目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「夢見る小学校」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
特にありません
この記事の3つの要点
- 「英語」以外の授業が存在せず、「プロジェクト」と呼ばれる「体験学習」がメインの私立小学校「きのくに子どもの村学園」の衝撃
- 「私立校だから出来るんだ」という思い込みを覆す、全国様々な公立校の興味深い取り組み
- 「学校は”楽しい場所”であるべきだ」という信念と、基本的に制約を設けない方針の文科省
時間割も通知表も宿題も校則も、全部無くしたって問題ないくらい、日本の教育は「自由」なのだと、本作を観て初めて知ることが出来た
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記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
衝撃的な教育を行う私立小学校「きのくに子どもの村学園」を描く映画『夢見る小学校』、そして様々な公立校の奮闘を描く映画『夢見る公立校長先生』
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この記事では、『夢見る小学校』『夢見る公立校長先生』という2作品を取り上げる。映画『夢見る公立校長先生』は映画『夢見る小学校』の続編的な作品ではあるが、どちらから先に観ても問題ないだろう。
どちらも物凄く興味深い作品だった。映画『夢見る小学校』では、先進的・革新的な教育を行う「きのくに子どもの村学園」という私立小学校に密着しているのだが、ここで行われている教育は非常に面白い。「教育というのは本来こうあるべきだよなぁ」と感じさせられたし、「もし子どもの頃の自分がここに通っていたらどうだっただろうか」とも考えさせられた。
さて恐らく、映画を観ながら多くの人が、「私立小学校だからこういう取り組みが出来るんだろう」と感じるのではないかと思う。だからだろう、映画『夢見る小学校』では後半に少し、「チャレンジングなことをしている公立校」も扱われている。そして、「そのような公立校の校長先生」をメインで取り上げたのが、続編の映画『夢見る公立校長先生』なのだ。
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実は、「公教育の枠組み」の範囲内でも、かなり自由なことが出来る。例えば、この2作品を観て初めて知ったが、「通知表」「時間割」「宿題」などはすべて、「法律等で定められているもの」ではないそうだ。学校が「自主的」に行っているものであり、本来的には無くても問題ないのだ。そして本作では、そのような「公教育の枠組み」を正しく理解している校長先生が、ルールの範囲内で行っている革新的な取り組みを取り上げているというわけだだ。
だから本作は、「公立校に子どもを通わせている人」も含めた、「既に親である、あるいはこれから親になるつもりがあるすべての人」が観るべき作品だと思う。私は別に、親でもないし親になるつもりもないのだが、確かにそんな私にも「知識」としてとても興味深い作品だった。しかし、私が「親に観てほしい」と考えるのには、もっと実際的な理由がある。
というのも、「親が文句を言いさえしなければ、公立校は何だって出来る」からだ。この「文句を言う」というのは、実際に言うかどうかは関係ない。何故なら、学校側が「こんなことをしたら保護者から文句が出るかもしれない」と考えた時点で、先進的・革新的な取り組みは行われなくなってしまうからだ。
だから大事なのは、「文句を言うつもりはない」と明確な意思表示をすることだろう。映画を観れば、その必要性がとても強く理解できるはずだ。そんなわけで私は、「既に親である、あるいはこれから親になるつもりがある人」は全員観るべきだと思う。
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それではまず、私が以前読んだ本の話をしながら、「環境の重要さ」について触れていくことにしよう。
「世界一の技術を持つ中小企業」と「東大生に勝った女子高生アイドル」はいかにして生まれたのか?
