目次
はじめに
著:森 博嗣
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
この本は「抽象的で読みにくい」と感じる人こそ読むべき1冊
本書に「読みにくさ」を感じない人は、ある程度「客観的、抽象的な思考」ができる人だと思います
この記事の3つの要点
- 具体例が少ないので、本書を最後まで読んでも「どうすればいいのか」は分からない
- 自分がどんなものに囚われているのかを自覚することが大事
- 多くの人は、普段あまりにも「考えていない」
「客観的、抽象的な思考」を目指すためのスタート地点に立つという意味で、本書はとても価値のある1冊だと思う
この記事で取り上げる本
著:森 博嗣
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自己紹介記事
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著者の森博嗣は、まえがきでこんな風に書いています。
まえがきからして、いきなり抽象的な話になっている。こういう話を聞いたり、このような文章を読んだりすると、多くの人は眠くなってしまうだろう。それは日常、具体的な刺激ばかりに囲まれているから、抽象性を求める感覚が退化している証拠だと思って欲しい。
著者は本書の中で何度も、「今の文章は抽象的で分かりにくいかもしれない」みたいなことを書きます。私は特に分かりにくさを感じませんでしたが、InstagramやTik Tokなど「目で見て理解できる具体的なもの」にばかり触れている人には、「難しい」「分からない」「イメージ」できないという感覚になってしまうかもしれません。
普段の会話でも、「この人とは抽象的な会話はできなさそうだ」って感じること、結構あるよね
メチャクチャ悪い言い方をするけど、「美味しい」「キレイ」「かっこいい」みたいな本能的な欲求に”しか”関心がない人が多い感じがしちゃう
つまり本書はまさに、「この本は分かりにくいかも/自分には合わないかも」と感じた人こそ読むべき本だと言っていいでしょう。そのような意識で、この記事も読んでいただけるといいかもしれません。
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本書を読んでも「客観的で抽象的な思考術」は会得できるわけではない
国公立大学で長く働き、学生たちとも直接関わっていた著者は、本書執筆時点における「過去10年で最も多い質問」として、
ものごとを客観的に考えるにはどうしたらよいでしょうか?
を挙げています。そして、それに対する著者の基本スタンスが「抽象的に物事を捉え考えること」だというわけです。それは、「具体的で論理的な思考」とはまったく異なるものだと考えていいでしょう。
本書を読む前から、私はなんとなく「客観的に抽象的に考えること」をやってたかなって思う
そういう思考を無理やり言葉に落とし込んでいるのが、本とか映画の感想の文章だったりするしね
「論理的思考」に関する本なら、世の中に数多く存在します。読んだことがあるという方もいるかもしれません。「論理的に考えること」の場合は、何をどのように行っているのかを捉えやすいし、だから「テクニック」として他人に伝えることも可能です。完全に体得できるかどうかは人それぞれの能力によるわけですが、少なくとも「理解し、実践を試みることができる」という意味で、「論理的思考」のスタートラインに立つことはそう難しいことではないと言っていいでしょう。
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しかし、本書で著者が語る「客観的で抽象的な思考術」は、まったくそんなものではありません。
ただ断っておきたい。この本を読めば、その「客観的で抽象的な思考術」なるものが会得できるのか、というとその保証はない。基本的に、ノウハウを教えれば、すぐにできるようになる、というものではないからだ。
それでも、少なくとも「客観的になろう」「抽象的に考えよう」と望んでいる人が本書を読むだろうし、また、真剣にそれを望んでいるのなら、必ずその方向へ近づくことになるはずだ。その近づき方を多少早める効果が、この本にはあるかもしれない。そう願っているし、多少でもそれを信じなければ、やはり書けないと思う。
本書を読み終わっても、「具体的に何をすればいいのか」は全然分かりません。それは、著者が意図的に「具体例」を排しているからです。具体的な話をすればするほど、「具体的で論理的な思考」に引っ張られてしまいます。それを避けるためには、なるべく「具体例」を入れず、説明そのものも抽象的にしていくしかないというわけです。
そんなわけで、「具体的に何をすればいいのか」は全然見えてきません。そういう意味で本書は、一般的な思考術の本とはまったく異なる本と言えるでしょう。この点を理解せずに読むと、「思ってたのと違う」と感じられてしまうかもしれません。
本書はタイトルも割と抽象的だから、勘違いする人は多くないとは思うけど
