目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「片思い世界」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
この記事ではネタバレになるような言及を避けて感想を書きました
そのため、舞台挨拶で出演者・監督・脚本家が語った内容に多く触れています
この記事の3つの要点
- 脚本を担当した坂元裕二が別名義で作詞した劇中歌『声は風』こそが、本作全体を絶妙にまとめあげていると思う
- 冒頭の「見せ方」がとにかく絶妙で、また、「予告編」も実に上手く作ってある
- 「そうであってほしい」と感じてしまうような世界観を坂元裕二はどのように作り上げたのか?
私の文章を読んでもさっぱり理解できないと思うので、読まずにすぐに本作を観ましょう
自己紹介記事
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映画『片思い世界』は、思いがけない設定で思いがけない世界を描き出す、ちょっと驚きの物語だった
脚本を担当した坂元裕二が作詞した劇中歌『声は風』の歌詞の内容が、作品全体をまとめ上げているように思う
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これは実に素敵な作品でした。ただ、ネタバレを避けたまま内容に詳しく触れるのは不可能で、でも、やはり本作は「どんな設定なのか」を知らずに観た方がいいと思うので、この記事では「ネタバレをせず、書けそうな範囲内のことだけ書く」ことにしたいと思います。
まあネタバレの状態で観ても全然面白いとは思うけど、やっぱり何も知らない方が驚きが大きくなるからね
それが明かされるまでの描き方も、明かされてからの展開も、よく出来てるんだよなぁ
私は、特に狙っていたわけではないのですが、、本作を「ライブビューイングでの舞台挨拶付きの上映回」で観ました。それで今回は、内容についてのネタバレを避けるために、この舞台挨拶で言及された話に多く触れることになると思います。
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さて、出演者の1人である杉咲花がその舞台挨拶の中で、劇中歌『声は風』の歌詞のある箇所が好きだという話をしていました。それが、
花が忘れても 種はおぼえてる
生きるよろこびを
という部分です。そして本作『片思い世界』は、まさに「生きるよろこび」みたいなものを強く実感させてくれる作品じゃないかと思います。私が言っている「生きる」には悲しい意味も含まれているのですが、本作では、そういう「悲しさ」もすべてひっくるめた上で「生きるよろこび」が描かれている感じがあって、凄く素敵だなと感じました。
「生きる」って言葉に色んな可能性を見出したくなるような感じだよね
「そうだったらいいなぁ」って思う人は多いんじゃないかな
さて、この『声は風』の歌詞は、本作の脚本を担当した坂元裕二が別名義で作詞したそうなのですが、「脚本を書き終える前に作詞しなければならなくなり、つまり同時並行だった」のだそうです。だとすればもしかしたら、「作詞が終わってから登場人物の名前を考えた」なんて可能性もあるかもしれません。というのも、相楽美咲・片石優花・阿澄さくらという主人公3人は「花」を連想させる名前になっているからです(あるいは、「花」というモチーフが先にあって、そこから登場人物の名前も『声は風』の作詞も連想していった、と考える方が自然でしょうか)。
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というわけでもう少し『声は風』の話を続けると、サビのフレーズである「声は風 風は夢 飛んでけ」にはもちろん「種」のイメージが含まれているでしょう。つまり、「種から芽吹いた花は厳密には元の花とは違うけれど、枯れては咲いてを繰り返すことで生命は続いていく」みたいなことが、劇中歌『声は風』に、そしてひいては本作『片思い世界』にも貫かれているというわけです。監督の土井裕泰が言っていた通り、本作は『片思い世界』というタイトル以外はあり得ない作品であり、そして、タイトルやテーマ性など作品を形作る様々な要素が「全体としてまとまっている」みたいな印象だったのが凄く良かったなと思います。
予告編を観ているだけじゃ全然想像も出来ない作品だからね
映画『片思い世界』の内容紹介
年齢も苗字もバラバラの3人の女性が、1つ屋根の下で暮らしている。今日は、一番年下のさくらの誕生日だ。美咲と優花は部屋中を飾り付けて”サプライズ”のお祝いを用意しているのだが、サプライズが全然好きじゃない我が道タイプのさくらは、「毎回驚いたフリをしなきゃいけないこっちの身にもなって」と苛立ちを隠さない。しかしそれはただの照れ隠しで、なんとこの後、美咲と優花が感動するような展開が待っているのだ。
