目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:若葉竜也, 出演:穂志もえか, 出演:古川琴⾳, 出演:萩原みのり, 出演:中⽥⻘渚, 出演:成⽥凌, Writer:今泉力哉, Writer:大橋裕之, 監督:今泉力哉
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 映画『街の上で』内のやり取りは、「映画・ドラマの中でなら“自然に”感じられる会話」などではなく、「無駄に溢れた自然な日常会話」であり、そのことに凄く驚かされた
- 会話以外の形で物語を駆動させる手腕もとても素晴らしい
- 主人公と女子大生が交わす「永遠に聞いていられる会話」があまりに絶妙で素敵過ぎる
こういう世界・関係性は「ファンタジー」ではなく実現し得るんだと、私は今も信じている
自己紹介記事
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いやーホントに、今泉力哉が素晴らしい。とにかく、本作『街の上で』もメチャクチャ良かったのだが、しかし私は、劇場公開されたタイミングでは本作を観なかった。この記事では、まずはその辺りの話から始めようと思う。
劇場公開された時点で、私は『街の上で』という映画の存在を知っていたのだが、特に観ようとは思わなかった。その時まで私は「今泉力哉」という映画監督の存在を知らず、作品もまったく観たことがなかったので、ポスタービジュアルぐらいしか判断材料がなかったわけだが、そのポスタービジュアルが「おしゃれクソ映画」っぽかったのである。「雰囲気やビジュアルは良さそうだが、特に大したことを描いているわけではない、なんとなくおしゃれなだけの映画」ぐらいの意味なのだが、私は本作をそのような内容だと判断してしまっていたのだ。
そしてその後私は、「今泉力哉」という映画監督の存在を知ることになる。最初に観たのは、映画『窓辺にて』だ。正直、何故観ようと思ったのか記憶にないが、とにかく素晴らしい作品で、そこから私は一気に「今泉力哉監督」に注目するようになった。そしてその後、映画『ちひろさん』を観てやはりズバズバと突き刺されてしまう。どちらの作品も人間の描き方が繊細で、さらに、社会を眺めるその眼差しに親近感が持てたのである。
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このようにして今泉力哉を知った私は、1週間限定で再上映となった映画『街の上で』を観ることにしたというわけだ。そしてやはり、「観て良かった!」と思わせる素晴らしい作品だったのである。
この記事では、その素晴らしさを「会話の無駄」に焦点を当てて説明してみたいと思う。
映画『街の上で』は、「会話の無駄」がとにかく素晴らしい
私はほとんどYouTubeを観ないのだが、「YouTuberは、会話のテンポを良くするために、編集時に『会話の間』を削って詰めている」みたいな知識は持っている。要するに、「えー」とか「あー」みたいなことを言っている部分を削ったり、言い淀んだりした部分を詰めたりしているのだろう。
そしてそれは、私たちが普段している「自然な会話」とは異なるものだ。そこでそのような会話に、「YouTube的会話」という名前を付けてみよう。要するに、「YouTubeの動画では”自然に”感じられる会話」というわけだ。
そして同様に、「映画・ドラマ的会話」と名付けられる会話が存在すると私は考えている。つまり、「映画やドラマの中では”自然に”感じられる会話」というわけだ。
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映画やドラマの中で展開される会話は普通、「無駄」が無い。そのことは、私たちが日常的にしている会話と比べてみれば明らかではないかと思う。台本があるから当然なのだが、すべての会話は”滑らかに”進んでいく。もし会話の中に「躓き」や「淀み」があるとすれば、それは「この会話には『躓き』や『淀み』がある」という情報を観る者に伝えるために用意されていると考えるべきで、つまりそれは決して「無駄」ではない。「全然中身の無い会話をしているなぁ」と感じる場面でも、「観る者にそう感じさせる意図がある」わけで、結局その会話は「無駄」ではないのである。
しかし、映画『街の上で』はとにかく、会話が「無駄」ばかりだった。そしてその点に、私はメチャクチャ驚かされてしまったのだ。
