目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ハンス・ジマー, 出演:ジェームズ・キャメロン, 出演:ジョン・ウィリアムズ, 出演:ダニー・エルフマン, 監督:マット・シュレイダー, プロデュース:NOBUKO TODA
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この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 映画音楽に唯一存在するルールは「ルールなど無い」である
- 『JAWS』『ジュラシック・パーク』を観ていなくても、音楽を聴けばなんの映画かパッと頭に浮かぶ凄さ
- ヒッチコック『サイコ』のシャワーシーンは、音楽が無かったら全然怖くない
現役のトップランナーも映画に登場するので、何らかの形で「創作」に関わる人は興味深く観られると思う
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
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とても面白い映画だった。私は、自分で何か音楽活動をしているわけでもないし、そもそも日常的に音楽を聞くことさえあまりない。映画は結構観ているが、ドキュメンタリー映画や上映館が決して多くはないマイナーな映画を観ることが多い。子どもの頃から映画を観ていたというわけではないので、誰もが知る超メジャー作品の多くを観ていないままだ。
そんな私でも、「映画音楽」をテーマにしたこの作品はもの凄く面白く感じられた。
非常に印象的だったのは、誰かが発したこの言葉だ。
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映画音楽のルールは一つだけだ。“ルールは無い”
映画を観ると、「なるほど」と感じさせられる。確かにルール無用の世界なのだ。そこにあるのは、「その映画に合った、最適な音を生み出す」という1点のみ。だからこそ、革命児・天才・異才など様々な才能が集まり、歴史に名を残すような仕事が生まれるのだ。
映画の中で、
映画音楽は20-21世紀が生んだ偉大な芸術だ。
と評していた人物がいる。何を以って「芸術」とみなすかは人それぞれだと思うが、映画の中で紹介されていたこのエピソードは1つ大きな示唆を与えるように思う。それは、「オーケストラを日常的に使っているのは映画音楽の世界だけ」という事実だ。もちろんオーケストラも公演など行っているだろうが、決して多くの人の目に触れることはない。オーケストラを丸ごと呑み込んでいるような存在とも言える映画音楽の世界は、「芸術」と言ってもいいのではないかと私は感じた。
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この映画では、映画監督・作曲家・ミュージシャン・プロデューサーなど、実際に「映画音楽の制作」に携わる者だけではなく、映画史研究家や科学者など多種多様な人物が登場し、映画音楽について語っていく。また、様々な名作映画のワンシーンが挿入され、映画音楽が印象的に使われている場面も紹介される。
私は、音楽的なセンスや感覚がないので、映画で流れる音楽について何かを感じることがあまりない。だからこそこの映画のように、具体的な場面をセレクトし、言葉で解説をしてくれると、その凄さが改めて理解できると感じた。
「映画音楽」がどのような歴史の変遷を持ち、どのような革命を経て現在に至ったのか、興味深く知ることができると思う。
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映画音楽の天才ジョン・ウィリアムズ
「ジョン・ウィリアムズ」を知らなかったとしても、彼が生み出した映画音楽を聞いたことがないという人はたぶんいないだろう。例えばあの有名な2音。
『JAWS』は、音楽がなければ、何が何だか分からない。
そう、誰もが耳にしたことがあるだろう、あの「ダーダン、ダーダン」という音。サメの登場シーンで印象的に流れるこの音楽を生み出した人物こそ、ジョン・ウィリアムズである。今では何の違和感もないだろうが、当時の常識では「無謀な実験」と思われたそうだ。しかし実際には、そのあまりに印象的なフレーズは多くの観客の耳に残り、大成功を収めることとなった。
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彼の映画音楽は『JAWS』に留まらない。『スター・ウォーズ』『インディー・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『ET』『スーパーマン』など、聞いた瞬間に誰もが映画のワンシーンを思い浮かべられる名曲を次々に生み出したのだ。
私は上述の映画を実際には観たことがない。この点も凄まじいと言えるだろう。先に挙げたタイトルでいえば、『インディー・ジョーンズ』を金曜ロードショーか何かで観たことがあるかもしれない、というぐらい。他の映画は、設定や有名なシーンは知っているが、全編を通して観たことは恐らくないと思う。それなのに音楽を聞けばそれが何の映画か分かるのだ。そんなの他に、日本のゲーム音楽ぐらいしかないだろう。私はゲームもほとんどやらないが、それでも、すぎやまこういち氏が生み出した音楽は聞けば分かる。
この点だけでも、映画音楽の凄さが分かろうというものだ。
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映画において「音楽」の重要性はいかにして高まったのか
この映画では、映画史を紐解きながら、映画音楽がいかにして現在のような立ち位置になっていったのかにも触れていく。
映画は元々、「無声映画」から始まった。映像だけで音はなく、劇場に設置されたオルガンで音楽をつけていたそうだ。日本では、無声映画の内容を解説するために「活動弁士」と呼ばれる人たちが喋りで劇場を盛り上げたが、外国では主に「映写機の音」をごまかす目的で音楽がつけられたという。
そんな理由で導入された音楽だったが、映画人たちは次第に、音楽こそが力を有していると認識するようになっていく。
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最初に映画音楽に革命をもたらしたのが『キングコング』だ。この映画で初めて、映画音楽にオーケストラが取り入れられたという。これは非常に革命的なことだった。
またそもそも『キングコング』は、音楽がないと作り物感が強く出てしまう。実際は着ぐるみなのだから当然だ。しかし音楽が加わることで途端に迫力が生まれる。『キングコング』はまさに、音楽の力を映画の作り手たちに実感させた映画でもあったのだ。
その後、『欲望という名の電車』でジャズが、『007』でバンドが組み込まれ、映画音楽の幅を大きく広げていくことになる。
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間違ったやり方なんてない。正しくなるまで、試し続けるだけだ。
このような形で映画音楽はどんどんと進化していく。1960年代半ばから1970年代初頭が、映画音楽の黄金時代と呼ばれるそうだ。その筆頭格が、ヒッチコックの『めまい』である。この映画は、映画音楽の手本と評されているという。
また同じくヒッチコックの『サイコ』も取り上げられる。恐らく誰もが知っているだろう有名な「シャワーシーン」があるが、『すばらしき映画音楽たち』の中で、この「シャワーシーン」を音楽なしで流す箇所がある。確かにこのシーン、音楽がない状態で聞いてもまったく怖くない。いかに音楽が力を発揮しているか実感できる描写だった。
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ある人物は、この「シャワーシーン」の音楽について、
あんな音楽、映画音楽じゃなきゃ耳障りなだけだ。
と、逆説的な言い方でその効果を大絶賛していた。確かに、映画音楽じゃなければ、とても耳にしたいとは思えない音楽だ。まさに、映像と音楽が紙一重で絡まり合っている見事なシーンだということだろう。
映画音楽の「役割」とは?