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というわけで彼女たちは3人で仲良く暮らしている。朝はバタバタと起き出し、一番年長の美咲が3人分のお弁当を作り、「柱に背の高さを刻む」という恒例の日課をやってから、それぞれの場所へと向かう。美咲はオフィスへ、優花は大学へ、そしてさくらは水族館である。日中はそんな風にそれぞれで過ごしつつ、何だかんだ3人はいつも一緒にいて、食べたり映画を観たり寝たりして楽しそうに暮らしていた。
さて、美咲とさくらが乗るバスには、さくらが「アホ毛」と呼んでいる男性がいつも乗っている。どうも、美咲は彼のことが気になっているようだ。そんなわけである日、さくらが凄まじいお節介を焼き(そういう性格なのだろう)、その「アホ毛」がラフマニノフのピアノコンサートで女性とデート予定だと突き止める。でなんと、彼女たちはそのまま、2人のデートについていくようにしてコンサート会場まで押しかけてしまうのだ。
一方、優花は大学の近くに停まっている花屋のバンを見ている。いや、そのバンに乗っている女性を見ているみたいだ。ちょっと驚いたような表情をしている。そう、彼女は実は思いも寄らない人を見つけてしまったのだ……。
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冒頭の見せ方も予告編の作り方も絶妙で、とにかく「よくこんな物語にまとめ上げたものだ」と感心させられた
本作ではまず、冒頭の「見せ方」が凄く上手かったなと思います。本作の冒頭は内容紹介で書いた通りさくらの誕生会のシーンなので、まずはさくらの「見せ方」がとても上手いという感じです。誕生会のシーンだけでも「さくらのぶっ飛んだ雰囲気」が伝わってくるし、そしてそれ故に、冒頭の「あるシーン」の違和感が目立ちません。物語が後半に入ってからこの冒頭の場面を思い返せば、誰もが「見せ方が上手いなぁ」と感じることでしょう。
映画について話す友人が1人いるんだけど、「このシーンは上手かった」って言ってたわ
最初は絶対に気づかないし、けど、後から確実に「そうだったのか」ってなるのが上手いよね
そして本作では、他にも同じような感じで、「気になると言えば気になるけど、気にならないと言えば気にならない程度の違和感」が少しずつ積み上がっていきます。そして、それらの「違和感」が一気に解消された瞬間から物語が本格的に始まると言っていいでしょう。で、そうなる前の段階ではまず、「さくらの変わりっぷり」や「3人の関係性」なんかが結構魅力的でした。本作では、「違和感が解消された後」の展開も役者に高い演技力が求められると思うのですが、「違和感が解消される前」もまた違った繊細さが必要とされる感じがあって、とにかく主人公3人を演じた広瀬すず、杉咲花、清原果耶はかなり苦労したんじゃないかなと思います。
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また本作は、「予告編が絶妙な形で機能している映画」と言えるでしょう。予告編だけを観ても別に違和感らしい違和感はないのですが、「違和感が解消された後」でこの予告編を思い出してみると、「予告編のあのシーンは、本作においてどんな形で登場・成立するんだろう?」みたいに感じるんじゃないかと思います。これもまたよく出来ているなと感じました。別に「予告編を観ておくのは必須」なんてことは全然ありませんが、予告編を先に観ておくことで、「何がどうなったら予告編のあのシーンのような展開になるんだ?」みたいな方向からも本作を楽しめるようになるかもしれません。それはそれでまた面白い見方ではないかと思います。
しかし、予告編を作る人も頭を抱えたんじゃないかなぁ
「物語の本質的な要素は出しちゃいけない」っていう制約の中で、よくああいう予告編を完成させたなって感じだよね
さて、先程から書いている通り、本作ではある時点で「違和感が解消される」わけで、そこから物語のトーンが一気に変わりました。で、「違和感が解消された後」は皆、「この後、何がどうなるわけ?」みたいに感じるんじゃないかと思います。「なるほど、設定は理解した。で、ここからどう展開するの?」というわけです。
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そしてこの点に関しては監督自身も言及しています。監督もまた「面白いけど、じゃあここからどうなっていくんだろう?」と感じたと言っていました。というのも本作は、「紙1枚に20行程度の文章(プロットと呼べるほどのものでもない)」からスタートしているからです。坂元裕二から提出されたその文章を読んで、監督は前述のような感想を抱いたそうで、そりゃそうだろうなと思います。その時点ではもちろん、脚本は全然仕上がっていなかったわけですが、そこからよくもまあ、この「かなり複雑な制約のある物語」を面白い作品に仕上げたものだなと感じました。
しかしまさか、「スーパーカミオカンデ」の話が出てくるとは思わなかったよね
理解できなくても全然問題ない要素だけど、物理が好きな私としてはちょっとテンションが上がった
「そうであってほしい」と思わせるような物語はどのように生まれたのか?
