目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ジェイミー・ベル, 出演:ダニエル・マクドナルド, 出演:ダニエル・ヘンシュオール, 出演:ビル・キャンプ, 出演:ルイーザ・クラウゼ, Guest Actor:ジェイミー・ベル, Guest Actor:ダニエル・マクドナルド, Guest Actor:ダニエル・ヘンシュオール, Guest Actor:ビル・キャンプ, Guest Actor:ルイーザ・クラウゼ, 監督:ガイ・ナティーヴ
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「刺青」そのものは好きでも嫌いでもないが、「刺青を入れている人」は嫌い
- どれほど素晴らしい考えだとしても、それを他人に押し付ける行為が「正義」のはずがない
- 「正しさやイメージを押し付けること」が、変わりたいという気持ちを抑圧してしまう
いつでも変われるし、どこからでもやり直せる、と感じられる社会に、私は生きていたいと思う
自己紹介記事
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記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『スキン』が示すように、変わりたいと思った時に変われるように生きた方がいいと思う
「刺青を入れる行為」から、「変化を想定してないこと」について考える
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この映画では、アメリカの「差別主義者(レイシスト)」が描かれる。そして彼らは、判を押したように大体「刺青」を入れている。
そこでまずこの「刺青」から思考を進めていこうと思う。
私は、「刺青」が嫌いだ。しかしこれは正確な表現ではない。「刺青」そのものに対しては、好きでも嫌いでもない。アート的な意味で、綺麗だなと感じることだってある。
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しかし、「刺青を入れている人」は嫌いだ。
何故なら、「刺青を入れる行為」は、「自分の好みは一生変わらない」という思考の現れとしか私には思えないからだ。そして私は、「自分の考え・思考・思想が一生変わらないと思っている人」が嫌いなのである。
「刺青を除去する技術」は確かに存在するが、それには相当な費用と労力が掛かるだろう。つまり、「後で除去すればいいや」という考えで刺青を入れる者はほぼいないだろう、というのが私の前提だ。そしてそうだとするなら、「自分の身体に刺青を入れたという事実」や「刺青として刻んだ文字や絵」と一生付き合っていくつもりだろうし、つまりそれは、自分の好みが生涯変わらないと考えていると言えるだろう。
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私には、その思考が理解できない。もちろん、「若気の至り」というのはあるし、若い頃の判断は誤っていたと後悔している人だっているだろう。そういう人は別に良いと思うが、「若気の至り」や「その場の勢い」などではなく刺青を入れると決断する人のことが、私には理解できない。
これが「刺青を入れている人が嫌いな理由」だ。
そして、先の議論と同じように考えることで、私は、「自分の正しさを疑わない人」も概ね好きになれない。このような人も、「自分の考え・思考・思想が一生変わらないと思っている人」の一種だと言っていいと思うからだ。
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もちろん、様々な理由から「自分のことを正しいと思っている風に見せなければならない状況」というのはあるだろう。プレゼン・商談・トラブルへの対応など、「自分は間違っているかもしれない」という気持ちで臨むことで上手く行かなくなる状況というのは想定できる。だから、そういう一場面だけを見て人を判断するつもりはない。
しかしやはり世の中には、「この人はいつどんな時でも自分のことを一切疑わない」と感じさせる人がいる。そして、そういう人は嫌いだ。
何故なら私にとって、「正しさ」というのは相対的なものでしかないからだ。それが親の意見だろうが法律だろうが科学だろうがなんだろうが、「絶対的に正しいもの」など世の中にほとんど存在しない(私は、唯一「数学」だけは「絶対に正しい」と思っている)。「正しさ」というのは、時代・状況・場所・周囲の人間との関係性などなど様々な要因によって揺れ動くもののはずだし、私は常にそう考えている。
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しかし、「自分の正しさを疑わない人」というのは、その人なりの基準によって導かれた「絶対的な正しさ」の枠から出てこない。そういう人が主張する「正しさ」というのは、様々な要素を剥ぎ取って核となる部分を抜き出せば、「俺が正しいと思ってるんだから正しい」という主張でしかない。そして、そんな主張は無意味極まりない。
そんなわけで私は、「刺青を入れている人」も「自分の正しさを疑わない人」も嫌いだ。
「自分の考えを他人に押し付けること」は「正義」になりうるか?
