目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:キャリー・マリガン, 出演:ラヴァーン・コックス, 出演:ボー・バーナム, 出演:アリソン・ブリー, 出演:コニー・ブリットン, 出演:ジェニファー・クーリッジ, 出演:クリストファー・ミンツ=プラッセ, 出演:サム・リチャードソン, 出演:モリー・シャノン, 出演:クランシー・ブラウン, Writer:エメラルド・フェネル, 監督:エメラルド・フェネル, プロデュース:マーゴット・ロビー, プロデュース:トム・アカーリー, プロデュース:ジョニー・マクナマラ, プロデュース:ベン・ブラウニング, プロデュース:エメラルド・フェネル, プロデュース:アシュリー・フォックス
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
「復讐」という形でしか実現できないこともきっとある
キャシーの行動は、まさにそういうものであると私は感じる
この記事の3つの要点
- 基本的に「復讐」は無意味だと思うが、「意味のある復讐」も存在し得ると思う
- 「過去の過ち」を「現在の基準」で断罪することは正義か?
- 「キャシーの狂気」が「正しいのかもしれない」と思えてくる展開が見事
物語も面白いのですが、痛烈な問題提起を成すという意味でも素晴らしい作品
自己紹介記事
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私は、基本的には「復讐」を無意味だと感じているし、許容できないものだと捉えています。「復讐心」を持ってしまう気持ちは理解できるつもりです。しかし大体の場合、結局のところ現実は何も変わらず、それどころか自身の状況が悪化するような「復讐」が多いでしょうし、感情的にそんな復讐に手を染めるべきではないと感じてしまいます。もちろんこれは、私が「理不尽な被害者」になったことなどないから言えることだと理解しているつもりです。もし自分が、とても相手を赦すことなど出来ないような被害を受けたとしたら、自分の「復讐心」を抑えられるか分かりません。ただ少なくとも今のところは、「復讐なんて無意味だ」と考えているというわけです。
ただ、そう考えるのには1つ大前提があります。それは「問題が周知されているかどうか」です。私は、「『復讐心』を抱くに至ったその問題が、自分以外の一定数の人に何らかの形で知られているのなら、『復讐』はすべきでない」と考えています。
つまり私は、「『その問題を周知させるという目的』を持つ復讐」は許容してもいいかもしれない、と考えているわけです。
「自分の周囲の世界で知られているかどうか」が私的には重要かな
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自分の大切な人が亡くなり、「死に至った理由」が周囲に正しく理解されているとしましょう。この時、憎むべき存在がいる状況であれば「復讐心」が生まれてしまうかもしれませんが、「問題を周知させる」という目的は存在しないので、私の感覚では「復讐」という手段を取るのに値しないと感じます。
一方、「死に至った理由」が正しく理解されておらず、自分だけがその事実を知っている場合、その事実を効果的に白日の下に晒すために「復讐」を行うことは、なんとなく許容できてしまうのです。
その「死の真相」は、普通に誰かに話しても一蹴されてしまうようなものかもしれません。だとすれば、どれだけ「これが事実なのだ」と訴えても、きっと誰も信じてくれないでしょう。その場合、自らの命や立場を犠牲にしてまで「復讐」を行うことで、「これだけの行動を起こすのだから、言っていることは本当なのだろう」と伝わる可能性が出てくるわけです。
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もしも、こういう目的を明確に持っているのであれば、その人が行う「復讐」は否定しきれないかもしれない、と映画を観ながら考えていました。
あくまで、「復讐なんてすべきではない」ってのが大前提だけどね
理想論に聞こえるかもだけど、できれば、「復讐の連鎖」は自分のところで止めたいって思っちゃう
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私がこの映画を観たのは、東京オリンピックの真っ最中でした。開会式に関わる様々な人たちが「過去の発言」を糾弾され、退場させられるドミノ倒しが次々に起こったことは、まだまだ記憶に新しいでしょう。
その時のネット上の反応をつぶさに追っていたわけではありませんが、様々に噴出した意見の中には、「過去の過ちを、今現在の基準で裁くのは正しいのか?」という指摘もあったといいます。つまり、「コンプライアンスが厳しくはなかった一昔前の言動を、コンプライアンスが厳しい今現在の基準で判断するのは正しいのか」という見方です。
私は、東京オリンピックの開会式でのゴタゴタや、この『プロミシング・ヤング・ウーマン』の鑑賞経験から、「以下に挙げる2つの基準が同時に満たされた場合、断罪されても仕方ない」と考えました。その2つの基準は、
