目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:山田尚子, Writer:吉田玲子, 出演:鈴川紗由, 出演:髙石あかり, 出演:木戸大聖, 出演:戸田恵子, 出演:新垣結衣, 出演:やす子, 出演:悠木碧, 出演:寿美菜子
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
若い世代のコミュニケーションは、恐ろしいほど複雑に繊細化しているのだと思う
我々上の世代とは、もはや「ルールが異なるスポーツをしている」ぐらいの違いがあるのだろうと認識している
この記事の3つの要点
- 公式HPに掲載されていた、「山田尚子が企画書に書いた文章」がとても素晴らしかった
- 「何かすること」ではなく「何もしないこと」によってストーリーが駆動していく印象が強い物語
- 本作を観た時点ではその存在さえ知らなかった、作永きみを演じた女優・髙石あかりに惹きつけられた
山田尚子が映画『けいおん!』の監督だということさえ知らずに観ましたが、とても素敵な作品でした
自己紹介記事
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そんな事前情報一切なしの状態で観た本作『きみの色』は、とても素晴らしかったです。「事前情報一切なし」と言えば、後で触れるつもりですが、声を担当した中に女優・髙石あかりがいて、そのことにも驚かされました。いや、本作を観た時点では彼女のことはまったく知らなかったのですが。
この後、映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』を観る機会があって、そこで初めて彼女の存在を知ったよね
なんて思ってたら、いつの間にかNHKの大河女優になっててびっくりだわ
現代の若者が抱える「繊細さ」を、監督・山田尚子はどのように捉えているのか
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そんなわけで、まずはその文章を引用してみたいと思います。
思春期の鋭すぎる感受性というのはいつの時代も変わらずですが、
すこしずつ変化していると感じるのは「社会性」の捉え方かと思います。
すこし前は「空気を読む」「読まない」「読めない」みたいなことでしたが、
今はもっと細分化してレイヤーが増えていて、若い人ほどよく考えているな、と思うことが多いです。
「自分と他人(社会)」の距離のとり方が清潔であるためのマニュアルがたくさんあるような。
表層の「失礼のない態度」と内側の「個」とのバランスを無意識にコントロールして、
目配せしないといけない項目をものすごい集中力でやりくりしているのだと思います。
ふとその糸が切れたときどうなるのか。コップの水があふれるというやつです。
彼女たちの溢れる感情が、前向きなものとして昇華されてほしい。
「好きなものを好き」といえるつよさを描いていけたらと思っております。
一読して、「メチャクチャ解像度の高い文章だなぁ」って感じたよね
そんな風に”上から目線”で言えるほど若者に詳しいわけじゃないんだけど、でも「分かってる感」の強い文章で凄く良かった
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さて、「若い世代の物事の捉え方」について考える時、私はよく「マルハラ」のことが頭に浮かびます。「文章の最後に『。』がついていると、相手が怒っているように感じられる」みたいな感覚から「ハラスメント」呼ばわりされるようになりました。私は正直、「マルハラ」の是非についてはどうでもいいのですが、とにかく感じるのは、「若い世代の人たちは、『文末に置かれた「。」1つ』からも積極的に何かを感じ取ろうとしている」ということです。
もちろん、そういう「繊細さ」を兼ね備えた人はどの時代にもいる(いた)と思いますが、今の若い人たちの特徴は、「そんな『繊細さ』が標準搭載されている」ということでしょう。山田尚子の先の文章の中で、私は「清潔」という単語が絶妙だなと感じるのですが、若い世代の人たちは恐らく、「自分はちゃんと『清潔』だろうか?」と常に自問自答しているのだと思います。「『清潔』でないのなら、コミュニケーションの場に立つべきではない」みたいな感覚が同世代の中で共通理解になっているような印象があるのです。
個人的には、そういうスタンスはとても良いなと思うし、共感も出来る
行き過ぎるとしんどくなっちゃうけど、「がさつな感じ」よりは全然良いよね
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私はこの記事を書いている時点で41歳ですが、我々の世代で言えば、「空気を読む」的なことが「他者への気遣い」とされているんじゃないかと思います。しかし若い世代のコミュニケーションは、もはや「空気を読む」みたいなレベル感のものではなく、「言語化して把握することさえ難しい」と言ってもいいくらい非常に細やかな「配慮」によって成り立っているのではないかというわけです。
