目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:細田佳央太, 出演:駒井蓮, 出演:新谷ゆづみ, 出演:真魚, 出演:細川岳, 出演:上大迫祐希, 出演:若杉凩, Writer:金子鈴幸, Writer:金子由里奈, 監督:金子由里奈, プロデュース:髭野純
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
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この記事で伝えたいこと
「相手を辛い気持ちにさせたくないからぬいぐるみに話す」という設定がとにかく絶妙
私自身はぬいぐるみに話しかけたりしませんが、感覚的には凄く理解できると感じました
この記事の3つの要点
- 「マイノリティ」という言葉が使われる時のその「狭さ」に、私は違和感を覚えてしまうことが多い
- イベントサークルにも所属している登場人物が持ち込む「マジョリティ視点」こそが、この作品を成立させている
- 私が普段から強く意識している問題意識を含め、設定や導入からは想像できない展開に至る物語に驚かされた
「『優しさ』って何だっけ?」とも考えさせられる、他者との関係性を繊細に深掘りする見事な作品
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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メチャクチャ素晴らしい映画でした。ただ、友人からタイトルを聞くまでまったくノーマークの作品だったし、そのままだったらまず観なかっただろうと思います。普段から、先入観で観る映画を制約してはいないつもりですが、それでも、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を観ようとは思わなかった可能性の方が高かったでしょう。教えてくれた友人に感謝しているし、こういう出会いがあるから、自分の興味関心だけで何かを選ぶのは良くないと改めて感じさせられた作品でもあります。
まあその友人も、私に話をしてくれた時点ではまだ観てなかったんだけど
でも面白いことに、お互いに「これは観るべき映画だね」って感覚が共通したんだよね
正直、映画を観始めてからしばらくの間は、「一体ここから、どう物語が展開していくんだ?」みたいに感じていました。そのような状態が、体感では1時間ぐらい続いたように思います。「ぬいぐるみに話しかける」ことが活動内容の大学サークルを舞台にした作品であり、最初は「ちょっと変わった青春モノなのか?」ぐらいに思っていました。しかし中盤から後半に掛けて、「なるほど、そういう話なのか!」という展開になっていくのです。私の頭の中に普段からある問題意識がズバリ扱われていることもあって、その刺さり具合はえげつないほどでした。
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とにかく、映画全体が描こうとしている「何か」にとても共感できてしまったというわけです。普段あまりこんな風には思わないのですが、「この映画の監督や脚本家とメチャクチャ喋りたい」と感じました。
あくまで予想だけど、こういう作品を作る人とは、永遠に喋っていられそうな気がする
日常生活の中で話しても通じないことの方が多い話題だったりするから、余計にね
映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の内容紹介
七森剛志は、京都の大学に入学した。彼は、「男らしい振る舞い」みたいなものにどうしても違和感を覚えてしまうことが多く、そのせいで高校時代にも「不器用な瞬間」を経験している。自分自身の存在やアイデンティティみたいなものがあやふやで、彼自身モヤモヤすることが多いが、しかし自身のスタンスが「間違っている」と思っているわけでもない。
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七森は、学科の懇親会である女性と意気投合した。麦戸と名乗ったその女性とは、空気感が似ている感じがする。「男らしさ」みたいなことを感じずに一緒にいられる心地良さもあり、すぐに仲良くなった。
2人は、学内に貼られたサークル募集のポスターを見ながら、「ぬいぐるみサークル」に目を留める。ぬいぐるみと喋るサークルらしいが、良く分からない。とりあえず見学に行くと、まさにそのままのサークルだった。部室には大量のぬいぐるみがあり、部員たちはそれぞれぬいぐるみに話しかけている。部室にいる時は、基本的にヘッドホンをするのがルール。他の部員がぬいぐるみに何を話しているのかを聞かないためだ。
2人はぬいぐるみサークル(ぬいサー)に入ることに決めた。同じタイミングで入った白城ゆいも含め、ぬいサーのメンバーと仲良くなっていく。
ぬいサーの部員たちがそれぞれに秘めている秘密や葛藤、ぬいサーに所属しながらぬいぐるみには話しかけない白城、唐突に提示される「不在」、そして七森が抱えているどうにもしようがない「息苦しさ」。様々な要素を取り込みつつ、世間の「それって当たり前だよね」からするりと抜け落ちてしまう者たちが、「他者といかに関わるか」に悩む様が描き出されていく。
