目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:ハンナ・ベルイホルム, Writer:イリヤ・ラウツィ, 出演:シーリ・ソラリンナ, 出演:ソフィア・ヘイッキラ, 出演:ヤニ・ヴォラネン, 出演:レイノ・ノルディン
¥400 (2025/10/09 06:49時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 普段はネタバレを避けて感想を書くが、この記事では私なりの解釈をネタバレを気にせずに書いている
- いわく言い難い狂気を放つ母親は、本作においては「我々と同じ側の存在」として描かれているのだと思う
- 「良い子でいたい」と願う少女が生み出してしまった怪物とのラストシーンをどう解釈すべきだろうか?
私の解釈が正しいかどうかは分からないが、このような捉え方をすることで本作の物語を捉えやすくなるとは思う
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「善」と「悪」が内在している母親
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さて、その見方を補強する要素と言えるのが母親である。というわけでまずは、主人公の母親について少し説明したいと思う。
母親は「素敵な毎日」というYouTubeチャンネルを運営し、自身を含む家族4人の日々の生活を映し出している。「ごく一般的なフィンランド家庭の日常を切り取る」というコンセプトのようだ。しかしその生活はどうにも「一般的」とは言えないように感じられる。フィンランド人にどう見えるのかは分からないが、映画の作り的には明らかに「母親が切り取る日常は”盛られている”」と示唆されているように思う。「キラキラ」と形容するのがピッタリの日々なのだが、しかし母親は「これが私たちの『普通』なんですよ」と暗に主張することでマウントを取ろうとしている感じがあった。
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そして、そんな「キラキラ」の演出のために彼女は、夫、娘、息子を平気で利用する。つまり、悪意を持って母親を表現するなら、「自分が理想とする『キラキラ』のためならいくらでも家族を犠牲に出来る人物」と言えるのではないかと思う。
しかし、「犠牲」だと感じているのはどうやら観客だけのようだ。家族は母親のことが大好きみたいだし、当然、自分たちが置かれた状況を「犠牲」だとは考えてもいない(あくまでも、本作のスタート地点においては)。そして恐らくだが、夫と息子が抱く母親に対する感情は”あまり”変わっていないのだと思う。彼らにとって母親は、本作の最初から最後まで、概ね「素敵なお母さん」のままというわけだ。
なのだが、そんな「素敵なお母さん」は実は、家族の前でも平然と「悪」を露出する。
予告編でも使われていたが、映画冒頭にこんなシーンがあった。YouTubeの撮影中に窓から室内にカラスが入り込んでしまうのだ。そのカラスを姉・ティンヤが生け捕りにするのだが、「外に放す?」と聞いた彼女に対して母親は「こっちに」と寄越すように指示をする。そしてそのままカラスの首をへし折り、平然と「生ゴミに捨てておいて」と言ってのけるのだ。
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それだけではない。母親はYouTubeを通じて新体操をやっている娘の素晴らしさを伝えたいと考えており、そのため、なかなか上達しない技の練習を、コーチに止められても続けさせるのだ。ティンヤの身体がボロボロになっていることが分かっているにも拘らずである。さらに彼女は、「浮気していること」をあっさりと娘に伝えていた。というかどうやら、夫にもその事実を話しているようだ。そんなわけで、この母親がとにかくちょっと「普通」ではないのである。
そんな母親を中心に家族の日常が成り立っていること自体がまず狂気的に思えるのだが、しかし、映画冒頭から仄かに伝わってくるこれらの「狂気」は決して、本作『ハッチング―孵化―』の中核ではない。あくまでも「舞台装置」程度の存在でしかないのだ。ここで私が確認したかったのは、「この母親は『ジキルとハイド』のように、1つの肉体の中に『善』と『悪』が内在している」という点である。この描写は、本作においては「対比的な存在の提示」なのだと思う。
