目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:戸田 真琴
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
「言葉」が持つ力と、その無力さを共に理解した上で、「誰かの人生を支えるため」に言葉を紡ぐ覚悟が凄い
デビュー作を読んだ時と同じように、改めて「友達になりたい」と感じました
この記事の3つの要点
- 戸田真琴はとにかく、「言葉の力」を徹底的に信頼している
- 「みんなと同じじゃなくていい」と繰り返し伝えることで、誰かの寂しさに寄り添おうとする
- 「消費されること」に正面から向き合って闘いを挑む凄まじさ
「目で見て分かること」の価値が重視される世の中において、「言葉の人」である戸田真琴の存在はとても貴重だと思います
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AV女優・戸田真琴は、徹底的に「言葉」の力を信じる人だ。エッセイ『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』の中に溢れる「誰かを支えたい」という強い想い
戸田真琴のことは、AV女優としてではなくエッセイストとして知ったのですが、デビュー作『あなたの孤独は美しい』には本当に驚かされました。「言葉の人」にしか興味が持てない私の琴線にメチャクチャ触れるぐらいの、弩級の「言葉の人」だったからです。詳しくは『あなたの孤独は美しい』の記事を読んで下さい。
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これは偏見みたいな話になっちゃうけど、まさかAV女優に「言葉の人」がいるなんて思ってなかったから、ホント驚いたわ
しかも、「色々考えすぎた結果、最適解としてAV女優の仕事を選んだ」っていう経緯も衝撃的だったよね
『あなたの孤独は美しい』は、理性的で理屈っぽいエッセイだと感じましたが、本作『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』は、前作と比べれば感性的な書き方が強い作品だと思いました。とにかく彼女は、「自分の言葉で誰かが救われるなら、それほど素晴らしいことはない」ぐらいに思っているはずです。そして前作以上に、その想いが強く打ち出されている作品だと感じられました。
とにかく、「どうせAV女優だろ」みたいな先入観は持たずに是非読んでみてほしい作品です。特に、「世の中の当たり前に馴染めない系の人」には、彼女の言葉や想いは強く刺さるのではないかと思います。
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ある意味では「AV女優」という立ち位置にいるからこそ伝わりやすくなる言葉もあると思うしね
彼女と同じことをYouTuberが言っても、絶対に響かないからなぁ
戸田真琴は、どれだけ「言葉」を信頼しているのか?
私も日々、こうやって文章を書いているのですが、その理由に繋がるようなことを戸田真琴が書いていました。
周りがこう言っているから自分もそうしよう、と多数派の示す流れに乗ってしまえるのならば、生きるということはもう少し楽だったのかもしれない。もちろん、マジョリティにはマジョリティとしての苦労もあると思うけれど、感覚を麻痺させてしまうことさえできれば、孤独感は忘れることができる。
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そう、彼女はとにかく「マジョリティとして生きられない人」なのです。私も同じで、だからこそ文章を書いているのだと自分では思っています。彼女が「感覚を麻痺させてしまうことさえできれば」と書いているように、私ももしマジョリティ側にいられたら、正直、物事をあまり深く考えなくても生きていけたでしょう。周りが言っていることをなんとなく「正しい」と信じることができて、みんなが進む方向に違和感を覚えずに並走できるのであれば、文章なんか書いていなかったかもしれません。
子どもの頃からマジで、「クラスメートが笑ってる会話の何が面白いのか全然分かんない」って思ってたからなぁ
私は、自分が「マジョリティ」の中に上手く混じれないことを理解した上で、どうしてそうはなれないのかを自分の中で確かめるみたいな気持ちでずっと文章を書いているような気がします。それこそが、私の中から消えずにずっと残り続けている「文章を書く動機」のはずです。
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たぶんそれは、戸田真琴のこんな感覚と通じるものがあるのだろうと思っています。
