目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ゾーイ・ベル, 出演:ブルース・ダーン, 出演:ロバート・フォスター, 出演:ジェイミー・フォックス, 出演:サミュエル・L・ジャクソン, 出演:ジェニファー・ジェイソン・リー, 出演:ダイアン・クルーガー, 出演:ルーシー・リュー, 出演:マイケル・マドセン, 出演:イーライ・ロス, 出演:ティム・ロス, 出演:カート・ラッセル, 出演:クリストフ・ヴァルツ, 監督:タラ・ウッド
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 私は、タランティーノ作品をほぼ観たことがないだけでなく、タランティーノについてもほぼ何も知らずにこの映画を観た
- 異常なほどの映画愛を持ち、異常なほど面白い脚本を書く天才による映画製作について、多くの関係者が語る
- 「こんなモノづくりに関わりたい」と思わされるほど、皆が楽しそうにタランティーノについて語っているのが印象的だった
ハーヴェイ・ワインスタインとの関係についても少し言及されるのだが、私はむしろ無くしても良かったんじゃないかと感じた
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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私はタランティーノ作品に全然触れてこなかった
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私はこれまで、クエンティン・タランティーノ監督作品をほとんど観たことがない。唯一観たことがあるのは、少し前に映画館でリバイバル上映していた映画『パルプ・フィクション』だけ。それ以外の作品については、『KILL BILL』を除けばタイトルさえ知らないほど、私はタランティーノ作品に触れてこなかった。
まずは、そのような人間がこの記事を書いているのだということを理解しておいてほしい。恐らく的外れなことも書くとは思うが、「にわかファン」ですらないので、多目に見ていただけるとありがたい。
さて私は、基本的に「変わった人間」に興味がある。というか、より正確に言うなら、「変わった人間」にしか興味がない。なのでクエンティン・タランティーノのことも、「変わった人間」として興味がある。とはいえ、彼について何か知っているというわけではない。というか全然知らなかった。私にとっては、「全然どんな人か分からないのに、何故か名前だけはちゃんと知っている人」ぐらいの存在である。
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だから本作『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を観て、色々と驚かされた。「映画オタクなんだろう」ぐらいのことはなんとなく知っていたが、「監督デビュー作がカンヌ映画祭で絶賛され、すぐさま世界的大スターになった」みたいなことはまったく知らなかったのだ。それまでまったく無名だったわけだから、凄まじい登り詰め方をしたと言えるだろう。
さらに、いきなり映画監督になったわけではなく、最初は脚本家として頭角を現したというのも知らなかったし、デビュー作を撮影するためのお金をTV出演で稼いだなんてことも知らなかった。「10作撮ったら映画監督を辞める」と公言していることも、性加害問題で失墜したハーヴェイ・ワインスタインと組んで映画を作っていたことも、撮影中にユマ・サーマンが事故で重度の後遺症を負ったことも、何も知らないままこの映画を観たのである。
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そんな私でも、この映画はとても面白く観れた。基本的にはタランティーノ監督作品や、それらに出演していた俳優たちについて語られるのだが、過去作品を観ていなくても、思わず笑ってしまうような場面が結構あるのだ。ドキュメンタリー映画で笑えるというのもなかなか珍しいだろう。ちなみに、本作にはクエンティン・タランティーノ本人は出演していない。過去映像が流れる場面はあるが、本作のために撮影したインタビューシーンなどは無いという意味だ。
とにかく楽しそうに撮影をしていることが印象的だった
映画には、出演俳優を始めとする「タランティーノ作品に何らかの形で関わったことがある人たち」がインタビューに答える形で出演する。役者以外で言うと、プロデューサーやスタントマンなどがタランティーノについて語っていた。
とにかく皆、彼のことをまあ楽しそうに語ること語ること。この「語られ方」だけでも、クエンティン・タランティーノという人物がどれほど映画人から愛されているのかが理解できるだろうと思う。
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そしてまた、彼らが語るエピソードの1つ1つが、タランティーノの「異常とも言える映画愛」を証明するものになっているとも言えるだろう。
特に、ある役者が語っていた撮影中のエピソードはとても興味深かった。そこで言及されている状況はメイキングのカメラに収められており、本作中でも使われている。それはこんな映像だ。タランティーノが「カット」と声を掛けるのだが、その後でこんな風に口にする。
完璧だ。次に進んでもいい。でももう1回撮ろう。
そしてその後でタランティーノと役者たちがある言葉を唱和するのである。私が聞き取れた範囲だと、次のような言葉を口にしていたと思う。
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Take one more because we are loving making a movie.(もう一回撮ろう。僕らは映画を撮るのが好きなんだから)
「カット」の掛け声の度にこんな風に言っているわけではないだろうが、とにかく楽しそうなのが印象的だった。まさに多くの役者が、「タランティーノの現場は楽しい」「いつも笑いが絶えない」と証言しているのだ。何ならある人物は、
撮影中もクエンティンは笑うんだ。編集泣かせだよ。
とさえ口にしていた。確かに編集泣かせだろうが、役者としては嬉しいだろうなぁ。
また、タランティーノ組のスタッフたちは「家族」のような感じらしい。実際、タランティーノ作品のスクリプターは1作目からずっと同じ人物であり、録音技師も2作目から変わっていないという。気の合う人たちととにかく楽しく映画を撮ることを最優先にしていることが伝わるエピソードと言えるだろう。
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また「家族」の話で言えば、サリー・メンケという人物を無視することは出来ないだろう。タランティーノは彼女のことを「唯一の共同制作者」と呼んでおり、タランティーノ作品すべてにクレジットされている編集技師だそうだ。残念ながら、既に他界している。本作ではタランティーノが、
狭い編集室で寂しく作業しているサリーに何かメッセージを!