しかし当たり前ですが、そんな振る舞いはとても大変でしょう。若者は普段から、コミュニケーションにもの凄く多大なコストを払っているのだと思います。我々が知っている「コミュニケーション」とは、たぶん「野球とサッカーぐらいルールが違う」んじゃないかと思うし、だからこそ、「『何でも話せる人』がいなくて辛い」「恋愛はコスパが悪い」みたいに感じたりもしてしまうのでしょう。
「おじさん構文」がバカにされるのも、そりゃあ当然だわって感じだよね
まあ、「おじさん構文」は、おじさんの私が見ても「キモっ」って思うけど
そして本作がとても良かったのは、「そういう『若い世代がナチュラルに抱えているだろう大変さ』が『大前提』として描かれていること」だと思います。いや、「描かれている」というのは正しい表現ではないかもしれません。より正確に言えば、「『大前提』であるが故に描かれていない」となるでしょうか。
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メインの3人の登場人物は、それぞれ何かしらの悩みや葛藤を抱えています。普通なら、物語の中でそれらに焦点が当てられていくでしょう。いや、確かにそれはその通りで、各々が抱える様々な事情が物語の中核を為すことは確かです。ただ、登場人物たちにとってそれらの悩み・葛藤は「特別なもの」ではなく、「単なる日常」でしかありません。というか、「悩み・葛藤に囚われている状態こそが日常である」と表現すべきでしょうか。「彼女たちがその時に抱えていた悩み・葛藤が単にそれだった」というだけの話で、それが解消されたところで、別の悩み・葛藤が浮き彫りになるだけです。「いくつもの重低音が常に鳴り響いていて、普段はその中のどれかの音に意識が向いているのだが、その音が消えたとしても、別の重低音が聴こえるようになるだけ」みたいなイメージでしょうか。
そして本作のそんな雰囲気、つまり、「『悩み・葛藤に囚われている状態こそが日常である』みたいなスタンスが貫かれている感じ」がとても良かったし、本作の「土台」と言える部分ではないかと感じました。
ただそれ故に、物語としてはスカッとしないというか、分かりやすくない感じがするけどね
それでも本作は、色んな要素で観客を惹きつけることで「魅せる映画」に仕上がってるのが凄いなって思う
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「『自分のことを分かってくれる人』がどこかにはいるはず」という気分にさせてくれる作品
本作では、登場人物たちの「問題」が「音楽」を通じて解決した”みたいな感じ”になります。もちろん、「物語」として提示する以上、ある程度そういう展開は必要とされるでしょう。しかし一方で、「問題が解決した」にしては、彼女たちは結局同じような場所に留まったままです。「進展した」みたいな感じが全然ありません。いや、まったく無いわけではありませんが、一般的にアニメ作品で想定されるような「これぐらい進展するだろう」というレベルには全然達していない感じがします。
そして私には、そういう雰囲気がとても素敵に思えました。
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映画でも漫画でも小説でも何でもいいですが、「物語に触れる動機」として「現実を忘れさせてくれること」を挙げる人は多いような気がします。もちろん、そういう物語も素晴らしいでしょう。たとえ束の間だったとしても、「現実の辛さ」から目を背けていられたり、あるいは吹き飛ばしてくれたりするような物語に救われる人も多いはずです。
しかし一方で、「現実ってしんどいよね」みたいな物語に希望を感じる人だっているはずです。特に「『私の辛さ』を分かってくれている」みたいに感じられる物語であればなおさらだし、さらに言えば、「そういう物語が大金を掛けてアニメ化され、多くの人から評価されている」という事実によって、「私だけじゃないんだ」という感覚にもなれるんじゃないかと思います。
そして本作は、観ている人をそんな気分にさせてくれる作品な気がしました。
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「物語」ではありませんが、私もつい最近そういう気分になれた経験があります。少し脱線しますが、しばらくその話をすることにしましょう。
さて、私は「映像が頭の中にまったく浮かばない」というタイプの人間です。恐らく多くの人が「ん?」という感じだと思います。これは「アファンタジア」という名前がついた状態であり、調べてみると、世の中のおよそ4%ほどの人がこの「アファンタジア」に当てはまるのだそうです。
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「頭の中に映像が浮かばない」という状態を想像するのは難しいかもしれませんが、例えば私は、「頭の中にリンゴを思い浮かべて下さい」と言われても出来ません。色んな人に聞いてみると、「目の前にリンゴが浮かんでいる」みたいな映像になるようですが、私にはその感覚がまったく理解できないというわけです。とにかく、「映像が脳内に出てこない」ので、人の顔も覚えられないし、道もすぐ忘れてしまいます。