私は以前、『先着順採用、会議自由参加で「世界一の小企業」をつくった』(松浦元男/講談社)という本を読んだことがある。愛知県の樹研工業という中小企業を取り上げた作品だ。極小精密部品の製造では国内トップメーカーであり、世界的に見ても「この会社でしか作れないもの」があるくらい技術レベルの高さで知られているという。
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さて、そのような会社なのだから、「凄腕の技術者を中途で採用する」など、技術者の確保に力を入れていると考えるのが普通だろう。しかしなんとこの会社の採用は、「面接に来た順」だという。性別、学歴、年齢、能力、人種など一切関係なく、「応募があった順に人を採用していく」という、普通では考えられないようなやり方をしているのである。
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しかしそんなやり方だと、入社時の能力にはかなりバラツキがあるはずで、だとすれば、その後の業務に支障を来たしてもおかしくないと感じるだろう。しかしまったくそんなことはないそうだ。例えば、高校時代にまったく数学が出来なかった女性は、入社から数年後には独学で大学受験レベルの問題が解けるようになったという。中卒の工場長は「歯車理論」について独学し、海外の世界的権威から大学院卒だと思われていたというレベルにまでなった。入社時にまったく英語を喋れなかった者も、いつの間にか英語で外国人と交渉するようになっていたのだそうだ。
そんな凄まじい変化をもたらしている要因は、間違いなく社長のモットーにあるだろう。「チャンスとモチベーションを与えること」を明確に意識しているのだそうだ。それによって社員は独自に成長し、会社は結果として世界に類を見ない技術を持つ企業へと成長した。まさに「環境が人を成長させた事例」と言っていいと思う。
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さて、もう1冊紹介しよう。『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』という本で、私は観たことはないが、NHKの「すイエんサー」という番組のプロデューサーが書いている。タイトルから想像出来る通りの内容で、「女子高生アイドルが、東大生とガチの知力バトルをして勝ってしまった」というその凄まじい軌跡が描かれている作品だ。
著:村松秀, イラスト:五月女ケイ子
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本書の冒頭には、実際に東大生と勝負をして勝利した対決の模様が描かれている。与えられたお題は「ペーパーブリッジ」。ルールは簡単で、「A4の紙15枚だけを使用して『橋状の構造物』を作成し、より強い荷重に耐えられた方が勝ち」というものだ。バリバリの知力バトルである。集められた「すイエんサーガールズ」は、お世辞にも勉強が出来るとは言えない女子高生アイドルであり、普通に考えて彼女たちに勝ち目があるとは思えない。
しかしなんと「すイエんサーガールズ」はこの勝負に圧勝したのである。東大生が作った構造物よりも3倍の荷重に耐えたのだ。この結果には番組スタッフも驚愕したという。そして、この勝利が「まぐれ」ではないことを確かめるべく、京都大学・東北大学・北海道大学など様々な大学生と対決を行い、最終的に5勝4敗と勝ち越す結果で終わった。ちょっと驚くべき結果と言えるだろう。
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しかし何故彼女たちは大学生に勝つことが出来たのか。その背景には、「すイエんサー」という番組内で行っていることが関係していると言えるだろう。彼女たちはいつも、何も知らされずに集められ、そして唐突に訳の分からないお題が与えられる。例えば、「パスタを食べるときにソースの飛び跳ねをなくしたい!」「バースデーケーキのロウソクの火を一息だけで消したい!」「スイカの種がまったく入らないようにカットしたい!」と言ったような感じだ。そして「正解に辿り着くまで収録が終わらない」という地獄のような状態に放り込まれるのである。
彼女たちには途中で、「意味不明」としか言いようがない「謎のヒント」が与えられる。そして、それ以外には何の情報もない。その状況下で、訳の分からないお題の「正解」を導き出さなければならないのだ。
そのためにはとにかく考えるしかない。番組プロデューサーはこれを「グルグル思考」と呼んでおり、「この『グルグル思考』を日頃からやり続けたお陰で、東大生に勝つような発想を身につけることが出来たのだろう」と書いていた。
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さて、この2つのエピソードから私が主張したいのは次のようなことだ。
大人でも、制約のない環境が与えられれば、その能力は飛躍的に開花する。であれば、子どもだったら余計そうなるはずだ。
そしてまさに、そのような考え方をベースに教育を行っているのが、映画『夢見る小学校』で扱われる「きのくに子どもの村学園」なのである。
「きのくに子どもの村学園」という凄まじい衝撃
「きのくに子どもの村学園」は全国に5校、山梨・福井・和歌山・福岡・長崎にあるのだが、映画の中で主に映し出されるのは山梨にある学校である。
本当に、凄まじく衝撃的だった。
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壁に貼られている時間割を見る限り、この学校には「英語」以外の授業らしい授業は存在しない。国語・算数・理科・社会を教えるための時間など無いのだ。では児童たちは一日の大半を何に費やしているのか。それが「プロジェクト」と呼ばれるもので、いわゆる「体験学習」である。
児童たちは、「料理」「大工」「工作」「演劇」「伝統から学ぶ」の5つの中から、自らの意思で何か1つのクラスを選ぶ。この学校では、この「クラス」単位ですべての行動が決まるため、学年ごとに区分けされるのではなく、1年生から6年生までが「同じクラス」に所属するという構成になっている。
では、それぞれのクラスでどのようなことが行われているのだろうか。
