目次
はじめに
この記事で取り上げる映画

「型破りな教室」公式HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧ください
この記事の3つの要点
- 「6年生の半数が卒業出来ないかもしれない学校」に主人公が赴任してすぐ、全国テストで驚異の成績を叩き出し、全国1位も輩出したという信じがたい物語
- しかし主人公は最後まで「試験対策などしない」と言い張り、「考えさせる授業」を行い続けた
- 他の教師の賛同が得られない中でも孤軍奮闘を続ける主人公の努力や葛藤に心打たれる
教師だけではなく、親や今まさに教育を受けている子どもたち自身も観るべき良作だと思う
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
メキシコ最底辺の小学校で”あり得ない”成果を挙げた教師の孤軍奮闘を描く映画『型破りな教室』は、「実話を基にしている」という事実にとにかく驚かされる
実に素晴らしい映画だった。正直、ちょっと泣いてしまうぐらいに感動させられたし、何よりも、これが実話だというのが本当に凄まじい。「教育って何だっけ?」と改めて考える良いきっかけにも素敵な参考にもなる作品であり、是非多くの人に観てほしいなと思う。
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本作ではラストで、アインシュタインによるよく知られた名言が表示される。
私の学習を妨げた唯一のものは、私が受けた教育である。
本作の主人公であるフアレスは、まさにそうならないための「教育」を実践しようとした。そして、見事それをやり遂げたのである。教育を与える側も受ける側も共に知っておくべき知見に溢れた作品だと言っていいし、アインシュタインの名言と共にフアレスの奮闘も記憶されるべきだと思う。
主人公である小学校教師フアレスが叩き出したとんでもない成果
それではまず、本作の主人公である小学校教師フアレスが一体どんな成果を成し遂げたのかについて、数字を踏まえつつ確認していくことにしよう。
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彼が教師として赴任したのは、アメリカとの国境付近の町マタモロスにあるホセ・ウルビナ・ロペス小学校である。メキシコには「ENLACE」と呼ばれる全国共通テストが存在するのだが、この小学校の平均点は毎年最低レベルだった。しかしそれも仕方ないだろう。なにせ町の治安は著しく悪く、銃撃戦が日常茶飯事なのだ。もちろん貧しい者も多く、児童の1人は父親と2人でゴミ山に暮らし、ゴミを拾って生計を立てているほどである。なんと、「6年生の半数以上が卒業できないかもしれない」というレベルなのだ。
そんな学校だから、もちろん教師も赴任したがらない。恐らく公立校であり、だから公立校の教師であれば誰もがこの学校に送られる可能性があるのだが、なんと教師たちの間でこの小学校は「罰の学校」と呼ばれている。もし赴任が決まったら「罰」みたいなものというわけだ。さらにこの小学校の教師たちは、「生きてりゃ採用(つまり「誰でも採用される」ということ)」なんて冗談とも言い切れない冗談を言うほどである。
さて、本作では実際の試験の結果が表示されるのだが、フアレスが赴任する前年の「ENLACE」の成績は、「数学:55%合格 国語69%合格」だった。細かな仕組みは分からないものの、恐らく「設定された『合格点』を超えた児童が何%いるか」という数字なのだと思う。そしてフアレスが赴任した年はなんと、「数学:93%合格 国語:97.5%合格」(恐らくこれは学校全体ではなく、フアレスのクラスの成績だと思われる)という、尋常ではない伸びを示したのである。さらに、数学の成績で全国順位0.1%以内に入った児童がなんと10人もいたというのだ。
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しかし驚くのはまだ早い。なんと、この試験で全国1位を獲得したのがフアレスのクラスの生徒だったのだ。映画の最後に表示された字幕によれば、この快挙は国中で大きな話題となり、家が贈られた(恐らく国から)という。そりゃあみんなたまげただろう。なにせ、前年まで最底辺だった学校の平均点が一気に上がり、さらに全国1位の生徒まで出したのだから。