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「『人に話すのが難しい』から『ぬいぐるみに話す』」という設定の絶妙さ
いきなり、映画とは関係のない話から始めましょう。
ちょうどこの映画を観る前の日の夜、寝ようかなと思っていた直前に女友達からLINEが来ました。ざっくり要約すれば、「生きづらくてしんどい」という内容です。さらにそのLINEには、「こんなマイナスな話は人を不愉快にするだけですよねすいません」「休みの前の日なのにこんな話してごめんなさい」みたいなことも書かれていました。その子は、時々メンタルが落ちたような状態になるので、「しんどい感情は、出せる時に出せるだけ出しておいた方がいいよ」みたいに言うようにしています。
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私は、割とこういう「辛いんです」「話を聞いて下さい」みたいな相談を聞く機会が結構ある
その子は本当に「こんな話してすいません」みたいに思っているのだけど、同時に、「誰かに話を聞いてもらわずにはいられない」という状態にもあるわけです。そういう時、自分で言うのも何ですが、私は結構喋りやすい相手なのだと思います。というか昔から、「こいつには何でも話せる」という雰囲気が出せるように頑張ってきたつもりなので、そういう意識的な振る舞いが上手くいっているのでしょう。
ただ、これも「自分で言うのはなんですが」という話になってしまいますが、私のように「何を話しても大丈夫」みたいな雰囲気を持っている人は、なかなかいないと思います(本当に、こんなこと自分では言いたくないのですが)。私は色んな人から、「他人に相談して失敗した話」を聞く機会もあるのですが、やはり「誰かの相談事を、その人が望むようなスタンスで聞く」というのは、かなり難しいことのようです。特に「マイノリティ的マインドを持つ人」の場合、マジョリティ側の人に話が通じないのは当然として、マイノリティ同士であったとしても、問題や葛藤が重ならないと上手く話が通じなかったりもします。そんなわけで、「自分の話を良い感じに聞いてくれる人」を見つけるのはかなり難しいというわけです。
私も、「この人になら話してもいいな」みたいに感じる人って、相当限られるからなぁ
大体の場合、「話してはみたものの、この人には何も伝わってないな」って感じちゃうよね
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だからこそ、「ぬいぐるみに話す」という設定は非常に絶妙だと感じました。もちろん、決してベストな解決策ではありませんが、しかしかなりベターだと言えるでしょう。
また、「ぬいぐるみに話すこと」の良さとしては、「話す側の負担が減る」という点も挙げられます。私にLINEをくれた子のように、「こんな話をして申し訳ない」と感じてしまう人は結構いるからです。あるいは、映画の中でぬいサーのメンバーが、「誰かに辛い話を聞いてもらうと、その相手のことを辛い気持ちにさせてしまう。だからぬいぐるみに聞いてもらうんだ」と口にする場面もありました。「上手く話を聞いてくれる人」を探すのは難しいのだから、だったら、「相手に負担をかけずに済む」方法を選択するというのは、理にかなっていると思いました。
そんなわけで、「ぬいぐるみに話す」というこの設定はとても絶妙だと思うし、さらに私は『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の随所でそのような「絶妙さ」を感じました。設定も、登場人物のキャラクターも、物語の展開も、すべて良いのですが、中でもやはり「会話」が素晴らしかったです。「沈黙」や「間」も含めた彼らの会話が、もう「絶妙」としか言えないもので、会話を聞いているだけでも心地よさを感じるような作品でした。私はもう40歳のおじさんなので説得力は皆無ですが、この映画の会話も含めた全体の雰囲気は、若い世代にもかなりしっくりくると思うので、是非観てほしいです。
まあ、若いかどうかよりも、「マイノリティ的なマインド」を持っているかどうかで親和性が決まる感じもするけど
今の若い世代って、「誰もが何らかのマイノリティ」みたいな感じがするから、そういう意味でも合いそうだよね
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「マイノリティ」という言葉の「狭さ」
映画を観ながら、普段から問題意識を抱いている様々な事柄について改めて考えさせられました。その1つが「『マイノリティ』という言葉の『狭さ』」です。私は普段から、「マイノリティ」という言葉が使われる状況で、「なんか違うんだよなぁ」という違和感を抱いてしまうことが多く、その点についての思考が刺激されました。
