目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:ヴァネッサ・フィロ, 出演:キム・イジュラン, 出演:ジャン=ポール・ルーヴ, 出演:レティシア・カスタ, 出演:エロディ・ブシェーズ
¥550 (2025/02/21 22:29時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 本作においては、「決して『個人の問題』などではなく『社会システムの問題』である」という認識が非常に重要だ
- 自ら最初の1歩を踏み出した少女を、老獪な小説家はいかにして言葉巧みに幻惑させていったのか?
- 母親の理解できなかった振る舞いと、「同意が存在した」と判断することの困難さ
確かに本作は「小児性愛者(ロリコン)」の話なのだが、物語の本質は決して他人事ではないと私には感じられた
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
実際にあった「50歳男性と14歳少女の”恋”」を描く映画『コンセント/同意』は、「変態の話だから自分たちには関係ない」なんて考えで無視できるものではない
本作は冒頭で「実話を基にした物語」であることが記される。そしてそこから、監督(制作側)の強い想いが読み取れるはずだ。
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本作は、ヴァネッサ・スプリンゴラの著書『同意』を基に、若干のフィクションを交えて映画化された。
著者の想いを届けたい。それだけを願って制作された。
本作のストーリーを知れば、監督がそんな風に考えた理由も理解できるだろう。あまりにも「醜悪」な物語だからだ。
「個人の問題」ではなく「システムの問題」だと受け取られるべき
本作で描かれるのは、50歳の男性小説家と14歳の少女の”恋”である。50歳の国民的小説家ガブリエル・マツネフのアプローチを”受け入れる”形で、14歳のヴァネッサとの恋が始まった。そう、『コンセント/同意』というタイトルの通り、少女が初老男性との”恋”に同意したことで、2人の関係性が始まっていくのである。
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さて、「最初こそ、ヴァネッサも積極的にマツネフの求愛を受け入れていた」という事実こそあるものの、そもそも「50歳の男が14歳の少女に恋をする」という時点で醜悪であり気持ち悪い。ただ本作は、単にそんな感情を観客に抱かせるために存在しているのではないと思う。「キモっ!」と一刀両断してお終い、なんて風に片付けていい話ではないのである。
さて、「50歳の男と14歳の少女の恋愛」と聞いて、「どんな風にデートをしている」と想像するだろうか。普通に考えれば、「その関係性をなるべく秘密裏にしようとする」のではないかと思う。出来るだけ人目に付かないようにして会い、その関係性を大っぴらにしない方が安全だろう。いくら本人同士が「同意」しているとしても、社会的には普通、「50歳の男と14歳の少女の恋愛」など許されるはずがないからだ。
しかし本作ではそうではない。2人は人目を気にせずに大っぴらに会い、さらに、仕事仲間(編集者や評論家)にもヴァネッサのことを紹介している。もちろん、「親密な関係である」ことを匂わせた上でだ。もちろん、そんな状況が成立した背景には、「ガブリエル・マツネフが熱狂的なファンを持つ大作家だ」という要素は関係しているだろう。本人曰く、「ミッテラン大統領も私のファンだ」とのことだった。そしてそうだとすれば、「そんな偉大な作家だからこそ、『おかしい』と思っていても誰も指摘できなかった」みたいなことなのかもしれない。
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ただ本作には、そのようなシーンはほとんどない。まあ、ある意味でそれは当然だ。本作は、ヴァネッサが書いた著書を基に映画化されているのだから、「マツネフ周辺の話」は彼女が目にしたことぐらいしか書けない。マツネフの周囲の人間が実際には「ためらい」みたいなものを抱えていたとしてもヴァネッサには分からなかっただろうし、そういうスタンスを映画でも踏襲しているのであれば、「マツネフの周辺の人間が葛藤を抱きつつ何も出来なかった」みたいな描写が無いことも不思議ではない。
しかし、作中のあるシーンを踏まえると、「偉大な作家だから言えなかった」みたいな感じではないような気もする。私がそう感じたのは、ヴァネッサと母親がテレビに出演しているガブリエル・マツネフの様子を観ていた時のことだった。番組出演者の1人が次のような発言をしていたのだ。
この国は「文学」と名前が付けば、どんな悪徳でも許容される。
