【あらすじ】のん(能年玲奈)が実に素敵な映画『私にふさわしいホテル』が描く文壇の変な世界(監督:堤幸彦、原作:柚木麻子、主演:のん、田中圭、滝藤賢一、田中みな実)

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

監督:堤幸彦, プロデュース:田代蔦, プロデュース:平部隆明, Writer:川尻恵太, 出演:のん, 出演:田中圭, 出演:滝藤賢一, 出演:田中みな実, 出演:服部樹咲, 出演:髙石あかり, 出演:橋本愛, 出演:若村麻由美
いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

この記事で伝えたいこと

「非リアル」な演技をしていても成立させてしまうのん(能年玲奈)の凄さ

犀川後藤

ホントに、こんな雰囲気を醸し出せる役者はなかなかいないだろうなと思う

この記事の3つの要点

  • 単行本デビューも出来ていない新人作家が、一発逆転をかけて大御所に仕掛ける無謀な”罠”
  • 最初から最後まで「そうはならんやろ」という展開ながら、面白く観させられてしまうコメディ
  • 出番は少ないものの、絶妙に素敵だった髙石あかり・橋本愛の存在感
犀川後藤

彼女が出演している作品を観る度に感じることですが、やっぱりのんは素敵だなぁと思います

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

「文壇って変!」って言いたくなるような世界が描かれる映画『私にふさわしいホテル』は、やっぱりのん(能年玲奈)がとても素敵だった

本作は、物語全体としては、いわゆる「文壇」と呼ばれる「小説家・編集者の世界」が描かれる作品です。コメディタッチで展開される物語で、もちろん「誇張して描いていますよ」という雰囲気が伝わってくる映画なのですが、本作は、まさに「文壇」に属している小説家・柚木麻子の同名小説を原作にした作品なので、「ホントにこういう世界なのかもしれない」と思わせる部分もあります。また私はかつて書店員だったこともあり、ほんの一端ではありますが、本作で描かれている世界と関わってもいました。そういう意味でもとても興味深く感じられる作品です。

犀川後藤

何にせよ、「歴史だとか伝統だとかが色々あるんだろう業界だから、そりゃあややこしいことも起こるよね」って感じ

いか

良いんだか悪いんだか分かんないけど、普段見れない世界が描かれてるのはやっぱ楽しいよね

「リアルじゃない」と思われても仕方ない存在を、のん(能年玲奈)が実にリアルに演じるので素晴らしい

さて、彼女が出演する作品を観る度に同じことを思うのですが、「やっぱりのん(能年玲奈)っていいよなぁ」と感じました。

のんは本作で、とにかく「非リアル」な演技をしています。そして、それが絶妙にハマっているとも感じました。現実世界を舞台に「非リアル」な演技をしていたら「ただ浮いてしまうだけ」にも思えますが、のんの場合はどうもそういう感じにはなりません。不思議だなと思います。私は本作『私にふさわしいホテル』を観たのと同時期に、『ピンポン』『【推しの子】-The Final Act-』も観ていたのですが、『ピンポン』の窪塚洋介や『【推しの子】-The Final Act-』の二宮和也に対して、「『現実にいそう』と思わせるのが難しいキャラクター」をよく成立させているなと驚かされました。そして本作でのんに対しても同じようなことを感じたというわけです。

のんが演じるのは「売れない小説家」で、彼女はその現状をどうにかしようと奮闘します。彼女は大学時代に演劇部だったこともあり、ハッタリの演技力と度胸で様々な場面を乗り切っていくのです。映画のかなり早い段階で出てくる「文豪コール」などはまさにその1つでしょう。その名の通り、昔の文豪の名前を羅列するだけのコールなのですが、そんなことをしている人物は普通、リアルな存在には見えてこないだろうと思います。

ただのんは、「現実にこんな奴いるわけないだろ」と受け取られてもおかしくないようなキャラクターを、「いや、もしかしたらいるかもしれない」と感じさせるような演技で存在させるのです。この点は本当に、他の役者がそうそう真似できないだろう、のんの特異な特徴だなと思います。