その時点で私が鑑賞済だった2作品、『窓辺にて』と『ちひろさん』は共に、そもそも会話が少なかったこともあり、「会話の無駄」に着目するような発想にはならなかった。そのこともきっと関係しているのだろう、映画『街の上で』を観て、私はとにかく「会話に無駄がありすぎる」ことに驚かされてしまったのである。今泉力哉は恐らく、「映像作品として提示出来るギリギリのラインまで『会話の無駄』を残す」というスタンスで映画を作っているのではないかと感じた。
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「無駄」とは少し違う話に聞こえるかもしれないが、分かりやすい例を1つ出そう。本作『街の上で』でとても印象的だったのが、若葉竜也演じる主人公・荒川青が、会話の中で「えっ?」を多用することだ。実はこの「えっ?」の多用、映画『窓辺にて』でも同じことを感じた。『窓辺にて』では正直、この「えっ?」という反応は私にはあまり馴染まなかったのだが、恐らくそれは、全体の会話量が少なかったからだと思う。一方で、『街の上で』の中で荒川青が口にする「えっ?」には不自然さを感じなかった。
そしてそれは恐らく、本作中に「会話の無駄」があまねく行き届いているからではないかと思っている。
あまり意識に上らないだけで、私たちは普段の会話の中で、「えっ?」のような反応を頻繁にしているはずだ。にも拘らず、そういう反応が「不自然」に感じられないのは恐らく、「自然な会話」には色んな「無駄」が盛りだくさんだからだと私は考えている。よく言われることだろうが、「友人との普段の会話を録音して第三者に聞かせたら、たぶん何を話しているのかさっぱり理解できない」みたいなになると思う。「自然な会話」には、「無駄」が多いというわけだ。
しかし通常、「映画・ドラマ的会話」からは「無駄」が削ぎ落とされている。そのため普通は、「えっ?」のような反応が多用されると違和感を覚えてしまうはずだ。しかし本作の場合、それが「不自然」に感じられなかったのである。少なくとも、私にとってはそうだった。これはかなり特異な状況と言っていいと思う。
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そんなわけで私は、「『映画・ドラマ的会話』ではない、かなり『自然な会話』に近いやり取りが映し出されている」という点にとにかく驚かされてしまったし、その点にこそ本作の素晴らしさを感じた。
「物語を展開させる」という要素を「会話」からは削ぎ落としている点が見事
さて、ここまで「会話の無駄」の話を深堀りしてきたが、この「無駄」について改めて説明してみると、「映画にとっての無駄」という意味になる。つまり、「当人同士はその会話に意味を感じているかもしれないが、映画内での役割は存在しない」というわけだ。
一般的に多くの場合、映像作品における「会話」には、「『登場人物の関係性』や『物語の展開』を描き出すためのツール」のような側面もあると言っていいだろう。例えば、専門的な知識が必要な作品であれば、「何の知識も持たない人物」を登場させることで、会話のやり取りを通じて必要な知識を観客に与えたりする。あるいは、「沈黙している2人」を映し出すことによって、「会話をしなくても場が成立する関係性であることを描く」みたいなパターンもあるだろう。このように「映像作品における『会話』」というのは、「観る者に対して何らかの『役割』を有している」と考えていいと私は思っている。
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そしてこれはつまり、「『会話のベクトル』が、第三者の方にも向いている」ことを意味するだろう。私は別に、「役者が観客の存在を意識してセリフを喋っている」みたいなことを言いたいのではない。そうではなくて、「役者が発するセリフはどうしたって、それを聞く第三者である『観客』方向のベクトルも含んでしまう」と主張したいのである。そのようなベクトルを持つからこそ「自然な会話」にはならないのだし、結果として「映画・ドラマ的会話」という性質を帯びることになってしまうというわけだ。
しかし、映画『街の上で』の会話には、そのような「観客方向のベクトル」をまったく感じなかった。交わされるやり取りはあくまでも当人同士にとってだけ意味を持つのであって、「映画内での役割」などまったく有していないように思えたのだ。これが私の言う、「映画『街の上で』における会話の『無駄』」である。
しかしそうなると当然だが、「物語を展開させるツール」として会話を使うことが難しくなる。事実、本作においては「会話」が物語を駆動させることはほとんどない(というか本作に限る話ではなく、そもそも今泉力哉作品では物語はほとんど展開しないのだが)。ただもちろん、まったく展開しないなんてことはないので、その場合の「会話を起点にしない物語の展開のさせ方」がとても上手かったなと思う。
