡くなっていることが判明したのである。
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そしてその「死に方」は、マーサに強い印象をもたらしたはずだ。
その話は、フレッドが後に結婚した妻から聞いたものである。フレッドは妻を乗せてドライブしている最中、道路脇の家が燃えているのを見つけた。彼は車を停め、なんと燃え盛る家に飛び込んでいく。「中から声が聞こえる」と言って、妻の静止を振り切って炎の中へと入っていったのだ。そのままフレッドは出てこなかった。そして後にやってきた消防が中を確かめたところ、焼け落ちた家からは彼の遺体だけが見つかったという。
フレッドは、マーサと付き合い始めて数ヶ月でベトナム戦争に徴集され、1年後に戻ってきた時には別人のようになってしまっていた。そのこともあり、ミシェルを妊娠していたマーサは彼と別れることを選んだのだが、結局フレッドは、戦争による後遺症である「幻覚・幻聴」によって命を落としていたことになる。そしてその「死」に、マーサは「尊厳」を感じられなかったのだと思う。
さらに彼女は、戦争に”奪われた”フレッドのことも念頭にあって選択したのだろう「戦場特派員」という仕事においても、「尊厳の無い死」を数多く目にしてきた。そしてそういう経験を積み重ねてきたからこそ、自身が「死」に直面した際、何よりも「尊厳」にこだわったのではないかと思う。
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そんなマーサの「様々な経験に裏打ちされたのだろう『死生観』」が実に興味深く、さらに本作においては、まさに彼女の「死生観」こそが作品の核になっていくわけで、だからこそ本作は観る人を惹きつける物語に仕上がっている気がする。
マーサが抱く、「『病気に”負けない”ための死』という感覚」と「『死ぬ時は隣にいてほしい』という希望」について
それでは、彼女が考える「尊厳のある死」についてもう少し深堀りしていくことにしよう。彼女の根底にはずっと「人間には『上質な死』を迎える権利があるはずだ」という考えがある。彼女の「死生観」は常にそういう思考に裏打ちされているわけだが、そんな話をしている中で彼女が口にした「『病気と闘うこと』についての感覚」が実に興味深かった。
癌患者となったマーサは、「周囲の人間は『私が病気と闘い続けること』を望んでいる」という認識を持っている。マーサは当初「治療しない」と考えていたわけで、その際の反応からそんな風に感じているのだろう。つまり、「治療を諦めるのではなく病気と闘うべきだ」という感覚を、癌を患った当人ではない周囲の人間が抱いているというわけだ。
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しかし、長いこと戦場記者として従事してきた彼女には、そのような感覚は「善と悪の闘い」に近いものがあると感じられたという。どういうことか理解できるだろうか?
病気でも戦争でも、勝てば「英雄」として扱われる。つまりこれは、「頑張って努力したから偉い」という評価だと考えていいだろう。では、負けたらどういう扱いになるのか。やはり「頑張り(努力)が足りなかった」という評価になるのだろう。彼女は多くの戦争を目にする中で、世間のそういう感覚を理解していった。しかしマーサ自身はそのようには考えていない。努力云々の問題なんかじゃなく、あるのはただ、「勝つ」か「負ける」かという結果だけでしかないというわけだ。
そして彼女は、明確に「負けたくない」と感じていた。彼女が言う「負け」というのは「死」を意味しているのではなく、「完治出来ないまま治療を止める」とか「治療の過程で耐え難いほどの苦痛に襲われる」といった状態を指していると考えればいいだろう。そして、「治療」を選択したところで必ずしも「勝てる」保証はない。だったら「勝つ」ためではなく「負けない」ための闘いをすべきなのではないか。そのような思考から彼女が導き出した結論が「安楽死」だったというわけだ。
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この理屈はとても筋が通っていると思うし、私はものすごく共感させられた。彼女と同じ状況にいたら、私も同じ思考で同じ結論に達すると思う。まあ、「闇サイトで安楽死の薬を手に入れる」みたいな行動力が私にあるかは何とも言えないが、少なくとも理屈の部分はメチャクチャ理解できてしまったのである。もちろん、マーサのこの感覚に共感できない人も多いとは思うが、私は個人的にとても理に適った理屈だと思っているので、「こんな風に考える人もいる」という理解を元に、「安楽死」の議論をもう少し進めてほしいものだなと思う。
