目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:デヴィッド・ハーバー, 出演:オーランド・ブルーム, 出演:アーチー・マデクウィ, 出演:ジャイモン・フンスー, 監督:ニール・ブロンカンプ, プロデュース:ダグ・ベルグラッド, Writer:Jason Hall, Writer:Zach Baylin, Writer:Alex Tse
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「実話の強度」が高すぎるからこそ成立した、ちょっと信じがたい展開の物語
フィクションとして描いたら、まずまともには受け取ってもらえないだろうストーリーです
この記事の3つの要点
- 「ゲーマーをレーサーにする」という狂気のプロジェクトが生まれ、実現した背景とは?
- そんな狂気のプロジェクトが多くのレーサーを輩出し、さらにモータースポーツの世界に革新をもたらした理由
- カーレースシーンに身体が震え、人間ドラマに涙腺もやられる凄まじい作品
映画館で「体感する」のに最適な作品だろうし、王道の物語なので多くの人に受け入れられるのではないかと思います
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
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とにかくとんでもなく凄まじい物語で驚かされてしまった
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メチャクチャ良い映画でした! いやー、ビックリしたなぁ。私は「実話を基にした映画」を観るのが好きで、そういう作品を結構優先的に観ているのですが、その中でもかなり圧倒されてしまう物語でした。
なにせ、「ゲームでしかカーレースを経験したことがないのに、本物のレーサーを目指す」って話だからね
無謀にもほどがあるし、よくこんなことが、色んな企業の協力を得ながら実現したものだって思う
本作の凄さの1つは、「身体が興奮する映画」だということだと思います。いやもちろん、そういう映画は世の中にたくさんあるでしょう。しかし私は普段、「脳みそが興奮する映画」を中心に観ています。基本的には、「知的好奇心が満たされるもの」でないと興味関心を抱けないからです。しかし本作の場合、後で詳しく触れますが、「恐らく全観客が、先の展開をすべて予想できる」くらいシンプルで分かりやすい物語であり、「脳みそが興奮する」という感じではありませんでした。それでも、普段はさほど関心が持てない「身体が興奮する」という要素があまりに圧倒的で、自分でもかなり意外でしたが、その点に揺さぶられたというわけです。
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とにかく本作は、「カーレースの臨場感」が半端ではありません。私はカーレースに限らずスポーツ全般に興味がなく、もちろん観戦に行くこともないわけですが、本作『グランツーリスモ』のレースシーンには超興奮させられてしまいました。もちろん、レース展開についても「きっとこうなるだろうな」とすべて予想出来ます。ただ本作では、実際にレース会場に行ってもこんな画角では観られないだろう、映画だからこそ実現可能なアングルの映像も多々あり、その臨場感に驚愕させられてしまったのです。
会場でもこんな風に観られるなら、カーレースにも興味持てるかもって思うなぁ
スポーツって大体、現地で観ると”遠い”から、そもそもあんまり見えないよね
また本作の場合、先程も少し触れた通り、「事実の強度」がちょっと凄すぎました。「ゲーマーを実際のレーサーに育てよう」というのだから、関わった人間全員が「狂気的」であるとしか思えません。とにかく、「笑っちゃうくらいムチャクチャな実話」が基になっている作品だと言えます。さらにそのシンプルさ、そしてマンガみたいな王道中の王道展開が合わさり、ストーリー的にもかなりグッとくる作品に仕上がっているのです。