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本作では例えば、映画のほぼラストシーンと言っていいだろう場面でそれが発揮された。ラストシーンなので具体的には触れないが、「凄まじい偶然」によって起こるドタバタの展開は、「会話」とは無関係に引き起こされている。それまで作中のあらゆる場面に配置されてきた「伏線的要素」が一気にぎゅっと押し固められたみたいな展開であり、それまで凪のように展開しなかった物語が嘘のようにワチャワチャしていく感じがとても面白かった。
もちろん、「そんな展開は偶然に頼りすぎ」という批判は当然出てくるだろうし、普通には起こり得ない状況なのだから「リアリティが無い」と受け取る人がいてもおかしくないだろう。しかし私は、「会話の無駄」によって作品のリアリティは極限まで高められていると感じたし、その上で「物語を会話以外で駆動させる手段」として「凄まじい偶然」を利用しているのであれば、それはそれでアリだと思っている。私には、とても良いラストに感じられた。
このように、「会話の無駄」を優先することによる困難さもあるにはある。しかし少なくとも私には、「『会話の無駄』を追求したことによるリアリティ」がとにかく素晴らしいと感じられたし、なかなか普通の映像作品では体感できない経験だったとも思う。
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主人公・荒川青と女子大生・城定イハの関係性が、私にはとてもリアルなものに感じられた
映画『街の上で』の中で、私が特に素晴らしいと感じたのが、主人公・荒川青と女子大生・城定イハの会話である。荒川青はひょんなことから学生映画に出演することになるのだが、その際に、衣装担当の城定イハと出会った。そして、この2人の会話が本当に絶妙なのだ。それこそ、彼らの会話だったら5時間でも6時間でも聞いていられるだろうなと思う。
時々、そんな風に感じさせる作品に出会うことがある。濱口竜介監督の映画『偶然と想像』もその1つだ。映画『街の上で』にも出演している古川琴音が、仕事仲間の女性と車内で会話するシーンがあるのだが、その会話も素晴らしすぎていつまでも聞いていられるなと思う。あるいは、バカリズム監督・脚本の映画『架空OL日記』も、全編に渡り「ずっと聞いていられる会話」によって構成される作品で、凄まじいなと感じさせられた。
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荒川青と城定イハは作中で長い長い会話をするのだが、それは彼らが初めて会った日の夜のことである。映画の撮影が終わった後、学生から飲み会に誘われ参加するのだが、撮影で大分やらかしてしまった彼はちょっと居心地の悪さを感じていた。そんな荒川青に城定イハの方から話しかけ、2次会に行くという他の面々とは別れた後、彼を自宅へと誘う。そして2人はだらだらと話を続け、荒川青は結局そのまま彼女の家に泊まり、かといって、別にセックスをするわけでもなく朝を迎え、彼は家へと帰るのである。
さて、世間一般的には恐らく、荒川青と城定イハのような関係は「現実には存在しないファンタジー」と見做されるのではないかと思う。私は、「ほぼ女友達しかいない」と言っていいぐらい異性と関わる方が楽なタイプなのだが、たまに「男女の友情」的な話を同性にしても「あり得ない」と言われるからだ。「この2人のような関係性が、普通成り立つはずがない」というのが、一般的な感覚なのだと思う。
そんなわけで私は、城定イハが口にした、「こういう距離感のまま恋愛することって出来ないのかなぁ」という言葉に、メチャクチャ共感させられてしまった。私も心底そう思う。しかし、「この2人のような関係性は成り立つはずがない」というのが一般的な感覚だと、残念ながら彼女が望むような関係性はまず実現しないのだ。
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荒川青と城定イハは、「かつての恋愛」の話で盛り上がるのだが、その中で城定イハが、
こういう関係のままなら、前に付き合った人の話も当たり前のように出来るのに、恋愛にするとそれが出来なくなる。
と口にする。要は「彼氏には元カレの話は出来ない」みたいなことだ。一般的には「そんなの当たり前だろう」としか思えないかもしれないが、私は城定イハ同じようなことを考えているので、すごくよく分かる。別に「元カレの話」に限らないが、「恋愛」になると途端に「してはいけないこと」が増えるように思う。そのことが私にはどうしても窮屈に感じられてしまう。だから城定イハの「こういう距離感のまま恋愛することって出来ないのかなぁ」という言葉が、とてもしっくり来たというわけだ。