ただ誰かが、「この本を読めば客観的に考えられる」みたいに紹介して広まったりするかもしれないしね
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本書では、「目的地」と「目的地までのなんとなく道筋」は提示してくれると言っていいでしょう。ただ、「スタート地点」の提示だけはしてくれないのです。既にスタートラインに立っている人は、本書を読むことで、どの方向にどんな風に歩き出せばいいかなんとなく理解できるだろうと思います。ただ、どこがスタートラインなのかさえまだ分かっていない人には、本書はそのままでは「羅針盤」には成り得ないというわけです。
恐らく、「スタート地点に立つこと」が最も難しいと言えるでしょう。
客観的、抽象的な考えができない人というのは、つまり「そうは考えたくない」という人なのである。あるいは、感情的に「そういうふうに考えるのは嫌いだ」という気持ちを持っている場合もある。人のことをあれこれ考えるのはいけないこと、はしたないことだ、と思っている人もいるかもしれない。
もしあなたが、意識的にあるいは無意識的にこのように感じているとしたら、「『客観的、抽象的な思考』の『スタート地点』に立つこと」は相当難しいと言っていいでしょう。ある意味、自分自身で「スタート地点に立つこと」を禁じているのですから。あるいは、日常生活の中で不自由を感じていない、つまり「具体的、論理的な思考」で十分だと感じている人もまた、「スタート地点に立つこと」が難しいと言えるでしょう。
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本書は、「スタート地点に立った後」にこそその力を発揮する本だとまず理解して下さい。そして、「スタート地点に立つこと」こそが最大の難関であるという点も押さえておくといいと思います。
フルマラソンを走りたいなんて思ってもいない人に、マラソンのスタート地点に立ってもらうことはできないからね
やっぱり、「意欲」みたいなものは自分の内側からどうにか掘り起こさないとだよね
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さて、さらに森博嗣は、「目的地」についてもこんな風に書いています。
単に、それだけのことである。これも、最初に断っておかなければならない。つまり、客観的で抽象的な思考、あるいはそれらを伴う理性的な行動ができても、せいぜい、もうちょっと有利になるだけの話なのだ。是が非でも、というものではない。それができるからといって、人間として偉くなれるわけではない。
ただ、そういう考え方が、あるときは貴方を救う、と僕は信じている。
私が考える本書の「目的地」も紹介しておきましょう。
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私はよく「解像度」という言葉を使います。そして、「客観的、抽象的な思考」によって、「世の中を、より高い解像度で見ることができる」と考えているのです。裸眼では見えないけれど、望遠鏡でなら月の表面が見え、顕微鏡でなら物質の分子構造を確認することができるでしょう。このように、「客観的、抽象的な思考」というのは、望遠鏡や顕微鏡といった道具を手に入れるのと同じような効用があると考えているわけです。
まったく同じ状況・光景を目にしていても、「客観的、抽象的な思考」を持っているかどうかで、その状況・光景を捉える際の解像度が変わります。当然、そこから得られる情報量もまったく違ってくるでしょう。そういう風に世界を捉えられていると私は思っていますし、今よりももっと高い解像度で世界のことを知りたいとも感じています。
そんなことに興味はない、という方は、頑張ってまで「客観的、抽象的な思考」を手に入れる必要はないかもしれません。
ただ私は、「解像度が低い人」との会話が面白いとは感じられないんだよなぁ
高いとか低いってことより、「解像度レベルが自分とちょうど合う人」と話したいって感じだよね
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森博嗣のポリシーは「なにものにも拘らないこと」
それでは、森博嗣がどんなことを書いているのかに触れていこうと思いますが、早速「思考」とは関係なさそうな話が展開されます。森博嗣はまず、
唯一のポリシィは、なにものにも拘らないこと
という自身のスタンスの話から始めていくのです。私も森博嗣ほどではありませんが、「なにものにも拘らないこと」をポリシーにしようと意識しているので、とても理解できます。
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森博嗣はさらにこんな風に話を進めるのです。
さて、どうして「なにものにも拘らない」ようにしようと思ったのかといえば、それは、自分の周りの人たちを見ていて、「ああ、この人は囚われているな」と感じることがあまりにも多かったからだ。ほとんど全員が、囚われているというか、支配されているのである。その囚われているものというのは、常識だったり、職場の空気だったり、前例だったり、あるいは、命令、言葉、体裁、人の目、立場、自分らしさ、見栄、約束、正義感、責任感、などなど、挙げていくときりがない。