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そしてそこには、「人間ドラマ」もちゃんと詰まっています。正直なところ、「人間ドラマ」の部分はどの程度まで実話が基になっているのか分かりませんが、仮にすべてが「映画的な創作」だとしても、物語全体を貫く「事実の強度」は揺るがないでしょう。そして、ストーリー的には一層感動が増すことになるわけで、物語全体の構成も美味いと感じました。
私が観る「実話を基にした物語」って悲劇であることの方が多いから、そういう意味でも印象深かったかな
悲劇が描かれないわけではないけど、全体的には「メチャクチャ感動的な話」だからね
私は普段、「お金が掛かっていそうな大作映画」を観ません。これは、意識的にそういう選別を行っているみたいなことではなく、観たいと思う映画が多すぎて優先順位を付けざるを得ないだけです。ただ、本作『グランツーリスモ』は、映画館で予告を観た瞬間に「これは絶対に観よう」と決めました。「これがホントに実話なの!?」と感じるような物語だったからです。
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私は基本的に、常に「事実」に興味を抱いています。創作や空想にももちろん関心はあるのですが、やはり私にとって「脳を興奮させる」のは「事実」です。といって、新聞は読んでいないのですが、自分なりには色んな機会を見つけて「事実」を取り入れたいと思っています。本作は、そういう私の欲求にも合致する作品だったというわけです。
ありふれた言葉を使うけど、やっぱり「事実は小説より奇なり」だなっていつも思ってる
どんなにあり得ないことでも、「実際に起こったこと」であれば受け入れるしかないし、創作・空想とはそこが大きく違うよね
本作の基になった実話には、自動車会社の日産が関わっています。もちろん、映画のタイトルにもなっている「グランツーリスモ」はソニーが発売しているプレイステーション用のゲームです。日本企業が深く関わっているプロジェクトなのだから、国内でもっと知られていてもいいような気がするのですが、少なくとも私は、このプロジェクトが行われていた当時、この話については知りませんでした。何かしらで報じられていたかもしれませんが、あまりに情報が多すぎる世の中では、日本中が関心を持つようなニュースでもない限り、広く届かせることは難しくなっているということなのでしょう。
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だからフィクションを通じて、「こんなムチャクチャな現実が存在した」と知れたことは、私の「脳」にとってとても良かったなと思います。
映画鑑賞以前に私が抱いていた「誤解」について
さて、内容に深入りする前にまず、鑑賞以前に私が抱いていた「ある誤解」について触れておきましょう。
こういう認識をしてたから、余計「無理だろ」って思ってたって話ね
本作は、「ゲーマーをレーサーにする」という実話を元にした作品なのですが、私は「そもそもそんなこと無理だろう」と思っていました。もちろんそれは、本作の登場人物の多くも同じ感覚だったでしょう。しかし私の場合、その認識が少し違いました。
というのも私は、「グランツーリスモ」を「ファミコンのようなコントローラーで操作するゲーム」だと思っていたからです。私のこの認識を踏まえれば、「そんなゲーマーをレーサーにするのなんか絶対に無理」という私の理解も捉えやすくなるでしょう。
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しかし、知っている人には当たり前の知識なのでしょうが、そうではありませんでした。コントローラーではなく、実際に車に乗っているような感覚で操作するゲームだったのです。
要するに、ゲームセンターに置いてあるようなマシンをイメージしてもらえればいいよね
それと同じことが自宅でも出来るように、ブレーキやらハンドルやらが販売されてるみたい
そもそもですが、「グランツーリスモ」はゲームとして開発されたのではないそうです。山内一典という人物が「レースの感覚を完全に再現したい」という想いから開発がスタートしたそうで、作中でも主人公は「グランツーリスモ」のことを「ドライビングシミュレーター」と呼んでいました。もちろん、ライトなユーザーが、いわゆるファミコンみたいなコントローラーで遊ぶバージョンも存在するのでしょうが、専用のコントローラーを揃えることで、まるで「本物の車に乗っている」みたいな状況を再現できるのが「グランツーリスモ」だというわけです。