この話は、別のある会話でも示唆されていると言えるだろう。ある人物が作中で、「あなたといると楽しくないの」と口にする場面がある。これは、「あなたのことは好きだけど、一緒にいると楽しくない」という意味だ。恋愛の場合は時として、このような状態に陥ってしまう。これだって恐らく、「こういう距離感のまま恋愛すること」が出来ていれば抱かずに済む感情ではないかと思う。しかし、実際にはなかなかそうはいかない。「恋愛」はややこしいなぁと思う。
ままならないよなぁ。
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本作では、「恋愛」と「恋愛未満」が対比的に描かれているように思う。荒川青は冒頭で早々と失恋し、それ以降は「恋愛」から弾き飛ばされたような感じになる。その一方で、彼の周辺では、様々な「恋愛」あるいは「恋愛っぽさ」みたいなものが展開されていく。しかしそれらは、どれもままならない。「1番好きな人に告白して、フラれたら付き合って」と堂々と口にする男がいたり、「『映画に出演して』って言ってくるなんて、それはもう告白だよ」と煽ってくる奴がいたり、「あの2人は、付き合ったり別れたりを繰り返している」なんて話を耳にしたりもする。このように、「恋愛から弾かれた荒川青」の視界には、「恋愛のままならなさ」が色々と飛び込んでくるというわけだ。
そして荒川青自身は、色んな女性と「恋愛未満」の関係性の中にいる。そしてなんとなく、それがとてもしっくり来ているような感じがするのだ。その中でもやはり、城定イハとの関係が特に素晴らしい。彼が目にする様々な「恋愛のままならなさ」との対比もあって余計に、城定イハとの「恋愛未満」の関係性が素敵に見えてくるのである。
ホントに、こういう関係性って良いよなぁと改めて思わされてしまった。
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映画全体の感想
さて最後に少し、映画全体の話に言及して終わることにしよう。
まず、ここまででも少し触れてはきたが、全体としてはとにかく「ほぼ何も展開しない物語」であり、これと言って何かが起こったりはしない。古着屋で働く主人公の荒川青が、彼女にフラれ、映画の出演を打診され、城定イハと出会い、最後にワチャワチャした展開が起こる、というだけの物語である。
ただ、とにかく「雰囲気」が素晴らしかった。ここまでで言及してきた「会話の無駄」も「雰囲気の良さ」を引き出す要素と言えるだが、全体的には「今泉力哉的」としか言いようのない感じがあって、私にはとても心地良く感じられたのである。逆に、この「雰囲気」に馴染めない人には、面白さが伝わりにくい作品ではないかと思うう。「ストーリーは何も展開しないし、荒川青と城定イハの関係はファンタジーだし、何だこれ」みたいに感じる人がいてもおかしくはない。たぶん、観る人によって大きく受け取り方が変わる作品なのだと思う。
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さて、「雰囲気の良さ」を引き出す要素としてもう1つ、舞台である「下北沢」を挙げることが出来るだろう。作中には、「古書ビビビ」や「ザ・スズナリ」など下北沢に実際に存在する書店・劇場が登場する。また、下北沢がメインの舞台であるらしいマンガ『南瓜とマヨネーズ』(魚喃キリコ)を作中に登場させたりと、「下北沢」を全面に押し出そうとしていることが伝わってくるのだ。この街の雰囲気もまた、作品の「良さ」として機能していると思う。ちなみに、この記事を書くのに調べていて知ったことだが、本作の主人公を演じた若葉竜也は、映画『南瓜とマヨネーズ』にも出演しているそうだ。
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出演:臼田あさ美, 出演:光石研, 出演:太賀, 出演:オダギリジョー, Writer:冨永昌敬, 監督:冨永昌敬
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「街の上で」というタイトルがどういう意図で付けられたのかは分からないが、「下北沢という文化的土壌が豊かな街だからこそ起こり得る関係性」という意味も込められているのかもしれない。あるいは単に、「下北沢の外にはほぼ出ない、主人公・荒川青の行動範囲の狭さ」を象徴するタイトルなのだろうか。いずれにしても、「下北沢」という街の要素はとても重要だと思う。