- 「直接の被害者」が存在すること
- その被害者が加害者を許していない、あるいは「許していないだろうと強く推定できる」こと
です。
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これは、「過去の過ち」にのみ適用される基準ではありませんが、この2点が同時に満たされるなら、「過去の過ち」について今断罪されることも仕方ない、と私は考えています。
東京オリンピックの開会式のケースは、この2条件が当てはまってしまったから、糾弾されるのもやむを得ないって思ったかな
けど、「直接の被害者」ではない人間がやいのやいの言っている状況にはやっぱり反吐が出るけどね
「直接の被害者」というのは、不倫の場合は「配偶者」ですし、差別的な発言であれば「その発言によって直接的に傷つく人」です。世の中で様々な出来事が炎上し、吊るし上げられる光景を目にしますが、私はよく「お前は『直接の被害者』じゃないんだから黙ってろ」と感じてしまいます。差別的な発言をした人物に対して、その発言が向けられる対象ではない、まったく無関係の人間が、「そんなことを言うなんて不謹慎だ」と声を荒らげている光景が、私はとても嫌いです。
とにかくまず、「直接の被害者」が存在しなければならないと考えています。
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そしてさらに、その「直接の被害者」が加害者を許していないことが重要です。不倫などの場合、妻が夫を許すようなコメントを出しているのに批判が続くこともありますが、私には意味が分かりません。もちろん、「直接の被害者」が自身の気持ちを表に出せない場合もあるでしょう。だから「強く推定できる」という条件も含めました。
このように、それがどれだけ昔の過ちであれ、上記2点を満たすなら、その過ちが糾弾されることは仕方ない、と私は考えているのです。
主人公キャシーの行動を、私は許容したい
「復讐の是非」「糾弾の基準」に触れたのは、この映画の主人公であるキャシーの行動を私がどう捉えているかを書きたかったからです。そして、ここまで触れたことを踏まえた上で、私はキャシーの行動を正当化したいと考えています。
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普通、そんなことは許されません。何故なら、彼女の行動は明らかに法に触れているし、「社会秩序」という観点から許容されるべきものではないからです。もしも、国家や法がキャシーの行動を「是」としてしまえば、社会は成り立ちません。だから国家や法は否応なしに彼女を断罪するしかないのです。
「ごめんで済むなら警察はいらない」ってやつだね、まさに
ただ、個人がキャシーを正当化するのは自由ではないかと思うのです。そして私は、私なりの理屈を書き連ねた上で、「彼女の行動を許容する」と主張したいと考えています。彼女は、「問題を周知させる」という目的を持って、「加害者たちの過去の過ち」を断罪していきまました。その「復讐」のやり方はなかなかの酷さですが、私の中では一応許容できます。
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なぜなら、あまりにも「加害者たち」が酷いからです。どうしてもキャシーに肩入れしたくなってしまいます。
ただし、この映画を「キャシーが加害者の男たちに復讐する」という風に捉えるのは誤りでしょう。というのもキャシーは、「特定の男性」にだけ復讐しているわけではないからです。
映画のタイトル中の「プロミシング(Promising)」は、「前途有望な」という意味で、つまりこの映画のタイトルは直訳すると、「前途有望な若い女性」となります。キャシーのことを含めてもいいのかもしれませんが、これは恐らく、キャシーではないある特定の人物を指しているのだろうと思います
ただ、この「プロミシング」という言葉は、「男性」を修飾させた方が映画の主題がより際立つでしょう。
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「前途有望な女性」と書くと、「前途有望だったのに、それを阻む何か悪いことが起こった」というニュアンスが強くなると思います。しかし、「前途有望な男性」と書くと、「前途有望なのだから、少しの過ちで人生を台無しにすべきではない」という含みが感じられるのではないでしょうか。
男の私が言っても説得力はないかもしれないけど、私は私なりに、社会のそういう風潮に違和感を覚えているつもり
そしてこの映画ではまさにこの点、つまり、「『前途有望』という言葉で男の過ちを軽視する社会そのもの」を断罪しているのです。そういう意味でこの映画は、単純な「女の復讐物語」ではないと私は感じています。
それは、キャシーの怒りが「男性」だけではなく「女性」にも向けられることからも理解できるでしょう。「前途有望」だからという理由で、”些細な”過ちによって男性が人生を台無しにしないように協力する女性が一定数いるのです。キャシーが「直接の加害者」以外に対しても怒りを向ける理由がこれで理解できるでしょう。
