目次
はじめに
著:平谷美樹
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
「どう死にたいか」を考えることは「どう生きたいか」を考えること
「健康なまま死にたい」と考える私は、死ぬ直前まで自分のことは自分でやりたい
この記事で取り上げる本
著:平谷美樹
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ポチップ
この記事の3つの要点
- 「死ぬ直前まで役割がある」という晩年は非常に理想的だと思う
- さらに「死ぬ直前まで役割がある」と、若い頃から理解した上で生きられる「でんでら国」は素晴らしい
- 「1度死んだ」という感覚があるお陰で、楽天的に生きていられる
時代モノ・歴史モノが苦手な私でもスイスイ読めた、メチャクチャ面白い小説です
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私は時々、「どんな死に方が理想的か」について考えるのですが、真っ先に「老衰」は選択肢から外れます。私は「老衰」について、「身体の機能が衰え、今まで出来ていたことが出来なくなった状態で死んでいく」とイメージしていて、それは最も避けたい死に方なのです。
とにかくいつも考えているのは、「身体に不自由を抱えてまで生きていたくないなぁ」ということ
そもそも生きる気力が薄いから、ハードモードの人生だと頑張れないよね
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健康な状態のまま、「自分は死ぬのだろう」と悟ってから死ぬ瞬間までの時間が限りなく短い死に方
がベストだ、ということです。具体的には「事故死」でしょうか。他にも「脳溢血」や、父親の死因である「致死性不整脈」など、「自分は死ぬんだ」とさえ感じられないほど瞬間的に死を迎える、というのが私の理想です。
そして、そう感じてしまう理由には、「自分のためなんかに、誰かの時間を使わせたくない」という感覚があります。「介護」が一番分かりやすいですが、他人の時間を消費してまで生きるのはしんどいなぁ、と私はどうしても感じてしまうのです。
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だからとにかく、「健康なまま死にたい」といつも思っています。長生きには興味ありませんが、「健康なまま死ぬ」ために、健康に良さそうな食べ物を食べたりするほどです。
そんな考え方、まったく理解できないという人も多いでしょうが、共感できる人も多少はいると思います。実際、こういう話を身近な人間にしてみると、半々とまでは言いませんが、多少なりとも私の考えに賛同してくれる人もいるからです。
もちろん、実際に自分が「死」に直面するようなことになったら、考え方は変わるかもしれないけどね
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「どう死ぬか」は「どう生きるか」を考えること
でんでら国の爺婆たちは、生き生きと生き、そして生き生きと死んでいく
「生き生きと死んでいく」というフレーズは、なかなか面白いでしょう。小説の設定や中身については後で触れますが、本書『でんでら国』では、「死ぬ直前まで、コミュニティの中で役割が存在する」という世界が描かれます。
特徴的なのは、怪我をしたり、身体が弱っていたりする人間にも、きちんと役割があるということです。
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私が「健康なまま死にたい」と考える理由は、今の世の中に対して「健康ではない人間が担える役割が限られている」と感じるからです。病気で長く仕事を休んだり、怪我をして働けなくなったり、障害を負って不自由さを抱えてしまったりすると、どうしても「出来ること」が減ってしまいます。さらにそれだけではなく、介護や介助など、他人の手を借りなければならない状況に陥ってしまうわけです。
私はどうしても、そういう状況が得意ではありません。まあ得意な人なんかいないでしょうが、特に私は、いわゆる「貸し借り」の「借り」が多くなってしまうと、心苦しくなって自滅してしまうのです。それが善意からのものであれ、お金が介在するものであれ、「誰かに何かをしてもらってばっかり」という状態はあまりに辛いですし、耐えられる自信がありません。
「物を借りる」ってのもあんまり好きじゃないから、「借りる」っていう状態が全体的にダメなんだろうなぁ
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もし自分が、怪我や病気あるいは老いなどによって、それまで出来ていたことが出来なくなったとして、それでも何か役割がある、と信じられる世の中であれば、自分が弱っていく現実や、身体の不自由さを抱えながら死に向かっていく状況も許容できるかもしれません。
ただ今はそういう社会ではない以上、やはり私は「健康なまま死にたい」という感覚を捨て去ることはできないだろうなぁ、と思います。
こんな風に私にとって、「どんな風に死にたいか」を考えることは、「自分はどんな風に生きている状態が好ましいのか」を考えることに繋がっていくわけです。皆さんそうではないでしょうか。