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例えば「料理」なら、まず1年間のテーマを決めるところから始まる。もちろん決めるのは児童たちだ。大人(先生)は口を出さない。そして、そのテーマが「麺」に決まれば、「そばの実を育てる」ことからプロジェクトが始まるのである。もちろんその計画を主導するのも子どもたちだ。1週間の時間割の中で、どの時間に種まきし、どの時期に収穫するのかというスケジュールを決めるのである。決定はすべて投票によって行われ、大人にも投票権があるのだが、それは児童たちと同じ1票だ。完全に民主的なプロセスで決められるのである。その後子どもたちは、採取したそばの実を使って蕎麦づくりを始めるのだが、どうも上手くいかない。そこで子どもたちは、自ら県内の蕎麦店に連絡をし、蕎麦打ちやつゆの作り方などを取材に行くというわけだ。
「大工」の場合にはなんと、学校の渡り廊下の屋根やテラスなどを児童自ら作る。もちろん、「作るもの」や「設計」も子どもたちの主導であり、大人が口を出すことはない。作業ももちろん子どもたちが行い、のこぎりで木を切り、電動ドライバーでネジを入れ、高いところに登って屋根に板を貼っていくのである。
これを小学生がやっている光景は、本当にちょっと衝撃的だった。本作では、ナレーションを務めている吉岡秀隆が「日本一楽しい学校」と紹介している。確かにその通りだろう。こんな楽しい学校はなかなかないと思う。
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例えばこの学校には、「椅子に座る」みたいな規則はない。だから子どもたちは、話し合いをしている時に思い思いの状態でいる。廊下に寝転んでいたり、机に突っ伏していたり、大人におんぶしてもらったりもするのだ。とにかくすべてが、本人の自主性に任されているのである。
また大きな特徴として、「『先生』という存在はいない」という方針が挙げられるだろう。だからここまで、「大人」という表記をしてきた。「先生」と「生徒」だと、そこに必然的に上下関係みたいなものが生まれてしまうが、この学校ではそれをかなり意識的に取り払おうとしている。だから基本的に、「大人」と「子ども」の垣根はない。もちろん、「大人だから意見が通りやすい」とか「大人の意見だから従わなければならない」みたいなことも一切ないのである。大人でさえ、自ら意見し、子どもたちから賛同を得なければ、その主張が通ることはないのだ。
とてもフェアだなぁと思う。私には、とても理想的な環境に映った。
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「君は何をしてもいいし、自由である」というメッセージこそが安心を生み、成長に繋がる
「きのくに子どもの村学園」の学園長であり、子どもたちから「ほりさん」と呼ばれている堀真一郎は、密着中に何度も印象的な言葉を口にする。その中でも一番響いたのは次のようなものだ。
(普通の学校や社会では)「自由には責任が伴う」と言ってしまう。でもここでは、「大人が責任を取るから思いっきりやってくれ」と伝えています。「児童に責任が伴う」というのは、この学校では”タブー”なんです。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
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言うのは簡単だが、これほど難しいこともないだろうと思う。
心理学の世界に、「心理的安全性」という言葉がある。ざっくり説明すれば、「『どんな言動をしても批判されたり馬鹿にされたりしないだろう』と感じられている状態」となるだろう。この「心理的安全性」が低いと、例えば「不正の隠蔽」など様々な問題が起こることが知られている。また、何かで読んだのだが、チームマネジメントにおいて「成果」との相関関係が最も高かったのが「心理的安全性」だったと、グーグルが自社の調査で明らかにしたという話もあったはずだ。このように、どんな組織であれ「心理的安全性」は非常に重要なのだが、「きのくに子どもの村学園」では、この「心理的安全性」が極限まで高められていると言っていいのではないかと思う。
子どもたちは基本的に何をしてもいい。もちろん、他人を傷つけてはいけないし、そういう「大前提となる約束ごと」みたいなものはたぶんあるのだと思う。作中には、それがどのように子どもたちと共有されているのかについて触れられる場面はなかったが、さすがにそのような「絶対的な禁止事項」は用意されているはずだ。しかし、そこさえ守られていれば、あとは何をしてもいい。以前観た映画『すばらしき映画音楽たち』の中に、「映画音楽のルールは1つだけ。『ルールなどない』だ」という言葉が出てきたが、まさにそのような環境だと言っていいだろうと思う。
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あるいは、学園長の堀真一郎が、昔この学校にいた女の子の話をしていた場面も印象深い。その子は初めホームシックが強かったのだが、慣れてくると次第に、「ほりさん、私はここにいると私でいられるの」と口にするようになったという。その時、女の子は小学4年生。そんな年頃の子が「私でいられる」という実感を得て、さらにそれを言語化できたことへの驚きを込めて学園長は回想していた。
「何をしてもいい」と口で言うのは簡単だが、相手にそう感じさせるのはとても難しい。さらにそれを、学校という組織の中で、幼い子どもたち相手に実行するのは相当のハードルだろう。しかし恐らく、学校全体でそのような考えがきちんと共有されているのだろうし、だからこそ、本当に「心理的安全性」が確保された環境が作れているのだと思う。
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確か茂木健一郎だったと思うが、映画の中で、
夢中になれるもの、それを見つけることができれば、この世界にいていいんだと思える。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
みたいなことを言っていた。
あるいは、映画のラストで、
子どもたちは、自由さえあれば幸せになれる力を持っているんです。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
というナレーションが流れもする。まさにその通りだろうし、そのことを強く実感させてくれる作品だった。
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「学力」に問題はないのだろうか?