さて、そんな風にして「安楽死」という答えを導き出したマーサだったが、1つ大きな問題があった。それが「隣の部屋にいてほしい」という希望である。彼女が1人で死を迎えられるのであれば、何の問題も生じなかっただろう。自分が良いと思うタイミングで薬を飲めばそれで終わりである。しかし彼女は、「自分が死を迎える瞬間は、誰かに傍にいてほしい」という強い希望を持ってもいたのだ。
正直なところ、これはなかなか難しい問題である。というのも、マーサ自身も自覚していたが、一歩間違えれば「自殺幇助」の疑いをかけられてしまう可能性があるからだ。
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そもそも私は「自殺幇助」という犯罪がどういう要件で成立するのか知らないし、日本とアメリカの間にも違いはあるかもしれないが、いずれにせよマーサは、イングリッドには容疑が向かないように万難を排して準備をしていた。遺書とは別に警察宛の手紙を残し、そこには薬の入手先なども含めすべての情報が記載してある。さらにイングリッドには「決行日」を教えず、また、その他の「知っておく必要のない情報」も伝えなかった。こうすることで、万が一警察の取り調べを受けても「私は何も知らなかった」と言い張れるように準備していたのだ。
つまり逆に考えれば、ここまでお膳立てしなければ「関わった者が『自殺幇助』の罪に問われる可能性」を排除できないとも言えるだろう。マーサは、そんな危ない橋をイングリッドに渡らせていることをちゃんと自覚した上で頼んでいるのである。
さらに、イングリッドの方にも大きな問題があった。こちらに関してはあまり強く焦点は当てられないのだが、イングリッドは「死」に対する恐怖心をとにかく強く持っている人物として描かれる。そのため、「親友がまさに死を迎える空間に一緒にいる」という行為が、普通の人以上に恐ろしく感じられてしまうのだ。イングリッドがマーサの頼みを受け入れたのは、まさに「戦友」と言ってもいいような濃密な時間を過ごした経験があったからだろう。そういう相手からの「最後の頼み」だからこそ、自身の苦痛を押しのけてでもどうにか受け入れることにしたのだと思う。
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そんなわけで本作は、「安楽死」という決して目新しいわけではない要素、そして「主たる登場人物が2人」というあまりにシンプルな構成にも拘らず、観る者を惹きつける作品に仕上がっていると言えるだろう。マーサのキャラクターや警察沙汰になるかもしれない危うい計画、さらに「死」への恐怖を強く抱いてしまうイングリッドの心情などが絶妙に絡まり合い、とても見ごたえの作品になっていると思う。
「安楽死」はもっと議論されるべきだし、その過程で「死」そのものの議論も深めるべきだと思う
「安楽死」が話題に上る度に私は、社会全体で「安楽死」がもう少し積極的に議論されるべきだと感じる。キリスト教が自殺を「禁忌」としているはずなので、欧米ではそういう観点でも安楽死のハードルが高いことは理解できるのだが、日本の場合は別に宗教による制約はないはずだ。だから、個人的にはもう少し議論が進んでもいいと思っているのだが、何故ここまで停滞してしまうのかよく分からない。
例えばだが、マーサが口にするこんなセリフからも「安楽死についてもっと議論すべき」だと感じられるんじゃないかと思う。
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すべての喜びが消えてしまった。もう、何に気を向けたらいいのか分からない。
マーサは大の読書家であるようだが、癌を患った身体では集中して本を読むのがなかなか難しいようだ。さらに音楽は、「鳥のさえずり」以外聴きたいと思えなくなってしまったという。それまではたくさんあった「自分の心を震わせるもの」が、死を前にした今すべて無くなってしまい、「ただ人の形をしたまま存在しているだけ」みたいな状態にあるというわけだ。
私は、そんな状態ではとても「生きている」などとは感じられない。しかし、「身体が生命を維持できてさえいれば、それは喜ばしいことなんだ」とでも言わんばかりに、「生きることを諦めるべきではない」みたいに思われてしまう。さすがにそれは、ちょっとしんどすぎないだろうか。
イングリッドはマーサからこのような「死生観」を突きつけられ、度々言葉に詰まっていた。イングリッドもきっと、大した関係性ではない相手であれば、当たり障りないことを言ってその場を取り繕っただろう。しかし、目の前にいるのは親友である。そしてそんな親友が、「生きていることに喜びを感じられなくなってしまった」と吐露しているのだ。そんなことを言われて、掛けてあげられる言葉が何かあるだろうか?