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「でんでら国」は理想的な環境
この作品で描かれる「でんでら国」には爺婆しかいません。60歳になったら、それまで住んでいた村を去り、「でんでら国」に移り住むと決まっています。そしてその共同体の中で、それぞれが死を迎えるまで重要な役割を担うことになるわけです。
「でんでら国」の素晴らしい点は、「60歳になったら必ず『でんでら国』に移り住むと決まっていること」でしょう。そして誰もが、「『でんでら国』には自分が果たすべき役割がきちんとある」と理解しています。
つまり「若い頃から、『死ぬ直前まで、自分にはきちんと役割がある』と思って生きることができる」というわけです。
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これは非常に理想的な環境と言えるのではないかと私は思います。
普通、人生の晩年を自分がどんな風に過ごしているかなど、なかなか想像できないものです。65歳で「ケンタッキーフライドチキン」を創業したカーネル・サンダースのように、晩年こそ輝く人もいるでしょう。しかし逆に、若い頃はバリバリ働いていても、定年を迎えたら友達もいない寂しい老後を過ごすかもしれません。
しかし「でんでら国」の場合には、身体が弱っても病気をしても、死ぬまで自分にはきちんと役割があると、若い頃から信じて生きていられます。これは非常に重要なポイントではないでしょうか。
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日本は、世界に先駆けて「超高齢化社会」を迎えようとしています。社会が激変する中、「でんでら国」のような共同体のあり方は、1つの理想に据えてもいいのではないかと感じるのです。
少しずつですが、「お金があっても、幸せとは限らない」という価値観が広まりつつあるのではないかと思っています。しかし、「じゃあどうなれば幸せなんだ?」という部分は、まだまだ探り探りといったところでしょう。「死ぬ直前まで、コミュニティの中で役割が存在する」という生き方は、その答えの1つになり得るのではないかと考えています。
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平谷美樹『でんでら国』の内容紹介
舞台は幕末の東北、陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた大平村。ここには、「60歳を迎えた者は『御山参り』をする」という習わしがあった。「御山参り」とは、山奥へと自ら分け入り、二度と郷には戻らない、というものだ。
近隣の村は「姥捨てだ」と考え、大平村のこの風習を嫌っていた。しかし、身分の低いものは生きていくのがやっとであり、近隣の村では飢饉の際に子どもを殺すこともある時代だ。「御山参り」を非難するのはお門違いとも言える。
さて、「姥捨て」と非難される「御山参り」だが、実態はまったく違う。彼らが向かう先には、「でんでら国」と名付けた別の共同体が存在しているのだ。そこには60歳以上の者しかおらず、そこで皆新たな生活を始めることになる。「でんでら国」の存在は秘密であり、そこで作られた米には当然税が掛からない。だからこそ飢饉の折には、苦しい大平村に「でんでら国」で作った米を届けて助けたりもしている。「大平村」「でんでら国」双方にとってメリットのある仕組みなのだ。
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そんな大平村と「でんでら国」を繋ぐのが<知恵者>である。大平村との調整役がいないと不便だということで、若手が<知恵者>と呼ばれる役割を担い、情報交換や物資のやり取りなどを補助しているのだ。
若い頃から<知恵者>の役割を担ってきた善兵衛もついて60歳を迎え、「御山参り」へと向かう。
一方、外館藩の別段廻役(警察のような役人)である船越平太郎は、代官の田代から内密の頼まれごとを受ける。穏田探しだ。穏田とは、藩に届け出をせずに税を逃れている田んぼのことを指す。外舘藩は南部藩から内々に御用金の調達を命じられたのだが、そんな金があるはずもない。だからこそ穏田を見つけ、税を取り立て、御用金に充てようという腹だ。
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しかし、穏田があると確信を持っているわけではない。何しろ、申告せずに開墾した田んぼで米を作っていることが露見すれば死罪、という時代だ。おいそれと出来ることではない。
しかし田代には引っかかる記憶があった。5年前の大飢饉の際、周辺の村が損耗を届け出たのに対し、大平村だけではきっちりと税を納めたのだ。「姥捨て」して村人を減らしているとはいえ、それだけで説明がつけられるような額ではない。
となれば、どこかに穏田があると考えるしかないではないか。
こうして、「でんでら国」の存在を秘密にしたい大平村と、御用金の調達のためにどうしても穏田を見つけなければならないお上との、壮絶な知恵比べが始まる。
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平谷美樹『でんでら国』の感想