「マイノリティ」という言葉は一般的に、「『分かりやすい何か』を持っている人」という意味で使われることが多いでしょう。「分かりやすい何か」というのはつまり、「障害者」「LGBTQ」などを指します。大雑把に、「名称が与えられている概念」のことを「分かりやすい何か」と呼んでいると考えてもらえばいいでしょう。
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誤解されたくないのであらかじめ書いておきますが、私は決して、「障害者やLGBTQは『分かりやすいマイノリティ』である」などと言っているのではありません。そうではなく、「いわゆる『マジョリティ』の人たちが『マイノリティ』という言葉を使う際に、『障害者』や『LGBTQ』のような『名称が与えられている概念』しか想定してないんじゃないだろうか」と疑問を呈したいのです。そういう状況に出くわす度に、「それは何か違うんじゃないか」と感じてしまいます。
もっと酷い言い方をするなら、「自分には理解できないもの」って意味で「マイノリティ」って言葉を使ってる人もいるんじゃないかと思ってる
そういう「『分かりやすい何か』を持っている人」はもちろん「マイノリティ」に含めていいでしょう。「含めていいでしょう」と書いたのは、「『分かりやすい何か』を持っている人」の中にも「マイノリティ」に分類されたくないと思っている人が一定数いると考えているからです。私は基本的に、「マイノリティか否か」を決めるのは「その人の気分」次第だと思っているので(だからこの記事では、「マイノリティ的マインド」という表現を使っています)、「分かりやすい何か」を持っていたとしても、マインドが「マイノリティ」でなければ、私の中ではその人は「マイノリティ」ではありません。
さて一方で、「マイノリティだなぁ」と感じる人の中には、「分かりやすい何か」を持っていない人もいます。私の判断はやはり「マインド」基準であり、たとえ「容姿に恵まれ、大金持ちで、友人も多く、何不自由なく暮らしている人」であっても、その人のマインドが「マイノリティ」なら、私の中では「マイノリティ」です。実際私の友人にも、「どう考えても見た目や行動が『リア充』なのに、マインドは明らかに『マイノリティ』」という人がいて、私は彼女を「マイノリティ」に分類しています。
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一応書いておくけど、今私が言っている「マイノリティか否か」って話は、法律が絡むような厳密な場面に当てはまることじゃない
そうじゃなくて、「どういう人のことを『マイノリティ』だと感じるか」っていう、個人の感覚の話だよね
そして、まさにぬいサーの面々は、そのような「分かりやすい何か」を持たない「マイノリティ」なのです。部員の中に1人だけ、「分かりやすい何か」を持っていると言える人がいますが、他のメンバーは「名称が与えられている概念」とは接していないと言っていいでしょう。しかし間違いなくマインドは「マイノリティ」であり、だからこそ私の中では、彼らは皆「マイノリティ」なのです。
しかし、いわゆる「マジョリティ」の人たちが「マイノリティ」という言葉を使う場合、ぬいサーの部員のような人たちのことはきっと頭に浮かばないだろうと思います。特に、「マイノリティ」という言葉を「自分たちとは違う」という含みを持たせて使っているとしたら、「名称が与えられている概念」しか捉えられないのも当然でしょう。ただ個人的には、「マイノリティ」という言葉のこの「狭さ」こそが、色んな息苦しさや無理解を生み出す要因なのではないかと考えているし、映画を観て改めてそのように感じさせられました。
もちろん、「マジョリティ」側としてずっと生きてきたとしたら、同じ状況にいただろうけどね
「マイノリティが抱える問題」って結局、「マジョリティがどう振る舞うか」によってしか変わらない部分も結構あるから、難しいだろうけど、この「狭さ」が解消されてほしいなとは思う
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「マジョリティ視点」こそが、この映画を成立させているポイントである
さて、映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の実に興味深かった点は、作品の中にきちんと「マジョリティ視点」が入り込んでいたことです。ぬいサーという「マイノリティのための場所」と言ってもいい空間を舞台にしながら、そこに無理なく「マジョリティ視点」を入れ込む作りはとても見事でした。そして、その「マジョリティ視点」のキーパーソンこそが、ぬいサーのメンバーである白城ゆいです。
私は正直、この作品は白城ゆいの存在によって成立していると言っても過言ではないと感じました。
白城は、ぬいサーだけではなく、イベントサークルにも所属しています。そのイベントサークルについてはあまり詳しくは描かれませんが、彼女は「セクハラまがいのことも多い」と口にしていました。「『リア充の大学生』をステレオタイプ的にイメージする際、頭に思い浮かぶような人がたくさんいる集団」みたいに理解しておけばたぶん大きくは外れないでしょう。
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まあ、大体のマイノリティが、そういうタイプを苦手だって思うだろうね
