目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:小路谷秀樹, 出演:庄司哲郎, 出演:林泰子, 出演:竹本良, 出演:巨椋修, 出演:大森敏範, 出演:宇宙大使くん, 監督:小路谷秀樹, プロデュース:小路谷秀樹
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「自発的に話したくない」が「誰かから聞いてもらえる可能性も低い」場合、「占い」はとてもよく機能する
- 一般的な学問とは違って、「『否定されたという状態』に絶対に達しない」からこそ、UFOを信じるメリットが存在すると言える
- 庄司哲郎という俳優に焦点を当てることで、「『未知のもの』を信じること」のある種の困難さを切り取っていく
メチャクチャ胡散臭い映画だと思っていたが、結果的には、色々考えさせる非常に興味深い作品だった
自己紹介記事
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「大丈夫か?」という感覚は、映画が始まってからもしばらく続いた。UFOや宇宙人を信じる者たちが、UFOの撮影に繰り出したり、「月面で発見された異星人の遺体」に関して自説を述べたりしている間は、「やっぱりヤバい映画を観に来てしまったか」という風にしか感じられなかったのだ。
ただ途中から、物語のテイストがガラリと変わる。そしてその辺りから、「なるほど、これはUFO愛好家の話ではないのか」という感覚になっていくのだ。そうなってからの展開には、かなり興味が湧いた。冒頭からちょいちょい登場する庄司哲郎という俳優が、物語の途中で一気に中心人物に躍り出るのだが、そのきっかけの1つがなんと「覚せい剤取締法違反の疑いによる逮捕」なのである。
映画は最終的に、「庄司哲郎という人物を多面的に捉える作品」という形へと収斂していく。彼はなかなか不思議な存在だ。結果として「嘘ばかりついていた」ことが判明する庄司哲郎には、普通の社会ではまず許容されないだろう「胡散臭さ」が常時つきまとっている。しかし一方で、その「胡散臭さ」は「UFO愛好家」という集団においては成立し得るのだ。
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その最大の理由は、「UFO愛好家のコミュニティには、『否定する・される』という土壌が存在しない」という点にあるのだと私は感じた。
「UFO」に限らず、陰謀論やツチノコなど、色んなタイプの「未知のもの」を信じる人が世の中には存在する。信じる信じないはもちろん個人の自由だし、その点に私の関心はない。一方私は、「『未知のもの』を信じること」にどんな効用があるのかについて、この映画を観て改めて考えさせられたし、実に興味深いと感じた。その辺りのことについて、以下色々と書いていきたいと思う。
「占い」というシステムが持つ見事な機能
私は占いも宇宙人の乗り物としてのUFOも信じていない。一方で、「占いを信じる人」や「UFOを信じる人」のことは興味深い対象だと思っている。科学を信じている私からすれば、「占いやUFOのようなよく分からないものを、どうして信じられるのだろう?」と感じてしまうし、その感覚自体は理解してみたいと思う。
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そして、そんな風に考えていたからだろう、「なるほど、占いにはこんな見事な機能があったのか」と感心させられたことがあった。
私は観ていないのだが、「芸能人を突然占う」というテレビ番組がある。その番組についてのネット記事をなんとなく読んでみたことがあるのだが、その記事を読んで私は「占いの機能」を理解することができた。
記事で取り上げられていたのは、有名なアイドルグループに所属していた女性。そしてその女性が、「占い師に当てられたから仕方なく話す」という感じで、「『恋愛禁止』のルールが生まれたのは自分のせい」だと暴露していたのだ。所属した当初は「恋愛禁止」というルールはなかったが、自分が恋愛のことでグチャグチャしてしまい。そのことでグループに悪い影響をもたらしてしまったため、「恋愛禁止」というルールが作られるようになったのだ、と語っていた。
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このエピソード、「占い」というシステムのお陰で実に上手い形で表に出てきた話だと私は感じる。既にアイドルを卒業しているとはいえ、「自分のせいで『恋愛禁止』というルールが生まれた」という話を自分から口に出すのはなかなか難しいように思う。アイドル時代からずっとファンでいてくれる人もいるだろうし、であれば、「恋愛でグチャグチャしていた過去がある」と話すことは、今応援してくれているファンを自分から傷つけにいくような行為と受け取られかねないからだ。
また、「彼女のせいで『恋愛禁止』というルールが生まれた」という話は、一般的には知られていない事実であり、トーク番組などでMCが話を促すことも不可能である。自分から話をすることはできず、誰かに話を振ってもらうことも期待できない。彼女のこのエピソードは、まさにそのような類いのものと言っていいだろう。