また、とにかく役者が素晴らしかった。メインで登場するのは、友情出演の成田凌を除いて5人。その内、若葉竜也以外の4人は女性である。「古書ビビビ」のアルバイト店員を演じる古川琴音のことは以前から好きで、やはり絶妙な存在を醸し出すなぁと思う。荒川青の元カノを演じた穂志もえかは、少し前に観た映画『生きててごめんなさい』がとても良かった。学生映画の監督役だった萩原みのりもとても素敵だったが、やはり私としては城定イハを演じた中田青渚の印象がとても強い。どこかで観たことがある人だと思っていたのだが、調べると、映画『君が世界のはじまり』の琴子役だと分かった。琴子も凄く良かったんだよなぁ。今泉力哉作品常連の若葉竜也も含め、とにかく役者が皆とても素敵だった。
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私は本当に、出来ることなら荒川青のような日常を生きてみたいものだと思う。主体性が無いまま「日常のちょっとした面白さ」に押し流されていく感じもとても良いし、また何度も書くが、やはり城定イハとの関係がとにかく素敵なのだ。「ファンタジー」だと見做されそうな世界だからこそ「こういう関係性も存在し得るのだ」と信じたくなるし、そんな風にリアルに思わせてくれるという意味でも素晴らしい作品だったなと思う。
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【あらすじ】映画『アンダーカレント』(今泉力哉)は、失踪をテーマに「分かり合えなさ」を描く
映画『アンダーカレント』において私は、恐らく多くの人が「受け入れがたい」と感じるだろう人物に共感させられてしまった。また本作は、「他者を理解すること」についての葛藤が深掘りされる作品でもある。そのため、私が普段から抱いている「『他者のホントウ』を知りたい」という感覚も強く刺激された
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【嫌悪】映画『ドライビング・バニー』が描く、人生やり直したい主人公(母親)のウザさと絶望
映画『ドライビング・バニー』は、主人公であるバニーのことが最後まで嫌いだったにも拘わらず、全体的にはとても素敵に感じられた珍しいタイプの作品だ。私は、「バニーのような人間が世の中に存在する」という事実に嫌悪感を抱いてしまうのだが、それでも、狂気的でぶっ飛んだラストシーンによって、作品全体の印象が大きく変わったと言える
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【絶望】人生どん底から生き方を変える。映画『シスター 夏のわかれ道』が描く中国人女性の葛藤と諦念
両親の死をきっかけに、「見知らぬ弟」を引き取らなければならなくなった女性を描く映画『シスター 夏のわかれ道』は、中国の特異な状況を背景にしつつ、誰もが抱き得る普遍的な葛藤が切り取られていく。現状を打破するために北京の大学院を目指す主人公は、一体どんな決断を下すのか。
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実際に起こった連続殺人事件を基にした映画『グッド・ナース』は、「何が描かれているのか分からない」という不穏さがずっと付きまとう異様な作品だった。「事件そのもの」ではなく、ある2人の人物に焦点が当てられる展開から、人間のあまりに深淵な狂気と葛藤が抉り出されている
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【闘争】映画『あのこと』が描く、中絶が禁止だった時代と、望まぬ妊娠における圧倒的な「男の不在」
中絶が禁止されていた1960年代のフランスを舞台にした映画『あのこと』は、「望まぬ妊娠」をしてしまった秀才の大学生が、「未来を諦めない」ために中絶を目指す姿が描かれる。さらに、誰にも言えずに孤独に奮闘する彼女の姿が「男の不在」を強調する物語でもあり、まさに男が観るべき作品だ
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【助けて】映画『生きててごめんなさい』は、「共依存カップル」視点で生きづらい世の中を抉る物語(主…
映画『生きててごめんなさい』は、「ちょっと歪な共依存関係」を描きながら、ある種現代的な「生きづらさ」を抉り出す作品。出版社の編集部で働きながら小説の新人賞を目指す園田修一は何故、バイトを9度もクビになり、一日中ベッドの上で何もせずに過ごす同棲相手・清川莉奈を”必要とする”のか?
