目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:飲茶
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ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 西洋哲学は、「別の哲学者の主張を否定すること」の連続で成り立っている
- 「哲学すること」が14歳にとって大事である理由
- 「哲学が終わった」現代では、「ニート」こそが哲学に最も向いているかもしれない
「周りと違うと/価値観が合わないこと」は恥ずべきことではなく、むしろチャンスなんだと思わせてくれる1冊
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また、本書のテーマの1つである「西洋哲学」に直結する『史上最強の哲学入門』という本の記事も書いたことがある。
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どれも信じられないぐらい面白い作品なので、是非読んでみてほしい。
本書全体の内容は、『史上最強の哲学入門』に近いと言えるだろう。西洋の哲学者を多数取り上げ、「彼らの哲学が別の哲学者への反論として生まれてきた過程」を明らかにしていく。つまり、
デカルトは◯◯と言った
↓
デカルトの主張を否定するようなことをヒュームが言った
↓
ヒュームの主張を否定するようなことをカントが言った
…
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というような流れで展開されていくというわけだ。西洋哲学は特に、哲学者の主張が小難しく感じられてしまう。だから、飲茶氏の作品に出会うまで私はほぼ理解できずにいたが、彼が「哲学者たちは、別の哲学者の否定を繰り返している」という捉え方を示してくれたお陰で、前よりは捉えやすくなった。
さてしかし、本書のそのような部分には、この記事では触れない。連綿と続く西洋哲学の歴史に触れようとすれば、どうしても、本書の内容をかなり引き写すような形になってしまうからだ。
そこでこの記事では、タイトルにもある「14歳」というポイントに絞って、本書の内容を紹介したいと思う。
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『14歳からの哲学入門』というタイトルは、「14歳向けの本」という意味ではない
世の中には、「14歳」とタイトルにつく本が多数存在する。そして大体の場合、そういうタイトルの本は「14歳ぐらいの、中学生に向けた本」だ。そしてそのことを明示するために、「14歳」というキーワードがタイトルに含まれている。
しかし本書はそうではない。少し長いが、著者が「14歳」というキーワードに込めた思いを凝縮した文章があるので引用してみよう。
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本書で語りたいことはまさにここにある。本書は、いわゆる十四歳本のひとつであるが、「十四歳のあなたたちがこれから生きていくために有用な哲学を教えますよ」という本ではない。また、「十四歳向けという名目で難解な哲学を子供でもわかるレベルまで噛み砕いて書きました、どうぞ十四歳以上の方も安心して読んでください、ていうか何歳だろうと買え」という本でもない。本書が伝えたいことは、すべての哲学は、十四歳レベルの発想、誤解を恐れずに言えば、「極端で幼稚な発想」からできているということ。どんな哲学書も難解そうに見えて、その「難解な部分(あらゆるツッコミを想定して専門家向けに厳密に書かれた部分)」を取り払ってしまえば、根幹にあるのはこの程度のものにすぎないということだ。
本書は、歴史に名だたる偉大な哲学者たちを十四歳の子供と同レベルだと断ずる本である。それは、哲学のハードルを下げて「哲学って本当は簡単なんですよ」などと言うためではない。哲学とは、もともと、幼稚な発想や誇大妄想のコジツケを「臆面もなく主張する」ことによって成り立っているものであり、十四歳頃に誰もが味わう「常識の崩壊」を乗り越えるためのものであるということを強く訴えたいからである。
つまり『14歳からの哲学入門』というタイトルは、「14歳のあなたは、『哲学すること』に向いている」という意味なのだ。これは非常に斬新な主張だと思う。
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もちろん本書も、飲茶氏の他の本と同様とても読みやすい。それこそ、14歳ぐらいなら読めるだろう。本書に登場する「難解すぎて理解できない文章」は1つだけ、「デリダという哲学者はこんなに難解な文章を書くんですよ」という例として引用された文章のみである。
なので中学生でも安心して手にとってほしいが、しかし、「14歳」の意味はそこにはない。「あなたが今14歳なら、『哲学すること』に踏み出してみようではないか」という意味なのだ。
著者は何故そんなことを主張するのか。それは、先の引用中にもある通り、「偉大な哲学者は中二病だ」と考えているからなのだ。
ただ勘違いしないでほしい。それほどの哲学を生み出せたのは、彼らが特別賢かったからではない。実際はその逆。彼らの多くは「十四歳レベルの発想」の持ち主であり、むしろそうであったからこそ当時の常識を乗り越えることができたのだ。
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このような主張には本書で初めて触れたので非常に驚かされた。
「哲学者たちは14歳レベルの発想だったのだ」という風に「哲学」を捉えると、気楽に「哲学」に触れることができるだろう。どうしてもカント・ニーチェ・デカルトなどと聞くと「凄い人」と考えたくなるが、「中二病のオッサンの主張だ」と思えば肩肘張らずにいられる。そしてその方が確かに、彼らの主張を理解しやすくなるのだ。