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そう、本作で最も重要なのはこの点だと私には感じられた。
「マツネフが生粋の小児性愛者である」という事実も、もちろん大問題である。しかしそれは「個人の問題」であり、他人が何らかの形で介入出来る余地は少ない。当然、マツネフが犯罪を起こせば警察が介入することになるわけだが(作中でも実は、そんな動きが描かれていた)、本作の場合、2人の関係は「同意」の下にある。もちろん、「同意」の中身こそ注目すべきであり、それについては後で触れるが、法律的な話をするのであれば、マツネフの行為は恐らく「犯罪」とは見なされないだろう。となれば、「マツネフが小児性愛者である」という事実に外部から対処することは困難である。だからこの問題を掘り下げても、広く益する知見が得られたりはしないと思う。
しかし、「『文学』なら何でも許される」というのはそれとは違う話である。「個人の問題」ではなく「システムの問題」だからだ。「ガブリエルが小児性愛者である」という事実には何も対処できないとしても、「そんな人間を社会でのさばらせないようにする」ことは出来るはずだろう。にも拘らず、「文学だから」という理由で、一般的な倫理観では許されないはずのことまでスルーされてしまう現状は異様だし、そのことこそが問題視されるべきだと私は思う。
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公式HPには、「本国で異例の大ヒット。国家を動かした衝撃の告発。」と書かれている。「国家を動かした」というのが何を指すのかざっくり調べてみたのだが、どうやら、「国からガブリエル・マツネフに支払われていた『文学者手当』が打ち切られたこと」を指すようだ。また、彼の著作の多くが出版社の判断で販売中止にもなったという。本作を観る限りにおいては、少なくともマツネフの周囲の人間は彼の行いを知っていたはずなので「何を今さら」といったところだが、実話を基にしているとはいえ、フィクションの映画がこれほどの影響力をもたらしたことは素晴らしいなと思う。
そしてその原動力となったのが、フランスの若者の反応なのだという。公式HPには、「特に若者たちの反応は凄まじく」と書かれていた。「私たちはそんな社会を断固許さない」というスタンスを明確に示しているのだろう。私は、若い世代ほど色んな事柄に対する考えがまともだと思っているし、だから「上の世代(そうしたくはないが、ここには私自身も入れるしかないだろう)が退場すれば世の中は良くなる」とさえ考えている。なので若い世代には、社会の「醜悪さ」を排除していくような動きをどんどん見せてほしいものだと思う。
「同意した」のではなく「同意させられた」に過ぎない
ではここからしばらく、「同意」について考えていくことにしよう。そしてその説明に関係するため、ここでまず、「そもそも、ヴァネッサは何故36歳も年上の男性に惹かれたのか?」に注目しつつ、「ガブリエル・マツネフがどのように14歳の少女にアプローチしていったのか?」という本作の物語の展開に少し触れておきたいと思う。
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重要なポイントは、ヴァネッサが大の読書家であり、作家志望でもあるという点だ。それは、編集者である母親も驚くほどだった。作中では、ヴァネッサ14歳の誕生日パーティーの様子が映し出されるのだが、そこで彼女はJ=D・ヴォルフロムという人物から声を掛けられる。どうやら文芸評論家として著名な人物のようだ。そして彼はヴァネッサに、「将来作家になる君へ」というメッセージを送っているのである。評論家からそう目されるほど作家としての才能が垣間見えていたのだろう。となれば、ごく一般的な中学生よりも「言葉」に対する感度は高かったはずだと思う。
そしてそれ故にヴァネッサは、「著名な作家」であり、かつ「巧みで熱烈なラブレター」を送ってくれるマツネフのことを好きになっていくのである。
さて、確かにアプローチを仕掛けたのはマツネフの方なのだが、彼はヴァネッサが自ら行動を始めるまで何もしなかった。そして、マツネフとしばらく手紙のやり取りをしたヴァネッサは、マツネフの求めに応じて彼と2人で会うことに決める。これは「最初の一歩を自らの意思で踏み出した」と言えるし、そういう意味で「36歳年上の男性との“恋”に『同意』していた」と見ることは可能だ。ただ恐らくだが、後の展開を考えて、「そうなるまで待っていた」と考えるのが妥当ではないかと思う。