そしてだからこそ、「占い」というシステムが絶妙に機能する。占いを信じている方には申し訳ないが、普通に考えてあの占い番組では、「芸能人に関する情報をマネージャーなどが事前に占い師に伝えている」と考えるのが妥当だろう。そして、そんなことをする理由は、「『占い師に見透かされたから仕方なく話す』というテイ」を上手く利用したいからだと思う。芸能人には「自分から話せず、話を振ってもらうことも期待できないが、世間の人に言っておきたい話」があり、占い師には「『誰も知らなかった話を占いで見抜いた』と演出できるメリット」がある。つまり、芸能人にとっても占い師にとってもウィンウィンのシステムというわけだ。
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このシステムに気づいた時、上手く出来てるなぁと感じさせられた。
確かにこれは「芸能人と占い師」という特殊な事例であるが、一般の人を占う場合でも状況はさほど変わらないはずだ。もちろん、「あらかじめマネージャーが情報を伝える」みたいなことは出来ない。しかし、巧みな話術で相談者に「あなたのことは分かっている」と思わせることができれば、相談者も「普段人には言えない悩み」を「『見透かされたから仕方なく』というテイ」で口にしやすくなるだろう。「悩み」というのは、「言葉にすること」「誰かに聞いてもらうこと」でかなり落ち着くのだから、「見透かされたというテイ」はとても有効だ。
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そんな風に考えることで、「占い」はプラスの機能を持つ素晴らしいシステムだと感じられる。繰り返すが、私自身は、「誰かの過去や未来を何らかの手法で読み解く」という意味での「占い」はまったく信じていない。しかし「占い」というシステムが有する機能は素晴らしいものがあると感じるのである。
「『否定されたという状態』に絶対に達しない」という特異なメリット
さて、「占い」というシステムがこのようにプラスの機能を持つのと同じく、UFOやUMA、陰謀論など「未知のもの」を信じることにも明確なメリットが存在するというのが私の考えだ。それが、「『否定されたという状態』に絶対に達しない」という効果である。
どういうことか説明するために、まずは「一般的な学問・教養・知識」について考えていこう。
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どんなものでも構わないが、「研究」によって新たな知見を積み上げてようなものの場合、必然的に「過去の知見は誤りだった」という過程を経ざるを得ない。「今まではこうだと考えられていたが、研究によってそれが誤りであることが分かった」「今までの理解では不十分であり、さらに細分化されることが判明した」など、「新たな知見」とセットで、「先行研究の誤り・不十分さ」が示されるというわけだ。
一例を挙げると、「正しいとされてきた研究が誤りだと分かった」というケースとして有名なのが野口英世だろう。彼は様々な病気の病原体を発見したと発表し、評価されたのだが、実は今では彼の研究は誤りだったことが分かっている。彼が病原体を発見したと主張した病気の多くは、現在では「ウイルス」によって引き起こされていると判明しているのだが、野口英世が生きていた時代には、ウイルスを観察できる顕微鏡がそもそも存在していなかったのだ。
このように、どんな分野においても、「研究が積み重ねられることで、既存の知識が否定される」という状況は避けられない。また、そもそも科学には「反証可能性」と呼ばれる考え方が存在し、「反証可能性が存在しないものは科学ではない」と判断される。そして「反証可能性」とはなんと、「『誤りである可能性』が存在すること」という意味なのだ。つまり「科学」は本質的に、「『誤りである可能性』を持つもの」でなければならないのである。「科学」だと主張するためには、「否定される可能性」を有していなければならないというわけだ。
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さて、このように考えた場合、「『未知のもの』を信じること」のメリットが理解しやすくなるだろう。対象が「未知のもの」だからこそ、「『否定されたという状態』に絶対に達しない」というわけだ。
映画には、「UFOは異星人の乗り物であり、何らかの理由で異星人が地球にやってきている」と主張する人物が多数登場する。では、この主張を否定することが可能なのか考えてみよう。「地球で目撃される未確認飛行物体はすべて、自然現象や目の錯覚などで説明がつく」という反論までは可能かもしれない。しかし仮にその状態に達したとしても、先の主張が否定されたことにはならない。遠い星のどこかに異星人はいるかもしれないし、そんな彼らが地球にやってきているかもしれないからだ。その可能性まで否定することはできない。