私の場合は、「自分がいろんなものに囚われている」と意識できるようになり、そこからどうやって逃れればいいのかを試行錯誤することで「客観的、抽象的な思考」にたどり着いたという感じだと思います。
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自分で勝手に「透明な檻」を設定して、そこから出ちゃいけないみたいに考えてたかな
子どもの頃は何故か、「優等生でいなければならない」という感覚に支配されていました。長男だったし、勉強も出来たし、妹と弟が親をイライラさせているのをよく見ていたし、そういうことが相まって「自分はちゃんとしなければいけない」みたいに考えていたのだと思います。
ただ、20代の前半に自分の中で限界がやってきました。この「透明な檻」の中にいることはもう出来ない、と感じたのです。しかし、そこからどうやって出ればいいかも、出た後でどんな風に振る舞っていけばいいかも全然分かりませんでした。今までは、とりあえず「優等生」という枠組みの中にいれば、苦しかったけれど成立はしていました。しかし今度は、「ある意味で長い間自分自身を規定していた『優等生』という枠組みを取っ払ってどう生きるべきか」という問題に直面せざるを得なくなったわけです。
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私の場合は、そういう必然性があったので、否応なしに「客観的、抽象的な思考」に足を踏み入れざるを得なかったと言えるでしょう。「優等生」という枠組みを外す過程で、自分が他にどんなものに囚われているのかも見えてくるようになり、「捨てても問題ない」「無い方がむしろラク」などの判断をして断捨離していきました。そんな風にして、社会の中でそこそこ折り合いをつけながら、自分にとって不要な枠組みを取り払っていくみたいなことをしていったのです。
「子どもの頃から、今みたいに考えられてたらなぁ」って思うこともあるよ
でもそれはそれで、「嫌な奴」って思われてメチャクチャ嫌われそうだけどね
さて、森博嗣はどうして「拘り」「囚われている」という話をするのでしょうか。それは、多くの人が抱える問題のほとんどがこの点に関係すると考えているからです。
そんな限られた時間の中で、自分に押し寄せてくる雑多な不自由を、よく観察してみよう。本当に必要なものだろうか、と考えてみよう。ついつい流されているものがないだろうか。ただ単に、「当たり前だから」「みんながしていることだから」「やらないと気が引けるから」「ずっと続けてきたことだから」「断るのもなんだから」という弱い理由しかないものに縛られているかもしれない。
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自分を取り巻く様々な「枠組み」をなんとか無理やり外した私も、そういう自分になってから世の中の色んな「悩み」に触れてみると、「自分の意思で檻に囚われている」という風に見えることが多くあります。かつての自分がそうだったからこそ余計に、それがよく分かるのでしょう。「この檻から出られない」と多くの人が悩んでいるのですが、実はその檻に自ら進んで入っているにすぎません。「出られない」のではなく「出たくない」だけなのですが、なかなかそのような発想を持てずにいます。
そして「檻から出たくない理由」として「客観的、抽象的な思考ができないこと」が挙げられるというわけです。
「檻に囚われたままでいること」の最大のメリットは、「自分で思考・決断する必要がない」という点にあります。「檻の中にいるという不自由」を許容できるのは、「檻の外ではもっと不自由」だと直感しているからでしょう。檻の中にいれば、「この檻の範囲内しか動けないんです」「この檻から手を伸ばせる範囲のものしか触れられません」みたいに”言い訳”ができます。「不自由であること」を許容するのは、「不自由であることを言い訳にできること」にメリットを感じているからだと言えるでしょう。
そういう”言い訳”がどうしても必要な場面ってあるもんね
だから結局、「どういう生き方を望んでますか?」っていう話になっちゃうんだけど
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だからその状態、つまり「不自由であることを言い訳にできる状態」に特段不満がないのなら、そのままで問題ないでしょう。「客観的、抽象的な思考」なんかできなくても別に問題はないと思います。ただ、「檻から本当に出たいと思っているのに出られない」という方は、「檻を出た後の自分をどう支えるか」という点でも、「客観的、抽象的な思考」が必要になるはずです。そういう人にとって本書は、とても救いになる一冊だろうと思います。
例えば、本書のこんな文章をどう感じるでしょうか?