とにかくべらぼうに面白い作品でした。私は、歴史モノ・時代モノの小説は正直あまり得意ではないのですが、この作品は、そんな苦手意識も吹っ飛ぶほどスイスイ読め、真剣なのにどこか間の抜けたバトルに爆笑させられてしまいました。
冒頭であれこれ書いたように、まず何よりも「でんでら国」という設定が見事だと思います。存在を秘すことで窮地の際に助け合ったり、60歳で再び「新入り」に逆戻りしたり、60歳以上の者だけで共同体を成立させるためにその成員すべてに役割があるなど、良い事づくしだと感じました。
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本来的には、「お上の目を盗んで米を作る」という目的のために生まれた「でんでら国」ですが、結果としてある種の「理想郷」としての性質を備えることになった、という設定は、非常に秀逸だと思います。
お上に「怪しい」って勘付かれたのが、「飢饉の時に税を全部払った」ってのも面白いよね
良かれと思ってやったことが逆効果だった、ってことだもんなぁ
冒頭からしばらくの間は、「でんでら国」の設定と別段廻役である船越平太郎の事情が描かれるわけですが、いざ「穏田探し」が始まると、「でんでら国VSお上」のバトルがひたすらに展開されていくことになります。
このバトルがとにかく面白いのです。
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両者が知恵比べのような形で相手に迫っていくわけですが、しかし普通に考えればお上が有利に決まっています。当時は農民の地位がとても低く、お上に楯突くなどもってのほか、という時代なので、対等な闘いには成りえないように感じてしまうでしょう。
しかし決してそんなことはありません。何故なら「でんでら国」には、「これまでずっとお上にバレないように『でんでら国』を運営してきた」という経験を踏まえた知恵や度胸があるからです。彼らは、いずれ「でんでら国」の存在に勘付かれる可能性についてもあらかじめ検討しており、先回りして様々な準備をしてきました。だからこそ、どう考えても不可能としか思えない闘いを、互角に持ち込むことができているわけです。
またもう1つ、「でんでら国」側の強みを挙げることができます。彼らが自分たちのことを「1度死んだ人間」と捉えているということです。
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そんな彼らの闘いは、物語の展開と共にどんどんと予測不可能なものになり、最終的には「そんなアホな」という流れになっていきます。ただそんな奇妙奇天烈な展開さえも、「でんでら国」はあらかじめ想定し準備していた、という点が非常に面白いと感じられました。
お上を敵に回す農民が使える武器は「知恵」だけです。そんな「知恵」をフル活用し、やれるだけのことをやりきるというスタンスで闘いに挑む者たちの奮闘を是非楽しんでください。
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著:平谷美樹
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ただ、机上の空論だろうが砂上の楼閣だろうが、「どう死にたいか」を通して「どう生きたいか」を考えられることは間違いないでしょう。そういう意味で、イメージが遠くても「死」について考えてみることは、無意味なことではないと私は考えています。
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東日本大震災やコロナ禍などの”激変”を経る度に、「どう生きるべきか」と考える機会が増えるのではないだろうか。『いま、地方で生きるということ』は、「どこででも生きていける」というスタンスを軸に、「地方」での著者自身の生活を踏まえつつ、「人生」や「生活」への思考を促す
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【危機】災害時、「普通の人々」は冷静に、「エリート」はパニックになる。イメージを覆す災害学の知見…
地震やテロなどの大災害において、人々がどう行動するのかを研究する「災害学」。その知見が詰まった『災害ユートピア』は、ステレオタイプなイメージを一変させてくれる。有事の際には市民ではなくエリートこそが暴走する。そしてさらに、災害は様々な社会的な変化も促しもする
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【人生】仕事がつまらない人へ、自由な働き方・生き方のための「月3万円しか稼げないビジネス」指南:『…
SDGsが広がる世界で、「生活スタイルを変えなければならない」と理解していても、それをどう実践すべきかはなかなか難しいところでしょう。『月3万円ビジネス』で、「『仕事』と『生活』を密着させ、『お金・エネルギーの消費を抑える過程を楽しむ』」生き方を知る
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【驚異】『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』って書名通りの本。異端ロックバンドの”稼ぎ方”