さて、親の立場からすれば、「このような教育で、学力的に問題はないのか?」と心配になるところだろう。この点については作中で、「卒業生の、高校での成績の平均」みたいな図が表示された。詳しく説明できるほどその詳細について覚えてはいないが、卒業生の学力は「かなり上位」に位置するようだ。
また本作には、文化人類学者である辻信一が出演している。何故なら、彼のゼミに「きのくに子どもの村学園」の卒業生が何人か在籍していたことがあるからだ。その中でも辻氏の印象に強く残っているのは、ある年の卒業生のトップである「総代」だった女性だという。もちろん、彼女は例外的な存在と言っていいだろうが、しかし少なくとも、「このような教育方針だからと言って、学力が劣ることはない」という事実の証明にはなるだろう。
さて、辻氏が話していたことで興味深かったのは「質問力」に関する話だ。海外の学生と関わる機会もある彼は、日本人学生が圧倒的に質問しないことに言及していた。例えば、アメリカでは相手がまだ喋っていてもお構いなくどんどん質問を繰り出すのに対して、日本ではそもそも質問する人が少ないのだそうだ。しかし「きのくに子どもの村学園」は、逆に異常なほど質問するという。とにかく、「探究心」がずば抜けているそうだ。
そんな彼が、このようなことを言う場面がある。
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問いというのは教室から生まれるわけじゃない。暮らしの中から生まれるのではないか。だから、生活の中から問いを拾える環境にいる子たちは強い。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
世の中のことにはほとんど答えなんかない。世界は問いに満ちている。だから僕たちは、死ぬまで「知りたい」という気持ちが消えない。
それなのに、問いを抑え込まれてしまったら、人生って一体何なんだろうって感じる。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
このような感覚は、私もとても理解できる。近い話だと思うが、以前観た何かの番組でマツコ・デラックスが、「昨日より、ほんの少しでもいいから新しい何かを知って死にたい」と言っていた。同じように私も、日々、「何かを知りたい」と思って生きている。私が抱くこの「知りたい欲」がどのように醸成されたのかはよく分からないが、「きのくに子どもの村学園」ではそれが自発的に生み出されるような教育がなされていると言えるだろう。そしてこのことは、「学校の勉強が出来るかどうか」以上に、社会に出てから価値を持つと私は感じる。そういう意味でも、「体験学習」重視の教育にはとても大きな意味があると言えるだろう。
さて、学力の話に戻そう。冒頭で少し触れた通り、映画『夢見る小学校』には公立校の話も出てくる。その中から、学力に関して非常に興味深い取り組みを行っている事例を紹介しよう。
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その学校は、世田谷区にある桜ヶ丘中学校。同校で長年校長を務めた人物はかなりの改革者であり、公立校にも拘わらず、「校則はすべて廃止」「『遅刻』という概念を無くす」「通知表をつけない」など、様々な改革を推進していった。生徒がやりたいと言ったことは出来るだけ実現するように努め、「浴衣でもOKな日」を設けたり、ハロウィンでは仮装して登校しても良いことにしたりするなど興味深いことを次々に行ってきた人物である。
そしてそんな改革を少しずつ推し進めた校長は、最終的に、「全校集会で決まったことは可能な限り実現する」と生徒たちに約束した。それまでは、全校集会で何か決まっても、最終的に教師がNOと言えば提案が破棄されてしまう状況だったため、全校集会がまったく盛り上がらなかったという。しかし校長の宣言以降、状況は大きく変わり、活発に意見が出されるようになる。
そしてついに生徒から、「定期テストを無くしてほしい」という要望が出たそうだ。この時、校長は内心でガッツポーズしたと話していた。何故なら、彼も前々から定期テストを無くしたいと考えていたからだ。そして本当にそれを実現し、日々の小テストのみだけは残した上で、定期テストは無くしてしまったのである。
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その結果どうなったのか。定期テストを止めた後、同校は世田谷区で学力トップに躍り出たそうだ。もちろん、「定期テストを止めたこと」との因果関係が明確に示されているわけではないと思うが、まったく無関係とも思えないだろう。このような事例を考慮してみても、いわゆる「普通の授業」を行わない「きのくに子どもの村学園」で学力が劣るとは考えにくいのではないだろうか。
では、その背景に何があるのか、少し想像してみることにしよう。
私は学生時代、結構勉強が出来た方だ。ただ、「生まれながらの天才」なんてことはまったくなく、「自主的に勉強する努力を続けたことによる秀才」である。地方の進学校で常に学年5位以内ぐらいはキープ出来ていたような気がする(昔のことはあまり覚えていないので自信はないが)。
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さて、そんな私が学力を保てていたのは、「とにかく長時間ひたすら勉強していた」からだ。これは、「そうしなければ学力を維持出来なかっただろう」という意味を含んでいる。そして大人になり、「何かを学ぶのに膨大な時間を注ぎ込めなくなった」ことで浮き彫りになったのは、「興味・関心の無いことはなかなか覚えられない」という残念な事実だ。これは恐らく、一部の「超天才」を除くほとんどの人に共通することではないかと思う。