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もちろんイングリッドは、「そうだとしても、マーサには生きていてほしい」と願っている。それはごく当たり前の感覚だろう。ただ残念ながら、そんな想いがマーサに届くことはない。また、マーサがイングリッドに対する”気遣い”を見せる場面も描かれるのだが、彼女が望むものとはズレすぎていて、イングリッドとしては素直に喜べないなんてこともある。
例えば、森の中の家で生活し始めてからの話だが、イングリッドとマーサはある日、「死生観」を巡って少し口論めいた感じになった。そしてその翌朝、マーサは「昨日の私は最悪だった」と謝るのだが、その上で、「ここに鎮静剤を入れておくから、もしも私のおかしさに耐えられなくなったら飲んで」みたいに言っていたのだ。もちろんこれは、マーサなりの最大限の配慮であり、そのこと自体はイングリッドも理解している。しかし彼女は同時に、「別にそういうことじゃないんだよ」みたいにも感じていたはずだ。本当に望んでいるのは、「マーサが安楽死を撤回して生き続けること」なのだから。しかし当然、この期に及んでもうそんなことは言えない。だからイングリッドの”不満”は溜まっていく一方というわけだ。
こんな風に、マーサとイングリッドの間では、些細と言えば些細だが、しかし「死」という巨大なものを間に挟んでいるが故に大きすぎるようにも感じられる「ズレ」が少しずつ浮き彫りになっていくのである。そういう描写もまた、実に興味深く感じさせられた。
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実際には、本作で描かれる「死の間際まで隣の部屋にいてほしい」みたいな状況になることはまずないだろう。そういう意味でいうなら「非リアルな設定」だ。ただ、このような特異な状況を設定したことによって、それまであまり考えたことのなかった「死」に関する様々な問いが浮かび上がってくる。静かに淡々と展開される物語なのだが、ある意味で”挑発的”とも言える内容であり、そういう部分が個人的にはとても素敵に感じられた。
監督:ペドロ・アルモドバル, Writer:ペドロ・アルモドバル, 出演:ティルダ・スウィントン, 出演:ジュリアン・ムーア, 出演:ジョン・タトゥーロ, 出演:アレッサンドロ・ニボラ
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最後に
最後にいくつか余談に触れてこの記事を終えることにしよう。
まず映画のラストで、それまで一度も姿を現さなかったマーサの娘ミシェルが登場する。しかしこのシーンにはとにかく驚かされた。マーサとそっくりだったからだ。私は、映画を観ている間はホントに、「よくもまあこんなに似ている人物を見つけてきたものだ」と思っていたのだが、そうではなかった。ティルダ・スウィントンによる1人2役なのだそうだ。
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であれば「似ていること」には納得だが、しかし「同じ人物が演じている」のならそれはそれで驚きである。調べてみると、ティルダ・スウィントンは64歳なのだそうだ。マーサの年齢は不明だが、恐らく大体同じようなものだろう。また、マーサは20歳ぐらいでミシェルを産んだのだから、ミシェルは40代半ばぐらいということになる。そしてミシェル役のティルダ・スウィントンは、それぐらいの年齢にしか見えなかったのだ。もちろん、CGなどで加工しているのかもしれないし、そうだとしたら別に驚くようなことではないのかもしれないが、もし生身の人間の存在だけであの若さを醸し出しているのであれば、ちょっと凄いなと思う。
また、本作を観ていて個人的に結構驚いたのが、マーサとイングリッドの英語がメチャクチャ聞き取りやすかったことである。普段私は、字幕を観ながらでさえ、役者が発する英語のセリフをあまり聞き取れない。しかし本作は、ティルダ・スウィントンもジュリアン・ムーアももの凄く聞き取りやすい英語を話していて、あくまでも字幕を観ながらではあるが、どんな英語を口にしていたのか大体理解できたと思う。私は別に外国人と話したいわけではないし、英語を習得したいなんて特に思ってもいないのだけど、本作を観て、「英語圏の人がみんなこれぐらいの発音で喋ってくれたら頑張ろうって思えるんだけどな」と感じたりした。
あと、これこそどうでもいいことだが、冷蔵庫の中に、日本語ラベルの「お~いお茶」があったと思う。確か大谷翔平がCMキャラクターを務めているはずで、だからもしかしたら、アメリカでも日本語ラベルのペットボトルが普通に流通しているのかもしれない。一瞬しか映らなかったが、日本人なら「ん?」ってなるシーンじゃないかと思う。
そんなわけで、個人的にはとても面白く感じられる作品だった。本作は「どう死にたいか」を考えるきっかけになるだろうし、また、そんな思考を通じて「どう生きたいか」についても考えさせられるのではないかと思う。
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弁護士であり、登録者数640万人を超えるYouTuberでもあるアレクセイ・ナワリヌイは、プーチンに対抗して大統領選挙に出馬しようとしたせいで暗殺されかかった。その実行犯を特定する調査をベリングキャットと共に行った記録映画『ナワリヌイ』は、現実とは思えないあまりの衝撃に満ちている
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デビュー作で本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は、デビュー作であることを抜きにしても凄まじすぎる、規格外の小説だった。ソ連に実在した「女性狙撃兵」の視点から「独ソ戦」を描く物語は、生死の境でギリギリの葛藤や決断に直面する女性たちのとんでもない生き様を活写する
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「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
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「優しいかどうか」が重要な要素として語られる場面が多いと感じるが、私は「優しさ」そのものにはさしたる意味はないと考えている。映画『心の傷を癒すということ 劇場版』から、「献身」と「優しさ」の違いと、誰かに寄り添うために必要な「弱さ」を理解する
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2008年に開設された新たな刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」で行われる「TC」というプログラム。「罰則」ではなく「対話」によって「加害者であることを受け入れる」過程を、刑務所内にカメラを入れて撮影した『プリズン・サークル』で知る。
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39歳で餓死した男性は、何故誰にも助けを求めなかったのか?異常な視聴率を叩き出した、NHK「クローズアップ現代」の特集を元に書かれた『助けてと言えない』をベースに、「自己責任社会」の厳しさと、若者が置かれている現実について書く。
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