白城は映画全体において「客観視」の立ち位置を取ることが多いため、彼女自身はそこまで深くは描かれません。なので、七森や麦戸と比べるとどんな人物なのか分かりにくいのですが、確実に言えることは、超マイノリティ側の「ぬいサー」にも、超マジョリティ側の「イベントサークル」にもそれなりに馴染める人物だということです。作中においては、唯一と言っていいほど両者の視点を持ち得るキャラクターだと言えます。
そして、白城の感覚や価値観を通じて、この作品には「マジョリティ視点」が入り込むことになるのです。マイノリティ視点だけではさすがにバランスが悪くなるでしょうが、そこに白城の「マジョリティ視点」が組み込まれることで、ぬいサーの面々が抱える葛藤の輪郭が分かりやすくなり、全体として伝わりやすさが増していると感じました。
七森も麦戸もとてもいいけど、やっぱりキャラクターとしては、白城が一番良かったよね
私自身が割と、白城のような「バランサー」タイプだってことも、彼女のことが気になったポイントだと思うけど
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さて、そんな白城が七森から、「どうしてセクハラまがいのイベントサークルなんかに所属しているのか」と聞かれる場面があります。そして彼女はそれに、「世の中は安心できる場所の方が少ないんだから、ぬいサーみたいな環境だけにいたら、生き抜けないほど弱くなってしまう」と返すのです。
「このような捉え方が避けられない」という事実こそが、世の中のあらゆる場面における「問題」の根本にあるのかもしれないと私は考えています。白城の「安心できる場所の方が少ない」という認識は、「自分もマイノリティ志向だが、そのままで社会を渡り歩こうとするのはしんどい」という意味に捉えればいいでしょう。そしてだからこそ、「マジョリティの世界に潜り込める自分」を保たなければならないと考えるわけです。あらゆる場面で、このようなスタンスを取らざるを得ないと感じている人は結構いるのではないかと思います。
結局大体の問題って、「マジョリティ」とか「強い側」に「どう取り入るのか」みたいな話に集約されちゃうからなぁ
マイノリティは、「マイノリティである」が故に、どうしたって「マジョリティの社会」で生きていくしかないんだよね
そして、「マジョリティの世界でいかに生きていくか」というその接点で、やはり様々な摩擦が生まれることになるのです。
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「マジョリティ」が無意識に作り出している「制約」
そのことがとても印象的に描かれている場面がありました。ぬいサーのメンバーの中で唯一「分かりやすい何か」を持つ人が、その「何か」についてさらっと告白したシーンで、こんな風に語る場面があるのです。
その場の言葉遣いが制約されたような感じがあった。「私は尊重してますよ」みたいな空気を出すの。なんか「自分自身」として見られていないような感じだった。
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具体性を排して書いているので、上手くはイメージ出来ないかもしれませんが、私はとても共感できてしまいました。
ホントにこういう感覚、私も日常的に抱くことがあるからなぁ
相手は良かれと思ってそういう振る舞いをしているわけだから、余計に厄介だよね
つまり、こういうことです。その人物はある状況で「言葉遣いが制約されたような感じ」になったわけですが、それは「名称が与えられた概念」としてしか見られなくなったからだと思います。その人物の名前を仮に「山田田中」とすると、その人物は「山田田中」という個人ではなく、「『名称が与えられた概念』の人」としてしか扱われなかったというわけです。そして、「マジョリティがイメージするその『名称が与えられた概念』の範囲内の会話しか許容されなくなってしまった」と感じたということでしょう。
私もこのような感覚を結構抱きます。私は決して「分かりやすい何か」を持っている人間ではないのですが、ただ「マイノリティなんだろう」と思わせるようなエピソードはそれなりにたくさんあって、自己プロデュースも兼ねつつ会話の流れの中でそのような話を出してみることがあるのです。そういう時に、相手の振る舞いから「こういうことは言わない方がいいんだろうな」みたいな雰囲気を感じ取ってしまうことがあるし、そうなればなるほど、「ありきたりな話で留めた方がいいんだろうな」という感覚が生まれたりもします。
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気を遣っているつもりなんだろうけど、「真逆の結果になってるよ」っていつも思っちゃう