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映画音楽の役割について、
音楽は、観客に望みどおりの感情を与える潤滑剤だ。
と語っていた者がいた。まさにこれは、私たちが映画音楽の役割をイメージする際に分かりやすく頭に浮かぶものだろう。音楽に誘導されるような形で、観客は「この場面ではどういう感情になればいいのか」が理解できる。そしてそれは、映画を鑑賞する上での1つのガイドになると言えるだろう。音楽が示す通りの感情を抱く必要はないのだが、「この場面では泣いていい」と確約されていることで安心して泣ける、みたいな効果は間違いなくあると思う。
しかし映画音楽が果たしている役割は決してそれだけではない。
映画に登場する女性科学者が非常に興味深い話をしていた。全体的には、「音楽が脳にどのような影響を与えるのか」という話なのだが、その一環として、「映画を観ている観客の視線」についても語られる。
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映画館の観客は、映画の場面場面で一体どこを見ているだろうか? 観客は様々な趣味趣向を持ち、画面には様々なモノが映っているのだから、「観客ごとに視線を向けている箇所は異なる」と考えるのが自然だと思う。ある観客は主人公に視線を向けるが、別の観客はその背景に映る車を捉えているかもしれない。観客それぞれが画面の様々な箇所を自由に見ている、と考えるのが普通ではないだろうか。
しかし実際に行われた実験では、そんなイメージとは異なる結果が出ているという。つまり、場面場面における観客の視線は、かなり高い確率で一致するというのだ。そして、その効果をもたらすものこそ映画音楽なのである。観客は感情だけではなく、視線さえも音楽によって操られているのだ。
作曲家がそこまで意図して作曲しているのかは分からないが、音楽の持つ力を改めて実感させられる話だった。
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映画音楽の進化・革新
映画音楽はどんどんと新しいものを吸収しながら進化していくが、『ソーシャルネットワーク』でまた新たな革新がもたらされることになった。『ソーシャルネットワーク』の映画音楽がアカデミー賞を受賞したことが1つの契機となり、電子音楽家にもその門戸が開かれることになったのだ。楽器では出せない音をも操る電子音楽家たちの参入により、映画音楽はますます「美しく」かつ「混沌と」していくことになる。
そうやって才能ある者を取り込み続けたことにより、映画音楽の世界は再び、ジョン・ウィリアムズのような天才を輩出することになる。それがハンス・ジマーだ。『ミッション・インポッシブル』『グラディエーター』『ハンニバル』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『インターステラー』など数々の有名作品を手がけてきた天才であり、映画音楽のトップランナーである。
しかしそんな彼も、映画音楽と向き合う際には不安を覚えるという。
恐怖で妄想にかられることもあるし、死ぬほど悩むこともあるけど、でも辞める気はないよ。
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このような奮闘を続ける者がいるからこそ、私たちは楽しく映画を鑑賞できるというわけだ。
しかし、電子音楽が隆盛だからといって、電子音楽に頼りきっているわけではない。『すばらしき映画音楽たち』では、とにかくあらゆるものから「音」を拾おうと試行錯誤する者たちの姿が描かれる。子ども向けアニメの音楽制作に使うために子ども用のおもちゃのピアノを買った者もいるし、世界中の見たことも聞いたこともないような楽器を集めまくっている者もいる。
また、『猿の惑星』で映画業界に衝撃を与えた作曲家は、金属のボウルをゴムボールで叩くことで音を作ったそうだ。それが「その映画、そのシーン」に合っていれば何をしてもいい、まさに「ルールは無い」という世界であり、だからこそ新たな才能が引き寄せられもするのだろう。
非常に奥深い世界だと感じさせられた。
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一級の天才クリエイターたちが、自らの言葉で創作を語る、貴重な記録である。
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