目次
はじめに
著:pha
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
「働くこと」ってそんなに偉いわけじゃないし、無理なら無理で諦めていい
他人に”さほど”迷惑を掛けずに生活が成り立っているなら、それで充分だと思います
この記事の3つの要点
- 「常識」は多数派にとって有利なルールだから、少数派は率先して遠ざかるべき
- 物事の良し悪しは「運」だと考える
- 遠い先の未来のことなんかより、今を生き延びる方が重要
生きているのが辛いと感じられてしまう人に、考え方を変えるきっかけを与えてくれる1冊です
この記事で取り上げる本
著:pha
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ポチップ
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本書の著者であるpha氏は、「日本一有名なニート」と呼称されることもあります。恐らくそれは、彼が京大卒だからでしょう。京都大学を卒業しながら、働いていた会社をすぐに辞めてニートとしての生活をスタートさせます。その後プログラミングを始めたり、「ギークハウス」というプログラマーを集めたシェアハウスを始めたり、ネットで発信したりして、様々な形で知られるようになりました。
著者の、
どちらにしてもあのままずっと会社に勤め続けることは自分の性質的に無理だっただろう。仕事を辞めなくてもどこかで潰れていた。どうせ辞めるならできるだけ若いうちのほうがいい。人生引き際が肝心だ。
という感覚にはもの凄く共感できてしまいます。私は、大学を中退し就職活動すらも逃げた身ですが、感覚としては著者と同じで、「このまま社会に出たらどこかのタイミングで潰れる」と考えていました。だから著者が本書で語る考え方には、「昔から自分も同じように考えていた」と感じるものが数多くあり、非常に親近感を覚えます。
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そう。働かないとヒマだよなぁ、って感覚はあるんだよなぁ
本書はそんな著者が、自身の経験や思索などを踏まえて、「辛いなら、もっと楽に生きられる方法はあると思う」と自分の考えを提示してくれる作品です。
重要なのは、「辛いなら」という部分です。
本書は、社会で生きることにさほど苦労していない人に対して、より楽に生きられる方法を紹介する本ではありません。今とても苦しい、逃げたい、不安だ、などマイナスの感情に支配されているけれども、世間的な常識からなかなか抜け出せず、自分が今いる環境・状況を変えることができない人たちに、そんなに辛いならガラッと考え方を変えてみたらいいんじゃないか、と提案する内容です。
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人生においてもそんな感じで、頑張って力づくで無理矢理状況を変えようとするのってあんまりうまい方法じゃなくて、自分がそれほど力を入れなくても動ける状況を探すべきなのだ。もしどうすれば楽になれるのか全く見えない状況だったら、あまりあせらずに何かが見えてくるまでじっと何もせずに待ってみてもいいんじゃないかと思う
結論から言うと、別に働かなくても人間は生きていていいと思う。人間って別に働くために生きているわけじゃない。人間という概念はそんなに狭いものじゃないはずだ。人生をより良く送るための手段として働くのはありだけど、それはあくまで手段にすぎないのに、働くこと自体が人生の意味のように思っている人が多い
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今引用したような文章が刺さるのなら、本書はあなたにきちんと届くことでしょう。あくまでも1つの考え方であり、著者自身も、参考になるところだけつまみ食いする程度でいいと注意しています。また、この本に書いた思考にしたって自分ひとりで考えたわけではなく、様々な外部の影響を受けながら少しずつ蓄積していったものだ、というようなことも書いており、著者には誰かに考えを押し付ける意思がないのだと伝わることでしょう。
自己啓発本って普通、「これが正しい考え方だ」って押し付ける内容が多い印象があって辛いよね
自分に自信があるんだろうけど、私は、自分に自信がある人ってあんまり好きじゃないんだよなぁ(笑)
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例えば、
ニートが全くいない世界は、人間に労働を強制する圧力がキツくて社会から逃げ場がなくて、自殺者が今よりもっと多いディストピアだと思う。
働きたくない人はニートになってもいいし、働きたい人は働いてもいい。一旦ニートになった人がまた労働者になることも、労働者がちょっと疲れたらしばらくニートをやるようなことも、どちらでも気軽に選べるような社会が理想的な社会だと思う。
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日本人は周りにどう見られるかを気にして自分を犠牲にしすぎだと思う。もっと全体的に適当でいい加減になっていいし、それで社会が不便になるなら不便になってもいい。電車やバスが遅れまくったり停電がしょっちゅう起きたりコンビニが二十四時間営業じゃなくなっても、その分みんなが気楽に生きられるならそっちのほうが幸せなんじゃないだろうか。もっとみんなだらだらしよう
なんていうのは、社会全体で受け止めてもいい意見でしょう。私も割と同じようなことを考えていて、今の世の中は、一度レールから外れるとやり直しが利かない、という点が、誰にとってもしんどさの原因になっている、と感じています。もう少しユルい社会が実現すれば、みんなちょっとずつ楽になれるんじゃないかと思うんですがどうでしょうか。
「常識」は「多数派に有利なルール」だから捨ててもいい