「LGBTQ」が分かりやすいと思いますが、世の中的に今、「LGBTQの人に言ってはいけないこと、やってはいけないこと」がかなりマニュアル化されている印象があります。ただもちろん、人それぞれ受け取り方は様々です。LGBTQとは違いますが、テレビの世界では、「女芸人のブサイクいじりが許容されなくなり、女芸人が笑いを取るのに苦労している」みたいな話を聞いたことがあります。「ブサイク」と相手に伝えることも、時と場合によっては「問題ない」はずでしょう。しかし世の中の「マニュアル化」の流れの方が強いせいで、「ブサイク」という表現が一律で制約されているような状況に違和感を覚えてしまうことがあるというわけです。
確かに、昔ほどではないとはいえ、テレビはまだまだ影響力のあるメディアなので、「テレビの世界で『ブサイクいじり』を当然のようにやっていると、観ている人に悪影響を与えかねない」という理屈は理解できるし、決して間違っているとも思いません。ただ、そういう「外部への影響力」など微塵も関係しない状況でも、同じような「マニュアル化」が進んでいるような感じがするのです。「言葉狩り」という言い方の方が伝わりやすいでしょうか。マジョリティはそのような振る舞いを「配慮」と表現して推し進めている感じがします。しかし結局それは、「目の前にいる個人」を観ているのではなく、「『名称が与えられた概念』の人」という捉え方をしているだけのことであり、そのスタンスは私には「配慮」から遠ざかっているように感じられてしまうのです。
ちょっと前に観た映画『炎上する君』でも、似たような場面が描かれてたよね
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あるいは別の人物が、マジョリティに対するまたちょっと違う種類の違和感を、こんな言葉で表現していたのも印象的でした。
ヤなこと言うヤツは、もっとヤなヤツであってくれ。
これも、具体的な状況を排してセリフだけ抜き出しているので上手く伝わらないと思うのですが、とても共感できる場面でした。要するにこのセリフは、「一般的に、マジョリティであれば誰でも、『無理解』や『配慮の無さ』を有している」と理解すればいいでしょう。「マジョリティの中の一部」に問題があるのではなく、「無理解」や「配慮の無さ」は「マジョリティ」全体に広く薄く蔓延っているというわけです。この状況をどうにかする場合、「ミルクティーからミルクだけを取り除く」ような難しさがあるわけで、これもまた「マジョリティ」が生み出す「制約」と言っていいのではないかと私は感じました。
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私の中にもある「ズルさ」が引きずり出される
このように、映画の前半から中盤に掛けては、「マイノリティを描くことによって、マジョリティへの違和感を浮き彫りにする」みたいな受け取り方をしていたのですが、後半に進むにつれて、また少し違う描写が織り交ぜられることになります。これもまた、私が普段から抱いている問題意識の1つであり、しかもそれは私自身の「ズルさ」とも関係しているので、積極的には直視したくないと感じるものでもありました。
映画の冒頭からは想像できないような物語の展開だよね
今回も具体的な状況の説明は省きますが、そのことが描かれるシーンである人物がこのように語るのです。
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でも結局のところ、傷つきたくて傷ついてるだけなんじゃないかって思うんだ。傷ついている自分は、加害者じゃないって思い込みたいだけなんじゃないかって。
このセリフは、なるべく見ないようにしている自身の「ズルさ」をズバッと指摘するものだったので、ちょっとドキッとさせられました。私はこの「ズルさ」に前々から気づいてはいたのでそこまでのダメージではなかったのですが、今まで気づかなかった人からすれば、「痛いところを突かれた」みたいな感覚になるのではないかと思います。
そして、さらに具体性を排して書きますが、このセリフの後に続く「私は◯◯だから……」という認識は、私が長いこと対人関係において最も気をつけていたと言っていい事柄であり、そんな話が展開されることに驚かされました。正直この話は、自分の周りの同性に話してもまず話自体が通じません(もちろん、異性には通じます)。なので、そんな話が物語の後半の核として描かれる展開にビックリしたというわけです。
「◯◯であること」自体が持つ加害性みたいなものに自覚的でない人ってメチャクチャ多いからなぁ
若い世代は大分変わってる感じするけど、同年代とかは「なにそれ?」って言って話を終わらせそうな感じだよね
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私が「◯◯であること」はもはやどうやっても避けられないことであり、この状況に対処するとしたら、先程書いた「ミルクティーからミルクだけを取り除く」ような難しさがあると言えるかもしれません。ただそもそも、この点に問題が内在しているという事実に気づかない人が多すぎるので、そのようなスタンスが「無理解」や「配慮の無さ」を生んでいることもまた確かだと言っていいでしょう。私は普段から、そのようなある種の「加害性」を自覚しつつ振る舞っているつもりです。しかし、私が「◯◯であること」は変えようのない事実であり、「他者からの見られ方」という点での難しさを感じることも結構あります。