私がこのことに気づいたのは、「小説を読んでいる時に、風景や登場人物の姿は一切頭に浮かんでいない」みたいな話をしたことがきっかけでした。普通は、「登場人物が着ている服」や「街の様子」なんかが脳内に浮かぶみたいですね。私はこれまで、小説が映像化される際に、「このキャストはイメージと違う」みたいに文句を言っている人の気持ちが全然理解できなかったのですが、「みんなの頭には具体的な映像が浮かんでいる」と知ってようやく意味が分かりました。
「人の顔や道を覚えられない」程度の不具合で済んでいるからなぁ
「『頭に映像が浮かばない』のは少数派である」と気付いたのが30歳頃のことです。そして、それ以降、機会がある度にこの話をしてみたのですが、「分かる!」と共感してくれる人には出会えませんでした。4%ということは25人に1人なのでそれなりにいそうなものですが、私の周りには全然いなかったのです。
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しかし最近、人生で初めて「私も同じです」という人に出会いました。その人は私がこの話をするまで、「『頭に映像が浮かばない』のは普通じゃない」という事実に気づいていなかったようです。やはり生活に特段の支障は無いので、自覚する機会がないんですよね。そんなわけで、私はここ10年ぐらい「分かってくれる人がいないなぁ」と思い続けてきたわけですが、「同じ感覚を持つ人と出会うとやはり、何となく救われた気分になるな」と感じたというわけです。
本作も、誰かにとってそんな存在になるような気がするし、少なくとも監督はそういう希望を込めて作ったんじゃないかと思っています。
映画『きみの色』の内容紹介
物語の舞台となるのはキリスト教系の全寮制の高校で、ここに通う日暮トツ子は、学内でもかなり目立たない地味な存在である。大体いつも、4人部屋の他の3人と一緒につるんでいるか、あるいは聖堂でひとりお祈りをしているかだ。聖堂では時々、シスターの日吉子さんが話しかけてくれる。校則に「男女交際禁止」など厳しいルールを設ける学校ではあるが、そんな中で日吉子さんは、「皆にとって良い方向」を生徒と共に探ろうと懸命になってくれる人だ。
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さて、トツ子には少し変わった特質がある。目で見る「色」とは別に、感じる「色」があるというのだ。「オーラ」みたいなものらしい。そんなわけで、彼女には「人を『色』で捉える癖」があり、しかし普段はそのことを隠している。そういう話をすると、大抵気味悪がられるからだ。
トツ子が通う学校に、作永きみという生徒がいる。トツ子とは違い誰からも慕われる存在で、聖歌隊のリーダーも務めているくらいだ。トツ子も、作永さんから感じられる「色」に惹かれ、見惚れている内にドッジボールの球を顔面に食らってしまったことがある。
しかし、ある時から急に作永さんを校内で見かけなくなってしまった。勇気を振り絞って色んな人に聞いてみたところ、どうやら退学してしまったようなのだ。理由は、誰も知らないという。突然すぎて驚くトツ子だったが、しかし、彼女にどうこう出来るような話ではない。
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ただその後、色々と縁があって、作永さんがアルバイトをしている古本屋で再会を果たすことが出来た。作永さんは、営業中の店内でギターの練習をしている。トツ子は、「作永さんを探していた」なんてことが悟られないようにと、さも探していたとでもいうように、弾けもしないピアノの教本を買おうとしたのだが、まさにその瞬間、店内にいた男子高校生が作永さんに話しかけた。彼もまた、作永さんがギターの練習をしているのが気になっていたのだという。
その瞬間、トツ子は何を思ったか、「私たちのバンドに入りませんか?」とその男子高校生・影平ルイに声を掛けていた。もちろん、トツ子はバンドなんか組んでいないし、楽器だって弾けもしない。ただただ、作永さんとの関わりを繋ぎ止めたかっただけだ。そんな奇妙なきっかけから3人はバンドを組み、集まって練習をすることになったのである。
高校を辞めたことを同居している祖母に未だ言えずにいるきみ。家業の病院を継がなければならないと頭では理解しつつも音楽活動にのめり込んでしまうルイ。そして、他の人の「色」は見えるのに自分の「色」だけは見ることが出来ないトツ子。「音楽」をきっかけに偶然繋がったそんな3人が、それぞれの悩み・葛藤と向き合いながら「好きなこと」に熱中していく。
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映画『きみの色』の感想
本作では、「音楽」が非常に重要な要素であるにも拘らず、「『音楽』はあくまでも『触媒』でしかない」という構成・展開なのが良かったなと思います。「バンドの練習のために集まる」というのは、もちろん「好きなことをやるため」なのですが、同時に、ある種の「逃避」でもあるわけです。つまり、「音楽じゃなきゃダメなんだ!」みたいな感じでは全然なく、そういうところが個人的には好みでした。