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【驚愕】本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は凄まじい。戦場は人間を”怪物”にする
デビュー作で本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は、デビュー作であることを抜きにしても凄まじすぎる、規格外の小説だった。ソ連に実在した「女性狙撃兵」の視点から「独ソ戦」を描く物語は、生死の境でギリギリの葛藤や決断に直面する女性たちのとんでもない生き様を活写する
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【映画】『別れる決心』(パク・チャヌク)は、「倫理的な葛藤」が描かれない、不穏で魅惑的な物語
巨匠パク・チャヌク監督が狂気的な関係性を描き出す映画『別れる決心』には、「倫理的な葛藤が描かれない」という特異さがあると感じた。「様々な要素が描かれるものの、それらが『主人公2人の関係性』に影響しないこと」や、「『理解は出来ないが、成立はしている』という不思議な感覚」について触れる
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【不穏】大友克洋の漫画『童夢』をモデルにした映画『イノセンツ』は、「無邪気な残酷さ」が恐ろしい
映画『イノセンツ』は、何がどう展開するのかまるで分からないまま進んでいく実に奇妙な物語だった。非現実的な設定で描かれるのだが、そのことによって子どもたちの「無邪気な残酷さ」が一層リアルに浮き彫りにされる物語であり、「意図的に大人が排除された構成」もその一助となっている
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かつてヒット作を生み出しながらも、今では「オワコン」みたいな扱いをされている漫画家を中心に描く映画『零落』は、「バズったものは正義」という世の中に斬り込んでいく。私自身は創作者ではないが、「売れる」「売れない」に支配されてしまう主人公の葛藤はよく理解できるつもりだ
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【希望】誰も傷つけたくない。でも辛い。逃げたい。絶望しかない。それでも生きていく勇気がほしい時に…
2006年発売、2021年文庫化の『私を見て、ぎゅっと愛して』は、ブログ本のクオリティとは思えない凄まじい言語化力で、1人の女性の内面の葛藤を抉り、読者をグサグサと突き刺す。信じがたい展開が連続する苦しい状況の中で、著者は大事なものを見失わず手放さずに、勇敢に前へ進んでいく
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坂元裕二脚本、是枝裕和監督の映画『怪物』は、3つの視点を通して描かれる「日常の何気ない光景」に、思いがけない「加害性」が潜んでいることを炙り出す物語だ。これは間違いなく、私たち自身に関わる話であり、むしろ「自分には関係ない」と考えている人こそが自覚すべき問題だと思う
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なかなか馴染みのないモンゴル映画ですが、『セールス・ガールの考現学』はメチャクチャ面白かったです!設定もキャラクターも物語の展開もとても変わっていて、日常を描き出す物語にも拘らず、「先の展開がまったく読めない」とも思わされました。主人公の「成長に至る過程」が見応えのある映画です
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【映画】今泉力哉監督『ちひろさん』(有村架純)が描く、「濃い寂しさ」が溶け合う素敵な関係性
今泉力哉監督、有村架純主演の映画『ちひろさん』は、その圧倒的な「寂しさの共有」がとても心地よい作品です。色んな「寂しさ」を抱えた様々な人と関わる、「元風俗嬢」であることを公言し海辺の町の弁当屋で働く「ちひろさん」からは、同じような「寂しさ」を抱える人を惹き付ける力強さが感じられるでしょう
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【共感】「恋愛したくない」という社会をリアルに描く売野機子の漫画『ルポルタージュ』が示す未来像
売野機子のマンガ『ルポルタージュ』は、「恋愛を飛ばして結婚すること」が当たり前の世界が描かれる。私はこの感覚に凄く共感できてしまった。「恋愛」「結婚」に対して、「世間の『当たり前』に馴染めない感覚」を持つ私が考える、「恋愛」「結婚」が有する可能性
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【苦しい】「恋愛したくないし、興味ない」と気づいた女性が抉る、想像力が足りない社会の「暴力性」:…
「実は私は、恋愛的な関係を求めているわけじゃないかもしれない」と気づいた著者ムラタエリコが、自身の日常や専門学校でも学んだ写真との関わりを基に、「自分に相応しい関係性」や「社会の暴力性」について思考するエッセイ。久々に心にズバズバ刺さった、私にはとても刺激的な1冊だった。