また、これも具体的な状況を説明しなければ理解しにくいでしょうが、
みんな笑いながらそういう話をするんだよ。真剣に話せない空気があるっていうか。
というセリフもまた、とても印象的でした。この映画を観る直前に、友人から似たような状況について話を聞いていたこともあり、余計刺さる言葉でした。これは広く捉えるなら、「被害者を『被害者』と認識しないための雰囲気作り」みたいな話であり、ジャニー喜多川の性加害問題を例に挙げるまでもなく、このような状況は社会のあちこちに蔓延っているはずです。私は、そのような雰囲気作りに加担しないように意識しているつもりではありますが、だからと言って、既に存在している雰囲気を壊すような振る舞いが出来るのかと言えば、それもまた難しいと思っています。
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昨日もテレビのニュースで、セクハラ的な行為を指摘されている人が「冗談のつもりだった」みたいに言ってる映像を見たなぁ
そういうのを見る度に、「お前の『つもり』なんかクソどうでもいいんだよ」って感じちゃうよね
私は「◯◯であること」から逃れられはしないので、意識し続けていないと、自分がいつ「加害側」になってしまってもおかしくないという自覚を常に持っています。そしてまた、私のように考える人が社会に増えることで、みんなが生きやすい世の中になるはずだとも信じているのです。
「優しさ」とは一体何を指すのか?
多くの人にとっては恐らく、ぬいサーの面々は「とても奇妙な人たち」に見えるだろうと思います。あるいは、「ぬいぐるみに話すなんて気持ち悪い」みたいに受け取る人もいるかもしれません。しかし私は、特に「優しさ」という意味でいえば、ぬいサーのメンバーの方が、世の中の大多数の人よりも「真っ当」であるように感じられるのです。
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映画の中では、色んな人が様々な場面で「優しさ」について言及しています。それらについてはここでは取り上げませんが、私の考えでは、「『私には優しく振る舞う必要はない』と相手が感じられるように振る舞うこと」こそが「優しさ」です。そしてそのようなスタンスは、広く括れば、ぬいサーの部員たちのものと同じと言っていいのではないかと考えています。
「分かりやすく優しい振る舞いをされる」のとかって、かなり嫌いだもんね
「相手の優しさに気づいてしまう」ってのが、思いの外しんどく感じられるんだよなぁ
どうしたら相手が「私には優しく振る舞う必要はない」と感じてくれるのかは、その時々でまったく違うでしょう。だから、どんな状況なのかによって「優しい振る舞い」は異なると私は考えています。しかし私には、多くの人が「優しい振る舞い」を固定的に捉えていて、「そのような決まり切った『優しい振る舞い』を取ることが『優しさ』である」と認識しているように感じられてしまうのです。
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確かに、そういう生き方はシンプルで分かりやすいでしょう。「誕生日にプレゼントをくれたら優しい」とか、「ダイエットを頑張ったのに褒めてくれなかったから優しくない」みたいに、相手の行動だけから「優しさ」を判定することが出来るようになるからです。しかし私は、そんな想像力の欠如した捉え方が好きではありません。同じ行為が、ある人には「優しさ」として受け取られるけれど、別の人にはそうは受け取られないなんてことは当然起こり得るはずです。しかし、どうもそのようには捉えられない人が多いように感じています。
「優しさ」が「固定的な振る舞い」でしか判断されないんだとしたら、むしろ「優しさ」を発揮したくないって感じちゃうんだよなぁ
そして、そういう世の中に生きざるを得ないことを理解しているからこそ、ぬいサーの面々はぬいぐるみに話に話しかけるのです。それは、「優しさ」を大いに履き違えている世界における「真っ当」な振る舞いだと私は思うのですが、皆さんはどう感じるでしょうか?
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出演:細田佳央太, 出演:駒井蓮, 出演:新谷ゆづみ, 出演:真魚, 出演:細川岳, 出演:上大迫祐希, 出演:若杉凩, Writer:金子鈴幸, Writer:金子由里奈, 監督:金子由里奈, プロデュース:髭野純
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最後に
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「あれ? 麦戸ちゃん???」みたいな感じになるよなぁ
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【衝撃】卯月妙子『人間仮免中』、とんでもないコミックエッセイだわ。統合失調症との壮絶な闘いの日々
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