目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
アップリンク公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
この記事の3つの要点
- 自社の除草剤とセットで販売される「遺伝子組み換え作物」の問題点
- 地球上の作物の多様性が失われ、モンサント社の作物の遺伝子に支配されてしまう
- 国家とグルになり、危険性をひた隠しにしていた可能性
我々が普段「何を食べさせられている」のかを、きちんち理解するきっかけになるでしょう
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
世界的バイオ企業は、世界の「食」をどう支配しようとしているかを映画『モンサントの不自然な食べもの』から知る
「モンサント社」というバイオ企業
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この映画で取り上げられるのは、「モンサント社」というバイオ企業だ。1901年に創業した同社は、元々は化学薬品会社であり、「ラウンドアップ」という除草剤は50年以上も売れ続けている看板商品である。
そんな企業に対し、エクアドルの農家は次のように語っていた。
まるで静かな戦争のようです
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そしてインドの科学者は、
爆弾よりも軍隊よりも、遥かに強力に世界を掌握しようとしている
と表現している。映画を観れば、これらの言葉が何を意味しているのか分かるだろう。
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モンサント社躍進のきっかけになったのは、「ラウンドアップ耐性作物」の開発だ。遺伝子組み換え(GM)の技術を使って、「ラウンドアップという除草剤を撒いても枯れない作物」を生み出した、ということだ。
そそれの何が良いのだろうか。農家の仕事を想像してみよう。
農家の仕事で大変なのは、雑草の除去だ。普通なら、雑草にだけ除草剤を撒き、育てている作物には掛からないようにしなければならない。しかし、「ラウンドアップ耐性作物」であれば、いくら「ラウンドアップ」を撒かれても枯れることはない。つまり、農場に「ラウンドアップ」を撒けば、雑草だけが枯れ、育てている作物(ラウンドアップ耐性作物)はそのまま成長する、というわけだ。
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これは便利だろう。農家が飛びつくのもよく分かる。
このように、遺伝子組み換え技術によって生まれた作物は「GM作物」と呼ばれる(「GM作物」は、決してモンサント社の専売特許ではないが、この記事では、特に断りがない限り、「GM作物」=「ラウンドアップ耐性作物」という意味である)。
農家にとっては非常に便利なこの「GM作物」だが、問題も指摘されている。
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「GM作物」の問題点
一つ目の問題は、「多様性が失われること」だ。例えば、愛媛で作られたミカンと静岡で作られたミカンは、別の遺伝子を持っているはずだ。このように、同じ種でも異なる遺伝子を持つことで、地球環境が激変した場合に生き残れる可能性を高めている。
しかし、たとえば「GMミカン」(が存在するとして)は、すべて同じ遺伝子である。つまり、地球上のミカンがすべて「GMミカン」に変わってしまった場合、ちょっとした環境の変化で「ミカン」という種が絶滅してしまうかもしれない。
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便利だという理由で農家が積極的に「GM作物」を導入することで、地球上の植物の多様性が失われてしまう可能性があるのだ。
また農家にとっては、より深刻な問題がある。それは、「GM作物の種子を毎年モンサント社から買わなければならない」ということだ。
モンサント社は、遺伝子組み換えを行った種子の特許を取得している。つまり、モンサント社の許可なしに「GM作物」を栽培することはできないのだ。当たり前だが、一度「GM作物」を育てれば、翌年種子が採取できる。しかし、モンサント社は種子の採取を禁じているのだ。毎年毎年、モンサント社から種子を買わなければならない契約になっているのである。
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種子だけではない。種子と一緒に、肥料や除草剤もセットになっている。そして、これらが実に高額なのだ。そのことによって、農家が危機に瀕している。
インドでは、モンサント社が生み出した「BT綿」(GM作物の一つ)が席巻し、今では「BT綿以外の生来の綿の種子が採取できない」ほどだという。だから、インドで綿を育てようと思えば、モンサント社から種子を買うしかない。しかしBT綿の種子は、従来種の4倍の値段がする。
また、頑張って種子を買って栽培しても、不作のこともある。翌年も綿を栽培するには借金するしかない。そうやって追い込まれ、インドでは綿農家が毎年600名以上自ら命を断っているという。
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さらにモンサント社は、農家が「GM作物」から採取した種子を保管していないかなどの不正をチェックするために、「遺伝子警察」と呼ぶスパイを雇っている。そして映画では、契約通りに作付けを行っていたのに理不尽に訴えられた農家が多数取り上げられる。
農家は無実を主張するが、相手は超巨大企業だ。非は無いと分かっていても、仮に裁判に負ければ莫大な違約金を払わなければならない。そうやって和解を選ぶことになる。とはいえ和解を選んでも、茨の道だ。モンサント社から訴えられて破産した農家は100軒を越えるという。
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さらにモンサント社は、世界中に存在する種子販売会社を買収しまくっているという。つまり、「地球上の植物の種子は、すべてモンサント社が販売する」という最悪の未来もあり得る、ということだ。
モンサント社はアメリカの企業だが、決して我々と無関係ではない、ということが理解できるだろう。
モンサント社とアメリカの関係性
結構昔のことになるが、遺伝子組み換え大豆がニュースで騒がれたことがある。今以上に「遺伝子組み換え」という技術への理解がなかっただろうし、「遺伝子を組み替えた食品は安全か」と議論が巻き起こったのだ。
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その後日本では、豆腐などの大豆食品の販売に関して、「遺伝子組み換え大豆を使用している」と表記するかが議論され、ルールが制定された。日本では、「遺伝子組み換え作物を使用している」と表記が必要だそうだ。
さて、この映画の中では驚くべきことに、「『遺伝子組み換え作物を使用している』という表記が禁止された」と語られていた。「使っていたら表記しなさい」ではなく、「使っていても表記してはいけない」のだ。なかなか異常な決定だろう。
ネットで調べると、アメリカでも近年、表示が義務化される動きが出てきているようだが、少なくともこの映画制作時点では、国から「表示を禁じられている」という状況だったのだ。
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なぜそんなことになるのか。それはモンサント社という会社が、アメリカという国家を深い結びつきを持っているからだ。
アメリカにはFDAという、食品の安全を審査する公的機関がある。日本の厚生労働省のようなところだろう。そしてそのFDAは、遺伝子組み換え作物の安全性について、「実質的同等性」という言葉を使って評価した。どういうことかというと、「『遺伝子組み換えがされている作物』と『されていない作物』は、どちらも実質的に同じ」という意味だ。
どちらも同じなのだから、遺伝子組み換え作物の安全性を規制するための基準も作らないし、検査もしないというのがFDAのスタンスというわけである。
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多くのアメリカ国民が、この判断に不審を抱いた。まあ、当然だろう。FDAが、モンサント社のGM作物を市場で早く流通させようとしている風にしか見えないはずだ。
次の事実を知ればもっと驚くだろう。当時遺伝子組み換え作物の安全基準などについての方針をFDAで主導していた人物は、かつてモンサント社の弁護士だった人物なのだ。癒着どころの騒ぎではない。アメリカは、バイオ産業で世界の覇権を狙うべく、モンサント社を優遇しているのではないかと受け取られているという。
科学者はどう判断しているのか?