著者は具体的な事柄についても様々に意見を出しますが、その根底にある考え方は、「常識に囚われるな」です。
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世の中で一般的とされているルールや常識や当たり前は、世の中で多数派とされている人たちに最適化して作られている。少数派がそんなアウェイな土俵で戦っても負けるだけだ。無理して我慢しても意味がないし、向いていない場所からは早めに逃げたほうがいい。レールから外れることで自分と違う人種の人たちにどう思われようが気にすることはない。
私も昔から、「常識」「普通」「当たり前」に苦労させられてきました。なんとなくそういう「常識」的な考え方から外れてはいけないという圧力を感じていたのです。違和感を覚えつつも、逃れるのは難しいと感じていました。
ただ、「常識」は多数派に有利なルールだと認識できれば、少数派の自分はそんな土俵の上で闘う意味などない、と感じられるだろうと思います。「常識」が合わないと感じる時、合わせようとしても無駄でしょう。少数派の感覚を持った人は、やはり多数派にはなれないからです。
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だから「常識」からはさっさと逃げるしかありません。
もっと言うと、僕は「お金がないと生きていけない」とか「お金を稼ぐには働かなければならない」という事実にまだあまり納得がいっていないというのがある。憎悪していると言ってもいい。それは社会では当たり前のことなのかもしれないけど、それが当たり前だって簡単に思いたくない。もっと適当に、お金なんてなくても全ての人間は安楽に幸せに生きられるべきなんじゃないのか。それが文明ってもんじゃないのだろうか。それは夢のような話なのかもしれないけど、なんかそれは諦めたくない
具体的にはよく分かりませんが、著者はとりあえず、(少なくとも本書執筆時は)働かずに生活が出来ているようです。私は、他人に”さほど”迷惑を掛けていないのであれば働かなくてもいいと思ってますし、働かなくても生活が成り立っているなら問題ないでしょう。
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私は、仮に働かずに生活が成り立つとしても、「(ボランティアなどを含む)仕事」によって社会と関わろうと考えるだろうと思いますが、働かなくても楽しく生きていけるならその方がいいと思います。
私の場合は、「やりたいこと」が特にないから、時間があっても暇なんだよね
自分の興味だけで永遠に時間を潰せるって人は羨ましい
「自分が『凄い/悪い』わけじゃない」という感覚
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僕自身が何かをやってうまくいったときにいつも思うのは、この成功は別に自分が凄かったからではなく、たまたまその場所に自分がいたからというだけにすぎない、ということだ。そこでも自己責任の割合は半分ぐらいに感じている
この感覚は、私も理解できるなぁ、と感じます。私も、具体的には書きませんが、ありがたいことにちょっと世間的に名前を知ってもらえた過去があります。しかしその時私が感じたのも、かなり運が良かったよなぁ、ということです。様々な要因が上手く重なって、たまたまそのタイミングでワーッと広まったというだけであって、私個人の実力なり努力なりの要因が高かったとは思っていません。
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その時に限らず昔から、良いことが起こったら「運が良かった」と受け取るようにしています。人によっては「運も実力の内」などと言うのでしょうが、それはもはや言葉遊びの領域でしょう。努力や才能でどうにもならないことを「運」と呼ぶのだから、それを「実力」と呼んでしまうのはどうかと私は思っています。
「運も実力の内」なんて結局、上手くいった側の人間しか使えない言葉だしね
もし自分でコントロール可能な余地が僅かでもあるなら、それは「運」じゃなくて「努力」だろうし
そんな風に考えているからこそ、なるべく、悪いことが起こっても自分だけのせいじゃない、と思うように意識しています。
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だから「頑張れば成功できる」というのも僕は半分嘘だと思うし、そもそも頑張れるかどうかとか能力があるかどうかも環境によって左右されるものだから、「低収入は自己責任だ」って一方的に突き放してしまうのは間違っていると思う
「ホームレスは努力が足りないからそういう境遇になったのだ」と捉えられることもありますが、私はこれまでずっと、人生のどこかのタイミングでホームレスになってしまっていてもおかしくなかった、と考えています。良い方に転ぶのも運ですが、悪い方に転ぶのも同じく運です。
今辛い境遇にいる人は、「自分が選択や決断を誤ったからこうなっているんだ」と感じてしまっているかもしれません。しかし、たぶんそんなことはないでしょう。人間は常に正しい判断をし続けることなどできませんし、きちんと向き合ったり努力したりしても誤ってしまうことはあります。
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「自分が悪かった」と考えることで、「ちゃんと頑張れば状況が良くなる」と思えるのかもしれませんが、残念ながら「正しい努力」がきちんと報われるとも限りません。だから、良い状態も悪い状態も、自分がコントロールできる余地は僅かしかないと考えた方がいいでしょうし、自分を追い詰めるような考え方を手放しつつ、状況が好転するのを静かに待つのがいいんだろうと思っています。
未来のことを考えても仕方がない