子供や若者の中には、「友達ができない」という悩みを抱えている人が多い。その種の相談を受けることも実際に頻繁である。そういう人には、「どうして、友達がほしいの?」と尋ねることにしている。「友達がいないと寂しいから」と答える人がほとんどであるが、「では、どうして寂しい状態がいけないの?」と問うと、これにちゃんと答えられる人はまずいない。不満そうに黙ってしまうのだ。
彼らは、「寂しいことは悪い状態だ」と考えていて、「友達がいれば寂しくない」と勝手に信じている。なんの根拠もなく、そう思い込んでいるのである。だから僕は、「寂しくても悪くない」こと、そして「友達がいても寂しいかもしれない」ことを説明するようにしている。そんなことは信じられない、と反発する人もいるが、つまり自分の思い込みが悩みの原因だということに気づいていない(気付けない)状態といえる。
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あなたが「不満そうに黙ってしまう」人であれば、本書はあまり意味のない本かもしれません。しかし、「そうか、確かに言われてみれば『寂しいことが悪い』と決まっているわけではないな」と感じられるのであれば、かなり参考になる1冊だと言えるでしょう。
先に引用した、「そういう考え方が、あるときは貴方を救う、と僕は信じている」という森博嗣の言葉は、「このような『思い込み』を抜け出すことで身軽になれる可能性がある」という示唆だと感じるし、私も、そのような効用があるはずだと考えています。
世の中の大体の悩みは、こんな風に「思い込み」を抜け出せると解決するよね
人によっては、「そんなの『解決』じゃない」って感じるかもしれないけど
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世の中に存在する膨大な情報とどのように付き合うか
ここまで書いてきたような「囚われること(支配)」という観点を踏まえた上で、森博嗣は「世の中に存在する膨大な情報」との関わり方について様々な主張をしています。
現代社会は、あふれるばかりの情報が降り注ぎ、人々はこれに埋もれてしまっている状態である。広い範囲の具体的な情報に、誰でもいつでも簡単にアクセスができるようになった。知りたいと思ったときに、すぐに知ることができる。ただし、知りたいと思っていないものまで、無理矢理知らされてしまう、という事態に陥っている。また、いったいなにが本当なのか、ということがわからない。その理由は、これらの情報が、どこかの誰かが「伝えたい」と思ったものであり、その発信者の主観や希望が必ず混ざっているからだ。濁りのないピュアな情報を得ることは、現代の方が昔よりもむしろ難しくなったといえるだろう。
さらにまた、非常に瑣末な知識に大勢が囚われている。そういった身近で具体的な情報に価値があると思い込まされている、といっても良い。実は、それらは身近なもののように偽装されているだけで、「具体的な情報を知らないと損をする」と恐れている人たちに付け入っているのである。
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現実に見えるものの多くは、誰かによって見せられているものであって、その人にとって都合の良いように加工されているため、そのまま受け取ってしまうと、結果として自分の考えに合わない方へ流され、渦の中へ吸い込まれていくことになる。別の言葉でいえば、知らず知らず、他者に「支配」されてしまうのである。
ホント、ここで引用した文章はメチャクチャ共感度が高い
このような感覚は私も、特に書店員として働いている時に感じていました。世の中には素晴らしい本もたくさんある一方で、「こんな本に一体どんな価値があるのだろうか?」と感じてしまうものも多くあります。もちろん、情報にどんな価値を見出すかは人それぞれであり、私が勝手に決めることではありません。しかし、「実践したところで恐らく痩せはしないだろうダイエット本」「『有名人が紹介した』というだけの情報で売れる、かなり読者を選ぶはずの難解な本」「中身があるのかないのかよく分からない、著名人の顔写真入りの推薦文が帯に載ったビジネス書」などがバンバン売れている状況は、やはり異様だと感じていました。
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私は、観る映画にしても読む本にしても、あらかじめネットで評判を調べたりはしません。外的な情報をほとんど知らないまま、最低限の情報だけ視界に入れて「観る観ない」「読む読まない」を決めています。また、「映画は映画館でしか観ない」と決めているのも、「自分が今持っているモノサシだけで『観る観ない』を決めてしまわないため」という理由が大きいです。ストリーミングで映画を観る場合、過去の名作も含めた膨大な作品の中から何かを選ぶことになりますし、そうなるとどうしても「ランキング」や「誰かのオススメ」などを頼りたくなってしまいます。そうしないために私は、「今映画館で公開されている映画」という風にまず一気に条件を絞って、その上で何を観るかを決めるようにしているのです。
