目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「情報を届けること」「何かを知ってもらうこと」は本当に難しいなと思う
- 記者の拠り所である「『事実を報じる』というスタンス」が内包する難しさと、彼が抱く葛藤
- ネット上で激しいバッシングを受ける母親が追い詰められた先に辿り着く境地とは?
監督に直談判して出演が決まったという石原さとみの鬼気迫る演技に圧倒させられた
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『ミッシング』は、「娘の失踪に悲嘆する母親が抱く葛藤」と「マスコミの理屈・倫理」をリアルに描くことで「『事実』とは何か?」を突きつける作品だ
「嫌な世界だな」と思う。本作『ミッシング』を観終えた素直な感想である。
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もちろん、その感覚は石原さとみ演じる「失踪した娘を探し続ける母親」がメインの物語に対しても感じた。彼女には、主にネットを通じて様々な「匿名の刃」が突きつけられる。それらはとても現代的で狂気に満ちており、我々が生きる世界の「イカれた部分」を凝縮したものと言えるだろう。そして呼び方はともかく、それは「分かりやすい嫌悪感」だと思う。「想像しやすい」と言ってもいいだろう。この母親が浴び続ける「批判」に対しては「酷い」「あり得ない」みたいに感じる人も多いはずだし、そういう意味で「分かりやすい」という表現を使っているつもりだ。
一方で、中村倫也演じる「事実を報じようと奮闘するテレビ局の記者」を追う物語にも私は同じようなことを感じた。こちらに対しても同様に「嫌悪感」を抱く人はもちろんいるだろうが、しかし、「母親の物語」と比べれば決して「分かりやすくはない」ように思う。
「情報を届けること」の難しさ
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本作『ミッシング』には印象的なシーンが多いのだが、まずは個人的に一番印象に残った場面を紹介しておこう。それは、テレビ局の記者である砂田が知り合いの刑事と話しているシーンでのことだ。そこまででどんな話をしていたのかには触れないが、会話の流れで刑事が砂田に、「元はと言えば、あんたらが面白おかしく報道するからこんなことになってるんでしょう」と嫌味を言う。これに対して砂田が「面白おかしくなんて報じてません。事実を伝えているだけです」と反論するのだが、これに続けて刑事がさらに次のように口にするのである。
その事実が、面白おかしいんだよ。
これを聞いて私は、「なるほどなぁ」と感じてしまった。これは実に難しい問題だなと思う。
また、かなり冒頭に近い場面だが、娘・美羽の失踪をテレビで取り上げてくれる砂田に、母・沙織里が「集まった情報を見せて下さい」とお願いする場面がある。彼女としては、「情報提供者が現れること」を期待して取材に応じているわけで、まあ当然の反応と言っていいだろう。しかし砂田は彼女に対し、「個人情報が云々」みたいなことを言ってその要求を断る。その理由は後のシーンで理解できるだろう。テレビ局に戻った彼が「『根拠のない憶測』とか『誹謗中傷』とか山ほど来ましたからね」と口にしていたのだ。
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これもまた難しいなと思う。どちらにも共通するその「難しさ」は、「事実を報じること」に対するものだと言えるだろう。「事実とは何か?」という問題もややこしいのだが、一旦それは保留するとして、「事実だと確定したこと」を伝えるにしても、その「事実」が持つ性質やその時の世間の「気分」などによって、受け取られ方が様々に変わってしまうのだ。
しかしそれでも、「伝えようとしなければ何も始まらない」こともまた確かである。
沙織里は、砂田に対して度々「どうせ視聴率のことしか考えていないんですよね」と感情的に詰め寄ってしまう。観客視点では「砂田は決してそんな人物ではない」と理解できるのだが、彼女にはそこまでのことは分からないからだ。それに砂田にしても、個人の想いとは別に上司からの命令に従わざるを得ない状況もあり、そのことで沙織里から不信感を抱かれてしまったりもする。そんな時に、沙織里の「憤り」が積み重なるのだ。
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しかし彼女は、自身のそのような態度をすぐに翻し、「いつでも何でもしますので、是非取材して下さい」と頭を下げる。夫との会話でも、「砂田さんの言うことさえ聞いていれば美羽は絶対に見つかるから」と、ある種の「盲信」のような言い方で彼への信頼を表現していた。彼女もきっと、「色々思うところはあるにしても、広く知ってもらわないとやはり何も始まらない」という感覚を強く持っているのだと思う。「マスコミ」がその唯一の選択肢なのかはともかく、彼女が抱く感覚は概ね正しいように私には感じられる。
