【驚異】映画『RRR ビハインド&ビヨンド』は、本編に匹敵する面白さのメイキングドキュメンタリー

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます

この記事の3つの要点

  • 「橋の下で出会うシーン」や「ナートゥダンス」のあり得ないほどの困難な撮影
  • 野生動物満載のバトルシーンの撮影は、皆が口を揃えて「大変だった」というほど壮絶だった
  • 「リアルに殴り合っている」らしいアクションシーンに監督が込めた想い

コロナ禍で撮影が中断されるという障壁をも乗り越えて完成に至った超大作のメイキングもまた超大作だった

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映画『RRR ビハインド&ビヨンド』は、社会現象になった大作インド映画のメイキングを余す所なく映し出すド級のドキュメンタリー映画だ

メチャクチャ面白い作品だった。もちろん、本編の『RRR』がムチャクチャ面白いのだから、メイキングが面白いのも当然かもしれないが、それにしたって面白いなと思う。しかし、ある程度予想できるとはいえ、やはり撮影の裏側は凄すぎた。よくやりきったものだ。

というわけで、『RRR』本編の感想は以下のリンクから飛んでもらうとして、この記事では本作ドキュメンタリーについてあれこれ触れていこうと思う。

「橋の下でのシーン」や「ナートゥダンス」のあまりに困難な撮影

さて、映画『RRR』を観た人なら皆度肝を抜かれたと思うが、主人公2人が作中で初めて顔を合わせる印象的な場面がある。橋の下に取り残された少年を助けるシーンだ。そしてこのシーンについて出演俳優の1人は、「5~6日間はずっと空中ブランコをやらされていたし、15日目もまだ吊るされていた」みたいに話していた。これだけでも十分すぎるほど過酷である。

しかし恐らくだが、彼が言及していたのは「橋の下で主人公2人が手を繋ぐシーン」についてのみだったと思う。だからそこに至るまでの過程、つまり、馬やバイクに乗ったり、少年を助けるための準備をしたりするシーンは含まれていないはずだ。そしてその撮影で15日以上も掛かっているというのである。私の記憶では、長くても1分程度のシーンだったと思うのだが、そのためだけに膨大な時間と労力を費やしているのだ。

この話だけでも、どれだけ大変だったかが伝わるのではないかと思う。

また、本作では裏方のスタッフも数多くインタビューに答えているのだが、その中で「制作統括」(だったと思う)が、「ラージャマウリ監督の現場は覚悟が要る」みたいに話していたのも印象的だった。その一例として彼は、「すべてのシーンにおいて、準備に10~15日ぐらい掛け、さらにその後の撮影でも同じぐらいの時間を費やす」みたいに言っていたのだ。通常の映画撮影について詳しく知らないのでなんとも言えないが、「業界の常識的にもあり得ない」みたいなニュアンスを含む主張だったように思う。

それだけ長くなるのには理由がある。監督のこだわりが強すぎるからだ。スタッフや役者の多くが、「監督には明確なビジョンがある」と証言していた。シーン毎の完成形を明確にイメージしているのだそうだ。そして、そのイメージに達しない限り、OKを出すことはないという。

例えば、本作では世界中で大流行した「ナートゥダンス」の撮影にも触れられていたのだが、このダンスシーンに監督は「完璧なシンクロ」を求めたようで、少しでも手の上げ方が違うだけで最初からやり直しになったそうだ。ナートゥダンスが披露された宮殿では他にもいくつかダンスシーンを撮っているのだが、その1カット毎に10回以上は撮り直しているという。ナートゥダンスは18回、そして20回以上やり直したシーンもあると語っていた。かなりハードな現場である。

またダンスに関しては、主演の1人が「個性を出そうとしたら監督に怒られた」と話していたのも印象的だった。「君たちが別々の個性を持つことはもちろん知っているが、ラーマとビームは私が生み出したキャラクターなのだから、私が指示した通りに踊れ」と言われたそうだ。つまり、「個性を消すぐらい完璧にシンクロしろ」ということだろう。ホント大変だっただろうなぁ。

インターバル前の「バトルシーン」の撮影の壮絶さ

さて、そんな「えげつない現場」において、誰もが口を揃えて「大変だった」と語っていたのが、インターバル(映画『RRR』には本編中に休憩時間が組み込まれている)前の「バトルシーン」である。予告でも使われていたはずだが、「トラックから無数の野生動物が飛び出す」というインパクトのある場面から始まる長い長いシーンだ。