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【感想】映画『君が世界のはじまり』は、「伝わらない」「分かったフリをしたくない」の感情が濃密
「キラキラした青春学園モノ」かと思っていた映画『君が世界のはじまり』は、「そこはかとない鬱屈」に覆われた、とても私好みの映画だった。自分の決断だけではどうにもならない「現実」を前に、様々な葛藤渦巻く若者たちの「諦念」を丁寧に描き出す素晴らしい物語
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のん(能年玲奈)が「おひとり様ライフ」を満喫する主人公を演じる映画『私をくいとめて』を観て、「孤独」について考えさせられた。「誰かと関わっていられれば孤独じゃない」という考えに私は賛同できないし、むしろ誰かと一緒にいる時の方がより強く孤独を感じることさえある
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おげれつたなか『エスケープジャーニー』のあらすじ紹介とレビュー。とにかく、「BLでしか描けない関係性」が素晴らしかった。友達なら完璧だったのに、「恋人」ではまったく上手く行かなくなってしまった直人と太一の葛藤を通じて、「進んでも行き止まり」である関係にどう向き合うか考えさせられる
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【感想】映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)の稲垣吾郎の役に超共感。「好きとは何か」が分からない人へ
映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)は、稲垣吾郎演じる主人公・市川茂巳が素晴らしかった。一般的には、彼の葛藤はまったく共感されないし、私もそのことは理解している。ただ私は、とにかく市川茂巳にもの凄く共感してしまった。「誰かを好きになること」に迷うすべての人に観てほしい
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【言葉】「戸田真琴の生きづらさ」を起点に世の中を描く映画『永遠が通り過ぎていく』の”しんどい叫び”
『あなたの孤独は美しい』というエッセイでその存在を知ったAV女優・戸田真琴の初監督映画『永遠が通り過ぎていく』。トークショーで「自分が傷つけられた時の心象風景を映像にした」と語るのを聞いて、映画全体の捉え方が変わった。他者のために創作を続ける彼女からの「贈り物」
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【魅惑】バーバラ・ローデン監督・脚本・主演の映画『WANDA』の、70年代の作品とは思えない今感
映画館で観た予告が気になって、それ以外の情報を知らずに観に行った映画『WANDA』なんと70年代の映画だと知って驚かされた。まったく「古さ」を感じなかったからだ。主演だけでなく、監督・脚本も務めたバーバラ・ローデンが遺した、死後評価が高まった歴史的一作
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「AV女優のエッセイ」と聞くと、なかなか手が伸びにくいかもしれないが、戸田真琴『あなたの孤独は美しい』の、あらゆる先入観を吹っ飛ばすほどの文章力には圧倒されるだろう。凄まじい経験と、普通ではない思考を経てAV女優に至った彼女の「生きる指針」は、多くの人の支えになるはずだ
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「0円で何もしない」をコンセプトに始まった「レンタルなんもしない人」という活動は、それまで見えにくかった様々な価値観を炙り出した見事な社会実験だと思う。『<レンタルなんもしない人>というサービスをはじめます。』で本人が語る、お金・仕事・人間関係の新たな捉え方
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二村ヒトシ『すべてはモテるためである』は、タイトルも装丁も、どう見ても「モテ本」にしか感じられないだろうが、よくある「モテるためのマニュアル」が書かれた本ではまったくない。「行動」を促すのではなく「思考」が刺激される、「コミュニケーション」と「居場所」について語る1冊
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涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
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厳しい受験戦争、壮絶な格差社会、残忍ないじめ……中国の社会問題をこれでもかと詰め込み、重苦しさもありながら「ボーイ・ミーツ・ガール」の爽やかさも融合されている映画『少年の君』。辛い境遇の中で、「すべてが最悪な選択肢」と向き合う少年少女の姿に心打たれる
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