母親は確かにそこはかとなく狂気的な存在である。それは間違いない。しかし、「1つの肉体の中に『善』と『悪』が内在している」という意味では、私たちとそう変わらないだろう。私たちも、『ジキルとハイド』ほどではないにせよ、ある場面では「善」的な部分が、そして別の場面では「悪」的な部分が表出するのが当たり前である。つまり、とても共感できる対象ではないこの母親はむしろ、「我々一般人を代表する存在」として描かれていると言えるのではないかと思う。
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母親のようには生きられない主人公ティンヤ、そしてその葛藤によって具現化された”怪物”について
そして、そんな風には生きられない存在として描かれるのが主人公のティンヤである。
本作『ハッチング―孵化―』では冒頭からしばらくの間、「ティンヤが静かに鬱屈を溜め込んでいるのだろう」と感じさせるような場面が多く描かれていた。先述した「カラスの死体を生ゴミとして捨てる」だけではなく、「隣に引っ越してきた家族が飼っている犬に噛まれる」「その隣人の娘が同じ体操教室に通っており、自分よりも上手いことが分かる」など、色んな場面でティンヤは「モヤッとした感情」を抱かされる。
しかしどうやら彼女は、それを表に出すことが苦手なようだ。
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その理由については推測するしかないが、普段から母親を見ているからではないかと思っている。つまり「反面教師」というわけだ。映画で描かれる時点以前のティンヤについては描写がないのでなんとも言えないが、少なくとも彼女は、物語の進展と共に「母親への違和感」を積み重ねているように見える。そして同時に、「あんな風にはなりたくない」と強く感じているのだと思う。まあそれも当然だろう。むしろ、そんな風には感じていなさそうな父親と弟の方が異常に見えてしまうほどだ。
まあそれはともかく、母親を見て「あんな風にはなりたくない」と感じているティンヤは、自分の中に生まれる続ける「悪」を表には出せず、そのまま内側に留めておくことしか出来ないのだと思う。
そしてそのようなタイミングで彼女は夜の森で卵を見つけ、それを拾ってベッドの中で温め続けるのだ。初めはニワトリの卵程度だったにも拘らず、いつの間にかダチョウの卵ぐらい大きくなるのだが、ティンヤはそのまま温め続けた。そして、彼女が「母親を浮気相手に取られてしまった」という悲しみから流した涙に触れた卵は、それをきっかけにするかのように中から割れ、そこから怪物が現れるのだ。彼女はこの怪物に「アッリ」という名前を付けていた。
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さて、私もそうだったのだが、観客は最初、「ティンヤがこの怪物に優しく接する理由」がまったく理解できないはずだ。しかし、本作『ハッチング―孵化―』を最後まで観ると、「アッリ」が「ティンヤの中の『悪』を凝縮した存在」であることが理解できると思う。ティンヤは恐らく、この怪物を見た瞬間に(あるいは卵を見つけた瞬間に)、それが「自分自身」であると直観できたのだろう。だからこそ、恐ろしくグロテスクな見た目にも拘らず、その怪物を育てることに決めたのだと思う。
そして、その決断にはやはり、ティンヤの「『悪』を表に出すのが苦手」という葛藤が関わっていたはずだ。
先ほどから書いているように、彼女は学校・母親・隣人との関係の中で様々な鬱屈を抱えてきたにも拘らず、それを表出することが出来ないでいた。本当なら「嫌だ」「辛い」「辞めたい」「悲しい」などと口にするべきなのに、どうしても飲み込んでしまうのだ。それどころか、自分の気持ちを押し殺して「母親を喜ばせるようなこと」ばかり言ってしまう始末である。
恐らく、そんな自分に嫌気が差していたのだろう。