これが、「フアレスが叩き出した成果」である。
しかしあくまでもこれは結果論でしかない。というのも、フアレスは試験直前まで「ENLACE対策のために勉強するなんて馬鹿げている」という姿勢を崩さなかったのだ。フアレスの学校では(あるいはメキシコの学校はどこもそうかもしれないが)、「ENLACEで良い点数を取るための試験対策」に多くの時間を費やす。恐らく、補助金やら何やらに関係しているからだろう。しかしフアレスは「ENLACEのための勉強」など一切行わなかった。あくまでも「子どもたちの未来のために必要」だと信じる教育をやり続けただけなのだ。
それはざっくり言えば「『自分の頭で考える力』を養うための教育」であり、だからフアレスの教育が結果としてENLACEにも良い影響を与えたことは間違いないと思う。ただ、「全国1位」はフアレスにとって超が付くほどのラッキーだっただろう。ムチャクチャ頭の良い児童がたまたまクラスにいただけだからだ。ただし、その児童には色々あって、昔なら「ENLACE」を受けていなかったはずなので、だから「フアレスのお陰」であることは間違いない。というか実際には、フアレスはその児童に対してより深く関わっているわけで、その辺りのことは是非映画を観てほしいなと思う。
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何にせよ、結果が出れば注目されるし信頼もされる。個人的にはフアレスの教育方針には大賛成なので、ラッキーだろうが何だろうが、世間をざわつかせるほどの結果を出したことによってフアレスの教育がやりやすくなったのであれば、それは素晴らしいことだと思う。
主人公フアレスは一体どんな授業をしていたのか?
フアレスは試験の直前、自分のクラスの児童たちに次のような言葉をかけていた。
私は君たちに十分教えることが出来ていないかもしれない。しかし、君たちなら大丈夫だ。これまでずっと「初めて知る問題」に取り組み続けてきた君たちなら、初見の問題であっても、考えれば絶対に解けるはずだ。
先述した通り、彼が徹底して行っていたのは「児童に自ら考えさせること」である。というわけで、例として映画冒頭で提示される「授業」の説明をしようと思う。
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フアレスはまず、児童が来る前の教室から机と椅子を外に出し、広い空間を作った。そして、やってきた児童たちにこんな風に問うのである。
ここは海で、船が転覆した。救命ボートは5つ、乗組員は23人、さぁどうやって分かれて乗る?
さて、映画冒頭のこのシーンはフアレスが赴任してきて初めての授業であり、だから児童たちの反応は薄かった。というか、何をすればいいのか分からなかったのだと思う。そして、そうなってしまうのも仕方ないだろう。そもそもこの学校の教師は、児童を「管理すべき存在」としか見ておらず、フアレスは同僚の教師から「弱みを見せたらダメだ。誰がボスか分からせろ」みたいな”アドバイス”をもらったほどだ。また教頭に当たるような人なのだろう、ある教師から「教室に机が無いと誰が偉いか分からない」みたいにして暗に「机と椅子を外に出すなよ」と言われてしまったのである。そんな学校にいれば「自主性」など育つはずもないし、フアレスの「授業」に戸惑うのも当然だろう。
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しかし、そんな「授業」を何度か続けていると、児童たちも次第に慣れてくる。そしてある日、同じようにして船の転覆の実演をしているところに校長が通りかかった。見慣れない光景を目にした校長が教室に入ってくると、フアレスは「新たな遭難者だ!」と声を掛け、児童たちを焚きつける。彼らはどうにか校長をボートに載せようとするのだが、ある児童が咄嗟に「ダメダメ!ボートが沈んじゃう!」と口にした。校長はかなり太っているのだ。
そのタイミングでフアレスは、「お、今良い疑問が出てきたぞ。『校長が乗るとボートが沈む』と誰か言ったな。じゃあそもそも、どうして船は浮かんでいられるんだ?」と問うのである。