そしてだからこそ、「自分の興味・関心に自分のリソースのすべてを注ぎ込む」ことが大事になると私は考えている。特に今の時代、なかなか「ジェネラリスト」では生きていくのが難しいだろう。突出した何かを持つ「スペシャリスト」が求められているように感じるので、時代の変化を鑑みても一層その点が重視される世の中になっているのではないかと思う。
そしてだからこそ、「きのくに子どもの村学園」のような環境が重要だと言えるだろう。まさしく「興味・関心」以外のことをすべて無視できる環境なのだ。また同じことは、定期テストを無くした桜ヶ丘中学校にも言えると思う。定期テストは普通、「興味・関心」の外側にあるものだからだ。そういうものをなるべく無くし、「興味・関心」に集中できる環境を作ったことが、結果として「学力トップ」を実現する要因になったのだと私は考えている。
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また「きのくに子どもの村学園」の良さは、「探究心」が「行動」と結びついていることにあるとも感じた。
先ほども少し触れた通り、私は「探究心」が強い方だと思う。しかし残念ながら、私の「探究心」はなかなか「行動」に結びつかない。一人で本を読んだり映画を観たりすることは普段からしているのだが、誰かに話を聞きに行ったり、フィールドワークに飛び出していったりするのは苦手なのだ。性格的な問題もあるし、そういう経験が少ないからというのも大きいと思う。
「きのくに子どもの村学園」では、自分たちで考えて行動しなければ何も始まらないのだから、必然的に「探究心」が「行動」と結びつくことになる。この環境はなかなか得難いものだと感じるし、大人にとってはなおさらだろう。それを子どもの頃から体験でき、しかも「責任は大人が取るから自由にやれ」と言われるのだから、こんな素晴らしい環境はないと思う。本当に羨ましい教育である。
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日本の教育の「許容度」は、実はとても広い
さて、「きのくに子どもの村学園」の教育方針を知って、「私立なんだからそりゃあ何だって出来るよな」と感じる人もいるだろう。しかし、その印象は正しくない。何故なら、「きのくに子どもの村学園」のカリキュラムも、きちんと文科省から認定を受けているからだ。文科省から認定を受けているのだから、「きのくに子どもの村学園」とまったく同じことを公立校がやっても何の問題も無いことになる。実際、長野県にある伊那小学校は公立校だが、机に向かって受けるような授業ではなく「体験学習」メインの教育を60年以上も行っているのだ。通知表もずっと出していないという。
公立校だって、全然出来るのだ。
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文科省は確かに、学習指導要領という形で「こういうことを教えなさい」と規定してはいる。しかしそれを「どのように教えるべきか」までは定めていない。「国語」「算数」「理科」「社会」のような授業をしなければならないというルールは存在しないのである。伊那小学校に関しては確か、「『この体験学習では算数の知識が、この体験学習では理科の知識が身につきます』という説明を文科省に対して行うことで認定を得ている」みたいな説明がされていたように思う。
公立校はとにかく、「校長が運営に関するすべての権限を持つ」と定められているそうで、そのようなメッセージは特に続編である映画『夢見る公立校長先生』で強く主張されていた。校長の権限については「学校教育法 第37条 第4項」で定められており、「『学習指導要領』をきちんと満たしさえすれば、学校運営に関する制約はほとんど存在しない」と言っていいほどである。
この2作品を観て私は、この点に最も驚かされ、また最もためになる知識だと感じた。
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冒頭でも書いた通り、文科省は「通知表」「時間割」「宿題」「校則」などについて何も規定していない。しかし、大抵の学校にはこれらが存在するし、だから多くの人が「無くてはならないもの」と考えているのではないかと思う。私もそんな1人だった。映画ではある校長が、「こんなことは、校長先生や校長先生になろうとしている人は大隊知っている」と言っていたが、裏を返せば、そういう立場にいる人以外はほとんど知らないのだと思う。
だからこそ、繰り返しになるが、「保護者のスタンス」がとても重要になってくるのだ。学校の改革の足を引っ張っているのは、実はあなたかもしれないのである。
公立校が行っている様々な挑戦
茅ヶ崎市立香川小学校は、2020年に通知表を廃止した。かなり最近の話である。前述した伊那小学校のように、昔から通知表が存在しなければ「そういうものなんだろう」と受け入れやすいと思うが、元々あったものを無くすとなると、やはり様々な反応が生まれ得るだろう。