一般的に、「無いことの証明」は「悪魔の証明」と呼ばれ不可能だとされている。「異星人が存在しないこと」を証明しようとすれば、広い宇宙の隅々まで探索し、「宇宙にはこれ以上探索可能な場所はない」という状態に達するしかないが、そんなことは絶対に不可能だ。また、「異星人が乗るUFO」を発見することはできないだろうが、だからといって「UFOが存在しない」ということにはならない。というわけで、「UFOは異星人の乗り物であり、何らかの理由で異星人が地球にやってきている」という主張は、「否定されることがない」と断言していいだろう。
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「『見透かされた』というテイで、自発的には語りにくい話ができる」という機能が「占い」にあるのと同じく、「『未知のもの』を信じること」には、「自説が絶対に否定されない」というメリットが存在するのである。このように、科学的な見地からは「不合理」としか思えない状況であっても、「有用性」を感じるからこそ支持され続けるというわけだ。
映画の冒頭には、この「自説が絶対に否定されない」という点を強く印象付けるような場面があり、非常に驚かされた。
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少し触れたが、映画には「月面で発見された異星人の遺体」に関する話題が登場する。Youtubeにアップされた動画がきっかけとなったものだ。大元の映像ではないと思うが、その「異星人の遺体」を扱った動画のYoutubeがあったのでリンクを貼っておく。
さて劇中には、「専門家」を自称する人々が何人か登場し、Youtubeにアップされた「異星人の遺体」に関する動画について様々な見解を主張するシーンがある。そこで語られた内容は、細部こそ違えど、大まかな趣旨は大体一致していたと思う。その主張は次ようなものだ。
Youtubeにアップされたこの動画はフェイクだ。しかしだからこそこの動画は、「宇宙人の実在」を示す証拠だと言える
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何を言っているのか意味が分からないはずだ。彼らの理屈を説明していこう。
まず、「『異星人の遺体』の存在」を事実だと仮定してみよう。もしあなたが、その「異星人の遺体」の動画を撮影した人物だったとしたら、どのような思考になるだろうか。常識的に考えれば、「この『異星人の遺体』の動画をそのままYoutubeにアップしたところで、まず誰も信じない」という感覚になるだろう。社会に、そんな考えを受け入れる土壌が存在しないからだ。
さて、そのように考えたとして、次はどう行動すべきだろうか。ここから思考はかなり捻じ曲がっていく。「専門家」たちはなんと、「実際の映像を元にして『フェイク動画』を作った」と主張するのだ。彼らの考えはこうである。本物をそのまま流しても誰も信じない。だから本物は秘しておき、その代わりに「フェイク動画」を作成して世間に公表した。そうすることで、一部の理解力のある人達に、「この映像はフェイクだが、実際に起こっていることである」というメッセージを送っている、というわけだ。
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なかなか凄まじい理屈だろう。この理屈そのものは当然、私には受け入れがたいのだが、しかし、この主張は非常に見事だとも感じる。というのも、「この動画はフェイクである」という批判を簡単にかわすことが出来るからだ。どれだけ、「この動画はこれこれの理由で本物であるはずがない」と批判されようが、「えぇ、私たちもこの動画が『フェイク』だということは十分承知していますよ」と返すことができる。つまり、「『否定されたという状態』に絶対に達しない」というわけだ。
このように、「絶対に論破されない」という安心感の元に同好の士が集うことで、「お互いを肯定し合う環境」が自然と生み出されるのである。そして、そのこと自体は、とても健康的と言っていいのではないかと私は思う。私はそんな環境にいたいとは微塵も思わないが、こういう環境を望む人の気持ちは分からないでもないし、大いに需要が存在するだろうとも感じた。
「UFO」や「地球外知的生命体」に対する私の基本的な考え方
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さて、映画の内容に触れる前に、もう少し「UFO」や「地球外知的生命体」について書いておこう。冒頭で触れた通り、この映画は庄司哲郎という人間に肉薄する作品であり、「UFO」や「地球外知的生命体」について深掘りされるわけではないのだが、これはこれで興味深い話題なので触れておきたいと思う。
大前提として私は、「地球外知的生命体の存在」を受け入れている。つまり、「どこかにはいるだろう」と考えているというわけだ。映画には、庄司哲郎が収監される拘置所の近くで出会ったが「地球外知的生命体」についての自説を語る場面がある。曰く、「これだけ宇宙は広く、天体もたくさんあるのだから、知性があるかどうかは別として、生命体は間違いなくどこかにはいるだろう」。まあ私もそう思う。そしてやはり、これだけ広いのだから、「知性」を持つ生命体がいたっておかしくはないだろうとも考えている。
しかし問題は、「我々人間が生きているのと同時代に、そのような地球外知的生命体が存在しているのか」ということだ。この点については大いに疑問がある。