自分を出していくうちに、エッセイや文章の仕事が増えていった。でも「文章を書くのが好き」とはっきり言うには戸惑いがある。文章を書くことは、自分のなかの替えの利かない瞬間を残しておくためのただの手段に過ぎないのであって、それそのものが目的ではない。
私にとっても、「文章を書くこと」はあくまでも「手段」でしかなく、決して「目的」ではありません。もしも、「ヘルメットのように被ってスイッチを押せば、その時の自分の思考をそのまま保存できる機械」が存在したら、文章を書いたりはしていない可能性もあります。「文章を書くこと」以外に思考や感覚を残しておける手段が存在するなら、別にそれでもいいからです。ただ今のところその手段はほぼ「文章を書くこと」ぐらいしかありません。だから文章を書き続けているというわけです。
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そういう話で言うと、スマホが出てくる前にちゃんとパソコンのキーボードで文章を早打ち出来るようになっておいて良かったよね
入力デバイスの違いって間違いなく、文章そのものに影響するって思ってるからなぁ
そしてそんな風に文章を書き続けてきたからこそ、戸田真琴は「言葉」が持つ力のことも十分理解しているというわけです。
言葉は、放たれたらもう言葉でしかない。
言葉は言葉そのもので、それ自体が持っている意味、それ自体が伝えたかったことだけでちゃんと伝わるべきだと私は思う。
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このような感覚を持つ人は、とても信頼出来ます。人前に出るような有名人の場合、どうしても「有名人としての自身の存在感・影響力」を加味した上で「言葉の力」を捉えている印象が強いです。もちろん、そういう捉え方が大事になる状況もあるでしょう。しかし戸田真琴はそうではなく、「言葉は、言葉単体として正しく届くべきだ」と考えているわけです。
私はよく「言葉の解像度」っていう表現を使うんだけど、まさに戸田真琴は「言葉の解像度」が高い人だと思う
そしてだからこそ彼女は、逆説的に「言葉の力を重視しすぎないこと」が大事だと考えています。
私たちは、人に伝える・共有するというプロセスを重んじるあまり、「ただ感じる」ということの大切さを忘れてしまう。本当は、映画との出会いはいつもあなたと映画のふたりぼっちであるべきで、その中では、あなたが感じたことを言語化することができるかどうかなんて、たいして問題ではない。
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先程触れた通り、「文章を書くこと」はあくまでも「手段」です。例えば「映画を観ること」であれば、最も重要なのは「感じること」であり「文章を書くこと」ではありません。このような理解こそが大事なのだと、彼女は正しく捉えているのです。
私は、本を読んだり映画を観たりしたら必ず文章を書くことにしてるんだけど、それに囚われてるつもりはないかな
むしろ、「『上手く感じる』ために『必ず文章を書く』と決めている」みたいなところもあるよね
そして、それぐらい解像度高く「言葉」というものを捉えている戸田真琴だからこそ、彼女が紡ぐ「言葉」は届くべき人のところに適切に届くのだと思います。
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悲しみの中で書かれた言葉が、誰かの悲しみに触れる時、私の悲しみは、この世にあってよかったものだったんだと、そう思うことができた。
誰かひとりでも、同じ苦しみを背負っているけれど言語化できないせいで逃げ出すことができない状況にある人に、あなただけじゃないということ、そして逃げ出しても構わないのだと言うことをわかってもらえたらそれでよかった。
こういう「自分の言葉で誰かが救われてほしい」って感覚、メチャクチャ強いよね
エッセイに限らず、彼女が自らの意思で表現するすべてにおいて、この感覚が土台にあるなって感じがする
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このような彼女の感覚について、さらにもう少し深掘りしていきたいと思います。
「誰かの人生を支えるために言葉を紡ぎ続ける」という彼女の決意
本書には、引用したいと感じる文章がたくさんあるのですが、中でも一番印象的だったのが次の文章です。
世界で一番寂しい人は誰だろう、といつも探している。私は、まだ見ぬその人の味方をするために生まれてきた。なぜかずっと自分はそうするべきなのだと、わかっている。
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どうして印象的だったのかというと、私の中にも近い感覚があるからです。
もちろん、戸田真琴ほどの強い想いは私の中にはないんだけど