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茅ヶ崎市立香川小学校も当然、そのように考えた。そのため、児童数1000人を超えるマンモス校なのだが、通知表を廃止するにあたっては、すべての家庭に対してあらかじめ説明を行ったそうだ。校長はその時のことについて、「説明の後、記名ありで何らかの反応が返ってきたケースが100件ほどあった」と言っていた。それ以上の情報はなかったので、賛成・反対の割合などは不明だが、しかし「わざわざ学校に何か言おう」という人は反対意見を持つ可能性の方が高いように思う。校長は、反応をくれたすべての人にきちんと対応したと話していたが、この反応が「対応しきれないぐらいの量」だったら、「通知表を無くす」という改革は頓挫したかもしれない。やはり、「保護者」のスタンスがとても大事だと言えるだろう。
さて、先ほど「定期テストを無くした」と紹介した世田谷区立桜ヶ丘中学校は、学力以外でも凄まじく改革を行っている。なにせ、「法律を破らなければ何をしてもいい」というルール以外、何の制約もない学校なのだ。服装や髪型が自由なのは当然のこと、携帯電話やパソコンの持ち込みもOKだし、何ならハンモックを持ってくる者もいる。また、「登校しさえすれば、学校内のどこで何をしていても出席扱いにする」ということになっているので、授業に出ず、図書館や校長室にいてもOKだそうだ。
印象的だったのが、不登校になったことをきっかけに桜ヶ丘中学校に転校したという卒業生の話。転校してからは毎日学校が楽しくて、今は教師を目指して勉強している最中だという。彼女は、「桜ヶ丘中学校に転校しなかったら、今もまだ引きこもりだったかもしれないし、『学校なんか要らない』と思って教師を目指したりもしなかったかもしれない」と語っていた。この話だけでも、どれほど素晴らしい環境なのか理解できるだろう。
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ある校長は、
何かやってもほとんど(文科省から)怒られはしないし、怒られたら止めればいい。
『夢見る公立校長先生』(監督:オオタヴィン)
と言っていた。学校の決まりごとのほとんどが、「なんとなく」あるいは「起こられないための予防策」程度のものでしかないということだろう。
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映画を観ながら私は、「ルールがそんな感じなら、私が通っていた学校ももっと自由だったら良かったのに」と感じた。私は別に不登校になることはなかったし、勉強が出来る方だったので生き延びる方策はギリギリあったのだが、それでも「学生時代はキツかったなぁ」と今でも思っている。大人になった今の方が、全体的には息がしやすいと感じているのだ。私の場合、「時間割や通知表などの制約」による窮屈さだけではなかったと思うが、いずれにせよ、本作に登場するような「自由な学校」に通えていたら、当時懐いていた息苦しさを味わわずに済んだのではないかと感じてしまった。
さて、作中の話で最も感心したのが、栃木県の日光市立足尾中学校の事例である。この学校はなんと、コロナ禍にあった2020年と2021年に、修学旅行や運動会を含むすべての学校行事を中止せずに実施したというのだ。そんな学校があったなんてまったく知らなかったので、物凄く驚かされてしまった。この話、「興味深い取り組みをしている事例」として、マスコミが食いついてもおかしくないように思う。もちろん、学校側がマスコミからの取材を断っていた可能性もあるが、しかし映画には出ているわけで、その可能性も低いだろう。もし、この学校について取り上げなかったことが、マスコミ側の「なんらかの忖度」と関係しているとしたら、それはとても残念なことだなと感じる。
まだまだ記憶に新しいと思うが、コロナ禍においては、「休校」や「黙食」などが政府から指針として出されていた。多くの学校が、政府のその方針に従ったはずである。しかし足尾中学校の原口真一校長は、自ら科学論文を読み漁ったり、大学の教授に自らアポイントを取って話を聞いたりと、科学的に正しい知見を収集したという。そしてその上で、「保護者からの質問はすべて私が対応する」「何かマズいことが起こったら私がすべて責任を取る」と宣言し、「すべての学校行事を止めない」という決断に踏み切ったのだそうだ。本作で取り上げられる校長は色んな意味で「挑戦者」だと思うのだが、中でもこの原口氏は最もチャレンジングなことを行ったなと感じさせられた。
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足尾中学校では結果として、恐らく教師を含めての話だと思うのだが、ずっと「感染者ゼロ」を実現し続けたそうだ。科学的な知見と、原口氏の勇敢さによる偉大な勝利と言っていいだろう。
さて、私はこの記事の中で何度か「保護者の理解こそが大事」という話をしているが、その点で最も恵まれていると言えるのが、先ほども少し紹介した伊那小学校だろう。公立校でありながら、60年以上も前から「体験学習」メインの教育を行ってきた学校である。決して「特別区」や「実験校」などではなく、全国どこにでもある普通の小学校と同じ立ち位置の学校だ。だから、「伊那小学校で出来ていることが、他の公立校で出来ない理由はどこにもない」と断言できるのである。
さて、そんな伊那小学校が「保護者からの理解」に恵まれている理由は明白だ。それは、「祖父母や両親の時代から、そのような教育スタイルが『当たり前』だったから」である。今まさに伊那小学校に子どもを通わせている親も、同じ教育で育ってきたのだ。当然、反対の声など出るはずもない。
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最近では、その名が全国的に知られるようになったこともあり、「伊那小学校に子どもを通わせたい」という動機で移住してくる人も増えてきているらしいが、基本的には地元の人が通う学校である。だから、移住者もその「カルチャーギャップ」みたいなものに驚かされるそうだ。映画に登場したある移住者は、