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というわけで、私が考えていた「ゲーマーがレーサーになれるはずがない」という認識はちょっと誤りがあったわけですが、とはいえ、専用のコントローラーで車を運転しているような感覚を得られると言っても、やはり無謀な挑戦過ぎるでしょう。確かに「グランツーリスモ」は、機械操作や路面状況などは完璧すぎるほど完璧に再現されているそうですが、明らかに違う点もあります。それが「G(重力加速度)」です。レース中のドライバーに掛かるGは、ロケット打ち上げ時のなんと2倍にもなるといいます。それに耐えられる身体でなければ、レース用の車を乗りこなすことなど出来ません。
って映画では説明されてたはずなんだけど、ホントかなぁ
ロケットの打ち上げは、時速40,000kmに達するらしいから、そっちの方が凄そうだよね
そんなカーレースに挑戦しようというのが、父親から「いずれこの部屋から出なくてはな」と言われるぐらいずっと部屋にいる「引きこもり」なのだから、やはり無謀も無謀だと思います。
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そして、そんな物語が「実話」だというのだから、「笑っちゃうくらい」と表現したくなる気持ちも理解してもらえるのではないでしょうか。
本作の基になったプロジェクトが、モータースポーツの世界を激変させたという事実
本作中では、「『グランツーリスモ』をプレイするゲーマー」は「シムレーサー」と呼ばれていました。恐らく、「シミュレーションレーサー」の略なのではないかと思います。そして、「そんなシムレーサーを実際にサーキットで走らせる」というこのプロジェクトは、様々な「狂気」が無ければ実現しなかったはずです。
関わる人間が全員、まともな社会人とは思えないぐらい狂ってるように見えたよなぁ
このプロジェクトに大企業が絡んでるってのが、ホント信じられないよね
そもそもですが、山内一典が「グランツーリスモ」という狂気的な「ドライビングシミュレーター」を生み出さなければ何も始まりませんでした。その後、「『グランツーリスモ』のゲーマーをレースに参加させる」という狂気的な企画が、欧州日産のある人物によって立案されます。そしてその提案に、危険を承知で日産本社がGOサインを出すのです。さらにこのプロジェクトに、かつてル・マンを走ったことがある天才ドライバーがエンジニアとして参加することも決まりました。こんな風に様々な「狂気」が集まって無謀すぎる企画が生まれ、そこに、ただゲームをプレイしていただけのゲーマーたちが参加したというわけです。
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どう考えても、全員、頭のネジが飛んでいるとしか思えません。しかしそんな「狂気」が奇跡を生んだのです。実際、「GTアカデミー」と呼ばれる、このプロジェクトを機に発足したレーサー養成所からは、本作の主人公だけではなく、多くのゲーマーが後にレーサーとなり、実際に表彰台に上がるという快挙を成し遂げました。
この成果を知ると、「『グランツーリスモ』というドライビングシミュレーターの再現度が、どれだけリアルだったのか」が理解できるのではないかと思います。「グランツーリスモ」は1997年に発売されたそうで、今から25年も前のことです。「Windows95」が発売されたのが1995年なわけで、まだまだコンピューターなどの性能はそこまで高くはない時代だったでしょう。もちろん、随時アップデートを繰り返してきたからこその性能なのでしょうが、そのような環境の中で「現実そのもの」を再現するようなシミュレーターを作り上げたことは驚嘆に値するのではないかと思います。
しかし、驚くのはまだ早いです。本作では最後に、「このプロジェクトがモータースポーツの世界を変えた」という趣旨の字幕が表示されるのですが、どういうことなのか理解できるでしょうか?
