目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「どうすればよかったか?」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場方法をご覧ください
この記事の3つの要点
- 公開初日の早朝にチケットを確認した時点でほぼ満席だったため、口コミが発生する以前から話題になっていたことが分かる
- 「姉が統合失調症を発症した」「両親がその事実を認めようとしない」という家族のややこしさを切り取った本作はどのように生み出されたのか?
- 「共に医師・科学者だった両親は、なぜ姉を医者に診せなかったのか?」という矛盾が様々な形で炙り出される
「どうすればよかったか?」という問いを観客はきっと、自分事として持ち帰ることになるだろう
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
公開以来、どんどんと上映の規模を拡大していった注目のドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』は、「統合失調症になっただろう姉」を巡る、衝撃的な家族の物語である
まず何よりも、劇場が満員だったことに驚かされた
本作『どうすればよかったか?』は、公開当時は4館からスタートしたのだが、その後上映館は100館以上に拡大した。ミニシアター系の映画としてもドキュメンタリー映画としても、異例の集客・興行収入を記録しているそうだ。
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そんな映画を私は、公開2日目に観に行った。そしてその時点で既に満員だったことが、私にはとにかく衝撃的だったのだ。映画館に「◯時の回は満員です」と貼り紙がされていたので、満員だったことは間違いない。200席ぐらいあるだろう座席が埋まっている光景には本当に驚かされてしまった。
なにせ、ドキュメンタリー映画である。私自身は普段からドキュメンタリー映画を観に行くが、フィクションの映画よりもお客さんが入っているなんてことはそうそうない。「映画を観に行く」という場合、やはりフィクションの映画を指していることの方が多いだろう。だからまずは、「ドキュメンタリー映画なのにこんなにお客さんが入っている」という事実に驚かされてしまったのだ。
さらに、満員になるスピードも早かった。先述した通り私は公開2日目の土曜日に観に行ったのだが、前日の金曜の朝に翌日のチケットを確認しておこうと思って劇場のHPを覗いてみたところ(通常は、映画を観る当日にチケットをオンラインで買うようにしている)、既に5席程度しか残っていなかったのだ。だから、本当に久しぶりに、最前列で映画を観ることになった。
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「映画を観たお客さんの口コミが広まって、徐々に話題になっていった」というのならまだ理解できるが、私がチケットを確認した金曜朝の時点ではまだ映画公開前だったわけで、そもそも口コミの広がりようがない。だからこの点も本当に不思議だった。一体本作のどの要素が、これほどお客さんを集めることに繋がっていたのだろうか?
さらに、本作『どうすればよかったか?』の話題を周りの人から耳にする機会も多かった。私には「映画友達」みたいな人はほとんどいないので(多少はいるが、ドキュメンタリー映画を観るという人はいない)、映画以外の形で関わりがある人の話なのだが、そういう「普段映画をそこまで観ていないだろうし、映画の情報を追ってもいないだろう人」の口からも本作のタイトルを聞く機会が多かったのだ(どの人も、実際に観たというわけではなく、タイトルを知っているだけだったが)。
本作と比較的近いタイミングで公開されたドキュメンタリー映画で言うと、「和歌山毒物カレー事件」を扱った映画『マミー』は、色々あって公開前にネットニュースになっていたし、そもそもの題材が強いので、劇場が満員だったことにもさほど驚きはしなかった。しかし本作『どうすればよかったか?』は、監督である藤野知明が自分の家族を撮影したという、実にミニマムな作品なのだ。また、彼の家族は北海道に住んでいるので、「藤野家と関わりのある人が劇場に大挙していた」なんてこともないはずである。