伊那小学校の教育が「普通」とみなされていることに、最初は驚いた。
『夢見る公立校長先生』(監督:オオタヴィン)
と語っていた。全国的にも、かなり珍しい地域だと言っていいかもしれない。
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とにかく「子どもたちの『やりたい!』を起点に教育を考える」という方針が一貫している
本作では様々な学校が取り上げられ、そこでは様々な形の「総合学習」が行われているわけだが、そのすべてに共通していると言えるのは、「生徒が『やりたい』と言ったことをやる」というスタンスだろう。ある校長は、
生徒の「やりたい」が無いと、授業が始まらない。
『夢見る公立校長先生』(監督:オオタヴィン)
とさえ話していた。その学校でも、「和紙を作りたい」という声に応えるなど様々なことを行っているのだが、中でも面白いと感じたのが、生徒からの発案で企画された「学校に泊まる」という学習だ。普通にはなかなか認められないだろうこんな提案も、「どうすればそれが実現できるのか」を教師が考え、出来る限りの範囲内でその実現に向けて大枠を整えることで成り立たせてしまう。そして、その範囲内で生徒たちが自主的に行動していくのである。観ながらホント、「学校に泊まるとか楽しそうだよなぁ」と感じたし、私もそんなことしてみたかったと思わされてしまった。
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しかし、このような「自主的な学習」がどうして成立するのか不思議に感じる人もいるだろう。私は子育ての経験はないし、教師だったこともないが、やはり「子どもは言うことを聞かない」という印象があるし、小中学生ぐらいだとなおさらではないかと思う。
ただ、映画を観て「そりゃそうだな」と納得できた。「生徒の『やりたい』から始めれば、生徒は自らルールを作るし、約束を守るようにもなる」と指摘されるからだ。確かにその通りだろう。子どもに限らないが、やはり「これをやれ」と言われたら反発したくもなるし、「どうしたらそうせずに済むのか」という方向に思考を働かせたくもなると思う。しかし、「自分から『やりたい』と言っていること」なら、そんな発想になるはずもない。だから、生徒の自主性に任せる授業が成立するというわけだ。
このような学校運営が成立するという事実を多くの教師や保護者が知れば、現場レベルでの変化は加速度的に起こるのではないかと思う。そういう意味でこの映画は、未来への希望を抱かせる作品だとも感じさせられた。
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さて、映画に登場する校長先生の中で、キャラクター的に最も面白いと感じたのは、横浜市立日枝小学校の住田昌治だ。彼が口にしていた、
校長の機嫌が悪いのは「犯罪」です。
『夢見る公立校長先生』(監督:オオタヴィン)
という言葉は絶妙だなと思う。
彼は他にも、
学校運営は「校長が機嫌良くしておく」だけでいい。
いつでも相談してもらえるように、暇そうにしておく。
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校長になって私がしたことは、校長室の机を捨てたことだけ。あとは他の人がやった。
など、校長先生とは思えないかなり自由な発言をしている。こういう人がトップにいると、下の人もメチャクチャやりやすいだろうし、組織運営としてとても正しいことをしていると感じさせられた。
日本の教育の「可能性」について、強く希望を抱かせてくれる作品だと私は思う。
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コロナ禍において「きのくに子どもの村学園」は、保護者に向けて「学習の遅れを取り戻すという発想はしません」と宣言した上で、このような通達をしていた。
優先されるべきは、子どもたちがホッとできる時間です。取り戻すべきは、子どもの楽しい時間です。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
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また、別の場面ではこんな風にも言っている。
とにかく学校は「楽しいだけ」でいいんだという考えでやっています。世の中には「がんばれ、がんばれ」って言葉が溢れてしまうけど、ここでは「がんばらなくていいよ」ってメッセージを敢えて送るようにしています。
『夢見る小学校』(監督:オオタヴィン)
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こういうスタンスもとても素敵だと思う。
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あるいは、映画『夢見る公立校長先生』には、元文科省の官僚だった前川喜平も登場するのだが、彼が文科省のスタンスについて、
現場の自由こそが教育にとって何よりも大事である。
『夢見る公立校長先生』(監督:オオタヴィン)
と表現していたのも印象的だった。映画を観る前は、「文科省が何か締め付けを行っているせいで日本の教育は窮屈になっているのだろう」と勝手に邪推していたのだが、彼の言葉を信じるならば、文科省としてはむしろ真逆の考えを持っているのだそうだ。