でもだからと言って、三十年後にくる老後のために仕事をするとか貯金をしておくとか、そういうのはどうもぴんとこない。みんな、そんな先のことを計画できるものなんだろうか。僕はすぐ目の前のこと、せいぜい数カ月先までのことしか想像できない。自分の二十年後や三十年後なんて全く実感が湧かない。それ、本当にあるんだろうか。生きているかも怪しい。そんなあやふやなもののために備える気力が湧いてこない
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分かるなぁ、と思います。私も、自分に「老後」なんて存在するのか、全然信じられません。私は、この記事を書いている今38歳ですが、社会人になってからこの年になるまでの16年でさえ「長いな」と感じています。65歳で定年だとしてもあと27年。「老後」のことなんかより、「老後にたどり着くまで」の方が遥かに大変な気がしています。
若い頃はよく「50歳で死にたい」とか言ってたけど、さすがに今は、50歳で死ぬってことは無さそうだなって思う
でも正直、自分が二十年後や三十年後にどうなっているかは分からない。お金がなく体も悪くなってとても惨めな生活を送っている可能性も高い。でもすごく惨めな老後を過ごしたとしても、多分後悔はしないと思う。結局若いときの自分にはそういう選択しかできなかったのだから。若いうちにいろいろ好き勝手な楽しいことをできたし、もう人生なんてそれで十分じゃないだろうか
私も、これまでの人生のどこかでホームレスになっていてもおかしくないと考えたように、これからの人生でも厳しい状況に置かれる可能性があるだろうと考えています。お金がなかったり、お金があっても重い病気に罹っていたりして、惨めな生活を送っているなんてこともあるでしょう。
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しかしどれだけ準備したところで、望んだような未来が必ず手に入るとは限りません。今回のコロナウイルスの蔓延で、人生設計や将来のプランが大きく崩れたという方も多くいるでしょう。
あんまり先のことを考えすぎても仕方ない。十年後、二十年後にこの社会がどうなっているかなんて誰にも分からないし、また必要が迫ってから考えればいい。人間いつ何が起こって死ぬかわからないし、いつかは絶対に死ぬ。人生なんて死ぬまでの間をなんとかやり過ごせればそれでいい
人生何が起こるか分かりませんし、「正しく準備しなかった自分が悪い」と考えるのは良くないと思います。そりゃあ、お金と時間を膨大に掛ければ、人生のありとあらゆるトラブルや障壁に対応できるかもしれませんが、そうすればするほど、現在の自分の人生に支障をきたすことにもなってしまうかもしれません。
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よく知られた「働かざる者食うべからず」という格言の印象が強く刷り込まれているのではないか、という気もします。確かにこれは、「働くこと」がまだそこまで理解できていない子どもなどに対して、「働くこと」の意味合いを伝える言葉としては有効でしょう。
しかし世の中には、「働くこと」がとてもしんどく感じられてしまう人もいます。そういう人に対しても「働かざる者食うべからず」という言葉が同じように浴びせられてしまうのはなかなか辛いでしょう。
ニートでない人たちは、ニートが自分たちとまったく違う何かだと思わないで欲しい。それは自分たちと同じ社会の雰囲気から産まれた、自分と共通するものを持った何かなのだから。
逆も同じことが言える。ニートにとっても、働いている人は自分と無関係ではない。それは自分と共通する何かを持った人たちで、1枚のコインの両面みたいなものだ
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もちろん、働かない人間が、働いている人間とまったく同等の権利を主張するというのもまた誤りだと感じます。ただこれも、「働いていない人間には価値がないから権利を制限する」という考えではなく、「働いている人間には価値があるから権利を付与する」という発想であるべきでしょう。「働いていない」から権利が著しく制約されてしまう、というのはやはりおかしいと感じます。
これからますます社会にAIが実装されていくでしょうし、そうなればなるほど、「人間が関与しなくて済む領域」は格段に増えることでしょう。仕事がしたくても、人間にできることがあまり残されていない、なんていう時代も、遠からずやってくると思います。
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そしてそうなればなるほど、「働く」ことの意味合いは今以上に大きく変わっていくことになるはずです。
『タイタン』(野崎まど/講談社)は、人類が仕事から解放された世界を描くSF小説で超面白かった
「仕事」をテーマに、ここまで哲学的に、そしてここまでエンタメに仕上げられるって天才だよね
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著:pha
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最後に
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著者の考え方は、そんな思考のきっかけになるのではないかとも思います。
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先進国では数少なくなった「死刑存置国」である日本。社会が人間の命を奪うことを許容する制度は、果たして矛盾なく存在し得るのだろうか?死刑確定囚と対話する教誨師を主人公に、死刑制度の実状をあぶり出す映画『教誨師』から、死刑という現実を理解する
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どう生きるべきか・どうしたらいい【本・映画の感想】 | ルシルナ
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