この「野生動物が飛び出すシーン」については、監督がこんなエピソードを語っていた。映画『RRR』は世界中で大ヒットし、監督らも招かれて様々な上映回に参加したのだが、このシーンだけは、スクリーンではなく観客の方を見ていたそうだ。皆一様に驚くからである。本作では、このシーンを目にした外国人(アメリカ人かな?)の反応がワイプで小さく映し出されるのだが、客席で熱狂するほど大興奮していた。もちろん私もこのシーンには驚かされたし、そりゃああんなシーンを見せられたら興奮もするだろう。

ちなみに、どんどん話はズレるが、監督は「インド国内での大ヒットは予想通りだったけど、アメリカで熱狂的に受け入れられたのには驚いた」と話していた。監督らはチャイニーズシアターでの上映会に招かれたそうで、「アメリカに住むインド人が来るんだろう」と予想して会場に向かったそうだが、実際には9割以上がアメリカ人(と言っていたが、恐らくこれは「白人」のことを指すのだろう)でビックリしたそうだ。さらに驚きだったのは、ナートゥダンスの場面で観客がスクリーンの前に出てきて一緒に踊りだしたことだったという。監督は後に誰か(恐らく劇場関係者だろう)から「あんな光景を見たのは初めてです」と聞かされたそうだ。アメリカの観客がいかに熱狂していたのかが伝わるエピソードと言えるだろう。

というわけで話を戻そう。「バトルシーン」の話である。まず、このシーンに関わった人数が凄い。インド国内外の役者やスタントマン、エキストラなど1500人以上が参加したそうだ。そもそもこの人数の出演者を捌くだけでも大変だろう。しかしより困難だったのは、「野生動物は実際にはいない」ということだった。動物は当然すべてCGで、撮影時はいない。しかしシーンを成立させるためには、1500人の出演者が同じ光景、つまり「あそこに虎がこういう状態でいる」というイメージを共有出来ていなければならないのだ。その仕組みをどう作るかが問題だったという。

監督はリアリティを求める人で(ただ編集担当曰く、リアリティを無視してでも火と炎を過剰に足したシーンもあったそうで、時と場合によるようだ)、このシーンでは何よりも「動物が動くスピード」をリアルに見せたかったのだそうだ。確かに、動物を追う目線が遅かったり、出演者ごとにバラバラだったりしたら興ざめだろう。そこでこの撮影では、「あらかじめ設定した動物ごとのスピードに合わせてLEDライトが光る仕掛け」を用意し、出演者に動物の動きを体感してもらえるようにしたのである。

しかし、この仕組みは出演者にとっては良かったが、カメラマンにとっては地獄だった。というのも、カメラも当然動物の動きに合わせて動かす必要があるわけだが、最初は何度やっても実際の動物のスピードにカメラが追いつかなかったからである。特にトラのスピードに苦しんだそうで、何度も何度もリハーサルを繰り返し、トラの気持ちになって考え、それでようやくトラのスピードを追うカメラワークを実現することが出来たのだという。

またLEDライトの他にも、「無線のラジコンを無数に走らせて動物に見立てる」みたいなやり方もしていた。こうすることで、「動物(ラジコン)が近くにいるのに驚いていない人物がいる」みたいな違和感を見つけやすくなるのだ(実際に監督がそういう指摘をするシーンがあった)。

ただ私は、「合成する段階で動物の位置ぐらい微調整出来るっしょ」と思っていたのだが、どうもそうはいかなかったらしい。何故なら、このバトルシーンにおける動物のCGアニメーションは、撮影前の段階で完成させていたからだ。まあ確かに、CGの方を確定させないと、1500人もの出演者の動きを決められないだろう。そんなわけで、役者は「あらかじめ作られたCGに合う動き」をしなければならなかったというわけだ。ホント、凄まじいことをしているなと思う。

というわけでこのように、このバトルシーンには凄まじい労力が費やされているわけだが、最大の障壁は予想もしない方向からやってきた新型コロナである。このバトルシーンでは、全体で60日間の撮影期間が想定されており(実際には65日掛かったという)、そしてその半分が過ぎた頃に新型コロナの第一波がやってきたそうだ。当時は皆同じように考えていたはずだが、撮影スタッフらももちろん1~2ヶ月で収束するだろうと思っていたという。しかし実際には8ヶ月もの間撮影がストップしてしまったのである。