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だから本当に、本作『どうすればよかったか?』の大ヒットは、私にはとても不思議に感じられたのだ。もちろん、とても良いことである。ドキュメンタリー映画を好んで観ている人間からすれば、「話題になっているから」みたいな理由だとしても、ドキュメンタリー映画に触れる人が増えるのは嬉しい。ただそれはそれとして、「分かりやすく”引き”があるわけではない家族ドキュメンタリー映画が、公開前からどうしてここまで話題になっていたのか?」については、その背景を知りたいものだなと思う。
「『統合失調症を発症したと思われる姉とその家族』を映し出す映画」が生まれた理由と、藤野家についてのざっくりした説明
さて、本作『どうすればよかったか?』の中心にいるのは、監督・藤野知明の姉・雅子である。というわけでここからはしばらく、「姉の発症と家族の対応」、そして「それに違和感を覚えた監督がカメラを回し始めるまで」の流れについて書いていきたいと思う。
姉は医学部に通っていたのだが、4年生で行う解剖実習に失敗した頃から、妄想のような主張をし始めるなど少しずつおかしくなっていったという。そして監督は自ら調べ、「姉はどうやら統合失調症を発症したようだ」と認識するに至った。もちろんこれは、治療が必要な病気である。
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しかし、両親は姉を医者に診せようとしなかった。というか、「姉が統合失調症を発症したのかもしれない」という事実そのものを認めようとしなかったのだ。そして驚くべきことに、両親は共に研究者なのである。自宅にはなんと「蛍光顕微鏡」や「オシロスコープ」などがあり、冷蔵庫は最下段以外すべて薬品など研究に使うものが入っていた。父親は医学部を卒業した後に病理医となり、母親も同じ大学で研究を続けていたという。つまり、彼らは一般的な人と比べて、科学や医学に関する知識を圧倒的に持っていたというわけだ。
そしてそんな2人が揃って、姉の統合失調症を認めなかったのである。どこの誰に相談したのか結局監督には分からなかったようだが、両親からは「医者が言うには何の問題もない」と説明されたそうだ。もちろん、姉を病院に連れて行ったわけではない。医者に診せていないのだから、この時点ではまだ統合失調症かどうかの確定していなかったわけだが、少なくとも監督の目には治療が必要に思えた。しかし両親は、頑なにそれを拒んだのである。
まだ学生だった監督は、どんどんおかしくなっていく姉の様子を見ながら、「夜が明けるのが怖い」という感覚を日々抱いていたと話していた。朝が来ればまた、「堂々巡りの1日」が始まってしまうからだ。この表現には、「訳のわからないことを口にする姉への対応」だけでなく、「聞く耳を持たない両親の説得」みたいな意味も含んでいるのだろう。そして、そんな1日が始まってしまうことが日々憂鬱だったそうだ。
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さらに、当時はまだ統合失調症について詳しくなかったこともあり、監督は「姉が暴れて、自分に襲いかかってきたらどうしよう」みたいなことまで考えていたという。もしそんな状況になれば、自分の身を守るために反撃するしかない。でも、それでも落ち着かなかったら? やはり殺すしかないのだろうか? そんなことまで考えていたと話していた。彼にとってはリアルな想像だったのだろう、その後監督は「精神疾患を持つ親族を殺した場合の罪」について調べ、その結果「割に合わないから止めよう」という結論に至ったのだそうだ。そんな思考に行き着いてしまうほど追い詰められていたのである。
そんなわけで彼は、両親を説得できないまま実家を離れることになった。神奈川県にある会社に就職が決まったのだ。監督は、「実家から離れられれば別にどこでも良かった」と言っていた。姉とも両親とも話が通じない生活は、もう限界だったのだろう。そしてそのタイミングで彼は、初めて「おかしくなった姉の様子」を記録することにした。1992年のことである。映像ではなく音声のみだが、この時の感覚について監督は、「このまま何もしなければ何の記録も無くなってしまう」と説明していた。そして本作『どうすればよかったか?』は、その時に録音した音声から始まるのだ。監督の記憶では、姉に最初の発作が出始めたのが1983年だったそうなので、姉はこの録音の時点で既に10年近く放置されていたことになる。