そして、そんな「触媒」でしかなかったはずの「音楽」が、物語のラストで全体を一気にまとめ上げていくみたいな雰囲気も素敵だったなと思います。彼女たちは「しろねこ堂」というバンド名で学園祭のライブに出演していました。そんなわけで本作は最後、ガッツリと「音楽映画」という感じの展開になるし、そのことによって、彼女たちのそれまでの努力が昇華されたみたいな印象にもなります。また、それまでさほど「音楽」に焦点が当たらなかったにも拘らず、最後一気に「音楽映画」になっていく構成に無理がなく、その点も含めてとても素晴らしいと感じました。
しかも、トツ子作曲の『水金地火木土天アーメン』が、ライブではめちゃくちゃカッコイイ曲になってて驚いたよね
最初は「おちゃらけた曲」ぐらいにしか聴こえないんだけど、編曲(?)であんなに変わるとは
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ストーリー的には本当に、これといった起伏はありません。彼女たちが抱える悩み・葛藤がはっきり浮き彫りにされるようなシーンもないし、状況が一変するような出来事が起こったりもしないのです。「そこはかとない気怠さ」みたいなものがずっと続いていくみたいな構成で、本作においてはそういう雰囲気がとても良かったなと思います。
というのも本作には、「何かすること」によってではなく、「何もしないこと」によって話が進んでいくような雰囲気があるからです。
これもまた、あまり上手くは説明できない感覚なんだけど
私が伝えたい趣旨とは少しズレるのですが、本作中に「言いたくないことは聞かないよ」というセリフが出てくるシーンがあります。これなどは分かりやすく「『何もしないこと』が状況を作り出している」と言えるでしょう。そして本作には、そんな風に感じられるシーンが随所にあるのです。
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これもまた、「若い世代のリアル」という感じがしました。この記事の冒頭で「若者のコミュニケーション感度の高さ」について触れましたが、そうであれば当然、「何かがある」ことに対してだけではなく「何もなかった」という事実にも何らかの意味を見出すはずでしょう。そして本作には、そんな高度なコミュニケーションをナチュラルに描きつつ、じんわりと物語を進めているような印象があったというわけです。
サラッとやってる印象だったけど、やっぱり「何もしないこと」によって物語を動かすのは難しいだろうね
でもそのお陰で、物語がよりリアルになってた気がする
さて、「『何もしないこと』が状況を生み出す」というのはやはり、「深い繋がりがあるからこその関係性」みたいな印象を与えるのではないかと思います。「何かがある場合」ももちろんその意図を察するのは難しいわけですが、「何もない場合」はそれ以前に、「何もなかったという事実」に気づく必要があるためで、コミュニケーションの難易度が余計上がるのです。だから、そんなコミュニケーションが成立している姿を見て、より強く「親密な雰囲気」を感じられるんじゃないかと思います。だからこそ、ストーリー自体に起伏がなくても、惹きつける物語として成立しているのだろうと感じました。
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この辺りのことに関しては恐らく、脚本の吉田玲子の手腕もあるんだろうと思っています。私が彼女のことをちゃんと認識したのは、映画『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なのですが、その後もあらゆる作品で彼女の名前を目にするし、やはり実力のある人なのでしょう。凄いものだなと思います。
映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』もメチャクチャ良かったしね
「原作の良さをどう引き出すか」みたいな手腕にも長けてるんだろうなぁ
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さて、キャラクター的には、とにかく作永きみがメチャクチャ素敵でした。キャラクターの造形だけじゃなく声にも惹きつけられたし、素晴らしかったなと思います。公式HPによると、メインの3人のトツ子、きみ、ルイ役は1600人もの中からオーディションで選ばれたようで、3人とも職業声優ではなく役者です。そして、作永きみを演じていたのが髙石あかりで、ホント、そのことにも驚かされました。
といっても、本作『きみの色』を観た時点ではまだ彼女のことを知らなかったのですが、その後観た、髙石あかり主演の映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』がぶっ飛ぶほど面白く、そこで初めて髙石あかりという女優の存在をちゃんと認識したというわけです。
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映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』はシリーズ第3弾で、1・2を観ずに3だけ観たんだよね