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あまりにも縁が無さすぎて想像もしてなかったけど、そりゃあ大きな変化だわって思う
モータースポーツは、車自体の性能が高くなければ勝てないし、メカニックのスタッフも多く必要なので、とにかくお金が掛かります。そしてそのような世界だからこそ、「そもそもお金を持っている人しか、モータースポーツの世界に足を踏み入れられない」という状況になってしまうのです。なにせ、カーレースの練習をするとしたら実機に乗らなければなりません。そんな機会は、一般人にはなかなか巡ってこないでしょう。
しかし、カーレースの才能を持つ人物がどこにいるかは分からないし、出来るだけ広く門戸を広げることでしか才能は掬い上げられません。そしてそのハードルを下げたのが「グランツーリスモ」だったというわけです。ドライビングシミュレーターによって、ある程度才能の有無を見極められるようになったことで、「お金を持たない者でも、才能を持つ者がモータースポーツの世界に足を踏み入れられるようになった」という大きな変化が生まれました。
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これが「世界を変えた」の意味なのです。
サッカーの競技人口が多いのは、「ボール1個あればプレイ出来る」って要素が大きいだろうからね
モータースポーツの世界で既得権益を得ていた人からすればイライラさせられる状況なんだろうけど
単に「ゲーマーをレーサーにした」だけではなく、「モータースポーツの世界を革新した」のであり、そんな実話が基になった作品というわけです。
それではそろそろ内容を紹介しようと思いますが、先に1点だけお伝えしておこうと思います。冒頭で少し触れた通り、本作は「観れば誰もが展開を予想出来る物語」だと言っていいでしょう。私は普段、「自分なりのネタバレ基準」に従って、内容にあまり触れすぎないように意識しています。しかし本作については、「展開が容易に予想できる作品だ」という点を踏まえてその「ネタバレ基準」を少し緩め、普段なら書かないような部分まで触れるつもりです。人によって「ネタバレ」の感覚は異なると思いますので、内容を出来る限り知らずにいたいという方は、これ以降の文章を読まない方がいいかもしれません。
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映画『グランツーリスモ』の内容紹介
ウェールズに住むヤン・マーデンボローは、日々部屋に閉じこもっては「グランツーリスモ」をプレイしていた。元々は近くにあるゲーミングカフェで腕を磨いていたのだが、全プレイヤーを圧倒して「向かうところ敵なし」状態になったこともあり、バイト代でハンドルなどを買い揃え、今は自室で一層の鍛錬を積んでいる。
そんなヤンを父親がサッカーに誘った。というのも、ヤンの弟が将来を嘱望されたサッカー選手なのだ。父親としては、兄にもスポーツなどで外に出てほしいと思っている。しかしヤンは当然、父親からの誘いを断った。父親はゲームばかりしている息子に「現実を見ろ」と忠告するのだが、ヤンには「グランツーリスモ」しか見えていない。
一方、日本にある日産本社に、欧州日産からダニー・ムーアがやってきて、「ゲーマーをレーサーにするプロジェクト」をプレゼンした。彼は、「今の時代、車を欲しがる人はいない。道路の先に、夢も希望もありはしないのだ。そんな時代に、日産が夢の火を灯そうじゃないか」と熱弁する。彼の提案は受け入れたが、当然条件があった。日産の車に乗った人物が事故など起こせば、すべて日産の責任になる。そのためダニーは、「優秀なチーフエンジニアを付けろ」と厳命されたのだ。
ダニーは思い当たる人物に電話を掛けるが、その全員に断られてしまう。そして残ったのは”よりにもよって”ジャック・ソルターのみだった。ジャックはかつてル・マンを走った天才ドライバーだが、その後引退、今は「キャパ」というレーシングチームで整備士をしている。なかなか気難しい人物だ。そして予想通り、ダニーの”気の触れた企画”をジャックは断った。
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しかし一方で彼は、自身が所属するチームのレーサーの横暴さに嫌気が差してもいる。傲慢で自信たっぷりで、他者のアドバイスなどまったく聞こうとしないのだ。そんな日々の中で、ダニーの「レースを金持ちから取り返そう」という言葉を思い出す。そしてジャックは結局、ダニーの計画に乗ろうと決めたのである。
こうしてチーム運営に不可欠な要素は揃った。後はゲーマーを集めるだけだ。そこでダニーは、「各国の『グランツーリスモ』の最速ラップ保持者」に案内を送った。ヤンはその情報を、ゲーミングカフェのオーナーから聞いて知る。ヤンが最速ラップを出したのが、そのゲーミングカフェのマシンだったからだ。色んな状況が重なり、予備審査のスタート時刻に間に合うかギリギリの状況に陥ってしまったが、どうにか彼は、8ヶ国から10名が選ばれた「GTアカデミー」の一員となった。