宇宙が誕生してから138億年。地球が誕生してから46億年。人類の誕生は、たった30万年前のことだ。46億年を24時間に置き換えた場合、人類が誕生したのは23時59分59秒頃となる。「46億年間における30万年」は、「24時間における1秒(実際には0.5秒ほど)」に相当するというわけだ。人類はまだ、その程度の歴史しか重ねていないのである。
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知的生命体は、宇宙が誕生して以来どのタイミングで生まれてもおかしくはないはずだ。そして可能性だけで言えば、「たった30万年しか生きていない人類と同時期に、他の天体で知的生命体が誕生した」と考えるよりも、「我々人類が生まれるよりも遥か以前に、他の天体で知的生命体が誕生した」と考える方が自然だと思う。そして、後者であるならば、その知的生命体は既に滅んでいる可能性の方が圧倒的に高いだろう。
つまり私は、「地球外知的生命体が存在したこと」は間違いないと思うが、「我々人類が生きている今この瞬間に宇宙のどこかで別の知的生命体が存在している可能性は極めて低い」と考えているのである。となれば、「UFOに乗って地球外知的生命体が地球にやってきている」という考えも当然の如く否定されるだろう。
ただ、より広い視点で考えることも可能だ。「地球外知的生命体が生み出したAIが、その知的生命体の絶滅後も自律的に活動しており、そのAIがUFOで地球にやってきている」とか、あるいは、「超絶的に科学技術を進化させた地球外知的生命体がタイムマシンを発明しており、彼らが過去から現在の地球にやってきている」なんていう可能性も否定はできない。しかし、「可能性はゼロではない」というだけで、ほぼあり得ないだろう。
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さらに、「地球外知的生命体の身体」についても考えるべき点がある。先述した「異星人の遺体」の動画で映っていた姿もそうだったが、一般的に「地球外知的生命体の身体」は、我々人間に似たものとして描かれることが多いと思う。しかし、もし実際に地球外知的生命体が存在するなら、我々とは異なる姿をしている可能性の方が圧倒的に高いはずだ。
この点については、J・P・ホーガン『星を継ぐもの』という名作SF小説で語られていた話に触れると分かりやすいだろう。映画でも、「UFO愛好家」が集まるバーのような場所で、自説を力説する男性が『星を継ぐもの』を片手に持っている場面が映し出されていた。SF小説の名作中の名作であり、その設定と展開の見事さには、ミステリ的な爽快感さえ感じさせるほどなので是非読んでみてほしい。ちなみに、これから私が書く話は、作品の重大なネタバラシをするようなものではない。作中で語られる、重要ではあるがメインというわけではないとある説明だ。
著:ジェイムズ・P・ホーガン, 翻訳:池 央耿
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『星を継ぐもの』は、「5万年前の人類の死体が月面で発見される」という、驚くべき始まり方をする。5万年前というと、「旧石器時代」と呼ばれる頃であり、当然、地球に住んでいた人類が月まで行けたはずがない。では一体、この死体は何なのだろうか? そんな疑問を前に世界中の研究者が議論を闘わせていく物語である。
その議論の中で、ある人物がこんな仮説を提唱した。月面で見つかった死体を「地球人のもの」だと考えるから奇妙に思えるのであって、単に「別の惑星で進化した生命体が月までやってきて亡くなった」というだけのことではないか、と。しかし別の研究者がその仮説を否定する。
その理由は明白だ。「地球とはまったく異なる環境で生きてきた生命体が、我々地球人と同じような身体に進化するはずがない」のである。例えば、地球よりも重力が極端に小さな惑星で生まれれば、地球人よりももっと背が高くなるかもしれない。あるいは、より重力が強い惑星であれば、二足歩行ではなく四足歩行で生活しているかもしれない。このように、環境要因によって進化への制約が生まれるのだから「地球人とそっくりの身体つきをしている月面の死体が、別の惑星で生まれ育ったとは考えにくい」ということになるのだ。
さらに興味深い知識も出てきた。月面の死体は、目の構造も地球人と同じだったのだが、これは普通に考えてあり得ないという。何故なら、私たち地球人の目の構造は、進化の過程における「コピーミス」が定着してしまった欠陥品だからだ。
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「盲点」なんかに気づいたことはない、と感じる人もいるだろう。それは当然だ。「映像として捉えられない場所」に、脳が「不自然ではない映像」を組み込んでいるため、私たちは普段「盲点」の存在に気づくことはない。iPhoneの「消しゴムマジック」と同じようなことを、脳が勝手にやっているというわけだ。そのため、「構造上の欠陥」が私たちの日常生活に悪影響を及ぼすことはない。しかし、「視神経が直接眼球に接続される構造」でなければならない必然性などまったくなく、それは単に「欠陥」と呼ぶしかない構造なのである。
