目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:唐沢寿明, 出演:小雪, 出演:ボリス・シッツ, 出演:アグニェシュカ・グロホフスカ, 出演:ミハウ・ジュラフスキ, 出演:ツェザリ・ウカシェヴィチ, 出演:塚本高史, 出演:濱田岳, 出演:二階堂智, 出演:板尾創路, 出演:滝藤賢一, 出演:石橋凌, 出演:アンナ・グリチェヴィチ, 出演:ズビグニェフ・ザマホフスキ, 出演:アンジェイ・ブルメンフェルド, 出演:ヴェナンティ・ノスル, 出演:マチェイ・ザコシチェルニ, 出演:小日向文世, Writer:鎌田哲郎, Writer:松尾浩道, 監督:チェリン・グラック
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 外務省は杉原千畝を退官に追い込み、日本政府が彼の功績を認めたのは死後のことだった
- モスクワを夢見た青年は、何故ソ連入りを果たせなかったのか?
- 彼自身にはデメリットしかない人助けのために、すべてを擲った凄まじい決断
なかなか彼のようには生きられないが、こんな風に生きたいと思わせてくれる生き様
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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この映画で描かれるのは、第二次世界大戦中にドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人を救うため、リトアニアの領事館員として大量のビザを発給し、外務省の訓令に反して多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝だ。彼の名前やその功績については、多くの日本人がよく知っているだろう。しかし、その詳しい背景まで知っている人は、あまり多くないだろうと思う。
映画の冒頭は、1人のユダヤ人が日本の外務省を訪れる場面から始まる。「センポ・スギハラ」を探していると問い合わせるが、「そんな人物は存在しません」と言われてしまうシーンだ。
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杉原千畝の本名は「すぎはら・ちうね」だが、リトアニアの人には「ちうね」は発音しにくかったそうで、自ら「せんぽ」と名乗っていた。名前が違ったから「そんな人物は存在しません」という回答になったという理由もあるとは思う。しかし外務省は、戦後まもなく杉原千畝に「退職通告書」を送付し、彼を辞めさせている。映画では、日本政府が杉原千畝の功績を認めたのは2000年のことだったと説明された。彼は1986年に亡くなったので、生前は、少なくとも国内では評価されなかったのだろう。このことも、「そんな人物は存在しません」という回答の背景にあったのではないか。
そんな杉原千畝が、どのような経緯でリトアニアに行き着き、そこでビザを発給することになったのか、その人生が描かれていく。
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常に日本のことを考えていた杉原千畝は、いかに「ユダヤ人へのビザ発給」を決断したのか
結果として祖国に評価されずに生涯を閉じることになった杉原千畝は、常に日本のことを考えながら世界を見ていた。世界を理解することで、日本をもっと良くできると考えていたのだ。
だから彼は、モスクワ赴任を切望していた。モスクワを見ることで世界を知れると考えていたからだ。だから、モスクワに行くためならなんでもやってやるという気概を持っていた。
満州で関東軍と手を組んだのも、そのような思いからだったという。まず満州で何らかの成果を出す。そしてそれを足がかりにしてモスクワへ。そのためなら、関東軍と手を組むことも致し方ない。そう考えていたというわけだ。
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満州国のために働いてきたのは、それが日本を良くすることだと信じてきたからです。私は、関東軍のために働くつもりはありません。
そしてこの決断は大きな誤算だった。彼は、満州での出来事をきっかけに、結果としてソ連入りが果たせなくなってしまったのだ。モスクワを目指していた杉原千畝は、大いに失望したことだろう。
彼はその後、リトアニア行きを命じられる。領事館設立のために働きかけるようにとのことだった。諜報の天才だった杉原千畝は、言葉の通じないリトアニアで情報収集を開始し、その類まれな才能を存分に発揮していく。
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そんなリトアニアで彼の目に映ったのは、大量のユダヤ人難民だ。彼らはどの国でもビザ発給を拒まれており、どこにも行き場がない状態だった。
ビザの発給には様々な条件を満たすことが必要で、杓子定規に判断すれば、ユダヤ人難民たちにビザを発給することなどできない。日本政府に問い合わせてもやはり、「条件を満たさない者へのビザ発給は認められない」との回答だった。
日本政府が「NO」と言っている以上、ビザの発給を決断すれば、外交官としての杉原千畝の人生は終わりだ。しかし、彼は考える。
鳥でさえ帰る場所がある。
故郷と呼べる場所がある。