迎えた初顔合わせの日。エンジニアを引き受けたジャックは、居並ぶ10名の候補生に向かって「ゲーマーがレーサーになんかなれないことを俺が証明してみせる」と宣言した。ここに至ってもやはり、「そんなこと不可能だ」とジャックは考えていたのである。まあ、当然と言えば当然だろう。しかしジャックは、求められた役割はきちんとこなし、最終的に10名の中からヤンが日産チーム入りする人物として選ばれた。
ここからヤンが目指さなければならないのは「FIAライセンスの取得」だ。条件は、「直近6レースのどれか1つで4位以内に入ること」である。ライセンスが取得できれば、正式に日産と契約し「本物のレーサー」になれるというわけだ。
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ヤンが走るレースには、ジャックがかつて所属していた「キャパ」のいけ好かないレーサーもエントリーしている。彼らは勝敗を巡ってしのぎを削り……。
映画『グランツーリスモ』の感想
何度も書いていますが、本作はとにかく「展開が先読み出来るぐらいシンプルな物語」です。なので、映画の冒頭の時点で既に、「GTアカデミーを突破するのがヤンであること」はほぼ明らかだと言えると思います。というのも、ヤン以外のメンバーにはほとんど焦点が当たらないからです。その後の物語においても同様で、とにかく本作では「明らかにこのような展開になるだろう」ということが、誰にでも予想できるような構成になっています。そういう意味で、広く受け入れられやすい物語だと言っていいでしょう。
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にも拘らず物語全体がメチャクチャ面白い、ってのがやっぱり凄いよなぁ
この構成はホント、「実話の強度がメチャクチャ高い」っていう条件がないと成立しないと思う
一方で本作は、先読みできるほどシンプルな物語でありながら、もの凄くワクワクさせる作品でもあります。これが両立しているのはやはり、「元になっているのが『狂気的な実話』である」という要素が非常に大きいと言えるでしょう。というのも、「確かに展開は予想出来るのだが、『ホントにそんな風になるのか?』と感じてしまうような状況が多い」からです。
本作は全編に渡って、「普通に考えたらあり得ない」ような展開ばかりが続きます。物語の構成から、「明らかにこう展開するだろう」と分かるのですが、同時に、「そんなことが実際に起こったはずがない」とも感じさせられるのです。つまり、「現実の方が明らかにイカれてしまっている」ということでしょう。
現実がここまで”良い意味”で狂うのって、そうそう無いよなぁ
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本作を観ている間はずっと、「物語はこう展開するはずだけど、そんなことが起こるはずがない」という感覚に支配され続けました。そしてだからこそ、物語としての面白さがまったく失われずに済んだのだと思います。本作においてはとにかく、「この実話を映画化しよう」と決断した時点で既に「勝ち」が見えていたというか、「観客を圧倒する物語になることが決まっていた」と言えるのではないでしょうか。
さらにそこに「人間ドラマ」も加わってきます。本作で描かれる「人間ドラマ」も、シンプルで分かりやすい王道中の王道なわけですが、だからこそ観客に強く訴えかけるとも言えるでしょう。恋人との話や家族のエピソードもあるし、ジャックとヤンの師弟関係のような展開もあります。「現実とは思えないような展開」の合間に、それら「人間ドラマ」が挟み込まれ、涙腺までも揺さぶってくるというわけです。
「実話」で圧倒し、「カーレースシーン」で身体を震わせ、「人間ドラマ」で涙腺を崩壊させるからねぇ
さて、「人間ドラマ」の部分で私が最も印象的だと感じたのが、10名の候補者の中から「GTアカデミー」の勝者が最終的に決まる場面でのことでした。実はこのシーンではちょっとした悶着が起こるのですが、最終的に勝者がヤンに決まったその理由の1つには、彼がトレーニングにおいて「大きなミス」をした際の振る舞いにあるのだと思います。
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それが具体的にどのような行動だったのかには触れませんが、この場面でヤンは、自身の考えを曲げずに強硬に主張する決断をしたのです。そしてこの行動によって、ジャックのヤンに対する評価が大きく変わったのだと思います。これもまた、実話なのかは分かりませんが、フィクションだとしても構成の上手さに感心させられるし、「不可能だと証明してやる」と意気込んでいたジャックの印象を大きく変化させたという意味でもとても重要なシーンだと言えるでしょう。
他にも、「使い方は僕が教える」というセリフが出てくるシーンもとても良かったし、父と子の関係性にもグッときました。また、「どうせゲーマーだろ」としか見ていなかったメカニックがその態度を変化させていく過程もとても良かったなと思います。
どれも、よくあるっちゃあるストーリー展開なんだけどね
でもだからこそ、多くの人の心を掴むとも言えるよなぁ