しかし、このような話を周りの人にしても、ほとんど理解されません。多くの人が、あらかじめ評価を確認した上で様々な作品に触れるていし、ランキングやオススメを頼りに何かを選んでいることが多いでしょう。もちろんそれは、膨大な情報に塗れた社会に生きる上で仕方ない選択ではありますが、それを「仕方ない」ではなく「便利」と感じてしまう点に私は違和感を覚えてしまうのです。まさに森博嗣が言うように、「濁りのないピュアな情報を得ることは、現代の方が昔よりもむしろ難しくなった」し、「身近で具体的な情報に価値があると思い込まされている」し、「結果として自分の考えに合わない方へ流され、渦の中へ吸い込まれていく」という状況に私たちは生きています。しかしどうも、そのことに多くの人が違和感を覚えていないようで、そのことに私は怖さを感じてしまうのです。
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私は飲食店でも、「メニューを見て何が出てくるんだか全然想像できないような料理」を頼んだりするし
そういう問題意識をずっと持っていたので、書店員時代は、「お客さんの『選ぶ力』『考える力』をなるべく奪わない売場づくり」をしようと意識していました。しかし他の書店員にこの話をしても、あまり賛同されなかった記憶があります。「理解はできるけど、ウチの店ではやれないかな」とかではなく、「そもそもなんでそんな風にするのか分からない」みたいな反応だったのです。
私のような感覚の人も多少はいるはずですが、圧倒的に少数派なのでしょう。多くの人はむしろ、「選んでほしい」「自分で考えたくない」という感覚が強いのだと思います。だからSNSで何かを勧める人の話に耳を傾け、食べログのような評価サイトに群がり、占いやランキングなどの外的情報に決断を委ねてしまいたいのでしょう。
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映画『街は誰のもの?』は、タイトルの通り「街(公共)は誰のものなのか?」を問う作品だ。そしてそのテーマの1つが、無許可で街中に絵を描く「グラフィティ」であることもまた面白い。想像もしなかった問いや価値観に直面させられる、とても興味深い作品である
そして、その状態に違和感を覚えないということは、「知らず知らず、他者に『支配』されている」ということでもあるのです。繰り返しますが、その状態に満足なら、別に変わる必要はありません。ただ、もし「マズい」と思っているのであれば、情報との付き合い方を改めなければならないでしょう。
とにかく、世の中は、具体的な方法に関する情報で溢れ返っている。こんなに沢山の情報が存在できる理由は、結局それらの方法では上手くいかないからである。もし一つでも確実に上手くいく方法が存在するなら、自然にほかのものが淘汰されるはずだ。
先程ダイエット本の例を出しましたが、世の中に山ほどのダイエット本が存在する理由は、まさに森博嗣が指摘するように「それらの方法では上手くいかないから」でしょう。このように様々な情報を俯瞰で捉えて判断することも「客観的、抽象的な思考」と言えるでしょうが、受け取る側にその力がないからこそこれだけ多様な情報が存在可能だとも言えるのです。
でもたぶん世の中の人は、「これだけたくさんやり方が存在するなら、どれか1つぐらい上手くいくでしょう」って考えるんだろうなぁ
情報が少なかった時代には、「目の前のこの情報は、本当に正しいのか?」と立ち止まる余裕もあったはずです。しかし今は、そんな余裕どこにもありません。次から次へと現れる情報を「見る」か「見ない」か決めるのに精一杯で、「誰から発せられた、どの程度信憑性のある情報なのか」なんてことを考える時間はないのでしょう。
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そして、それを「怖い」ではなく「便利」と捉えてしまう現状にこそ、私は「怖さ」を感じてしまうのです。
「客観的、抽象的な思考」だけは、教育することができない
研究をしながら、多くの学生を研究者として育てたけれど、発想の仕方だけは、どうしても教えることができなかった。当たり前だ、自分でも、どのようにして思いついたのか、わからないのだから。それどころか、その最初の思いつきがどんなものであったかも説明できない。説明ができるようになるのは、発想から育てたアイデアである。
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「発想の仕方」について、森博嗣はこんな風に書いています。確かにその通りでしょう。以前読んだ『アイデア大全』(読書猿)の中にも、「発想法は、『あらかじめ用意した正解と比較する』というやり方で評価ができないので、学問的な研究が遅れた」と書かれていました。「実際に出てきたアイデア」を評価することはできるけれども、「アイデアを出す過程」を評価することは難しいというわけです。「発想の仕方」を教えることができないのも当然でしょう。