いか

なんでそんな風に感じるのか不思議だけどね

犀川後藤

のんもきっと無意識でやれちゃってるような気がするし

さらに言えば、のんの演技が絶妙なラインだったのも良かった点です。例えば、宮藤官九郎や福田雄一のようなコメディ作品の場合、役者が「非リアル」に全力で振り切っていくようなこともあるだろうし、それはそれでもちろん良いでしょう。ただ私は基本的に「リアルさが感じられる作品」の方が好みです。だから、「非リアル」に寄せつつ「もしかしたらこういう人もいるかもしれない」と思わせる雰囲気を醸し出しているところがとても良かったなと思います。ホント、こんな雰囲気を出せる役者はあんまりいないような気がするんだよなぁ。やっぱりのんは素敵だなって感じました。

映画『私にふさわしいホテル』の内容紹介

物語は1984年、多くの文豪に愛された「山の上ホテル」から始まる。作家の山口瞳はこのホテルを、「作家のためのホテル」と呼んだという。出版社が集まる神保町から近いこともあり、出版社が作家を”カンヅメ”にする場所としてよく使われていたからだ。

そんなホテルにやってきたのが、小説家・相田大樹(本名・中島加代子)である。ただ彼女は、「小説家」と自称していいのか怪しい身分だった。というのも、3年前にピーアール社の新人賞を受賞したものの、未だに単行本を出版できていないからだ。その元凶が、文壇の大御所である東十条宗典にあると加代子は確信している。雑誌に掲載された彼女の新人賞受賞作『文学少女奮闘記』を東十条宗典が書評で酷評したことがあるのだ。実際にそれが理由なのかははっきりしないものの、事実、現在に至るまで単行本の話は進展していない。そしてそれ以来加代子は、デビュー作からすべての作品を読むほどファンだった東十条宗典のことを憎み倒していた

しかしそんな彼女に千載一遇のチャンスが巡ってくる。とはいえ、この状況を「チャンス」と捉えられるのは加代子ぐらいなものだろうが。

そもそも彼女が山の上ホテルにやってきたのは、単行本も出せていないのに作家気分を味わうためだった。もちろん、自費である。そしてそんな彼女を訪ねてきたのが、大手出版社である文鋭社の敏腕編集者・遠藤道雄だ。彼は加代子の大学時代の先輩であり、そしてなんと、今は東十条宗典の担当をしている。その東十条宗典がまさに今、加代子が泊まっている部屋の真上のスイートルームにいるらしく、たまたまロビーで加代子を見かけた遠藤が部屋までやってきたというわけだ。

しかし、この状況の一体何が「チャンス」なのか。そこにはこんな事情がある。

文鋭社は今、伝統ある文芸誌「小説ばるす」の50周年記念号の準備中で、50人の作家から短編やエッセイを集めており、そしてその特集の目玉が東十条宗典なのだという。しかし彼は他の仕事が忙しく、まだ原稿がほとんど書けていないデッドラインは明日の朝。そんなわけで東十条宗典は、ここ山の上ホテルで”カンヅメ”にされることになったというわけだ。

じゃあ、もしも今夜、東十条宗典が原稿を書き上げられなかったらどうなるだろうか? 50周年記念号なのだから、何としてでも作家50人は揃えなければならない。しかし明日の朝誰かに依頼して原稿を上げてもらうなんてこともまた不可能なはずだ。となれば、既にある原稿で埋め合わせるしかない

そして実は、加代子は遠藤と共に、来たるべき時に備えて相田大樹の短編をブラッシュアップさせていたのである。状況次第では、未だ日の目を見ないあの原稿が50周年記念号という大舞台で成仏するかもしれないというわけだ。

しかしそのためにはまず、今夜東十条宗典が原稿を落とさなければ話にならない。だったら、ちょうど真上にいる彼の邪魔をして、原稿を書けなくしてやればいい……。

映画『私にふさわしいホテル』の感想

さて、上述の内容は冒頭も冒頭でしかなく、本作ではそれ以降も「中島加代子(相田大樹) VS 東十条宗典」の闘いが繰り広げられていきます。ただやはり、まずはこの冒頭のエピソードが実に面白かったです。「自分の短編を掲載させるために大御所の執筆の邪魔をする」なんてのはムチャクチャな話で、正直リアリティもへったくれもありません。ただ冒頭で書いた通り、のんが演じると何故か「こういうことが起こっていてもおかしくないかもなぁ」なんて風に思わされてしまうのです。