日本ではあまり知られていないが、熱狂的なファンを持つロックバンド「グレイトフル・デッド」。彼らは50年も前から、現代では当たり前となった手法を続け、今でも年間5000万ドルを稼いでいる。『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』で「ファンからの愛され方」を学ぶ
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【喪失】家族とうまくいかない人、そして、家族に幻想を抱いてしまう人。家族ってなんてめんどくさいの…
「福島中央テレビ開局50周年記念作品」である映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、福島県に実在した映画館「朝日座」を舞台に、住民が抱く「希望(幻想)」が描かれる。震災・コロナによってありとあらゆるものが失われていく世の中で、私たちはどう生きるべきか
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【評価】映画『シン・ゴジラ』は、「もしゴジラが実際に現れたら」という”現実”を徹底的にリアルに描く
ゴジラ作品にも特撮映画にもほとんど触れてこなかったが、庵野秀明作品というだけで観に行った『シン・ゴジラ』はとんでもなく面白かった。「ゴジラ」の存在以外のありとあらゆるものを圧倒的なリアリティで描き出す。「本当にゴジラがいたらどうなるのか?」という”現実”の描写がとにかく素晴らしかった
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【民主主義】占領下の沖縄での衝撃の実話「サンマ裁判」で、魚売りのおばぁの訴えがアメリカをひっかき…
戦後の沖縄で、魚売りのおばぁが起こした「サンマ裁判」は、様々な人が絡む大きな流れを生み出し、最終的に沖縄返還のきっかけともなった。そんな「サンマ裁判」を描く映画『サンマデモクラシー』から、民主主義のあり方と、今も沖縄に残り続ける問題について考える
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【生き方】人生が虚しいなら映画『人生フルーツ』を見ると良い。素敵な老夫婦の尖った人生がここにある
社会派のドキュメンタリー映画に定評のある東海テレビが、「なんでもない老夫婦の日常」を映画にした『人生フルーツ』には、特に何が起こるわけでもないのに「観て良かった」と感じさせる強さがある。見た目は「お年寄り」だが中身はまったく古臭くない”穏やかに尖った夫婦”の人生とは?
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【傑作】濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』(原作:村上春樹)は「自然な不自然さ」が見事な作品
村上春樹の短編小説を原作にした映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)は、村上春樹の小説の雰囲気に似た「自然な不自然さ」を醸し出す。「不自然」でしかない世界をいかにして「自然」に見せているのか、そして「自然な不自然さ」は作品全体にどんな影響を与えているのか
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【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
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「朝三暮四」の故事成語を意識した「サル化」というキーワードは、現代性を映し出す「愚かさ」を象徴していると思う。内田樹『サル化する世界』から、日本の教育・政治の現状及び問題点をシンプルに把握し、現代社会を捉えるための新しい視点や価値観を学ぶ
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【協働】日本の未来は福井から。地方だからこその「問題意識の共有」が、社会変革を成し遂げる強み:『…
コンパクトシティの先進地域・富山市や、起業家精神が醸成される鯖江市など、富山・福井の「変革」から日本の未来を照射する『福井モデル 未来は地方から始まる』は、決して「地方改革」だけの内容ではない。「危機意識の共有」があらゆる問題解決に重要だと認識できる1冊
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私は、それがポジティブなものであれ、「レッテル」で見られることは嫌いです。主人公の1人、障害を持つ大富豪もまたそんなタイプ。傍若無人な元犯罪者デルとの出会いでフィリップが変わっていく『THE UPSIDE 最強のふたり』からコミュニケーションを学ぶ
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お笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世は、“神童”と呼ばれるほど優秀だったが、“うんこ”をきっかけに6年間引きこもった。『ヒキコモリ漂流記』で彼は、ひきこもりに至ったきっかけ、ひきこもり中の心情、そしてそこからいかに脱出したのかを赤裸々に綴り、「誰にも優しい世界」を望む