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ティンヤが、「アッリは自分の中の『悪』だ」と直観していたのであれば、「その『悪』を育てることで、現状を打破できるかもしれない」という発想もそう飛躍したものではないだろう。だから彼女は、怪物をお風呂に入れ、吐瀉物しか食べないアッリのために必死で食べ物を吐き戻し、かなりの大きさに成長した怪物を家族に見つからないよう必死に隠すのである。
そしてこれは、「特異な多重人格」のようにも捉えられるんじゃないかと思う。「多重人格」について詳しいわけではないが、「『現実逃避』的な発想が引き金になることもある」という話を何かで読んだ記憶がある。例えば、親から虐待を受けている子どもが「虐待を受けているのは自分じゃなくて、別人格だ」と思い込むことで新たな人格が生み出される、みたいなことだ。
この発想を本作に当てはめるなら、ティンヤは「別人格」ではなく「別存在」を生み出したと考えてみてもいいだろう。ティンヤにはたぶん「良い子でいたい」という思いが強くある。しかし、「ずっと良い子でいる」というのはなかなか難しい。どうしても「『嫌だ』と言いたい」「仕返ししたい」みたいな「悪」が出てきてしまうからだ。であれば、そういう「悪」だけを引き受けてくれる存在がいれば、自分はずっと「良い子」のままでいられるのではないか。つまり私は、この「怪物」はそういう存在として生み出されたと考えているのだ。
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このように捉えなければ、ティンヤがグロテスクな怪物を育て、見つからないように匿う動機が理解できない。観客がそう認識できるのは大分後になってからなのでしばらくは混乱させられるが、ティンヤは恐らく、かなり早い段階で「アッリ=ティンヤの『悪』」だと理解できていたのだと思う。
本作で展開される「狂気」をどのように解釈すべきか?
さて、「ティンヤの『悪』」であるアッリは、ティンヤが抱く苛立ちに分かりやすく反応する。ティンヤとアッリは一心同体なのだからそれは当然だろう。しかし、ティンヤにとって思いがけないことも判明した。どうも、「アッリの『怒り』」が思っている以上に強いようなのだ。いや、もちろんこれは「ティンヤの『怒り』の強さ」を示しているに過ぎないのだが、「良い子」でありたいと考えているティンヤにしてみれば、「まさか自分の中に、これほど強い『怒り』があるとは」みたいに驚かされたんじゃないかと思う。
例えば、本作『ハッチング―孵化―』を観ながら「???」と感じていた場面なのだが、アッリが犬を殺すシーンがある。この時点ではまだ「アッリ=ティンヤの『悪』」という仮説が私の中にはなかったので、「犬」が殺された理由がまったく理解できなかったのだ。最初は「食料」として襲ったのかとも思ったのだが、「吐瀉物しか食べない」のでそれも違う。その後その犬が「隣家の犬」だと明かされるのだが、それでも私には状況が掴めなかった。やっと理解できたのは映画を観終えた後で、要するに「ティンヤが指を噛まれた復讐」としてアッリは隣家の犬を殺したのである。そう捉えると、アッリの行動が「復讐」としては過剰であることが理解できるだろう。
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その後も、「ティンヤが怒りを感じたことに対してアッリが復讐する」という展開が続くのだが、その行動はとにかく釣り合わない。アッリがあまりにも過剰に復讐を果たしていくのである。しかし、ティンヤがアッリを止めるのは難しい。「アッリの『怒り』」はそのまま「ティンヤの『怒り』」なのだから、アッリの復讐を「やりすぎ」だと感じていてもどうにも出来ないのだ。ティンヤはもしかしたら、「こんなことになるなら、『悪』を内側に留めたままにしておけば良かった」と感じたかもしれないが、もう遅い。表に出てきて「怪物」として具現化してしまった「ティンヤの『悪』」を、もはやティンヤ自身でも抑え込むことが出来ないのである。
さて、このような捉え方をした場合、ラストシーンはどう解釈すべきだろうか? 私なりの理解を書いてみたいと思う。