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安全性はやはり、政治的にではなく科学的に判断されなければならないだろう。しかしどうやら、モンサント社に所属していた科学者たちの口は封じられていたらしい。モンサント社の内部文書が流出し、それによって、多くの科学者が「GM作物」に懐疑的だったことが分かっている。
しかしモンサント社に所属する科学者のトップは最終的に、「GM作物は安全」と評価した。どうして安全だと言い切れるのかという質問に対し、彼はこんな風に答えている。
モンサント社が提出した実験データによってです。
それをFDAが精査し、安全だと評価しました。
企業がデータの改ざんなどするはずがありません。
なんの得もありませんからね
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しかし、日本でも過去に様々な公害が発生してきたし、その中で企業がデータの改ざんをしてきた歴史を知っている。またこの映画では、モンサント社の過去の問題を掘り起こしてもいる。製造していた除草剤の原料であるダイオキシンの中毒と思われる症状が工場の従業員に出たが、モンサント社はデータを都合よく操作し、誤った結論を発表したのだ。そんなモンサント社なら、またデータを改ざんしてもおかしくないだろう。
多くの科学者が、モンサント社に振り回されている。
イギリスの研究所の科学者は、イギリス政府からの依頼で、アメリカのGM作物の輸入前に徹底的に調査することになった。彼は職務を全うし、気になる点をいくつか見つけ、「GM作物を輸入することは、イギリス国民をモルモットにするのと同じだ」とテレビ番組で批判した。その翌日、彼は解雇されてしまったという。実はその研究所は、モンサント社からの資金援助を受けていたのだ。
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カナダでは、牛の成長ホルモン「ポジラック」の使用差し止めのために三人の科学者が立ち上がった。「ポジラック」は、遺伝子組み換え技術が初めて食品に使われたもので、アメリカでは認可されたがカナダでは禁止となり、それを受けてヨーロッパでも禁止された。三人の科学者は法廷で「モンサント社から多額の賄賂を提示された」と証言。そしてその後、服務規程違反を理由に研究所を解雇されてしまった。
FDAに所属していた獣医師やアメリカ農務省の元長官なども登場し、「遺伝子組み換え作物の導入の妨げになるような行為に対する反発があった」という趣旨の証言をしている。大企業と国家が手を組み、国策として遺伝子組み換え作物を推し進めようとしている姿が見て取れる。
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政府と大企業が結託しようが、遺伝子組み換え作物が本当に安全なら、まだ問題は少ないと言える。植物の多様性や農家の金銭負担などの問題は消えないが、「食の安全」という観点がクリアされていればまだマシだ。
この点に関しては、映画制作時点では明確な結論は出ていないようだが、「遺伝子の汚染」の研究は行われていた。生来の植物に遺伝子組み換え作物の遺伝子が混ざることを「汚染」と呼ぶが、「GM作物」はこの汚染力がとても強い。
例えば、GM作物の輸入を禁じているメキシコに自生している、1万年以上も他の種と交配がなされていないトウモロコシからGM作物の遺伝子が見つかったことがある。この事実を発表した論文は、世界中に衝撃を与えたという。「GM作物」が他の作物を「汚染」する力がいかに強いかを示しているからだ。
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また、「汚染」された植物がどうなるかという実験も行われている。「GM作物」の遺伝子が植物内のどこに入り込むかによ寄って、様々な奇形が生み出されることが分かっているという。
いずれにしても人体への影響は現時点では何とも言えない。個人的な意見では「遺伝子の組み換え」という現象そのものは自然がずっと行ってきたことなのだから、それを人為的に行うからといって人体に大きな影響があるような気はしていない。
しかし、そういう「食の安全」の部分ではなく、植物の多様性が失われてしまうとか、農家が高額で種子を買わなければならないという現実に対しては、大きな問題を感じる。
そう遠くない未来には、我々の「食」は、モンサント社という一企業に牛耳られてしまっているかもしれない。そのことに危機感を抱くべきだと思う。
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そんな怖さを感じさせられる作品だった。
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