とはいえやはり、「知ってもらうこと」はとにかく難しい。それで少し脱線になるが、この点に関しては私自身ちょっと驚かされたエピソードがあるので紹介したいと思う。
一回り年の離れた友人と飲んでいたのだが(彼女は当時28歳ぐらいだったんじゃないかと思う)、その日は、当時「社会現象」と言っていいレベルで話題になっていた(と私は認識している)ドラマ『VIVANT』の最終回の放送日だった。なので私は、「今日は『VIVANT』の最終回の日だから、後でTVerで観ないと」みたいなことを言ったのだが、その時彼女は「『ヴィヴァン』って何?」と口にしたのだ。『VIVANT』のことを知らなかったのである。
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繰り返すが、この日は「初回放送日の夜」とかではなく「最終回放送日の夜」だった。このドラマは個人的な体感では、SNSを含め、最終回に向けてどんどんと盛り上がりが加速し、前述した通り「社会現象レベル」にまで話題になっていたと思う。もちろん、ドラマ自体を観ていない人はたくさんいたと思うし、私も「知ってるけど観てない」という話だったら別に驚きはしなかっただろう。しかし彼女は、「そもそもそのドラマの存在を知らない」みたいな反応だったのだ。最終回放送日まで『VIVANT』の情報に一切触れずに生活してきたということなのだろう。「ネタバレを踏まないように敢えて避けてきた」とかなら理解できるが、そうではない形で「『VIVANT』の情報に一切に触れない」なんてことが可能なのかと驚かされてしまったのだ。
そして私は、それまでもある程度認識していたつもりだったが、彼女のこの反応を知った時点で改めて「知ってもらうこと」の難しさを理解した。「社会現象レベル」の情報さえ届かない可能性があるのなら、「発信者が『届けたい』と思っているだけの情報」などまず誰にも届かないだろう。だから、SNS等に大分押されているとはいえ、まだまだ一定の力を持っているだろうマスコミに頼りたくなる気持ちは理解できるし、沙織里としては砂田にすがるしかなかったのだと思う。
ただもちろん、「マスコミによる報道」にもマイナスは多い。これは別に「マスコミ」に限らず「広く知られること」自体に付随する問題だと言えるが、「ネットでの炎上」なども含め、その功罪については多くの人がイメージ出来るのではないかと思う。本作でも、その難しさは様々な形で描かれている。「広く知ってもらう」ためには「付随する不愉快さ」を受け入れる覚悟を持たざるを得ない社会であり、そのような現実に砂田や沙織里がどのように向き合っていくのかが描かれているというわけだ。
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「『事実を報じる』というスタンス」の公平性と困難さ
砂田のスタンスはかなり明快である。そしてそれは、「マスコミ」の世界に身を置く人間には少し「異端」に見えるようだ。そんな砂田の価値観が分かりやすく浮き彫りにされるシーンがあったので紹介したいと思う。
職場の飲み会でのこと。特ダネをバンバン取ってくる砂田の後輩記者が「ある政治家のセックススキャンダル」の話で場を盛り上げようとしていた。その政治家が風俗で凄いプレイをしていたという話を掴んだそうなのだ。場がその話題で湧く中、砂田は後輩の発言を踏まえつつ、「『爆笑』ってことは無いんじゃないの?」と流れに水を差すようなことを言う。そしてさらに続けて、「間違った人間を袋叩きにしていいわけじゃなくない?」と口にするのだ。
その場の空気を遮ってまで敢えて口にしたこのような感覚こそ、砂田のスタンスの核心だと言っていいだろう。彼は「マスコミ」という”かなり極端な環境”に身を置きながら、「報じることの価値」みたいなものを強く信じている。だから「自身が関わる報道では、出来るだけプラスがもたらされ、可能な限りマイナスが生まれないようにする」という信念を貫こうとするのだ。
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そしてそんな彼が「指針」としているのが「『事実を報じる』というスタンス」なのである。まだまだ「マスコミ」は力を持っているし、「何をどう報じるか」によってプラスにもマイナスにもなり得ることを自覚しているからこそ、砂田はこの「指針」を軸に自身の行動を律しているのだと思う。しかし彼は、前述した通り「その事実が、面白おかしいんだよ」と指摘されてしまう。「風俗で凄いプレイをした」という「事実」そのものに「面白おかしさ」が含まれてしまうわけで、「『事実を報じる』というスタンス」を貫いたところで、その発信から「面白おかしさ」が取り除かれたりはしない、というわけだ。この指摘に対して全面的には賛同しにくいものの、ただ「確かにな」と納得せざるを得ない気分になることもまた確かである。
さて、刑事からの「その事実が、面白おかしいんだよ」という指摘は実際のところ、美羽の事件に向けられたものだった。では、美羽の失踪に関しては一体、何が「面白おかしい」のだろうか?