エクスキューズを付けずにここまで断言できるのはホント凄いよね
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彼女は「孤独であることに困ってもいない」と書いているのですが、この感覚もかなり共感できました。私も「孤独感」を抱くことはあるのですが、もうかなり長い付き合いなので、「ほとんど解決不能だから考えても仕方ない」という結論に行き着いています。だから、自分の「孤独」についてあれこれ悩むことはあまりなくなりました。
そしてだからこそ私は、「自分の存在が、誰かにとっての『孤独の解消』に繋がるなら、素晴らしいじゃないか」と考えるようになります。「私が発する言葉や、私が近くにいるという事実が、誰かにとって何かの価値を持つとしたら、それは私自身が望むことでもある」という感覚を持っているのです。そういう意味で私も「寂しい人を探している」と言えると思います。私がいようがいまいが特に影響を与えない人より、自分の存在が相手にとって何かプラスになるような人と関われる方が望ましいと感じるのです。
ある意味でこれが、私の「承認欲求」なんだろうなと思ってる
一般的な「承認欲求」とはちょっと違うような気もするけどね
戸田真琴も、徹底的に「誰かのための言葉」を紡いでいきます。
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あなたが嫌いなあなたの部分を、誰かが親しく思うとき、誰かが愛してくれるとき、Dear, コンプレックス。きみが居てよかった。きみが纏わりついて歩きにくかった道の途中で、途方にくれる私でよかったね。と、思う。
あなたが静かに、あなただけのために愛することができるものが、ひとつでも増えますように。誰かからの無自覚な意見で、あなた固有のまばゆさが、どうか奪われませんように。私は自分自身だけでなく、あなたの中の豊かさも、同じように肯定したいです。
フォロワーぜんぜんいなくても、友達ぜんぜんいなくても、町中でだれもあなたのことを知らなくても、「いいね」が一個もつかなくても、そんなことは、どうでもいい。あなた自身の価値は、あなた自身とあなたが大切にしている人たちの中で柔らかく、情けたっぷりに愛情加点たっぷりに下されるべきもので、それ以外は、べつにどうと思わなくてもいい。あなた自身の評価は、人生が終わった後にやっともらうくらいで丁度いい。
物事の捉え方と、それを表現する言葉が絶妙に良いよね
さらに「自分のために紡いでいる言葉じゃない」ってことが、読めばすっと伝わってくる感じも素晴らしいと思う
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次の文章は特に、夫婦や恋人などの関係性にある人や、アイドルを推している人など、様々な立場の人に刺さるのではないかと思います。
誰かを好きになるということは、孤独を覚悟することだ。そうして、1000人のうちの1人だろうと、1万人のうちの1人だろうと、誰にでも同じファンサービスをしているんじゃないかと、同じ言葉をかけているんじゃないかと不安になろうと、相手と自分の間にだけ通じている交感があるのだと信じ切ることが、愛を達成することだ。
相手は歌ったり踊ったりという自分の仕事をまっとうして、何かを伝えようとしてくれているんだから、それを確かに受け取ることだけに集中することが、相手の望んでいることだと思うし、そこに世間も他人もない。むしろ、私のように超個人主義に生きて、世間も他人も忘れてしまえばいい。世間なんてものは、自分のなかにしかない。
AV女優として「好かれる立場」を経験しているからこその説得力ももちろん含まれているでしょうが、やはり彼女の言葉には、言葉単体が放つ強さがあると感じます。そしてそれは、「言葉で誰かを救うことが出来る」という信念を強く持っていると伝わるからこそでしょう。
戸田真琴の文章って、「言葉で誰かを救うことが出来る」って信念が伝わらないと、途端に嘘っぽくなるものが多いよね
普通なら「キレイゴト」って一蹴されてしまうだろうことを、言葉の力で届けさせているみたいな強さを感じる
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私は、どうしても私という存在よりも、私のつむいだ言葉のほうが大切なものに思えてならない。きっと言葉そのものだけで放つほうがずっと遠くに行けるから、欲を言えばいつか「AV女優・戸田真琴」の言葉だということを介さないで、誰かのもとへ飛んでいってほしい。今は私がAV女優であることさえも利用価値があるくらいまだまだ私は未熟だから、承知のうえで活動しているけれどいつか誰のものでもない言葉として、私の言葉が誰かのもとに届いたらいい。
こんな風に言えるなんて、メチャクチャかっこよくないでしょうか?