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さらに、冒頭でも少し触れましたが、やはりレースシーンがとにかく凄かったです。映画のラストで、「本物のヤンが、自身のスタント役をこなした」と字幕で表記されたので、レースシーンは「本物のヤン」が演じていたのでしょう。「時速320kmという尋常ではない世界をどうやって撮ったんだろう」と思うような迫力で、繰り返しになりますが、「こんなアングルで観られるならカーレースを観戦したい」と感じられる映像でした。私は普段なかなかテンションが上がらないのですが、久々に「身体の芯から震える」ような経験をしたなと思います。
凄まじい作品でした。
出演:デヴィッド・ハーバー, 出演:オーランド・ブルーム, 出演:アーチー・マデクウィ, 出演:ジャイモン・フンスー, 監督:ニール・ブロンカンプ, プロデュース:ダグ・ベルグラッド, Writer:Jason Hall, Writer:Zach Baylin, Writer:Alex Tse
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最後に
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作品全体とはほとんど関係ない話ですが、まったく知らない人間からしたら驚きの情報が1つあります。それは、「ル・マンの開会式に、フランス空軍が協力していること」です。フランス空軍が運んだ旗が振られたらスタートとなるようで、それぐらい国民的なイベントなのだなと思います。
とにかく、圧巻の体験でした。
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国の諜報機関の職員でありながら、「イラク戦争を正当化する」という巨大な策略を知り、守秘義務違反をおかしてまで真実を明らかにしようとした実在の女性を描く映画『オフィシャル・シークレット』から、「法を守る」こと以上に重要な生き方の指針を学ぶ
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生物学の研究を一変させることになった遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」の開発者は、そんな発明をするつもりなどまったくなかった。ノーベル化学賞を受賞した著者による『CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』をベースに、その発見物語を知る
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【差別】「女性の権利」とは闘争の歴史だ。ハリウッドを支えるスタントウーマンたちの苦悩と挑戦:『ス…
男性以上に危険で高度な技術を要するのに、男性優位な映画業界で低く評価されたままの女性スタントたちを描く映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』。女性スタントの圧倒的な努力・技術と、その奮闘の歴史を知る。
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1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
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一昔前、我々は「正しい情報を欲していた」はずだ。しかしいつの間にか世の中は変わった。「欲しい情報を正しいと思う」ようになったのだ。この激変は、トランプ元大統領の台頭で一層明確になった。『ニューヨーク・タイムズを守った男』から、情報の受け取り方を問う
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既に将棋AIの実力はプロ棋士を越えたとも言われる。しかし、「棋力が強いかどうか」だけでは将棋AIの良し悪しは判断できない。11人の現役棋士が登場する『不屈の棋士』をベースに、「AIは将棋界をどう変えたのか?」について語る
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メガネファストファッションブランド「オンデーズ」の社長・田中修治が経験した、波乱万丈な経営再生物語『破天荒フェニックス』をベースに、「仕事の目的」を見失わず、関わるすべての人に存在価値を感じさせる「働く現場」の作り方
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自己啓発・努力・思考【本・映画の感想】 | ルシルナ
私自身は、仕事や社会貢献などにおいて自分の将来をもう諦めていますが、心の底では、自分の知識・スキルが他人や社会の役に立ったらいいな、と思っています。だから、自分…
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