と役者たちに声を掛け、それを受けてみんなが「はーい、サリー!」とカメラに向かって言っているメイキング映像が使われていた。映画製作について詳しくはないが、普通は、役者が編集技師の存在を認識していることなど無いのではないかと思う。そういう意味でもタランティーノは他とは違う感じがするし、やはり「みんなで楽しく映画を撮ろうよ!」という気持ちが強いのだろうと感じた。
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ちなみに、撮影期間中に、スマホを携帯していることがバレたら「クビ」だそうだ。スマホは預けるルールになっているのだという。これもまた、「楽しく映画を撮る」ための環境づくりの1つなのだろう。
脚本が異常に面白い
タランティーノが有する「映画の才能」について多くの人が語っていたのが、「とにかく脚本が異常に面白い」ということだ。誰もが「圧倒的」だと絶賛していた。タランティーノが監督を任されるようになったきっかけも、最初に書いた脚本が注目されたからであり、やはりなんと言ってもストーリーテリングが天才的だと誰もが評価しているようだ。
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また他の特徴として、「黒人や女性をフラットに、特には力強く描く」ことも挙げられていた。いわゆる「偏見」みたいなものが一切無い状態で脚本を生み出せるのだそうだ。ある人物は、
誰にも扱えないテーマやキャラクターを使いこなす。普通の白人には無理だ。
と言っていたし、別の人物も、
クエンティンはどんなテーマでも作品を生み出すことが出来る。
と、その凄まじさを称賛していた。
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このように、クエンティン・タランティーノは自ら脚本を書き上げるタイプの映画監督だが、しかし、脚本の段階でガチガチに物語を固めてしまわないようにしているのだそうだ。「役者たちが、物語を膨らませられる余地を作る」という言い方をしていた。最終的には、役者の存在も含めた上で物語を完成させるというわけだ。これもまた、現場を楽しむタランティーノなりの工夫なのかもしれない。
さて、本作とは全然関係ないが、以前テレビ番組で、三谷幸喜が自身の脚本の作り方について語っていたのを思い出した。彼はまず、演じてほしい役者を思い浮かべ、「その役者がどんなことをしたら面白いだろうか?」という発想から、何か印象的なワンシーンをイメージするのだという。そしてその後で、そのイメージしたシーンが成立するように全体の物語を組み立てる、みたいに言っていた。タランティーノとはまた少し違うかもしれないが、彼もまた「役者の存在抜きに脚本は完成しないタイプ」だと言っていいかもしれない。
映画愛に溢れすぎた監督
他にも色々と印象的なエピソードはあったのだが、役者もこなすスタントウーマンが語っていた話は、タランティーノの「映画愛」を如実に示すものに感じられた。それはこんな話である。
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ある映画で、カースタントのシーンがあった。車にスタントの女性を実際にくくりつけ、そのまま走らせたのだ。その後、そのカースタントのシーンを観た彼女は、「なんて素晴らしい映像なんだ!」と感動した。しかしタランティーノから、「このシーンの問題点は?」と聞かれたのだという。彼女は「問題なんかない、完璧よ」と言ったのだが、タランティーノはさらにこう返したそうである。
君の顔が映ってないから、撮り直しだ。
スタントの女性は、その作品には役者として出演していたのだが、つい普段の癖で顔を隠してしまったのだ。「スタントウーマンは顔が映ってはいけない」と考えたプロ意識の為せる技である。しかしタランティーノは、「君がやっているのだと伝わることに意味があるんだ」と言って、実際にそのシーンを撮り直したそうだ。良い話はたくさん出てくるのだが、この話は特にタランティーノの「愛」に満ちたエピソードに感じられた。
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さて、ある人物が、
望むと望まざるとに拘わらず、彼の熱意は周囲に伝わる。
と口にする場面がある「望むと望まざるとに拘わらず」という表現から、「時には暑苦しく、鬱陶しいんだよなぁ」みたいな雰囲気も滲み出ているわけだが、確かに、ドキュメンタリー映画を観ているだけの私にも、その「熱意」は伝わってくる感じがした。やはり「楽しそう」なのが良い。モノづくりはこうであるのが理想だよなぁ、と改めて実感させられる作品だった。
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冒頭でも少し触れたが、クエンティン・タランティーノはハーヴェイ・ワインスタインと組んで映画製作をしていたようで、それもあって本作では少し、ハーヴェイ・ワインスタインについても触れられている。そして私の感触では、映画のその部分だけ、やはりちょっと浮いているような感じがした。
もちろん、ハーヴェイ・ワインスタインの話を取り上げた理由は理解できる。タランティーノにとって盟友のような存在だったことは皆が知っているのだから、クエンティン・タランティーノを扱うドキュメンタリー映画でハーヴェイ・ワインスタインに触れなかったら、「何か隠しているのか」「後ろめたいことがあるのか」みたいな受け取られ方になってしまうだろう。それを避けるためには仕方なかったと思う。
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『パルプ・フィクション』の良さは私にはよく分からなかったが、本作はタランティーノの魅力が存分に伝わるドキュメンタリー映画だったし、また映画限らずだが、「こういうモノづくりに関わりたいよなぁ」と感じさせる作品でもあった。
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1人で火星に取り残された男のサバイバルと救出劇を、現実的な科学技術の範囲で描き出す驚異の映画『オデッセイ』。不可能を可能にするアイデアと勇気、自分や他人を信じ抜く気持ち、そして極限の状況でより困難な道を進む決断をする者たちの、想像を絶するドラマに胸打たれる
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才能・センスがない【本・映画の感想】 | ルシルナ
子どもの頃は、自分が何かの才能やセンスに恵まれていることを期待していましたが、残念ながら天才ではありませんでした。昔はやはり、凄い人に嫉妬したり、誰かと比べて苦…
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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