前作を読んだ時からずっと思ってるけど、ホントに戸田真琴と友達になりたいなって思う
こんなに「この人と話してみたい」って思える存在って、メチャクチャ珍しいからね
「みんなと同じじゃなくていい」とみんなに感じてほしい
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戸田真琴は、様々な願いを込めて文章を書いているでしょうが、その中でも強く根底にある感覚は、やはり「みんなと同じじゃなくていい」だと思います。
友達と映画を見た帰り道、相手の顔色を窺いながらこぼす感想も、SNSで検索をかけて「好評」と「不評」のバランスを見て、自分の感じ方が正常かどうかを測ることも、映画に対して失礼だ。大した言葉にならなくなって、それでもいい。無理に言葉にしないで、ずっと黙っていたっていい。みんなが感動した作品にひとつも感動しなくたって、みんながつまらないといっていた作品を大好きになったっていい。
みんなが当たり前だと言うことがあったなら、一呼吸おいて、心の中で「本当にそうだろうか?」と問いかけてみる。それからもう一度探すのなら、きっとより自分にとって正しさに近い答えが見つかるような気がしたのだ。
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今の時代はまだ、「多様性」って言葉が言い訳めいて使われる感じがあって、違和感を抱かされる機会が多いかな
本当は「多様性」なんて言葉が辞書から消えるぐらいの世界が、一番「多様性」に溢れてるだろうしね
戸田真琴は高校の生徒会に所属していた際、「お前には『自分』というものがない」と責められたことがあります。「どの意見にも良い部分・悪い部分があるので決められない」という態度を常に取っていたからです。そして、そういう自身のスタンスの根底にある考え方についてこんな風に書いています。
思えばいつも、シーソーの浮いている方にわざと乗ってみては、バランスを取ろうとするような人間だった。
これも、本書の中でかなり共感できる感覚でした。私も、敢えて少数派の意見の方に乗っかることがあります。そうしないと、その場における全体のバランスが悪く感じられてしまうからです。
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もちろん、自分の中に確固たる意見がある場合には、それを曲げてまで考えを変えたりはしないけど
別にどっちでもいいかって時には、賛同者が少ない方の意見を選びがちだよね
「人と違うこと」が「個性」であると好意的に受け取られることももちろんありますが、やはり未だに「人と違うこと」が悪いことのように捉えられてしまう状況も多々あります。私も戸田真琴も、そういう現状にずっと違和感を抱き続けてきました。そして、どうにかもっと「みんなと同じじゃなくてもいい」という感覚を当たり前にしたくて、あーだこーだ文章を書いているというわけです。彼女のその切実さは、とても素敵なものであるように感じられました。
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もちろん彼女は、「言葉の無力さ」も理解しています。それはそうでしょう。彼女の言葉を借りれば、
2時間かけて書いた6000字のブログよりも露出の激しい自撮り写真の方が何倍も「いいね」が付く世界
を私たちは生きているからです。私たちが「言葉」に対して感じるような力強さや切実さみたいなものを、同じように感じてくれる人ばかりではありません。
この事実は、私にとっても「生き辛さ」の1つになってるなって思う
「目で見て分かること」の強さが世の中を席巻していることへのやるせなさみたいな感覚は強いよね
また彼女は、こんな風にも書いています。
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「私が言っているせいで伝わらなくなってしまう言葉」が、この世にあることがとても悲しい。
つまり、「何を言っているか」ではなく「誰が言っているか」で「言葉」が判断されてしまう、という意味です。これは決して、彼女がAV女優だということだけが理由なのではありません。
女性としてこの世界に生まれてしまうと、どうしても「性対象としての価値」という、他人から付けられる値札に翻弄されてしまう。それに合わせてしまう人も、合わせることができないことを不甲斐なく思う人も、抵抗し続けることに疲れてしまう人も、みんなそれぞれ、ぼろぼろになっている。
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若さはちょっと恥ずかしい魅力だから、私は歳を重ねることが好きだ。
「若い女性である」ということが、どうしても「捉えられ方」を歪ませてしまうというわけです。こういう感覚を持つ女性は、結構いるのではないかと思います。
私は、仲の良い女友達とはそういう話をしたりもするし、一般的な男よりは女性側の目線を持てていると思ってる