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彼は、「日本の外交官」としてではなく、「人間」として正しい行いをしようと決意したのである。杉原千畝が残した、「大したことをしたわけではない。当然のことをしただけです。」という言葉は非常に有名だ。
「難しい決断を迫られた際、どう振る舞うべきか」を、杉原千畝の人生から考えさせられる
現在の視点からは、杉原千畝の行動はまさに称賛に値する素晴らしいものだと感じられるだろう。しかし、まさにその決断を迫られている状況下で、彼のように行動するのはとても難しいだろうとも思う。
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損得で物事を判断するのは好きではないが、杉原千畝にとって「ユダヤ人を助けること」は何のメリットもなかったはずだ。ある人物は彼に、
それに彼らは、ユダヤ人です。助けなかったとしても他国から責められることはないでしょう。
と言う。積極的に関わる必要などない、という助言だ。また、
彼らには生き延びて欲しい。しかし、ビザを発給すれば、外交官としてのあなたは終わりです。
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あなたは日本政府に従うべきです。
とも説得する。杉原千畝を「優秀な外交官」だと認めているからこそ、「ユダヤ人を助けること」ではない形でその能力を発揮してほしいと期待しているのだと伝わる場面だ。
ユダヤ人を救っても杉原千畝のプラスにはならない、それどころか明らかにマイナスでしかない。当然、彼自身もそのことは十分に承知していたはずだ。
しかしそれでも彼は、ユダヤ人を助ける決断をした。
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映画では、彼がその決断に至った明確な理由が描かれているわけではないが、もちろん、様々に示唆はされる。ユダヤ人が苦しい状況に置かれている様を目の当たりにしていただろうし、満州で杉原千畝を助けてくれた女性の生き様に思うところもあっただろう。また彼自身も、ソ連のビザが発給されなかったことで、あれほど憧れたモスクワに足を踏み入れることが叶わなかった。その悔しさも、彼の背中を押したに違いない。
彼は「当然のことをしただけ」と語っているが、やはり難しい決断だったことは間違いないだろう。それを示唆するように、杉原千畝の行動を知った周囲の人からの様々な反応が描かれる。
あなたは優秀な外交官だったのに。
ただのお人好しだったのね。
あなたは最低の外交官だ。
でも、最高の友人だ。
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物事がリアルタイムに進行している状況下では、未来の視点から「正しい」と評価される行動を取ることはとても難しい。というか、確実にそんな振る舞いをすることなど不可能だろう。杉原千畝は、時代に翻弄され、家族を抱えながらも、硬直した組織の中で駒のままでいることを止めた。そんな男の人生を知ることで、何か厳しい決断を強いられた時にどう行動すべきか、心の準備が出来るのではないかと思う。
映画に対する要望
2時間半という、かなり長尺の映画だったが、盛り込むべき要素が多岐に渡るので、制作側としてはそれでも窮屈だったかもしれない。「政府の方針に反してビザを発給した」というその人間性を描き出すために、杉原千畝という人物の様々な側面が描かれ、多面的に描かれている点はとても良かった。
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ただ、敢えて言うならもう少し描いてほしかった部分がある。それは「杉原千畝の諜報員としての力量」だ。
映画では、「杉原千畝は凄腕の諜報員だ」という事実だけが何度か示される。映画のラストでも、彼の情報分析の正確さを物語るエピソードが登場するが、しかし、彼がいかにそれを成し遂げたのかについてはほとんど触れられていない。
もちろん、映画全体のテーマからすれば省かれてしまう要素だと理解できるし、仕方ないとは思うが、「その類まれな才能を活かす場を捨ててまでビザを発給した」という重みが、もう少し伝わると良かったと感じてしまった。
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出演:唐沢寿明, 出演:小雪, 出演:ボリス・シッツ, 出演:アグニェシュカ・グロホフスカ, 出演:ミハウ・ジュラフスキ, 出演:ツェザリ・ウカシェヴィチ, 出演:塚本高史, 出演:濱田岳, 出演:二階堂智, 出演:板尾創路, 出演:滝藤賢一, 出演:石橋凌, 出演:アンナ・グリチェヴィチ, 出演:ズビグニェフ・ザマホフスキ, 出演:アンジェイ・ブルメンフェルド, 出演:ヴェナンティ・ノスル, 出演:マチェイ・ザコシチェルニ, 出演:小日向文世, Writer:鎌田哲郎, Writer:松尾浩道, 監督:チェリン・グラック
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映画では、杉原千畝が通っていた学校の自治三訣が紹介されていた。
人のお世話にならぬよう
人のお世話をするよう
そして報いを求めぬよう
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なかなかそんな機会はないだろうが、私も彼のような生き方ができたらいいと感じさせられた。
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