ポイントは2つある。1つは、「美羽が失踪した日、沙織里が好きなバンドのライブに行っていたこと」だ。そしてもう1つが、「ライブに行くために娘を預けた沙織里の弟に、色々と良からぬ噂があること」である。本作は「娘の失踪から3ヶ月後」が物語の起点になっているためはっきりとしたことは分からないが、恐らくこの事件が報じられた際に、「その日母親はライブに行っていた」という事実も併せて伝えられたのだろう(あるいは、ネットの特定班の仕業かもしれないが)。だから沙織里は、「育児放棄してライブに行ったせいで娘を失った母親」と受け取られ、バッシングの対象になっているのだ。
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そして砂田は、そういう状況をすべて理解した上で、「地元の放送局としては、キー局が扱わなくなってからも追うべきだ」と判断し、美羽の両親の取材を定期的に続けているのである。
さて、冒頭で私は「砂田の物語にも嫌悪感を抱く」と書いたが、それは、砂田が持つ「『事実を報じる』というスタンス」がダブルスタンダードだからだと言っていいだろう。作中ではっきりとそう明言していたわけではないが、恐らく彼は後輩が掴んだ「政治家のセックススキャンダル」を「報じるべきではない」と判断しているように思う。砂田のスタンスを踏まえれば、「間違った人間を袋叩きにする」のは良くないが、「事実を事実として報じる」のは問題ないはずだ。しかしたぶん彼は、「政治家のセックススキャンダル」に対してはそう考えてはいない。そしてその一方で、同じ理屈を使って砂田は、「『事実』なのだから、美羽の失踪事件は報じるべき」と判断しているのである。
さらに、恐らく砂田自身もこの矛盾に気づいているはずだ。そしてだからこそ、がんじがらめになっている。「事実を報じる」というスタンスを手放せば、失踪事件を取り上げる理屈を失ってしまう。しかしそのスタンスを貫くのであれば、「政治家のセックススキャンダル」を報じることも受け入れざるを得なくなるはずだ。彼はこのような思考の狭間でもがいているのだろう。
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これは実に難しい問題だなと思う。「事実であれば報じていい」という主張そのものにも様々なややこしさが含まれるのだが、さらに「事実でなければ報じてはいけないのか」、あるいは「『まだ事実ではないが、報じることによって事実の可能性が高まる』みたいなこともあり得るのではないか」など、様々な方向に思考を広げられもするだろう。
沙織里を誹謗中傷する者たちは議論の余地なく「クズ」であり、それは「分かりやすい嫌悪感」だと言える。一方で、砂田が抱える葛藤は非常に分かりにくい。彼のことを「ダブルスタンダード」だと言って批判するのは簡単だが、個人的には砂田のことを責める気にはなれない。彼が抱いている「葛藤」は重要で意味があるものに感じられるし、悩み続けることでしか対処出来ない問題にも思えるのだ。
ただ、個人的に嫌だなと感じるのは、「砂田のような『葛藤』を抱かない人間」ほどするっと出世していくということだ。本作では、そんな現実も描き出される。もちろんこれは、テレビ局に限らずどんな世界でも大差ないだろう。例外も色々あるとは思うが、今の社会ではまだまだ「他人の気持ちを平然と無視出来る人」ほど仕事では評価されている気がする。そしてそんなのは、実に「嫌な世界」だなと思う。
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ホント、やってらんないよなぁ。
沙織里が抱える「葛藤」や「ままならなさ」
本作『ミッシング』についてここまで、テレビ局の記者である砂田に焦点を当てて色々と書いてきたが、本作はやはり何と言っても沙織里が主軸の物語である。そして、彼女を演じた石原さとみの演技が凄まじかった。