それでも十分面白かったし、主演の2人には本当にビックリした
そして改めて、本作『きみの色』に声優として出演しているという事実に気づき、さらに驚かされたというわけです。声だけでも惹きつける何かがあるわけだし、さらに、自分の感覚が一貫していることに思いがけず気づけたのも良かったなと思います。
また、音楽的な話で言えば、影平ルイが演奏する楽器がテルミンなのもびっくりでした。「楽器の演奏シーンをアニメ化する」のはそもそもかなり難しいような気がしていますが、テルミンの演奏シーンはより一層難しかったんじゃないかと思います。まあ、奏者が多くはない楽器のはずなので、間違った描写をしていても気づかれにくいだろうけど、でもきっと、リアルに描いているに違いありません。『情熱大陸』で山田尚子が特集されていた回を観たのですが、その時の振る舞いなどからもそういう印象があります。テルミンという楽器を登場させることに必然性があったのかは分かりませんが、「難しいことに挑戦する」みたいな側面もあるような気がするし、そうだとしたら、そういう気概も素晴らしいと感じました。
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監督:山田尚子, Writer:吉田玲子, 出演:鈴川紗由, 出演:髙石あかり, 出演:木戸大聖, 出演:戸田恵子, 出演:新垣結衣, 出演:やす子, 出演:悠木碧, 出演:寿美菜子
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最後に
派手さこそありませんが、とても丁寧に作られた作品だったと思います。素敵な物語でした。
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【絶妙】映画『水深ゼロメートルから』(山下敦弘)は、何気ない会話から「女性性の葛藤」を描く(主演…
高校演劇を舞台化する企画第2弾に選ばれた映画『水深ゼロメートルから』は、「水のないプール」にほぼ舞台が固定された状態で、非常に秀逸な会話劇として展開される作品だ。退屈な時間を埋めるようにして始まった「ダルい会話」から思いがけない展開が生まれ、「女として生きること」についての様々な葛藤が描き出される点が面白い
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【感想】映画『夜明けのすべて』は、「ままならなさ」を抱えて生きるすべての人に優しく寄り添う(監督…
映画『夜明けのすべて』は、「PMS」や「パニック障害」を通じて、「自分のものなのに、心・身体が思い通りにならない」という「ままならなさ」を描き出していく。決して他人事ではないし、「私たちもいつそのような状況に置かれるか分からない」という気持ちで観るのがいいでしょう。物語の起伏がないのに惹きつけられる素敵な作品です
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【狂気】群青いろ制作『雨降って、ジ・エンド。』は、主演の古川琴音が成立させている映画だ
映画『雨降って、ジ・エンド。』は、冒頭からしばらくの間「若い女性とオジサンのちょっと変わった関係」を描く物語なのですが、後半のある時点から「共感を一切排除する」かのごとき展開になる物語です。色んな意味で「普通なら成立し得ない物語」だと思うのですが、古川琴音の演技などのお陰で、絶妙な形で素敵な作品に仕上がっています
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【実話】さかなクンの若い頃を描く映画『さかなのこ』(沖田修一)は子育ての悩みを吹き飛ばす快作(主…
映画『さかなのこ』は、兎にも角にものん(能年玲奈)を主演に据えたことが圧倒的に正解すぎる作品でした。性別が違うのに、「さかなクンを演じられるのはのんしかいない!」と感じさせるほどのハマり役で、この配役を考えた人は天才だと思います。「母親からの全肯定」を濃密に描き出す、子どもと関わるすべての人に観てほしい作品です
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【感想】アニメ映画『パーフェクトブルー』(今敏監督)は、現実と妄想が混在する構成が少し怖い
本作で監督デビューを果たした今敏のアニメ映画『パーフェクトブルー』は、とにかくメチャクチャ面白かった。現実と虚構の境界を絶妙に壊しつつ、最終的にはリアリティのある着地を見せる展開で、25年以上も前の作品だなんて信じられない。今でも十分通用するだろうし、81分とは思えない濃密さに溢れた見事な作品である
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『恋する惑星』『天使の涙』で一躍その名を世界に知らしめた巨匠ウォン・カーウァイ作品の4Kレストア版5作品を劇場で一気見した。そして、監督の存在さえまったく知らずに観た『恋する惑星』に圧倒され、『天使の涙』に惹きつけられ、その世界観に驚かされたのである。1990年代の映画だが、現在でも通用する凄まじい魅力を放つ作品だ