本作中の「赤ちゃんに斧を振り上げた場面」でも示唆されたのだが、ティンヤとアッリはどうやら「痛み」で繋がっているようである。どちらかが肉体的に「痛み」を感じた場合、もう一方も同じ場所に「痛み」を感じるというわけだ。だから、母親がアッリに包丁を突きつけた時、ティンヤも痛みを感じたのである。この時点でも母親は状況をまったく理解していなかったはずだが、観客の視点で言えば、「アッリが殺されればティンヤも死んでしまうのだろう」という捉え方になると思う。少なくとも、私はそのように考えた。
では、その後どんな展開になるのか。「えっ!?」と驚かされたのだが、なんとティンヤがアッリを庇い、母親が振り下ろしたナイフがティンヤの胸に突き刺さるのだ。これも、観ている時には上手く理解できず、「なんとも複雑な行動原理だな」と感じたのだが、「アッリ=ティンヤの『悪』」だとすれば上手く捉えられるように思う。
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ティンヤはこのラストシーンに至るまでずっと、アッリに「消えろ」と言い続けてきた。恐らく「私の前には現れないでくれ」という意味だろう。そもそもアッリはティンヤが育てたわけで、彼女にはそのことに対する罪悪感があるのだと思う。私の仮説では「アッリが『ティンヤの悪』だと分かった上で一緒にいた」のだから、「アッリの行動には自分にも責任がある」と考えていたはずだ。というかティンヤはたぶん、「アッリの行動はすべて自分に責任がある」みたいに認識していたのだろう。だから、アッリに責任を押し付けて終わりにするなんてことは出来なかったに違いない。さらに、ティンヤとアッリはそもそも一心同体なのだから、ティンヤとしては「消えろ」と言うしかなかったのだと思う。
そしてだからこそ、ラストでアッリを庇うなんて行動を取ったのだろう。「アッリが死ねばお終い」なんて結末は、「良い子」であるティンヤには許容できなかったのだと思う。
では、ナイフで胸を刺されたティンヤはどうなったのだろうか? はっきりとは描かれないものの、彼女は恐らく死んだはずだ。しかしそれと同時に驚くべきことが起こる。ラストシーンでアッリは怪物ではなくティンヤのような見た目になっていたのだが、しかし振る舞いはまるで獣のようだった。しかしそんなアッリが、ティンヤの死を境にして、まるでティンヤであるかのような振る舞いで立ち上がるのだ。
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これは一体どう解釈したらいいだろうか?
「母親の理想が打ち砕かれた」ことを示すラストシーン
あくまでも私の勝手な解釈に過ぎないが、この場面は恐らく、「ティンヤの中の『善』と『悪』が、アッリの身体の中で再び1つになった」ことを意味しているのだと思う。つまり、「『悪』だけを外在化させる」という特殊な状況から、母親や我々と同じような状態になったというわけだ。というわけで、私のこの解釈を採用するのであれば、狂気づくしだった本作『ハッチング―孵化―』の物語は結果として、ティンヤにとってはハッピーエンドだったと言っていいように思う。「良い子でいなければ」という軛から解放され、「嫌な時は『嫌だ』と言える」みたいな人格として今後は生きていけるのではないか。なんとなく私はそんな風に理解している。
しかし、母親にとってはバッドエンドだったと言っていいはずだ。
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物語の後半では、先程も少し触れた通り、アッリはティンヤのような姿として存在する。そして母親は、「ティンヤの姿をしたアッリ」を葬り去る意思を明確に示すのだ。それはまるで、冒頭でカラスの首をへし折った時のような雰囲気に私には見えていたし、さらに言えばこれは、「自分の娘には『良い子』でいてほしい」という彼女自身が持つ強烈な「エゴ」の表れでもあるのだと思う。
さて、母親はある場面で、ティンヤに対して非常に印象的な言葉を口にしていた。
せめてあなたぐらいは私を幸せにしてほしかった。
この短いセリフからは、いくつかの状況を読み取ることが可能である。まず、「母親は実は幸せを感じられていない」ということが理解できるだろう。つまりそれは、「YouTubeで見せている姿は『虚構』である」と、彼女自身が自覚していることを示唆してもいると思う。さらにそれに加えて、「娘が『完璧な存在』でいてくれさえいれば、私は幸せでいられるのに」という意味も込められているはずなのだ。凄いセリフだなと感じた。