いか

「小説家」って設定も、その印象に拍車をかけるよね

犀川後藤

クリエイターってのは変人であることが多いだろうけど、小説家もかなりの変人だからなぁ

また、本作で面白いのが編集者・遠藤道雄の立ち位置でしょう。彼は先述の通り、文鋭社のエースとして東十条宗典の担当を任されているわけですが、加代子とのバトルにおいて、決して東十条宗典の味方をするわけではありません。いや、味方するも何も、全然何もしないという感じなのです。もちろん、「担当編集者としてここは譲れない」みたいなラインはあるわけですが、そこは守りながら、全体としてはむしろ「東十条宗典を虚仮にする側」に回っていると言っていいでしょう。

とはいえ、じゃあ加代子の味方をするのかというと、別にそういうわけでもありません。いや、「まったく売れていない新人作家」に対しての扱いとしてはかなり良いとは思いますが(そこはやはり、後輩のよしみと言ったところでしょうか)、彼の立場はどうしても「小説家・相田大樹」を優先してあげることは出来ないわけです。

だったら遠藤は一体何をしているのでしょうか? 彼は大学時代の加代子のことを知っているため、「こいつなら何かぶっ飛んだことをしでかすかもな」という感覚を持っています。なので、彼女のそういう部分が引き出せるような状況を作りつつ、自分があまり手を汚さずに済むような形で加代子を焚き付けては、「あわよくば面白い状況になったりしないだろうか」と考えているのです。

いか

傍観者と言えば傍観者なんだけど、「加代子を絶妙に動かす」って意味では積極的に関わってるよね

犀川後藤

まさに「漁夫の利」を狙う策士って感じ

前述した通り、本作のメインとなる描写は「中島加代子(相田大樹)と東十条宗典のバトル」なわけですが、その2人の「バトル」に陰から薪を焚べ続けているのはまさに遠藤であり、非常に重要な存在と言えるでしょう。彼の絶妙な振る舞いによって物語が面白くなっていくわけで、そんな構成も見事だったなと思います。

物語は最初から最後まで「いやいや、そうはならんやろ」というような展開を続けていくわけですが、冒頭の山の上ホテルでのシーンではっきりと「この映画はコメディです」と分かりやすく明示されるので、その後の展開に違和感を覚えたりはしないでしょう。さらに、何度も書いていることですが、のんの演技がとにかく絶妙なので、「そうはならんやろ」みたいな展開だとしてもちゃんとリアルさが醸し出されるのです。加代子はずーっと「売れない小説家」としてジタバタし続けるわけですが、その無謀な闘いが彼女をどこまで連れて行くのか、是非観てほしいなと思います。

さて、個人的に「おっ!」となったのが髙石あかりです。出演シーンこそ少ないものの、なかなか印象的な存在でした。私は映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』を観るまで彼女のことをまるで知らなかったのですが、アクションを含めた演技には圧倒させられたし、そうこうしている内にいつの間にか朝ドラ出演が決まっていたりで、私の中では河合優実と同じぐらい注目している女優です。

いか

『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、超良かったもんね

犀川後藤

シリーズ第3弾しか観てないから、いずれ1と2も観たいなと思ってはいるんだけど

あと出演者の話で言えば、「のんがいると橋本愛いがちだよね」と感じます。やはり未だに『あまちゃん』のイメージが強いからでしょう。本作では「カリスマ書店員」として出演していました。私は、別に『あまちゃん』をちゃんと観ているわけでもないくせに、のんと橋本愛が一緒にいると何故か「おっ!」という感じになります。自分でも不思議です。

そんなわけで、内容についてあまり触れていませんが、とにかく楽しく観られる素敵なコメディだと感じました。

監督:堤幸彦, プロデュース:田代蔦, プロデュース:平部隆明, Writer:川尻恵太, 出演:のん, 出演:田中圭, 出演:滝藤賢一, 出演:田中みな実, 出演:服部樹咲, 出演:髙石あかり, 出演:橋本愛, 出演:若村麻由美

最後に

のんに対するちょっとした偏愛があるので客観的に評価できていないかもしれませんが、全体的にとても楽しい映画だったなと思います。とにかく馬鹿馬鹿しい話なのですが、「文壇」に限らず「権威的な存在が威張っている世界」は色んなところにあるだろうし、そういう世界に対する皮肉がふんだんに詰まっているので、そういう観点からも楽しめるでしょう。肩ひじを張らずに気楽に観れる素敵な作品です。

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