舞台挨拶の仲で坂元裕二は、本作の脚本を思いついた時のエピソードについて聞かれていて、次のように答えていたように思います。
設定などをすべて思いついて書き始めた後で、「そう言えばこの物語は、子どもの頃の自分が布団の中でずっと考えていたものだった」と気付いた。
本作を観終えた人なら、彼のこの感覚は何となく理解できるんじゃないでしょうか。具体的なことに触れずに書くのはなかなか無理があるのですが、本作の設定に対しては、割と多くの人が「そうであってほしい」みたいに感じるんじゃないかと思います。同じような発想を頭に思い浮かべたことがある人は結構いるでしょう。そしてだからこそ本作は、多くの人に届いているんじゃないかと思います。
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あるいは、本作を観たことで「そうであってほしい」と思うようになったみたいな人もいるだろうしね
そして本作では、そんな「『そうであってほしい』と願ってしまうような世界観」が、最後までちゃんと“リアル”に展開されていたことも良かったです。ネタバレをせず、観ていない人にこの「リアルさ」を伝えるのは無理なのですが、「『やっぱりそうだよね』というある種の残酷さ」がきちんと内包されていて、そしてその上で、「その残酷さをちょっとした偶然で和らげる展開」になるのが凄く良かったなと思います。
個人的には特に、「車にぶつかるシーン」にそこはかとなく救いを感じました。「映し出される状況」だけを客観的に捉えたら、とても「救い」なんて表現を使える場面ではないのですが、それでも、「どうしようもない無力感」で満たされてしまった作品世界において「観客が望む展開を用意する」という点でこのシーンは絶妙だったと思うし、そういう意味で「救い」という言葉を使ったつもりでいます。
なんていうか、「それぐらいのことが起こらないと釣り合わないよね」みたいな感じかな
しかしホント、ふわっとさせたまま伝えるのは難しいよね
ちなみに本作では、先述した「紙1枚に20行程度の文章」を提出した時点で既に、広瀬すず・杉咲花・清原果耶の出演が決定していたそうです。そしてその話を受けて司会者が坂元裕二に、「この3人が演じるという事実は、脚本の執筆に何か影響しましたか?」と質問をします。それに対して坂元裕二は、「普段は演者に寄せることも考えるのですが、今回は主人公3人に何かキャラクターを与えるような書き方をしてはいけないんじゃないかと思っていた」みたいな返答をしていました。
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さらに彼は、「これは監督とも一致している部分なのですが、今回は3人のキャラクターを1人の人物であるかのようにして描くイメージを持っていた」のだそうです。舞台挨拶では監督もこの点について言及していたのですが、監督の発言に触れるとかなりネタバレに絡んでくるのでここでは避けます。ただやはり、監督自身も「1人の人間を3つのキャラクターに分けて描く」ような意識で本作を撮っていったそうで、そういう見方をしてみるのもまた面白いかもしれません。
舞台挨拶の話であと印象的だったのは、「完成しないかもしれないと思った」って話
後で調べて分かったけど、本作の撮影中に監督らスタッフが交通事故に遭ってかなりの重症だったみたいね
さて最後に、本作の「残酷さ」についてもう少し触れておきましょう。本作では、先述した「車がぶつかるシーン」とそこに至るまでの一連の流れを除けば、「視覚的に残酷なシーン」はほぼ存在しません。ただ本作にはずっと、「拭いきれない『残酷さ』」みたいなものが付きまとっていた印象もあります。
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そういう「残酷さ」は大体の場合、広瀬すず・杉咲花・清原果耶の3人が織りなす「楽しげな雰囲気」にかき消されて可視化されません。しかし、彼女たちが笑顔を保てない状況においては、「楽しげな雰囲気」で蓋をされて表に出てこなかった「残酷さ」が一気に噴出して、思いがけず「悲しさ」に支配される瞬間がやってきたりもします。もちろん、彼女たちは「ずっとそういう環境にいた」わけで、思いのほかダメージは大きくないのかもしれません。しかし、観ている側は「こういう世界で生きざるを得ないからこそ抱いてしまう苦しみ」を勝手に増幅して感じ取ってしまうというわけです。
そんな風に感じさせる絶妙な設定も、設定を上手く活かす展開・演出も素晴らしく、とても満足できる鑑賞でした。
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最後に
私の文章を読んだだけではきっと、本作『片思い世界』がどんな物語なのかまるで想像できないでしょう。でも、それで正解だと思います。是非、何も知らないまま観て下さい。
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ただ私は以前、「犬や猫が死んじゃうシーンがある映画は絶対に観れないから、そういうのは先に調べないと無理」みたいな意見を目にしたことがあります。なるほど、「何も知らずに映画を観る」という行為にそんなハードルがあるのかと感じたのですが、そういう方のために一応、「犬も猫もカメも死にません」と書いておくことにしましょう(予告編でカメが出てくるので一応言及しておきました)。
というわけで、とても素敵な作品でした。
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