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さて、そんな母親だからこそ、ティンヤと同じ姿をしたアッリを見て、「すべてはアッリが悪い。アッリさえ殺せば、娘は『完璧な存在』でいられるはずだ」と短絡的に考えたのだと思う。そしてだからこそ、躊躇なくアッリを殺そうとするのである。つまり母親は、この状況においてもまだ「自身の幸せの追求」を諦めていないし、娘に自身の「理想」を押し付けようとしていたのだ。
しかし結果として、そんな母親の望みは彼女自身の行動によって打ち砕かれてしまう。そもそもティンヤの胸にナイフを突き立ててしまっているわけだし、さらに私の解釈では、アッリの中でティンヤの「善」と「悪」が融合されている。母親が望む「完璧な娘」はもうどこにもいない。ティンヤは自分自身の「死」を以って、母親の「希望」を粉砕したのだ。これによって、母親にとっての「理想」でもあり「虚構」でもあった「素敵な毎日」は永遠に失われてしまったのである。
このように解釈すればラストシーンを捉えやすくなると思うのだが、いかがだろうか?
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監督:ハンナ・ベルイホルム, Writer:イリヤ・ラウツィ, 出演:シーリ・ソラリンナ, 出演:ソフィア・ヘイッキラ, 出演:ヤニ・ヴォラネン, 出演:レイノ・ノルディン
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最後に
さて、ここまで「私なりの解釈」についてネタバレを気にせず書いてきたのだが、正直なところ、本作『ハッチング―孵化―』を観ている最中はこのような状況であることを捉えきれてはいなかった。ずっと「え!? 何が起こってるわけ?」という混乱状態に置かれていたと言っていいだろう。とはいえ本作は、表層だけに触れていても「ホラー作品としてメチャクチャ怖い映画」という感じで、十分楽しめると思う。観終わった時点では本当に、「全然意味分からんかったけどなんか凄いものを観たな」という感想だった。
また、「怖さ」という意味で言うなら、「様々な『狂気』がさも当たり前のように現出する」という展開もかなり恐ろしかった。映画の舞台は「現代のフィンランド」のはずなのに、同時代を生きている私たちの常識がことごとく通用しないのだ。まったく足元が定まらないグラグラした土台の上で物語が進んでいくので、その不安定さに観客も揺れ動かされてしまうんじゃないかと思う。
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というわけで、ずっと振り回されっぱなしで「解釈」にまで思考が回らなかったのだが、家に帰って感想を書く前に改めて色々と思い返してみたことで、「なるほど、こういう物語だったのだろう」という自分なりの解釈に辿り着くことができた。私の捉え方が正しいとして、「肉体が分裂するパターンの『ジキルとハイド』」という設定は非常に斬新で面白いし、「自分の内側の『悪』が別の肉体として存在する」という状況は、ある意味では「理想的」じゃないかとも思う(私は、「ちょっといいかもな」と感じた)。ティンヤにしたって、「アッリの『怒り』」があそこまで凶暴でなければ、「私が『良い子』でいられるこの状況は望ましい」なんて風に捉えられたんじゃないかという気がする。「狂気」と「魅力的な設定」が上手く絡まり合うことで、惹きつける物語に仕上がっているのだと感じた。
そんな作品を生み出した監督は、なんと本作が長編デビュー作なのだそうだ。また、ティンヤを演じた子は1200人の中からオーディションで選ばれたという。紹介欄に「シンクロナイズドスケート選手」とあったので、恐らく演技未経験で本作に参加したのではないかと思う。才能がある人というのはやはりいるものだなと思うし、羨ましさを感じてしまう。
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