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【絶望】光過敏症の女性の、真っ暗な部屋で光という光をすべて遮断しなければ生きられない壮絶な日常:…
日光に限らず、ありとあらゆる「光」に肌が異常に反応してしまうため、ずっと真っ暗闇の中でしか生きられない女性が、その壮絶すぎる日常を綴った『まっくらやみで見えたもの 光アレルギーのわたしの奇妙な人生』から、それでも生きていく強さを感じ取る
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【実像】ベートーヴェンの「有名なエピソード」をほぼ一人で捏造・創作した天才プロデューサーの実像:…
ベートーヴェンと言えば、誰もが知っている「運命」を始め、天才音楽家として音楽史に名を刻む人物だが、彼について良く知られたエピソードのほとんどは実は捏造かもしれない。『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が描く、シンドラーという”天才”の実像
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「常識的な捉え方」から逸脱し、世の中をまったく異なる視点から見る坂口恭平は、「より生きやすい社会にしたい」という強い思いから走り続ける。「どう生きたいか」から人生を考え直すスタンスと、「やりたいことをやるべきじゃない理由」を『独立国家のつくりかた』から学ぶ
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「北九州連続監禁殺人事件」という、マスコミも報道規制するほどの残虐事件。その「主犯の息子」として生きざるを得なかった男の壮絶な人生。「ザ・ノンフィクション」のプロデューサーが『人殺しの息子と呼ばれて』で改めて取り上げた「真摯な男」の生き様と覚悟
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東日本大震災発生直後からカメラを回し、被災地の現実を切り取ってきたテレビ岩手。「分かりやすさ」が優先されるテレビではなかなか放送できないだろう映像を含め、「分かりにくい現実」を切り取った映像で構成する映画『たゆたえども沈まず』は静かな衝撃をもたらす作品
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【あらすじ】子どもは大人よりずっと大人だ。「子ども扱い」するから、「子どもの枠」から抜け出せない…
宮部みゆき『ソロモンの偽証』は、その分厚さ故になかなか手が伸びない作品だろうが、「長い」というだけの理由で手を出さないのはあまりにももったいない傑作だ。「中学生が自前で裁判を行う」という非現実的設定をリアルに描き出すものすごい作品
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【貢献】働く上で大切にしたいことは結局「人」。海士町(離島)で持続可能な社会を目指す若者の挑戦:…
過疎地域を「日本の未来の課題の最前線」と捉え、島根県の離島である「海士町」に移住した2人の若者の『僕たちは島で、未来を見ることにした』から、「これからの未来をどう生きたいか」で仕事を捉える思考と、「持続可能な社会」の実現のためのチャレンジを知る
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元気で明るくて楽しそうな人ほど「傷」を抱えている。そんな人をたくさん見てきた。様々な理由から「傷」を表に出せない人がいる世の中で、『包帯クラブ』が提示する「見えない傷に包帯を巻く」という具体的な行動は、気休め以上の効果をもたらすかもしれない
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【理解】東田直樹の本は「自閉症の見方」を一変させた。自身も自閉症児を育てるプロデューサーが映画化…
東田直樹の著作を英訳し世界に広めた人物(自閉症児を育てている)も登場する映画『僕が跳びはねる理由』には、「東田直樹が語る自閉症の世界」を知ることで接し方や考え方が変わったという家族が登場する。「自閉症は知恵遅れではない」と示した東田直樹の多大な功績を実感できる
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【現実】生きる気力が持てない世の中で”働く”だけが人生か?「踊るホームレスたち」の物語:映画『ダン…
「ホームレスは怠けている」という見方は誤りだと思うし、「働かないことが悪」だとも私には思えない。振付師・アオキ裕キ主催のホームレスのダンスチームを追う映画『ダンシングホームレス』から、社会のレールを外れても許容される社会の在り方を希求する
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【実話】「家族とうまくいかない現実」に正解はあるか?選択肢が無いと感じる時、何を”選ぶ”べきか?:…