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私は、この映画はとても恐ろしい構成になっていると感じました。一見するとトリッキーでイカれているようにしか思えないキャシーの行動を、特に考えもせず非難していると、その矢が自分に飛んでくるからです。犯罪行為は許容できないにせよ、キャシーの行動原理の核を理解せずに彼女を非難することは、「無自覚の内に、『前途有望な男性』を擁護している」ことと同じになってしまい得るでしょう。
そう考えると、「キャシーを徹底的に悪として描くこと」にも意味が出てくるよね
キャシーの行動原理が理解できた時の「世界の反転」がより強烈になる感じする
キャシーは、平たく言えば「『男だから仕方ない』という風潮」に怒りを露わにしているわけで、彼女の感覚は絶対的に正しいと言えます。しかし一方で、キャシーの行動がイカれているから仕方ないのですが、キャシーは誰からも理解されません。「キャシーの正常さ」は「キャシーの異常さ」に覆われていて見えないのです。そんな中、表面的には「ただのヤバい奴」でしかないキャシーの「人生をかけた復讐」が、否応なしに「男が社会を支配している現実」を浮き彫りにし、男である私は、その片棒をかついでいるつもりなどないのだが、手厳しく糾弾されている気持ちになってしまいました。
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の内容紹介
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キャシーは毎週、バーで「酔ったフリ」をし、見知らぬ男に「お持ち帰り」される。そして相手の部屋でシラフに戻り、”制裁”を下す。キャシーにとって男は「簡単にヤレると思って近づいてくるアホ」でしかない。彼氏ができるわけがないのだ。
ある日、バイト先に1人の男性がやってきた。キャシーは気づかなかったのだが、その男性は医学部時代のクラスメートのライアンだ。コーヒーショップで突然、「学生時代からずっと恋をしていた」と語るライアンから強引にデートに誘われ、気乗りしないがOKしてみることにした。そして次第にキャシーの方もライアンに好意を抱くようになっていく。
ライアンとの会話の中で、大学時代の知り合いの近況を耳にすることになった。そしてキャシーは、アル・モンローが結婚することを知る。
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彼女は「復讐」を決意した。
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の感想
とても面白い映画でした。
とにかく冒頭からしばらくの間、キャシーが何をしようとしているのかさっぱり見えてきませんでした。世の中の「男」に怒りを感じていることは、バーで毎週「酔ったフリ」をしていることから伝わりますが、その背景が全然見えてこないし、医学部を中退した理由も分かりません。とにかく、「目的も動機もさっぱり分からないまま、キャシーのイカれた言動を目にする」という時間が結構長く続きます。
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後半になってやっと、キャシーが「復讐」をしようとしていることと、その背景が分かってくるよね
ホント、それまではただの「ヤバい奴」でしかないもんなぁ
ただ別に、その時間がつまらなかったなどというわけではありません。キャシーのキャラクターは非常に魅力的だし、ヤバさをポップに描いていることもあり、飽きずにずっと観ていられました。
そして、「アル・モンロー」の名前が出てから、本格的にキャシーの「復讐」が動き出すわけですが、そうなってからも情報はかなり小出しにされるので、やはりキャシーは「ヤバい奴」にしか見えません。
これは明らかに意図的だろうと感じました。映画を最後まで観ても、キャシーが「ヤバい奴」だと印象に変わりはないのですが、「復讐」の動機が少しずつ明らかになるにつれて、少しずつ彼女の行動が「正しいもの」に感じられてくるのです。「どう考えてもイカれてる」としか思えなかったキャシーの言動が、「正しいのかもしれない」に変わっていく過程はなかなかスリリングだし、そういう落差があるからこそ、「キャシーが怒りを向ける対象」の輪郭がより浮き彫りになってくる感じもします。
映画の結末には触れませんが、「マジか」と感じるような驚きも含むラストであり、物語としてもとても楽しませてもらえる作品でした。
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「#MeToo」運動のきっかけとなった、ハリウッドの絶対権力者ハーヴェイ・ワインスタインを告発するニューヨーク・タイムズの記事。その取材を担った2人の女性記者の奮闘を描く映画『SHE SAID その名を暴け』は、ジャニー喜多川の性加害問題で揺れる今、絶対に観るべき映画だと思う
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ルシルナ
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