インド国内での映画撮影はもっと早くに再開したものの、映画『RRR』の撮影はなかなか始められなかったそうだ。というのも、その時点ではまだ国際線の飛行機が飛んでいなかったからである。外国から呼んでいた役者がインドまで来られなかったため、結局国際線の再開を待つしかなかったのだという。スタッフも役者も、よくもまあその中断を耐えたものだなと思う。

映画『RRR ビハインド&ビヨンド』のその他感想

映画『RRR』には全編を通じてアクションがふんだんに盛り込まれているのだが、ここには監督の好みが反映されている。昔からアクションに目がなかったそうで、映画でも絵本でも小説でも、アクションシーンがあるととても喜んでいたそうだ。だから『RRR』では、重要なシーンや感情表現など「物語において必要な要素」をアクションを通じて見せることにしたのだという。

さて、そんなアクションについては「思いのほかリアルにやりあっている」らしく、その点にも驚かされてしまった。役者たちはホントに殴り合っているそうで、主演俳優の1人によると、「最初こそカットが掛かると謝り合っていたが、最後の方は面倒になって『かかってこいや!』みたいなことを言うようになっていた」という感じだったそうだ。これもまた、撮影のハードさを伝えるエピソードだなと思う。

そんな「アクションで語る監督」は、「物語を思いつけば、大体シーンも一緒に思い浮かぶ」そうなのだが、映画『RRR』では「ラーマの登場シーン」にかなり悩んだという。最終的には、数千人の群衆(に見えるが、実際の撮影では6~700人ぐらいだったそうだ)の中を突っ切りながらある人物を追いかけ捕まえるという場面になったのだが、このシーンでもガチで揉み合っていた。リアルを追求する監督の期待に応えるため、カメラマンも手持ちカメラで群衆の中に入り込み、ラーマ役の俳優ももみくちゃになりながら暴れまわるのだ。あんな群衆、まともに制御できるはずがないだろうし、怪我なく撮影が終わった(のだと思うが)のは奇跡的じゃないかなと思う。

さらに、主演俳優の1人が「あの奇想天外なシーン」と表現していた「2人が合体して戦うシーン」も、実はガチでやっている。もちろん、肩車されている方にはワイヤーが付いていて、下の人に体重が掛からないようにしているが、それにしたって、「あの動きを実際にやってるのか!」と驚愕させられた。というか、驚きすぎて笑うしかないという感じだろうか。

そんなわけで、本作はもちろん「撮影の舞台裏を知れるメイキング映像」としてもメチャクチャ楽しめるのだが、実は本作で最も興味深いのは「監督自身が演出意図を丁寧に説明してくれる」という点ではないかと思う。「監督が自作を解説する」みたいなことってあまりないような印象なので、そういう意味でも貴重といえるのではないだろうか。

本作では監督が自ら、「このシーンではこういうことが伝わってほしいと考えてこういう演出をした」みたいなことをかなり細かく話してくれる。それを聞くと、「脚本の時点で相当精密に細部まで考えられているのだな」と実感できるんじゃないかと思う。さらに、映画『RRR』はどうしても「動きのインパクト」に目が向きがちだが、本作を観ると、それらの「動き」が「伝えるべきことを伝えるために必要な要素」だということが理解できるだろう。ここまで解説してくれる監督は多くないような気がするので、そういう部分もかなり興味深く感じられるのではないかと思う。

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最後に

変な言い方になるかもしれないが、本作は本編『RRR』を観ていなくても楽しめるんじゃないかという気がする。というか、本作をきっかけとして『RRR』を観たくなるはずだ。「こんなヤベェ映画が存在するのか!」みたいに感じて、本編を鑑賞したくなるんじゃないかと思う。もちろん、本編を既に観ている人にとっては、様々な裏側を知れる本作は間違いなく面白く感じられるだろう。本編を観た時点で「とんでもない撮影をしている」と予想出来てはいたが、その想像を遥かに超えるぶっ飛んだ舞台裏であり、「まさかここまでとは!」と驚かされるのではないかと思う。

さて最後にどうでもいいことを書くが、本作に登場する人がみんな「RRR」を「アララ」と発音しているのが印象的だった。英語圏の人にどう聴こえるのか分からないが、日本人には「アララ」としか聴こえないはずだ。日本人のように「アールアールアール」と発音すると、恐らく通じないんだろうなと感じたりした。あと、エンドロールが衝撃的に短かったのも驚きポイントである。

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