一般的に女性の方が「物事を捉える解像度」が高いから、「男に話してもどうせ伝わらない」って考えてるんだよね
そして彼女はもちろん、「AV女優として消費されること」についても、徹底的に考え抜いています。というか、「『消費されること』について考えるために、その最たる世界である『AV業界』に飛び込んだ」と表現しても間違いではないかもしれません。
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「いっそ、限界まで値踏みされてみよう。徹底的に”消費”されてみよう」
そう思った。
後付の理由かもしれないけど、そうだとしても、こうやって自分の行動をきちんと言語化できてるってのが良いよね
世の中には、何か質問しても、「何も考えてないんだろうなぁ」としか感じられない答えを返す人ばっかりだからなぁ
恐らくですが、こんなことを考えながら「AV女優」の仕事をしている人など、ほとんどいないでしょう。彼女の場合はとにかく、「現代社会に通底する『消費されること』を無視しては前進できない」みたいな感覚があるのだと思います。「『消費されること』なんて当たり前なんだから考えたって仕方ない」ではなく、そこに徹底的に向き合うことで、より大きな何かに立ち向かおうとしている感じさえするほどです。
人が、消費されていく。代わりがいくらでもいるとでも言わんばかりに、目まぐるしく「世間」の登場人物は変わっていって、居なくなった人のことを誰も思い出さなくなる。それは、この世界ではあたり前のことのようだった。私にはそれを受け入れることが出来なかった。だって、このやり方で世界が回っていくのなら、「自分が好きな自分でいる」ということが、できなくなる人がたくさんいる。私の本当の望みは、そんな世界を変えることなのかもしれない。なんだかずっと、それを感づいているような人生だった。
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そんな彼女が、生きる上で指針にしているのだろう考え方が素敵だなと思います。
覚悟を決め、守るものもなくなって、人によっては当たり前のように見下されるけれど、それでもすり減らない何かが私を生かしている。
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著:戸田 真琴
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自分の中の「当たり前」が社会でなかなか通用しない、そんな経験を数多く重ね、その度にどうにか踏ん張って前進し続けてきたのでしょう。だからこそ、今こうして「紡いだ言葉が多くの人に読んでもらえる立場」を得たことで、さらに「今自分は何をすべきだろうか」という思考を研ぎ澄ましているように感じます。
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【映画】今泉力哉監督『ちひろさん』(有村架純)が描く、「濃い寂しさ」が溶け合う素敵な関係性
今泉力哉監督、有村架純主演の映画『ちひろさん』は、その圧倒的な「寂しさの共有」がとても心地よい作品です。色んな「寂しさ」を抱えた様々な人と関わる、「元風俗嬢」であることを公言し海辺の町の弁当屋で働く「ちひろさん」からは、同じような「寂しさ」を抱える人を惹き付ける力強さが感じられるでしょう
こんなふうに思いや覚悟を伝える場所が、いつまでもあるとも限らない。それでも居場所がなくなる前に、「私」が使い尽くされる前に、一歩でも遠くへ行かなくちゃ、と思うから今も必死で探している。
1分1秒と移り変わっていく、チョコボールのように後ろから次々と新しい女の子をデビューさせ、常に居場所を揺るがされる世界、性欲ベースの冷静ではない評価が明日の居場所を左右する世界で、痺れるように、「今私は何をするべきなのだろう」と、じぶんに問い続けることができる。
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【あらすじ】映画化の小説『僕は、線を描く』。才能・センスではない「芸術の本質」に砥上裕將が迫る
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誰もが必死に世の中を生きてると思うけど、戸田真琴の「必死さ」ってやっぱりちょっと種類が違う気がするよね
「いつでも役立てる自分」でいるための準備に必死になってるって印象が強いよなぁ
彼女の言葉に触れれば触れるほど、「『戸田真琴』という名前を剥ぎ取っても自立するようなその力強さ」にやはり惹かれてしまいます。
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私が知っている中で一番奥が深くセクシーなのは私の頭の中だった。それを好きになる人が、ひとりでもいるのなら、それが私の価値なのだ。
ホント、友達になりたい。
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