監督はその後、お金が貯まったこともあり映像の専門学校に入学、そのタイミングでカメラも購入した。そして2001年から、実家に帰省する度に家族を撮影することにしたのである。自分たちにカメラを向ける息子について両親は「インタビューの練習のための撮影」みたいに考えていたそうで、そんなことが続く内に「息子がカメラを回すこと」を当たり前のように受け入れていったのだと思う。
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そして、2021年頃まで機会がある毎に撮り溜めた素材をまとめたのが本作『どうすればよかったか?』なのである。実にミニマムな家族ドキュメンタリーであり、繰り返しになるが、だからこそ、どうしてこれほど話題になっているのか不思議だったのだ。
さて本作では、冒頭で2つの注意が表示される。正確なものではないが、ざっくり以下のような内容だ。
本作には、姉が統合失調症を発症した理由を究明する意図はない。
また本作では、統合失調症という病気についての説明もしない。
こういう作品の場合、医師や専門家などが登場し、「統合失調症の説明」や「一般的な治療方針」などが語られるみたいなパターンもある。しかし本作には、そういう要素は一切無い。映し出されるのは基本的に家族だけで、「家族以外の人」が何人か映り込むことはあるものの、全体としては、「父・母・姉を監督が撮影する」というパターンである。表現が適切ではないかもしれないが、本作は「ホームビデオを繋ぎ合わせたような作品」であり、そしてそんな作品が多くの観客を惹きつけ、観た者に色んなことを考えさせているというわけだ。なんとなく、「そんな作品が大ヒットしている社会は健全ではないか」とも感じさせられた。
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「両親が作り出した環境」が姉の症状を悪化させたことは間違いない
さて、本作を観ながらまず感じたことは、「環境が姉の症状を悪化させたに違いない」ということだ。その「環境」は、平時であれば「恵まれたもの」と言っていいと思う。何にせよ、「金銭的に不自由はなさそう」だからだ。両親が医師・研究者であり、姉も医学部に入学した。また、統合失調症を発症しただろう姉は、その後働くことなくずっと家にいるわけで、彼女を養えるだけの経済力もある。藤野家では、両親が姉の治療を拒み続けていたのだから、障害年金などの公的支援を受けていなかったはずだ。にも拘らず「働かない姉が家にいる」みたいな状態が40年以上続いても、恐らく経済的には問題なかったのだと思う。実家暮らしとは言えそれなりにお金は掛かるはずで、何にせよ藤野家には「金銭的余裕があった」と考えていいはずだ。
そして、平時であれば素晴らしかっただろうその「環境」が、病気を患った姉にとっては不幸にも悪い形で作用してしまったと言っていいと思う。金銭的余裕が無ければ、何らかの形で公的支援に頼らざるを得なくなり、その過程で恐らく医師による診療が必要になるはずだからだ。
さて、「姉にとって不幸だった」と書いたのには根拠がある。実は2008年頃、つまり発症したと思われる時点から25年後のことだが、姉はようやく医師の診療を受けたのだ。その頃、母親に認知症の症状が見られたため監督が医師に相談したところ、「姉をすぐに入院させ、母親は父親が自宅で面倒を看るように」とアドバイスをもらったという。そしてその話を受けて父親に相談し、父親の了承を得て姉は入院することになった。すると、その入院中に合う薬が見つかったとかで、なんと3ヶ月で退院できたのだ。
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そして驚くべきは退院後の変化である。入院前の姉は、話しかけても反応が返ってくることは稀で、普段は家のどこかに静かに座りこんだまま動かず、そして時折、突然スイッチが切り替わったみたいに意味不明なことをスラスラとまくしたてる、みたいな感じだった。しかし退院後は、料理をするくらい活動的になったし、また撮影している監督にピースをするなど行動が多彩になったのだ。私には本当に、別人と言ってもいいぐらいの変化に見えた。
この変化はもちろん投薬によるものなので、となれば当然、「もっと早く治療を受けさせていれば状況はまったく違ったはず」と考えるのが自然だろう。この1点だけからでも、「両親の判断は間違っていた」と断言出来ると考えている。