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【奇妙】映画『鯨の骨』は、主演のあのちゃんが絶妙な存在感を醸し出す、斬新な設定の「推し活」物語
映画『鯨の骨』は、主演を務めたあのちゃんの存在感がとても魅力的な作品でした。「AR動画のカリスマ的存在」である主人公を演じたあのちゃんは、役の設定が絶妙だったこともありますが、演技がとても上手く見え、また作品全体の、「『推し活』をある意味で振り切って描き出す感じ」もとても皮肉的で良かったです
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幾田りらとあのちゃんが声優を務めた映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、とにかく最高の物語だった。浅野いにおらしいポップさと残酷さを兼ね備えつつ、「終わってしまった世界でそれでも生きていく」という王道的展開を背景に、門出・おんたんという女子高生のぶっ飛んだ関係性が描かれる物語が見事すぎる
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『「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの自伝的小説を基にした映画『笑いのカイブツ』は、凄まじい狂気に彩られた作品だった。「お笑い」にすべてを捧げ、「お笑い」以外はどうでもいいと考えているツチヤタカユキが、「コミュ力」や「人間関係」で躓かされる”理不尽”な世の中に、色々と考えさせられる
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モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』は、「10年以上拘束され続けた精神病院から脱走したアジア系女性が、特殊能力を使って大暴れする」というムチャクチャな設定の物語なのだが、全編に通底する「『善悪の判断基準』が歪んでいる」という要素がとても見事で、意味不明なのに最後まで惹きつけられてしまった
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実際に起こった障害者施設殺傷事件を基にした映画『月』(石井裕也)は、観客を作中世界に引きずり込み、「これはお前たちの物語だぞ」と刃を突きつける圧巻の作品だ。「意思疎通が不可能なら殺していい」という主張には誰もが反対するはずだが、しかしその態度は、ブーメランのように私たちに戻ってくることになる
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映画『街の上で』(今泉力哉監督)は、「映画・ドラマ的会話」ではない「自然な会話」を可能な限り目指すスタンスが見事だった。「会話の無駄」がとにかく随所に散りばめられていて、そのことが作品のリアリティを圧倒的に押し上げていると言える。ある男女の”恋愛未満”の会話もとても素晴らしかった
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【感想】映画『正欲』に超共感。多様性の時代でさえどこに行っても馴染めない者たちの業苦を抉る(出演…
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中絶が禁止されていた1960年代のフランスを舞台にした映画『あのこと』は、「望まぬ妊娠」をしてしまった秀才の大学生が、「未来を諦めない」ために中絶を目指す姿が描かれる。さらに、誰にも言えずに孤独に奮闘する彼女の姿が「男の不在」を強調する物語でもあり、まさに男が観るべき作品だ
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【助けて】映画『生きててごめんなさい』は、「共依存カップル」視点で生きづらい世の中を抉る物語(主…
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【不穏】大友克洋の漫画『童夢』をモデルにした映画『イノセンツ』は、「無邪気な残酷さ」が恐ろしい
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2006年発売、2021年文庫化の『私を見て、ぎゅっと愛して』は、ブログ本のクオリティとは思えない凄まじい言語化力で、1人の女性の内面の葛藤を抉り、読者をグサグサと突き刺す。信じがたい展開が連続する苦しい状況の中で、著者は大事なものを見失わず手放さずに、勇敢に前へ進んでいく
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西加奈子の同名小説を原作とした映画『炎上する君』(ふくだももこ監督)は、「多様性」という言葉を安易に使いがちな世の中を挑発するような作品だ。「見えない存在」を「過剰に装飾」しなければならない現実と、マジョリティが無意識的にマイノリティを「削る」リアルを描き出していく