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マツネフはヴァネッサをそのまま自宅へと連れて行く。何か嫌な予感がしたのだろう、この時点でヴァネッサは「帰った方がいいかも」と口にしている。それに対してマツネフは「君が嫌がることはしないから」と声を掛け彼女を引き止めるのだが、こういう「言葉のセレクト」が上手いなと随所で感じさせられた。マツネフはヴァネッサ以前にも同様のことを何度も経験してきたはずで、だから「どうすれば上手くコトが進むのか」を心得ていたのだと思う。
さて、マツネフはそれから、ヴァネッサにキスをしたり服を脱がせたりする。もちろんヴァネッサはそんなこと想定していなかっただろうし、そのことを言葉ではっきりと表明することこそなかった(出来なかった)ものの、当然「嫌だった」だろうと思う。ただ、ここで「ヴァネッサが自らの意思でやってきた」という事実が重要になってくる。「自ら望んだことなんだから」という理由で自分を納得させる力が働き得るからだ。また、将来小説家になりたいと思っているヴァネッサとしては、「大作家から嫌われる」ことを恐れる気持ちもあったはずだ。恐らくそのような複合的な理由から、ヴァネッサは「本当は嫌だったけど、マツネフの行為を受け入れる」という選択をした(せざるを得なかった)のだと思う。
さらに、これも実に巧妙なのだが、ここでマツネフがあらかじめ口にしていた「君が嫌がることはしないから」という言葉が効いてくることになる。先にそう言っておいたことで、「嫌だったら嫌って言ってね」みたいな表向きのニュアンスとは別に、「拒否しないってことは嫌じゃないんだよね」というメッセージとしても機能し得るからだ。こんな風にしてヴァネッサは、「マツネフと会う」と決めた時には想定していなかったはずの「身体の関係」まで「同意」した(させられた)格好になったのである。
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このような「同意」の巧みさは別の場面でも発揮されていた。彼らは正式に付き合うようになってからもよく手紙のやり取りをしていたのだが、ある日ヴァネッサがSEXを拒むと、マツネフはかつて彼女が送ってきた手紙を読み上げて、「ここにはこう書いてあるが、これは嘘なのか? お前は嘘つきだ!」みたいな責め方をしてきたのである。つまりこういうことだ。最初は「拒否しないってことは(この行為は)嫌じゃないんだよね」という形での「同意」だったにも拘らず、次第に「拒否するってことは(私のことが)嫌いってことだ」というような「強制」に変わっていくのである。これは明確に「強制」だと私には思えるのだが、しかし、マツネフが示す理屈のスライドが割と上手いので、ヴァネッサにはこれも「同意」のいち形態であるように感じられたに違いない。
マツネフが巧みなのは、目の前の状況を常に「ヴァネッサ主体で物事が進んでいる」という形で把握させようとしていたことだと思う。「(君が)拒否したら~」という言い方もそうだし、別の場面でも、「君のせいで〇〇になった」「君のために△△をしたのに」みたいな表現を使っていた。マツネフはとにかく、「今のこの状況は、お前が引き起こしているんだぞ」と思わせるような言葉を繰り出すのである。小説家ゆえのこのような巧みさもまた絶妙という感じだった。
このようなやり取りを踏まえればで、「ヴァネッサがマツネフとの関係を『同意』したとは言えない」ことが理解できるだろう。単に「同意させられた」に過ぎないのだが、言葉巧みに「同意した」と思い込まされているだけなのだ。長々と書いたこんな話については「当然分かっている」みたいに感じる人も多いとは思うのだが、しかし、自分がそのような状況に置かれた時に客観的に状況を判断できるかはまた別の話だろう。「自分にも起こり得ること」と認識しておくべきだと私は思う。
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「同意」に対する認識と、「孤立」を促そうとする卑劣なやり方
日本でも最近、「性的同意」に関する議論が少しずつ進み始めた印象がある。その過程で世代間・異性間のギャップが可視化されつつあると思うが、その中でよく出てくるのが「NOじゃないならYES」という話だろう。特に私ぐらいの年齢(この文章を書いている時点で41歳である)やさらに上の世代であるほど、「拒否しない=OKサイン」みたいな発想が当たり前なんじゃないかと思う。
しかし昔はともかく、今ではそんな感覚通用しない。性的な行為に限らずだが、「同意」というのは「YESと言えばYES」「NOと言えばNO」が鉄則のはずだ。まあ、もちろんそこにはグラデーションがあって然るべきで、「ちょっと手を出してみて拒否されなかったらOK」みたいなコミュニケーションを完全にゼロにしてしまうのも窮屈過ぎるかもしれない。ただその場合、「相手はNOと言えないだけかもしれない」という可能性を常に頭の片隅に残しておくべきだと思う。