しかし何にせよ、両親の対応には本当に驚かされた。例えば両親は、姉が勝手に家から出ないようにと、自宅の玄関の内側に南京錠を付けたほどである。というのも一度、姉が家を抜け出して1人でNYに行ってしまったことがあるからだ。そういうことを防ごうと考えての対策なのだが、やはり方向性がズレているとしか思えない。ちなみに、この時期は母親が足を悪くしていたこともあり、母親と姉は共に、前年の11月22日からその映像が撮影された9月25日までの約10ヶ月間、一歩も外に出なかったそうだ。なかなか常軌を逸しているだろう。そしてこれは、明らかに「監禁」と言っていいはずだ。まあ、両親は「そんなつもりはない」と否定していたが。
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そんな異常さが随所に映し出される作品なのである。
「なぜ姉を医者に診せなかったのか?」という大いなる矛盾をそのまま提示する作品
さて、そんな「異常さ」は色々とあるのだが、本作で最も異常なのはやはり「なぜ姉を医者に診せなかったのか?」という点だろう。これに関して本作では、監督が母親・父親それぞれと議論する場面が映し出されていた。
監督がまず行ったのが、母親との話し合いである。彼には恐らく、「母親を味方につける方が先決」という判断があったのだと思う。本作を観れば理解できることだが、姉に関する決定は、基本的にすべて父親が行っている。つまり、イカれた判断をしている父親を直接説得するよりも、まずは母親を取り込んでおくべきだと考えていたのだと思う。
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ただ、母親はやはり「パパがNOと言っていることは出来ない」というスタンスを最後まで崩さなかった。監督は母親に対して、「2人には問題解決能力がない」「『何の問題もない』と言っているその医者に会わせてほしい」とかなり強めに詰め寄るのだが、母親はどうも自分で判断することを放棄しているようだ。「父親の判断にすべて従う」というわけである。結局、その話し合いでは何も進展しなかった。
その後、長い長い年月が経った後、監督は父親と姉の件について話をする。そしてその際に監督は、「『姉が病気だ』と認めることを恐れていたんじゃないか?」と父親に突きつけていた。それに対して父親は意外なことを口にする。「俺はそんなことないけど、ママはそういう気持ちが強かったかもしれない」みたいなことを言っていたのだ。そこで監督がさらに、「じゃあ、母親の希望を叶えるために姉を治療から遠ざけたってこと?」と聞くと、父親は頷いていたように私には見えた。
こんな風に、両者の言い分は真っ向から食い違っている。そしてそういう矛盾を本作はそのまま提示しているというわけだ。「徹底的に『事実』を積み上げることで、そこに否応なしに生まれてしまう『矛盾』が掬い取られている」なんて風にも言えるだろうか。
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作中では、「監督がその時々でどのように感じていたのか」が、ナレーションや両親とのやり取りによって提示されている。しかしそれらも、「意見」としてではなく「事実」として組み込まれていると捉えるのが正しいだろう。監督の感覚は、観客の解釈を狭めるものとしては機能しない。少なくとも、私はそのように受け取った。監督の感覚はあくまでも、「家族の一員として自分はこう感じてきた」という意味での「事実」の提示でしかないのだ。だからこそ、本作で映し出される家族の姿をどう捉えるのかは観客に委ねられていると言っていいと思う。
そして『どうすればよかったか?』というタイトルもまた、まさにそのような意図を込めて付けられたのではないかと考えているのである。
医師・科学者だった両親は、なぜこんな「愚かな判断」をしたのだろうか?
正直なところ、「どうすればよかったか?」という問いに対する答えは全然難しくない。何故なら、「姉を医者に診せ、薬を処方してもらい、必要なら入院させる」だけだからだ。実にシンプルである。しかし、そこには「両親」という大きな壁が存在した。だからこの問いはむしろ、「”両親に対して”どうすればよかったか?」と受け取るべきだと思う。そしてその場合、その問いに答えることはとても難しいと言えるだろう。
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本作が興味深いのはまさにこの点である。両親は科学を生業とする人だった。当然、「科学を信じている」はずだ。そしてそんな両親が「姉が統合失調症を患った」という事実を認めようとしなかったのである。このギャップはどうして生まれたのだろうか?