作中では、「沙織里が抱えているだろういくつもの『分かっちゃいるが止められない』」が描かれる。例えば、「自身に向けられる誹謗中傷を、傷つくと分かっていても見てしまうこと」。あるいは、「『自分の時間のほぼすべてを美羽のために注いできたけど、2年ぶりに開かれる推しのライブに自分へのご褒美として行くことにした』という過去の自身の決断・行動を責め倒していること」もその1つだ。さらに、「そんな自分のことを、夫・豊が責めているのではないかという邪推」もずっと捨てられずにいる。
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そんな沙織里はあらゆる場面で、彼女が置かれている状況を知らなければ誰もが「奇行」と判断するだろう行動を取ってしまう。そのどれもが鬼気迫るような振る舞いで、そしてそんな沙織里の「狂気」を石原さとみが凄まじい演技で体現していたなと思う。
私は、テレビを観ている時にたまたま、本作『ミッシング』の番宣でバラエティ番組に出演していた石原さとみを目にしたことがある。その中で彼女は、「監督に直談判して出演させてもらった」と話していた。かなりの気合いで作品に臨んだことが伝わるエピソードだろう。さらに、何で見知ったのか覚えていないのだが、「沙織里を演じるにあたって、ボディソープで髪を洗いゴワゴワにしてから撮影に臨んだ」みたいな話も鑑賞前の時点で知っていた。とにかく、体当たりで挑んだのだろうなと思う。
沙織里はあらゆる場面で、後から「ごめん」と口にすることが多かったなと思う。つまり、「感情が先立って行動してしまうが、その後冷静になって反省する」みたいな振る舞いをしていたのだ。娘の失踪に自分と同じように狼狽えているようには見えない夫・豊に対して「同じ温度じゃない」と口にした後や、母親が心配して色々と声を掛けてくれるのに「うるさい」と言ってしまった後などに、彼女は「ごめん」と口にしていた。
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彼女自身も、自分の振る舞いが「間違っている」ことは理解している。しかし、分かっていても制御できないぐらい、心がズタズタにぶっ壊れてしまっているのだ。さらに沙織里は、周囲から「狂気的」だと見られていることをはっきりと自覚してもいる。しかしそれでも、「美羽のため」という思考がすべてにおいて優先されてしまい、他のことが上手く捉えられなくなっているというわけだ。
沙織里が見せる「崩壊」から、「『事実』とは何なのか?」について考える
しかし、沙織里のそのような振る舞いはまだまだ序の口と言っていいだろう。実は、彼女はもっと壊れていくのだ。しかし、もしかしたらその「崩壊」は少し捉えにくいかもしれないとも思う。彼女は徐々に、「『カメラを通した自分』が、見ている人の感情を揺さぶってほしい」という想いだけで行動するようになっていくのだ。そしてこの点からも、「『事実を報じること』の難しさ」の議論が出来るのではないかと思う。
例えば沙織里は、砂田からの取材中カメラの前で号泣する。もちろん、「彼女が泣いていること」は「事実」だ。しかし、これはあくまでも私の邪推も込みの話なのだが、彼女はたぶん「母親が泣いている方が、見ている人の感情に訴えかけるはずだ」とも考えていたんじゃないかと思う。別に私は、「嘘泣きをしている」なんて言いたいのではない。彼女は恐らく本心から「泣きたい気分」だったはずで、「嘘をついている」なんてことは全然ないと思う。で、仮にそうだとして、じゃあ「本心から涙を流してはいるが、『泣いている方が視聴者の感情を揺さぶるだろう』とも考えている」というのは果たして、砂田基準でいう「報じるべき事実」と言えるだろうか?