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本作で描かれているのも、そのような「同意」である。「身体の関係」に関してヴァネッサは、様々な理由から「NO」とは言えなかった。また重要なのは、「『同意』は変化し得る」という点だろう。母親に対してマツネフへの愛を語っていたことからも分かるように、ヴァネッサは自ら”恋”にのめり込んでいった。そのため、初めの内は「彼女自身が積極的に同意した関係」と捉えていいと思う。しかし当たり前の話だが、「最初の同意」が未来永劫有効なはずもない。法律で規定されている状況ならそれに沿うしかないが、そうではないのであれば、「同意はいつだって不同意に変更できる」はずだ。しかしマツネフは、言葉巧みにそのような可能性を排除していく。
ヴァネッサが置かれたような状況は、ネット社会では特に頻繁に起こっているはずだ。ニュースでは時々、「若い女性が、関係性の分からない男に殺される」みたいな事件が報じられるが、それもネット上のやり取りで近寄っていたりすることが多いのだろう。本作で描かれているのはネットがない時代であり、だからこそ「ガブリエル・マツネフのような著名な人物」にしかこんな状況を生み出せなかったわけだが、現代では誰でも出来てしまう。私は以前、『SNS 少女たちの10日間』というドキュメンタリー映画を観たことがあるのだが、その中でも、醜悪な男たちが少女を狙うあまりにもイカれた世界が描かれていた。本当に危うい世の中になってしまったものだと思う
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さて、もう少しマツネフのやり方を詳しく見ていくことにしよう。彼は言葉巧みにヴァネッサの心を掌握した後で、さらに彼女を「孤立」させようとする。このやり方もとても上手かった。例えばマツネフは手紙の中で、「子どもの世界から離れることは辛いかもしれないが、勇気を出してほしい」みたいなことを書いている。これは要するに、「学校の友だちと遊ぶ時間があるなら、私と会う時間を増やしなさい」という意味だ。
あるいは、ヴァネッサが「マツネフとの交際の件で母親と喧嘩になった」という話をした際には、「君は私じゃなくて母親を取るのか?」みたいに詰め寄ったりもしていた。これも、ヴァネッサの周囲の人間関係から引き剥がそうとする振る舞いだろう。そしてそうすることで、ヴァネッサをどんどん「孤立」させ、ヴァネッサの世界におけるマツネフの割合を増そうとしているというわけだ。そうなればなるほどマツネフの要求を拒否しにくくなるし、「同意せざるを得ない」とより強く感じるようになっていくだろう。そしてそれ故に、ヴァネッサはますます「自らの意思で同意した」という感覚を強めていくことになるはずだ。
マツネフがヴァネッサに近づいていったやり方は「グルーミング」と呼ばれる手法だろうし、それに関する言及は世の中にたくさんあるはずなので、ここで詳しく触れたりはしない。ただ、1つはっきりと書いておきたいのは、「本作を観て、『マツネフの何が悪いのか分からない』みたいに感じた人は、自分のヤバさを自覚した方がいい」ということだ。恐らく世の中には、「マツネフはちゃんと相手の同意を得ているし、お互いが合意しているのだから、何が問題なのか分からない」みたいに感じる人もいるんじゃないかと思う。恐らくそういう人は、「最近の若い人には、何をしても『セクハラ』って言われちゃうから、どうしていいか分からない」みたいに言ってしまえる人なのだろう。「お前の自覚の無さを、他人のせいにするな」と私は感じるし、本当にそういう人は猛省してほしいと思う。
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謎だった母親の振る舞いと、「同意が存在するかどうかの判断」の難しさ
さて、私が最も理解できなかったのがヴァネッサの母親である。当初はマツネフとの交際に反対しており、それは母親として当然の振る舞いだと思う。そりゃあ、14歳の娘が36歳も年上の男と付き合っていると知ったら止めさせようとするだろう。しかししばらくして母親は、2人の交際を受け入れたようなのだ。この流れが、私にはかなり不可解に感じられた。本作にはあまり母親は登場しないので断片的にしか分からないのだが、何なら2人の交際を応援しているような雰囲気を感じさせる場面さえある。どんな心境の変化なのかと、ちょっと驚かされてしまった。
確かに、フランスに限らず欧米諸国では「個人の人権」がかなり重視されるはずなので、「14歳ではあるが、娘の判断を尊重した」みたいなことなのかもしれない。日本的な感覚とはちょっと違うが、それはまあ国民性の違いなのでいいだろう。ただ、ヴァネッサが「私の勝手でしょ」みたいな発言をした際に、母親が「親の私には責任がある」みたいな反論をしていたのである。つまり母親は当初「子どもの判断に親が介入できる」と考えていたはずなのだ。だから、「娘の判断を尊重する」という思考に変わったのだとしたら、どのタイミングで切り替わったのかが私にはちょっとよく分からなかった。