私も書店員時代、色々トリッキーなアイデアを考えたけど、やっぱり「発想の仕方」を伝えるのは難しいって思った
「問題」を正しく捉えると「発想」に行き着きやすいけど、「問題」を捉えれば必ず思いつけるってわけでもないしね
そして森博嗣は、「客観的、抽象的な思考」も同じように教えられるものではないと考えているのです。
本章では、抽象的思考ができるような人間を育てるには、どうすれば良いのか、ということを書こうと思っている。これは、「教育論」と受け取られるかもしれない。けれど、僕はそれを否定したい。何故なら、「教育」という具体的な「方法」が人を育てることに対して、僕は半信半疑だからだ。
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この記事の冒頭で、「具体例を入れると、それに引きずられて抽象的な思考の妨げになる。だから本書にはほとんど具体例がない」と説明しました。そして「教育」というのはまさに「具体的な方法」なのだから、それによって「抽象的な思考」を教えることはできないというわけです。
だから、「客観的、抽象的な思考」を育てたいなら、「本書を読む」ことも含め、「具体的な何かに頼る」行為は無意味だと言っていいでしょう。結局のところ、どうにかして自分で頑張るしかないわけです。森博嗣も、そのようなことを本書に書いています。
いずれにしても、大事なことは、「もうちょっと考えよう」という一言に尽きる。これが、抽象的思考に関する本書の結論といっても良い。あまりにも簡単すぎて、「え、それだけ?」と驚かれたかもしれない。
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本書が「思考術」の本と言えるようなものではないと説明した理由がよく分かる一文でしょう。森博嗣としてもこんな結論の本を出したくはなかったかもしれませんが、こんな風に結論するしかないくらい、「客観的、抽象的な思考」は難しいと理解した方がいいのだと思います。
私もホント、「もうちょっと考えた方がいいんじゃない?」と感じること、結構あるんだよなぁ
「考えていない人」とはどうしても面白いやり取りができないことが多いんだよね
「いや、自分は普段から結構考えている」と反論したくなる人もいるかもしれません。しかし、森博嗣のこんな指摘をちょっと読んでみてください。
でも、なにに対しても、もうちょっと考えてほしいのである。なにしろ、全然考えていない人が多すぎるからだ。みんな周りを見回して、自分がどうすれば良いのかを「選んでいる」だけで、考えているとは思えない。選択肢が簡単に見つからないような、少し難しい問題に直面すると、どうすれば良いかを、「人にきく」人、「調べる」人が多くなる。でも、なかなか自分では考えない。
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そういう意味では、「考えていない」って自覚がある人の方が動きやすいかもね
「考えているつもり」の人は、まずその認識から抜け出さないといけないからなぁ
森博嗣は、もう少し具体的に、こんな風にも書いています。
優れた発想とは自然から生まれるものなのだ。思うようにならないのは、人間の頭が作り出した人工の論理から生じるのではなく、人間の頭という自然の中から育ってくるものだからである。したがって、まさにガーデニングや農業と同じで、抽象的思考の畑のようなものを耕し、そこに種を蒔くしかない。発想とは、そうやって収穫するものなのである。
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自由に生きられず、どうしたらいいのか悩む人も多くいるでしょう。『自由をつくる 自在に生きる』では、「自由」のためには「支配に気づくこと」が何より大事であり、さらに「自由」とは「不自由なもの」だと説きます。どう生きるかを考える指針となる一冊。
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生きていると、「常識的な考え方」に囚われたり、「普通」「当たり前」を無自覚で強要してくる人に出会ったりします。そういう価値観に合わせられない時、自分が間違っている、劣っていると感じがちですが、そういう中で一歩踏み出す勇気を得るための考え方です
ルシルナ
自己啓発・努力・思考【本・映画の感想】 | ルシルナ
私自身は、仕事や社会貢献などにおいて自分の将来をもう諦めていますが、心の底では、自分の知識・スキルが他人や社会の役に立ったらいいな、と思っています。だから、自分…
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