カメラに映る両親は、ごく普通の人に見えた。そしてだからこそ恐ろしいなと思う。彼らがもっと、「モンスターペアレント」みたいなヤベェ奴として描かれていたのであれば、「こんな毒親だったらこの状況も仕方ない」と納得できただろう。しかし、少なくとも映画で切り取られていた彼らの日常からは、そんな雰囲気を感じることは出来なかった。
さて、本筋とは少し離れた話をするが、精神疾患の1つとして「代理型ミュンヒハウゼン症候群」と呼ばれる状態が知られている。まずは「ミュンヒハウゼン症候群」について説明するが、これは「自ら病気だと偽り、周囲からの同情を集めようとする精神疾患」のことを指す。「病気の時にお母さんが優しくしてくれたから、元気なのに仮病を使ってしまう」みたいな状態の延長線上にあるような精神疾患というわけだ。そして「代理型」の場合は、「親が子どもをわざと体調不良にさせるなどし(親子関係に限るものではないが)、その看病に献身することで、周囲からの同情や評価を得ようとする精神疾患」である。
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そして、両親と姉の関係性も、もしかしたら「代理型ミュンヒハウゼン症候群」で説明がつくかもしれないと感じたりもした。ただ本作で映し出される限り、両親は姉の存在を周囲に吹聴している感じがないので、「周りからの同情・評価」ではなく、むしろ「自己認識・自己肯定感」みたいな部分と関わるのかもしれない。まあその捉え方が正しいのかはともかく、「無理やりそんな風にでも解釈しないと両親の振る舞いに説明がつかない」と感じるのだ。技術的に可能ならば、彼らの頭の中身を無理やり取り出すみたいな形で、両親が一体何を考えていたのか知りたいものだなと思う。
それでは最後に1つ。本作では「姉が統合失調症になった原因究明はしない」と言及されるわけだが、作中でそれらしき理由を示唆する場面が1箇所だけあったように思う。既に「解剖実習で失敗したことを機におかしくなった」という話には触れたが、ずっと成績優秀者として生きてきた姉は、その解剖実習の失敗のせいで留年してしまったのである。
監督は、「この時に姉は恐らく、『それまで失敗なんてしてこなかった自分が上手くいかなかったのには、何か理由があるはずだ』と考えるようになった」と捉えているようだ。そして姉が導き出した結論が、「仏様への信仰が足りない」だったのである。そしてそういう発想を踏まえてのことなのだろう、その後姉は占い的なものに傾倒していったという。だとすると、「『エリートの躓き』みたいなものが統合失調症の発症に繋がっていった」と考えるとしっくり来るかもしれない。いやもちろん、専門家でもなんでもないので、まったくの的外れかもしれないが。
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最後に
そんなわけで、本作『どうすればよかったか?』は、かなり様々な要素が組み合わさることで生まれた作品だと言っていいと思う。まずは「姉の発症」と「両親の否認」があった。そして「監督が映像の専門学校に通い始め、カメラで家族を撮り始めたこと」や「働かない姉を養うだけの経済的な余裕があったこと」などが重なったため、こうして「普通にはカメラに収まることのないだろうリアル」が保存されることになったというわけだ。なかなか類を見ない作品なんじゃないかと思う。
本作で映し出されるのはもちろん「特異的なケース」に過ぎないが、ただ、「家族の誰かが突然、介護やケアを必要とする状態に陥る」みたいなことは誰の身にも降りかかることである。だからこそ、「どうすればよかったか?」という本作の問いかけはすべての人に向けられていると言っていいし、観た人がその問いを自分事として受け取っているからこそこれだけ話題になっているのだとも思う。
多くの人に見てほしい、実に興味深い作品だった。
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