そう考えると、「そのような欠陥構造を、別の惑星で生まれ育った生命体も偶然持っている」と捉えることに無理が生じてくるだろう。この点もまた、「月面の死体が、別の惑星で生まれ育った生命体である」という仮説を否定する要因となるのである。
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『星を継ぐもの』は、普通に考えれば解消不可能な謎を実に見事に解き明かし、その謎解きによってある種の感動さえ与える作品だ。興味がある方は是非読んでほしい。
著:ジェイムズ・P・ホーガン, 翻訳:池 央耿
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長くなったが、このような理由から、「地球外知的生命体が我々人類と同じような身体的特徴を持っている」という可能性はとてつもなく低いことになる。つまり、そもそも「我々と同時代に地球外知的生命体が存在する」が物凄く低い上に、さらに「その姿形が地球人に似ている可能性」も限りなくゼロに近いということになるわけだ。そういう意味で私は、「地球外知的生命体がUFOで地球までやってきている」という主張全般を信じられない。
というのが、私の基本的な考え方である。
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さて、それではここから、映画の内容に触れていきたいと思う。
映画『虚空門GATE』の内容紹介
監督がカメラを回し始めたきっかけは、Youtubeにアップされていた「月面で見つかった異星人の遺体動画」である。そもそもは、この動画の真偽を確かめるために撮影を始めたのだ。真相を探るべく、監督は「専門家」に話を聞き、「UFO愛好家」のグループの中に入り込んでいく。
そのUFO愛好家グループの中に、庄司哲郎という俳優がいる。飲み会の延長のような集まりの中で、「UFOを見たことがある」「宇宙船の中に連れ込まれたことがある」と、彼は自身の経験を語っていた。そして次第にグループの中で、「庄司さんは凄い力を持っている」という風に認識されるようになっていく。その理由は明白だ。彼は必ず「UFOを呼べる」のである。庄司哲郎と撮影に行くと、彼は必ず「UFOらしき何か」が写った写真を撮るし、一緒に夜空を見上げればUFOらしきものを目撃できたりするのだ。
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そこで監督は、庄司哲郎にコーディネーターをお願いし、様々な場所でUFOの撮影を試みることにした。するとなんと、彼は毎回UFOの写真を撮影してみせたのだ。なるほど、これは凄いかもしれない。そうやって監督は、幾度もUFOの撮影を依頼する。
しかし、いつものようにUFO撮影を予定していた日に、庄司哲郎は姿を現さなかった。大家や恋人に話を聞いても、彼の行方を知る者はいない。完全に音信不通になってしまったのである。
その後、衝撃の事実が判明した。庄司哲郎はなんと、覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されていたのだ。これで、撮影に現れなかった理由は分かった。
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その後、自由の身となった庄司哲郎に再びカメラは密着していくのだが、その過程で、彼にある「疑惑」が向けられることになる。彼は本当に「UFOを呼べる」のだろうか?
異星人やUFOを追うために始まった撮影は、やがて、庄司哲郎という1人の人間に焦点を当てる展開となっていき……。
映画『虚空門GATE』の感想
映画は大雑把に3つの部分に分けられると思う。「①異星人の真偽を調べようとする監督が、庄司哲郎に目をつけるまで」「②庄司哲郎が逮捕されてから出所するまで」「③出所後に生まれた庄司哲郎への疑惑」の3つである。①はさほど面白くないが、②③は面白い。物語のメインとしては③だが、②で描かれるドタバタの展開もなかなか興味深いものがある。
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この記事では、③で描かれる「疑惑」について具体的には触れない。なんとなく想像できるかもしれないが、興味がある方は実際に映画を観てみてほしい。冒頭で触れた通り、庄司哲郎の行為は「批判が少ない環境」だからこそ成立したものだと思う。そしてまた、「庄司哲郎を描くこと」が「『未知のもの』を研究することの困難さ」をあぶり出しているようにも感じられた。そういう意味でも、なかなか興味深い作品と言えるだろう。
庄司哲郎の疑惑そのものには触れないが、それに関連するかもしれない話を2つほど紹介したいと思う。
まずは、以前テレビ番組で見たエピソードから。かつて、日照りが続く地域に出向いては「雨を降らせる」と主張し、本当に雨を降らせて大金を稼いでいた男がいた、という話である。普通に考えればあり得ないのだが、実際にあった話なのだという。
ではその男は、いかにして「雨を降らせた」のだろうか?