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坂元裕二脚本、是枝裕和監督の映画『怪物』は、3つの視点を通して描かれる「日常の何気ない光景」に、思いがけない「加害性」が潜んでいることを炙り出す物語だ。これは間違いなく、私たち自身に関わる話であり、むしろ「自分には関係ない」と考えている人こそが自覚すべき問題だと思う
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韓国で実際に起こった「事件」を基に作られた映画『あしたの少女』は、公開後に世論が動き、法律の改正案が国会を通過するほどの影響力を及ぼした。学校から実習先をあてがわれた1人の女子高生の運命を軸に描かれる凄まじい現実を、ペ・ドゥナ演じる女刑事が調べ尽くす
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ヨーロッパ企画の演劇『サマータイムマシン・ブルース』の物語を、森見登美彦の『四畳半神話大系』の世界観で描いたアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』は、控えめに言って最高だった。ミニマム過ぎる設定・物語を突き詰め、さらにキャラクターが魅力的だと、これほど面白くなるのかというお手本のような傑作
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宮崎駿最新作であるジブリ映画『君たちはどう生きるか』は、宮崎アニメらしいファンタジックな要素を全開に詰め込みつつ、「生と死」「創造」についても考えさせる作品だ。さらに、「自分の頭の中から生み出されたものこそ『正解』」という、創造物と向き合う際の姿勢についても問うているように思う
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新海誠監督の『すずめの戸締まり』は、古代神話的な設定を現代のラブコメに組み込みながら、あまりに辛い現実を生きる人々に微かな「逃げ道」を指し示してくれる作品だと思う。テーマ自体は重いが、恋愛やコメディ要素とのバランスがとても良く、ロードムービー的な展開もとても魅力的
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今泉力哉監督、有村架純主演の映画『ちひろさん』は、その圧倒的な「寂しさの共有」がとても心地よい作品です。色んな「寂しさ」を抱えた様々な人と関わる、「元風俗嬢」であることを公言し海辺の町の弁当屋で働く「ちひろさん」からは、同じような「寂しさ」を抱える人を惹き付ける力強さが感じられるでしょう
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「実は私は、恋愛的な関係を求めているわけじゃないかもしれない」と気づいた著者ムラタエリコが、自身の日常や専門学校でも学んだ写真との関わりを基に、「自分に相応しい関係性」や「社会の暴力性」について思考するエッセイ。久々に心にズバズバ刺さった、私にはとても刺激的な1冊だった。
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【感想】映画『君が世界のはじまり』は、「伝わらない」「分かったフリをしたくない」の感情が濃密
「キラキラした青春学園モノ」かと思っていた映画『君が世界のはじまり』は、「そこはかとない鬱屈」に覆われた、とても私好みの映画だった。自分の決断だけではどうにもならない「現実」を前に、様々な葛藤渦巻く若者たちの「諦念」を丁寧に描き出す素晴らしい物語
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【感想】のん主演映画『私をくいとめて』から考える、「誰かと一緒にいられれば孤独じゃないのか」問題
のん(能年玲奈)が「おひとり様ライフ」を満喫する主人公を演じる映画『私をくいとめて』を観て、「孤独」について考えさせられた。「誰かと関わっていられれば孤独じゃない」という考えに私は賛同できないし、むしろ誰かと一緒にいる時の方がより強く孤独を感じることさえある
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【感想】映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)の稲垣吾郎の役に超共感。「好きとは何か」が分からない人へ
映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)は、稲垣吾郎演じる主人公・市川茂巳が素晴らしかった。一般的には、彼の葛藤はまったく共感されないし、私もそのことは理解している。ただ私は、とにかく市川茂巳にもの凄く共感してしまった。「誰かを好きになること」に迷うすべての人に観てほしい
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【言葉】「戸田真琴の生きづらさ」を起点に世の中を描く映画『永遠が通り過ぎていく』の”しんどい叫び”