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だったらもっと自由にやろうよ。映画を観て私は、とにかく強くそんな風に感じさせられた。ルールの範囲内でもっとはっちゃけられることは明白だし、その方が絶対に学校は楽しくなるはずだ。そんな面白い教育者が出てくれることを私は期待している。
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『<子ども>のための哲学』は決して、「子どもでも易しく理解できる哲学の入門書」ではない。むしろかなり難易度が高いと言っていい。著者の永井均が、子どもの頃から囚われ続けている2つの大きな疑問をベースに、「『哲学する』とはどういうことか?」を深堀りする作品
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『14歳からの哲学入門』というタイトルは、「14歳向けの本」という意味ではなく、「14歳は哲学することに向いている」という示唆である。飲茶氏は「偉大な哲学者は皆”中二病”だ」と説き、特に若い人に向けて、「新しい価値観を生み出すためには哲学が重要だ」と語る
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コンパクトシティの先進地域・富山市や、起業家精神が醸成される鯖江市など、富山・福井の「変革」から日本の未来を照射する『福井モデル 未来は地方から始まる』は、決して「地方改革」だけの内容ではない。「危機意識の共有」があらゆる問題解決に重要だと認識できる1冊
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具体的には知らなくても、「日本の子どもの貧困の現状は厳しい」というイメージを持っている人は多いだろう。だからこそこの記事では、朝日新聞の記事を再編集した『増補版 子どもと貧困』をベースに、「『貧困問題』とどう向き合うべきか」に焦点を当てた
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西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』は、決して「お金」の話だけではありません。「自分が望む生き方」を実現するための「闘い方」を伝授してくれると同時に、「しなくていい失敗を回避する考え方」も提示してくれます。学校や家庭ではなかなか学べない人生訓
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お笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世は、“神童”と呼ばれるほど優秀だったが、“うんこ”をきっかけに6年間引きこもった。『ヒキコモリ漂流記』で彼は、ひきこもりに至ったきっかけ、ひきこもり中の心情、そしてそこからいかに脱出したのかを赤裸々に綴り、「誰にも優しい世界」を望む
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『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、自分が生徒に対して「権力」を持っているとは想像していなかったという教師が登場する。そしてこの「無自覚」は、学校以外の場でも起こりうる。特に男性は、読んで自分の振る舞いを見直すべきだ
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教育現場では、「子どもたちが学びから逃走する」「学ばないことを誇らしく思う」という、それまでには考えられなかった振る舞いが目立っている。内田樹は『下流志向』の中で、その原因を「等価交換」だと指摘。「学ばないための努力をする」という発想の根幹にある理屈を解き明かす
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「相談に乗る」とは、「自分の意見を言う行為」ではない。相談者が”本当に悩んでいること”を的確に捉えて、「回答を与えるべき問いは何か?」を見抜くことが本質だ。『哲学の先生と人生の話をしよう』から、「相談をすること/受けること」について考える
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元気で明るくて楽しそうな人ほど「傷」を抱えている。そんな人をたくさん見てきた。様々な理由から「傷」を表に出せない人がいる世の中で、『包帯クラブ』が提示する「見えない傷に包帯を巻く」という具体的な行動は、気休め以上の効果をもたらすかもしれない
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どんな病気も治す「奇跡の水」の存在を私は信じないが、しかし何故「信じない」と言えるのか?「奇跡の水を信じる人」を軽々に非難すべきではないと私は考えているが、それは何故か?映画『星の子』から、「何かを信じること」の難しさについて知る
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高校の美術教師からアーティストとして活動するようになった著者は、教育の現場に「余白(スキマ)」が減っていると指摘する。『飛び立つスキマの設計学』をベースに、子どもたちが置かれている現状と、教育が成すべき役割について確認する。
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