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また先程少し触れた通り、本作には「ガブリエル・マツネフが警察から捜査される」というシーンがあるのだが、その事実を知った母親がヴァネッサに「親権を取り上げられるかもしれない」みたいに言う場面がある。外国の映画を観てよく感じることなのだが、欧米では恐らく「危険だと判断した場合に、公権力が親権を強制的に奪う仕組み」が備わっているのだと思う。日本の場合は「法的な親子関係」がとても強いのでそんな風にはできない。そしてそれ故に児童相談所が苦労することになるわけで、日本とは大違いである。母親の心配も要するに、「『ロリコン男との交際を止めなかった母親』という点が問題視され、親権を奪われるかもしれない」という話なのだろうと思う。そしてそういう状況に置かれていたにも拘らず、母親がマツネフとの交際を許容していたように見えたことが実に不思議だったのだ。
ただこの点については、「母親が編集者である」という要素も無視できないとは思う。そもそも、ヴァネッサがマツネフと初めて会ったのは、母親が編集者として出席していた出版業界のパーティーの席である。となれば、「母親は普段から仕事で小説家ガブリエル・マツネフと関わりがある」と考えるのが自然だろう。そしてマツネフは、フランスでは人気作家である。そうなると編集者としては、「マツネフとの関係を荒立てない方がいい」という発想になってもおかしくはない。
しかし仮にそうだとしても、ことは娘の話なのだ。母親は編集者としてガブリエル・マツネフと関わりがあるのだから、一般の人以上に「小児性愛者としてのマツネフ」の顔も知っていたはずである。そしてその上でマツネフとの交際を許容していたのだとすれば、やはり私には理解しきれないのだ。
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さてそんなわけで、「50の男と14歳少女の“恋”」についてここまで色々と書いてきたわけだが、様々な物事に対する私のそもそもの基本的なスタンスは、「法律に触れておらず、他者に大きな迷惑をかけず、さらにお互いが同意しているなら何をしてもいい」である。フランスに「50歳男と14歳少女の“恋”」を禁ずる法律があるのかどうかは知らないが、もし無いのであれば、あとは「お互いの同意」次第だろう。そして「その同意が“ちゃんと”成立しているのであれば、『50歳男と14歳少女の“恋”』も許容しよう」と考えているのである。
その上で、この記事でとにかく私が主張したかったのは、「『同意が存在するかどうかの判断』はとても難しい」ということだ。本作で描かれるガブリエル・マツネフはクソ野郎なので、彼を擁護するつもりは一切無い。ただ、「50歳男と14歳少女の“恋”」が本当の意味で成立する可能性だって決してゼロではないと思っている。ただそこには「“ちゃんとした”同意」が必要であり、そしてその判断は非常に難しいので、「まず成立し得ない」と考えておくべきだろう。
特に本作は、ヴァネッサの「告発本」をベースにしている。つまり、「事後的に『同意は存在しなかった』と明らかにされた」という状況なのだ。もちろん先述した通り、「最初は『同意していた』が、次第に『不同意』に変わっていった」みたいなケースもあるだろう。本作で描かれているのも、そのようなパターンだと私は捉えている。そう考えるとやはり、よほどの状況でもない限り、「『一般的に成立しないと思われている同意』はやはり成立しない」と認識しておく必要があると私は思う。
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最後に
さて、「ガブリエル・マツネフがクズであること」に議論の余地は一切ないのだが、それとは別に、「小児性愛者はどう生きていくべきか?」という議論がもう少しあってもいいような気がする。「小児性愛者」の話となるとなかなかイメージしにくいが、例えば「『毒キノコ』以外のすべての食べ物が不味いと感じられる」みたいな状況を想定すると少しは考えやすくなるかもしれない。
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そんなことも考えさせられる物語だった。
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ルシルナ
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