『あなたの孤独は美しい』というエッセイでその存在を知ったAV女優・戸田真琴の初監督映画『永遠が通り過ぎていく』。トークショーで「自分が傷つけられた時の心象風景を映像にした」と語るのを聞いて、映画全体の捉え方が変わった。他者のために創作を続ける彼女からの「贈り物」
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【魅惑】バーバラ・ローデン監督・脚本・主演の映画『WANDA』の、70年代の作品とは思えない今感
映画館で観た予告が気になって、それ以外の情報を知らずに観に行った映画『WANDA』なんと70年代の映画だと知って驚かされた。まったく「古さ」を感じなかったからだ。主演だけでなく、監督・脚本も務めたバーバラ・ローデンが遺した、死後評価が高まった歴史的一作
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「AV女優のエッセイ」と聞くと、なかなか手が伸びにくいかもしれないが、戸田真琴『あなたの孤独は美しい』の、あらゆる先入観を吹っ飛ばすほどの文章力には圧倒されるだろう。凄まじい経験と、普通ではない思考を経てAV女優に至った彼女の「生きる指針」は、多くの人の支えになるはずだ
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【評価】のん(能年玲奈)の映画『Ribbon』が描く、コロナ禍において「生きる糧」が芸術であることの葛藤
のん(能年玲奈)脚本・監督・主演の映画『Ribbon』。とても好きな作品だった。単に女優・のんが素晴らしいというだけではなく、コロナ禍によって炙り出された「生きていくのに必要なもの」の違いに焦点を当て、「魂を生き延びさせる行為」が制約される現実を切り取る感じが見事
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二村ヒトシ『すべてはモテるためである』は、タイトルも装丁も、どう見ても「モテ本」にしか感じられないだろうが、よくある「モテるためのマニュアル」が書かれた本ではまったくない。「行動」を促すのではなく「思考」が刺激される、「コミュニケーション」と「居場所」について語る1冊
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【選択】特異な疑似家族を描く韓国映画『声もなく』の、「家族とは?」の本質を考えさせる深淵さ
喋れない男が、誘拐した女の子をしばらく匿い、疑似家族のような関係を築く韓国映画『声もなく』は、「映画の中で描かれていない部分」が最も印象に残る作品だ。「誘拐犯」と「被害者」のあり得ない関係性に、不自然さをまったく抱かせない設定・展開の妙が見事な映画
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涙腺がぶっ壊れたのかと思ったほど泣かされた映画『彼女が好きなものは』について、作品の核となる「ある事実」に一切触れずに書いた「ネタバレなし」の感想です。「ただし摩擦はゼロとする」の世界で息苦しさを感じているすべての人に届く「普遍性」を体感してください
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小学5年生から統合失調症を患い、社会の中でもがき苦しみながら生きる卯月妙子のコミックエッセイ『人間仮免中』はとんでもない衝撃作。周りにいる人とのぶっ飛んだ人間関係や、歩道橋から飛び降り自殺未遂を図り顔面がぐちゃぐちゃになって以降の壮絶な日々も赤裸々に描く
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小学3年生のこっこは、「孤独」と「人と違うこと」を愛するちょっと変わった女の子。三つ子の美人な姉を「平凡」と呼んで馬鹿にし、「眼帯」や「クラス会の途中、不整脈で倒れること」に憧れる。西加奈子『円卓』は、そんなこっこの振る舞いを通して「当たり前」について考えさせる
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私は「見て分かること」に”しか”反応できない世界に日々苛立ちを覚えている。そういう社会だからこそ、映画『流浪の月』で描かれる文と更紗の関係も「気持ち悪い」と断罪されるのだ。私はむしろ、どうしようもなく文と更紗の関係を「羨ましい」と感じてしまう。
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他の様々な要素を一切排し、「望まぬ妊娠をした少女が中絶をする」というただ1点のみに全振りした映画『17歳の瞳に映る世界』は、説明もセリフも極端に削ぎ落としたチャレンジングな作品だ。主人公2人の沈黙が、彼女たちの置かれた現実を雄弁に物語っていく。
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普通って何?【本・映画の感想】 | ルシルナ
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