さらに、「哲学すること」のハードルもぐっと下げてくれるのである。
「哲学する」とは「新しい価値観を生み出すこと」
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14歳にとって「哲学」が大事な理由について、本書にはこんな文章がある。
それゆえに自分でものを考えて「自分なりの価値観」を構築していくべき時期でもあるわけだが、実は、こうした時期において一番学ばなくてはならないものが「哲学」である。なぜなら哲学とは、
「古い常識を疑って今までにないものの見方を発見し、新しい価値観、世界観を創造する学問」
であるからだ。
また、「哲学すること」についても、こんな風に書かれている。
ともかく、そうした一連の行為――旧世代の価値観を疑い、新しい価値観を生み出すこと――それこそが「哲学する」ということだと本書(著者)は強く訴えたい。
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「哲学に触れること」には様々な難しさがあるだろう。過去の哲学者たちの主張にはまず、「難解すぎてそもそも理解できない」というハードルがある。そしてさらに、仮にその内容を頭に入れることができても、「なんでそんなことを考えたんだ」という理解できなさに立ち止まってしまうことになる。
それに対しては既に、「別の哲学者の主張を否定するため」と説明した。そしてそのような納得を経ながら最終的に、「そうだとしても、こいつらマジでヤベェこと言ってるな」という感想に行き着くことになるだろう。
本書はまずこのように、「難解すぎて理解できない」から「めっちゃヤベェこと言ってるじゃん」という理解へと導いてくれるという点で非常に素晴らしい。
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そしてさらに、その「めっちゃヤベェこと言ってるじゃん」という感想に対して、「その通り。偉大な哲学者たちは、単なる中二病だった」と納得させてくれるのだ。
ここまで来ることでようやく、「過去の哲学者たちの主張のヤバさの本質」について考えることができる。それこそが、「古い価値観を疑い、新しい価値観を生み出すこと」なのだ。そしてさらに、新しい価値観を生み出すためには中二病的な視点が必要であり、だからこそ彼らは偉大な哲学者として名を残すことができたのだ、と続いていく。
こんな風に言ってくれると、「自分にも『哲学』できそうだ」と思えるのではないだろうか?
そしてまさに本書は、そのような感覚を読者に与えるために存在すると言っていいだろう。
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もちろん、知識として、あるいは興味関心から過去の哲学者の知見を取り入れるのも良いと思う。しかしそれが哲学の本質なわけではもちろんない。「哲学」とは、「当たり前を疑い、それまでになかった考えを生み出すこと」であり、それは他人の主張を頭に取り込むだけでは成し得ないのである。
そう強く実感させてくれる作品だ。
「ニート」が「悪」だと誰が決めた?
本書では、「現代においては既に『哲学』は終わってしまった」と書かれている。その意味は是非本書を読んで理解してほしいが、さらに続けて著者は、「『哲学』が終わってしまったそんな時代に、いかに『哲学』すべきか」に触れられている。
そしてそのキーワードこそなんと「ニート」なのだ。
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この意味を説明する前にまず、ここまで繰り返し書いてきた、「古い価値観を捨て、新しい価値観を生み出す」ために、どのようなスタンスが必要か考えてみよう。本書にはこう書かれている。
結局、どこかで誰かが、古い時代の価値を「お話にならない」としてポーンと捨て去ってしまわなくてはならない(言葉を重ねて論理的に否定するのではなく)。そして、誰かが、今の常識では極端で稚拙に思えるかもしれない、新しい考え方、新しい価値観を提示しなくてはならないのだ。
ここで大事なのは「ポーンと捨て去る」という点である。論理や理屈ではない形で、さもそれが当然であるかのようにデカい壁を飛び越えていくことが大事だというわけだ。
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そんな彼らこそ、今の時代にふさわしい「哲学」を生み出せるのではないか、と著者は主張するのである。
そこには、こんな理由もある。
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が、その試みははっきりいって分不相応と言える。だって、彼はただのニート(無職)にすぎなかったからだ。
ここでいう「彼」とは、ニーチェのことだ。今では偉大な哲学者として知られるニーチェも、「ただのニート」でしかなかったのである。であれば、現代のニートが何か新しい「哲学」を生み出すと期待することも、決して誇大妄想などではないと言えるだろう。
世の中は「ニート」に優しいとはとても言えないが、実は彼らこそが、閉塞感や諦めがうず高く積もったこの現代社会を、まったく違うステージへと導く存在であるかもしれないのだ。
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最後に
私は子どもの頃、「あれ、なんか周りと話が合わないぞ」と思いながらビクビクしていた。私が当たり前のように考えてしまう事柄を周りの人はどうも考えていないように思えたし、クラスメートたちが話している会話のつまらなさに驚かされたこともある。
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