そこからは「船が浮かぶ問題」について、フアレスが先導する形であれこれ議論を重ねるのだが、しばらくして児童たちが活発に意見を出し合う様子を見たフアレスは、「俺は必要ないようだな」と言って教室を出てしまう。「ちょっと飲み物を買ってくるから、30分後ぐらいに戻るよ」なんて言いながら。しかし内心はとても不安だった。やはりフアレスは、「子どもたちだけでちゃんと議論になっているか」が心配だったのだ。彼は教室に戻るべきか何度も逡巡しながら、しかし結局、子どもたちを信じて戻らなかった。
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そして、その間にフアレスは、校長室へと向かう。恐らくだが、フアレス自身も「船が浮かぶ問題」についてちゃんと答えられなかったのだと思う。そこで、学校で唯一のパソコンがある校長室へと行き、ネットで答えを調べようとしたのである。しかし結局、校長はパソコンを使わせてくれなかった。そんな30分を過ごした後で教室に戻ってみると、素晴らしいことに班ごとに議論が白熱し、お互いにプレゼンまでするほどになっていたのである。子どもたちを信じてすべて任せたのが正解だったというわけだ。
とはいえ、「自分で考えさせる」という教育方針には「そうせざるを得なかった」みたいな側面もあったと思う。教育環境があまりにも酷かったのだ。学校内に図書館はあるものの、蔵書はスカスカで百科事典は巻抜けしている。さらに、「哲学書が読みたい」と口にする児童に対し、「あなたの年齢ではまだ読む必要なんかないでしょう」と司書が言ったりもするのだ。最悪すぎるだろう。さらに、「パソコン教室」は存在するものの、設置してから僅か2ヶ月ですべてのパソコンが盗まれてしまい、そのまま4年間放置されている。また、本作の舞台は2011年であり、メキシコではまだそこまでスマホは普及していなかったようだ。校長はスマホを持っていたが、フアレスも児童の多くも持っていなかったと思う。このように、とにかく「情報を得るのが難しい環境」だったのである。そのため、「思考のみによって『正しさ』を導き出そう」という教育方針にせざるを得なかったという側面もあるんじゃないかという気がした。
そしてそのお陰で、子どもたちは飛躍的に成長していったのだ。
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「教育」は本当に大事だと思うし、もっと社会全体で考えるべき課題だとも感じた
こういう「『考える力』を養う」的な話で真っ先に思い浮かぶのが、以前読んだ『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』(村松秀/講談社)である。かつてNHKで『すイエんサー』という番組が放送されており(私は見たことがない)、そのプロデューサーが書いた本だ。
著:村松秀, イラスト:五月女ケイ子
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『すイエんサー』というのは、決して知力に秀でているわけではない女子高生アイドルを集め、彼女たちにある「お題」を提示し、そして「考え続けること」によって「答え」に辿り着くまでの過程を映し出す番組である。そして番組では、そんな女子高生アイドルたちが大学生と対決するという展開にまで発展し、なんと「与えられたお題でより優れた知見を導き出す」という知力勝負で有名大学の学生に勝利を収めるほど成長していくのである。
このエピソードだけを以って「知識より思考力の方が大事だ」と主張するのは乱暴だが、ただやはり、多くの人が「知識を覚えるだけじゃダメ」みたいな感覚を持っているんじゃないかとも思う。個人的には、「知識も大事だ」と言っておきたいところなのだが(「思考力」を正しく駆使するには「知識」が必要になるはずだ)、いずれにせよ、より重要なのは「思考力」の方だと考えている。メキシコに今も「ENLACE」が存在するのかは知らないが、「知識を持っているかどうかを測るテスト」など、本当に無意味だと私は思う。