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みたいに考えたくなるかもしれないが、そもそも問題の捉え方が誤っている。当たり前だが、その男は自らの力で雨を降らせたわけではない。では一体どんなカラクリがあるのか。聞けば簡単な話で、「空の様子から判断して、近い内に雨が降る確率が高い地域に声を掛けていた」というわけだ。このエピソードは、「天気予報」が行われる以前の話であり、普通の人々には近い未来の天気を知る術がなかった。しかしその男は、自身の知識や経験から「雨が降りそうかどうか」を推察できたため、このようなことが可能だったというわけだ。
この男は次第に名が知られるようになり、全米中から依頼が舞い込むようになったという。そしてそうなってからも、「雨が降りそうな地域」の依頼だけ受ければいいというわけだ。なかなか上手いことを考えたものだと思う。
また、超能力を科学的に研究する機関で起こった次のような出来事についても本で読んだことがある。
その研究機関では、「超能力を持っている」と自称する人物を募り、その人物に様々な試験を何年も掛けて行うことで、超能力の実在を調べることにした。そしてある人物に対しての試験結果を踏まえ、ついに研究機関は「この被験者は間違いなく超能力を持っている」と発表するに至ったのだ。
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しかしその直後、その被験者が、「自分はマジシャンであり、超能力は持っていない」と世間に公表し、大騒ぎとなった。彼は、「超能力の研究機関でお墨付きがもらえれば有名になれる」と考え、「超能力を持っている」と自称し被験者となる。そして、日々大量に行われる「超能力の試験」に対して、マジシャンとしての知識と能力をフル活用し、その場その場でトリックを生み出しながら臨んだというわけだ。この出来事をきっかけに、「超能力の科学的な研究」は廃れてしまったという。
これら2つのエピソードは、「『未知のもの』を信じること」の難しさを象徴するものだと言えるだろう。UFOでも異星人でもなんでもいいが、「このような『未知のもの』が存在する」という主張には常に、「『既知のもの』を『未知のもの』に見せかけているだけ」という可能性がつきまとうというわけだ。この記事の冒頭で、「『未知のもの』を信じること」には「『否定されたという状態』に絶対に達しない」というメリットが存在すると書いたが、私はむしろ、「『既知のもの』を『未知のもの』に見せかけているだけ」だと気付かされるのが怖くて「『未知のもの』を信じること」ができないのかもしれない。
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上映後にはトークショーが行われ、映画にも出演していた竹本良というUFO研究家が客席から途中参加したのだが、彼がこんな話をしていたのが印象的だった。曰く、一神教から生まれた「科学」は「唯一の真理」を追うが、多神教が基本の東洋では「唯一の真理」という発想は馴染まないし、「科学には収まらない領域」という考えがもっと許容されてもいいはずだ、と。
私も基本的には、その意見時点には賛成だ。確かに、「科学には収まらない領域」は存在するだろう。しかしだからといって、彼らの主張を受け入れられるかというとそんなこともない。というのも彼らは、「これは科学では理解しがたいかもしれないが、やはりUFOなのであり実在するのだ」というような主張をするからだ。「『科学』という箱には入り切らないものがある」と言っておきながら、「これは『UFO』という箱に入ることは間違いない」と言っている点に私は違和感を覚える。どういうプロセスを経て、「これはUFOである」という断言に行き着くのかが私には理解できない。「科学には収まらない」と言うのなら、「これはUFOかもしれないが、UFOではないかもしれないし、そもそも『異星人の乗り物』という意味での『UFO』など実在しないかもしれない」というぐらいのスタンスでいなければフェアではないだろう。この辺りのダブルスタンダードはやはり気になるところだ。
とはいえ、「『未知のもの』を信じること」に付随する様々な思考が刺激される、かなり興味深い映画だった。
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出演:小路谷秀樹, 出演:庄司哲郎, 出演:林泰子, 出演:竹本良, 出演:巨椋修, 出演:大森敏範, 出演:宇宙大使くん, 監督:小路谷秀樹, プロデュース:小路谷秀樹
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