「自分の子どもなんだから、どんな風に育てたって勝手でしょ」という親の意見が正しいはずはないが、この言葉に反論することは難しい。虐待しようが生活能力が無かろうが、親は親だからだ。映画『MOTHER マザー』から、不正解しかない人生を考える
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【感想】「献身」こそがしんどくてつらい。映画『劇場』(又吉直樹原作)が抉る「信頼されること」の甘…
自信が持てない時、たった1人でも自分を肯定してくれる人がいてくれるだけで前に進めることがある。しかしその一方で、揺るぎない信頼に追い詰められてしまうこともある。映画『劇場』から、信じてくれる人に辛く当たってしまう歪んだ心の動きを知る
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【正義】マイノリティはどう生き、どう扱われるべきかを描く映画。「ルールを守る」だけが正解か?:映…
社会的弱者が闘争の末に権利を勝ち取ってきた歴史を知った上で私は、闘わずとも権利が認められるべきだと思っている。そして、そういう社会でない以上、「正義のためにルールを破るしかない」状況もある。映画『パブリック』から、ルールと正義のバランスを考える
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TVアニメは観ていない、というかその存在さえ知らず、物語や登場人物の設定も何も知らないまま観に行った映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』に、私は大号泣した。「悪意のない物語」は基本的に好きではないが、この作品は驚くほど私に突き刺さった
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「ルールは守らなければならない」というのは大前提だが、常に例外は存在する。どれほど重度の自閉症患者でも断らない無許可の施設で、情熱を持って問題に対処する主人公を描く映画『スペシャルズ!』から、「ルールのあるべき姿」を考える
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世界最高峰の辞書である『オックスフォード英語大辞典』は、「学位を持たない独学者」と「殺人犯」のタッグが生みだした。出会うはずのない2人の「狂人」が邂逅したことで成し遂げられた偉業と、「狂気」からしか「偉業」が生まれない現実を、映画『博士と狂人』から学ぶ
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【素顔】「ヨコハマメリー史」から「伊勢佐木町史」を知れる映画。謎の女性が町の歴史に刻んだものとは…
横浜で長らく目撃されていた白塗りの女性は、ある時から姿を消した。彼女の存在を欠いた伊勢佐木町という街は、大きく変わってしまったと語る者もいる。映画『ヨコハマメリー』から、ある種のアイコンとして存在した女性の生き様や彼女と関わった者たちの歴史、そして彼女の”素顔”を知る
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「優しいかどうか」が重要な要素として語られる場面が多いと感じるが、私は「優しさ」そのものにはさしたる意味はないと考えている。映画『心の傷を癒すということ 劇場版』から、「献身」と「優しさ」の違いと、誰かに寄り添うために必要な「弱さ」を理解する
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人類は、コレラの蔓延を機に公衆衛生に力を入れ、寄生虫を排除した。しかし、感染症が減るにつれ、免疫関連疾患が増大していく。『寄生虫なき病』では、腸内細菌の多様性が失われたことが様々な疾患の原因になっていると指摘、「現代病」の蔓延に警鐘を鳴らす
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2人を殺し、7人に重傷を負わせた金川真大に同情の余地はない。しかし、この事件を取材した記者も、私も、彼が殺人に至った背景・動機については理解できてしまう部分がある。『死刑のための殺人』をベースに、「どうしようもないつまらなさ」と共に生きる現代を知る
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ガンを患い、余命宣告され、もう治療の手がないと言われれば絶望を抱くだろう。しかし医師は、治療しない方が長生きできることを知って提案しているという。現役医師・久坂部羊の小説『悪医』をベースに、ガン治療ですれ違う医師と患者の想いを知る
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AIが台頭する未来で生き残るのは難しい……。落合陽一『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ~』はそう思わされる一冊で、本書は正直、未来を前向きに諦めるために読んでもいい。未来を担う若者に何を教え、どう教育すべきかの参考にもなる一冊。
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