とはいえ私は、「試験一発勝負で大学の合否が決まる」という日本みたいな仕組みは良いと思っている(出自や家庭環境などに“あまり”左右されずに、努力で差が付きやすいから)。そして、社会もそれを求めているのなら、まだまだ「知識を詰め込む教育」が続くのだろうが、しかし少しずつ変わってはいくだろう。例えば私は、ここ10年ぐらい新聞に掲載されているセンター試験(共通テスト)を解いているのだが、2~3年前ぐらいから、英語がすべて長文読解になったことに驚かされた。私がセンター試験を受けた頃は、「発音問題」や「単語を並び替えて長文を組み立てる問題」などがあったのだが、今はそういうものは一切なく、最初から最後まで長文読解のみなのである。これははっきりと、「知識を問うことを止めた」と受け取れる事例だと思う。そしてそういう方向性は、これからますます鮮明になっていくんじゃないだろうか。
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だからこそ、本作で示されているような教育は非常に重要になっていくはずだと思っている。
さて、本作には印象的なシーンが色々あったのだが、個人的に一番好きだったのは、フアレスが同僚の教師と話している場面でのやり取りだ。2人はお互いの教育方針がまったく違うことを会話から理解するのだが、その後でフアレスがその同僚教師に、「教師が子どもに言える最強の言葉って何か知ってるか?」と問う。これはとても面白い問いなので、皆さんも少し考えてみてほしい。あなたがもし教師だとしたら、何と答えるだろうか?
こう問われた同僚教師は、「知らない」と答えた。この「知らない」は「考える気もない」みたいなニュアンスを含むものであり、「お前の相手なんかしてられるか」という雰囲気すら感じさせるものだったのだが、面白いことにフアレスはこの同僚教師の返答に「正解」と返したのだ。意味が分かるだろうか? つまり、「『知らない』こそ、教師が子どもに言える最強の言葉である」というわけだ。「教える側が『知らない』と口にする勇気を持つこと」こそがこれからの「教育」に必要だと説いているわけで、これはとても印象的なやり取りだった。
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フアレスが本当にそう思っていることは、「ENLACE」の直前に児童たちに声がけしたシーンからも理解できるだろう。彼は「僕は君たちからたくさんのことを学んだ」と言っていたのだ。また彼は児童たちに、様々な機会を捉えては「君が学んだことを他の人にも共有してくれ。それこそが学びになるから」とも話していた。「教師は『知っている人』、児童は『知らない人』」みたいに分けるのではなく、「『知っている人』が『知らない人』に教えればいいよね」というスタンスなのであり、その上でフアレス自身も積極的に「知らない人」になれるというわけだ。これは教師だけではなく、子育て中の親の振る舞いとしても重要ではないかと感じさせられた。
しかし、本作を観て改めて思ったのは、「良い教師に出会えるかどうかで人生は結構大きく変わるよな」ということだ。大人になれば「誰から学ぶか」を自ら選べる機会も多いだろうが、子どもの頃はなかなかそうはいかない。特に、「お受験」と無縁であれば、小中学校は住んでいる地域でほぼ決まってしまうはずだ。なので、良い教師(というか「自分と合う教師」)と出会えるかは、本当に運でしかない。
ただ、「教師・教育全体の質を高める」ことが出来れば、良い教師に出会える確率は高まると言えるだろう。そして、「教師・教育全体の質を高める」ことは社会全体の課題であると私は思う。「親ガチャ」は本当に運以外の何物でもないが、「教師ガチャ」に関しては、社会全体で頑張れば「ハズレの可能性」を低くすることは可能なはずだ。私は別に結婚していないし子どももいないが、それでも、「国のお金」はもっと子どもに注ぎ込むべきだと思っている。フアレスみたいな教師がそこかしこにいれば、それだけで「教育」は豊かになるだろうし、教育環境全体の底上げにも寄与するだろう。
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最後に
この記事では「教育」についてあーだこーだ書いただけで、映画の内容にはあまり触れなかったが、エンタメ的な意味でも楽しく観られる作品ではないかと思う。実話を基にしているとはちょっと信じられないようなストーリーと、最底辺の学校で孤軍奮闘するフアレスの闘いぶりを、是非体感してほしい。
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