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この点に関しては、別の場面の描写の方がもっと分かりやすいと思う。「誕生日祝い」に関する描写だ。しかし個人的な感覚として、この話には触れない方がいい(自分の中の基準では「ネタバレ」になる)と感じるので、詳細は伏せようと思う。ともかくこの「誕生日祝い」の描写でも、「それは果たして『事実』と呼んでいいものなんだろうか?」と感じさせられた。
「目の前で実際に行われたこと」なのだから、そういう意味で言うなら「事実」であることに間違いはない。しかし同時に、その行為は「カメラが存在しなければ行われなかったかもしれないこと」でもあるのだ。そんなものを「事実」と呼んでいいのだろうか?
実に難しい問題だなと思う。
話は変わるが、以前、大学時代の友人でもある雑誌の編集者から興味深い話を聞いたことがある。ダイエットの特集を組む際に、「テーマとして取り上げるダイエット法」を実践してもらう被験者を集めるのだが、実際に雑誌に載せる人数よりも多目に声を掛けるのだという。それで被験者たちには、「体重の減少幅が大きな人を載せます」と伝えるのだそうだ。被験者としては当然、雑誌に載せてもらえる方がいいだろう。「だから『指定のダイエット法』以外のことも実践して体重を落としてくるだろう」みたいなことを言っていたのだ。「被験者はきっとそんな風に行動しているだろうけど、黙認している」というのが編集部のスタンスのようだ。この話にも近いものを感じる。もちろん、「指定のダイエット法を実践している」のだから「その方法によるダイエット成功」を「事実」と捉えるべきかもしれない。ただ、「指定のダイエット法以外のダイエットに繋がり得る行動も行っている」としたら、果たしてそれは「事実」と呼べるのだろうか、とも思う。
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「事実」という言葉は、「輪郭がはっきりと定まった出来事」みたいな印象を与えるが、決してそんなことはない。「事実」は結局、「誰がどのようにそれを捉えるか」でまったく変わってしまうものだからだ。こういうことを考える時、私は森達也のことが頭に浮かぶ。彼はドキュメンタリー映画を多く撮っているのだが、にも拘らず「客観的な事実など存在しない」というスタンスを明確に持っている。「対象が何であれ、『撮影する者の主観』を排除することなど出来ない」というわけだ。しかも映像メディアの場合には「編集」という作業も付随する。これも「事実」の解釈をいかようにでも変え得る要素と言えるのではないかと思う。
「事実」なんて結局その程度のものでしかないのである。そしてそれ故に、「『事実を報じる』というスタンス」を貫こうとする砂田の土台もぐらついてしまうのである。
さらに、「『事実』なんて結局その程度のものでしかない」という感覚を拡大解釈しているかのような、「『俺の主観』こそが事実なんだ」みたいな気分で放たれる誹謗中傷が沙織里を追い詰めもするのだ。ホントに「やってられるか!」みたいな現実が描かれる作品だし、「嫌な世界」だなと思う。
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最後に
本作では沙織里と砂田に特に焦点が当てられるのだが、そうではない場面でも印象的なシーンが色々あった。「沙織里が食いついた、警察官の『気持ちは分かりますが』という言葉や「『俺が◯◯に誘わなかったら』と口にする人物の後悔」あるいは「『△△が頭に浮かびませんか?』という、その場の雰囲気にはまったくそぐわないものの実にリアルだった発言」など、色んなシーンが印象に残っている。
本作は、第三者目線で言えば「よくある失踪事件」でしかない出来事をきっかけにして動き出す物語を、沙織里や砂田から遠いところに生まれた「さざ波」も含めて描き出しており、私たちが日々目にする「よくある事件報道」の背景を様々に想像させる作品だったなと思う。こんな「嫌な世界」で私たちは生きていかなければならないというわけだ。
そんなわけで、石原さとみの凄まじい演技に圧倒され、さらに、「不幸に見舞われた者とその周囲の状況」の細部に渡る描写に驚かされる作品だった。
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旅行者として東日本大震災で被災した小説家・彩瀬まるは、『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』でその体験を語る。「そんなこと、言わなければ分からない」と感じるような感情も包み隠さず記し、「絶望的な伝わらなさ」を感じながらも伝えようと奮闘する1冊
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