映画で描かれる「差別主義者(レイシスト)」も、まさに「自分の正しさを疑わない人」だろう。だから私は、「レイシスト」だから嫌いというわけではなく、「自分の正しさを疑わない人」だから嫌いだ、と感じる。
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しかし、「自分の正しさを疑わない人」が、クローズドな世界で自説を主張しているだけなら、そこまで問題ではない。レイシストにしたところで、レイシスト同士で集まって文句を垂れ流しているだけなら、どうぞ勝手にやってくれ、という話で終わる。
しかし、レイシストに限らず「自分の正しさを疑わない人」は、自分の考えに他人を巻き込もうとする。そういう意味で私は、歴史の授業などでよく登場する「宣教師」も同類だと考えている。
以前、『沈黙』(原作:遠藤周作)という映画を観て衝撃を受けた場面がある。神父が日本の権力者の元へ赴き、日本でキリスト教を布教する賛同を取り付けようとしているシーンだったはずだ。日本の権力者は、「あなたがたの宗教は認めるし、別に否定はしない。しかし今の日本には合わない」と拒否する。しかし神父は、こんな言い方で「キリスト教の正しさ」を主張するのだ。
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我々は真理をもたらした。真理とは、普遍的なものだ。どの国でも、どの時代でも正しい。もしこの国で正しくないというのであれば、それは普遍ではない
映画『沈黙』
この発言には驚かされた。「キリスト教の神父」と「レイシスト」を同列に扱うべきではないし、別に同じ土俵のものと見ているわけではないのだが、しかし、「自分たちが信じる正しさを他人に押し付ける」という行為については共通していると思うし、私は両者の行為には同じように強烈な違和感を抱いてしまう。
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そんな行為が、正しいはずがない。
しかし、間違っているはずのこれらの行為は、現在においても世の中に散見されるだろう。インターネットの普及によって、さらに拡大したと言えるかもしれない。
オンラインサロンなどが象徴的な存在だと思うが、現代では、個人が「プチ教祖」のような立場となり、「信者的な人々による集団」が形成されることがある。「プチ教祖」自身が、何か目立つものとの対立構造をアピールして人集めをしている場合もあるだろうが、そうではなく、「プチ教祖」自身はただ場を作っただけという場合も多いはずだ。
しかし後者の場合であっても、「信者的な人々による集団」は別の何かとの対立構造を形成してしまい得る。そして対立構造が生まれれば、「自分の側が正しい」という主張合戦が引き起こされることになるだろう。
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私たちは今、そういう時代を生きていると思う。
そして、そんな主張合戦に「正義」などあるはずがない。
『スキン』という映画は、「人生やり直し物語」と要約していいだろうが、このように、「気づかぬ内に他人に考えを押し付けてしまいがちな現代をどう生きるか」という視点で捉えても面白い映画だと思う。
人はいつ変わってもいいはずだが、それはとても難しい
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私は、人は変わりたいと思った時に変われる生き物だと思っている。本来的には、本人の意思さえあればいつでも変われるはずだ。
しかし、ここまでで書いてきたような時代の背景があるために、それは決して容易ではない。
「レイシスト」である主人公は、変わることを決意するが、外的な環境がそれを許容しない。彼の”転向”を「仲間」が許さないのだ。
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「自分の正しさを疑わない人」たちによる集団というのは、とかく「お前たちは間違っている」という見られ方に敏感だ。
「正しさ」が「相対的」だと感じられない人というのは、「コーランに書かれたことは正しい」と信じるイスラム教徒に近いかもしれない。別にイスラム教徒を悪く言いたいわけでは決してないが、「正しさの枠組み」が存在し、その「正しさの枠組み」が否定されることで、自分自身までもが否定されたように感じられてしまうという構造をイメージしやすいだろう。
だから、同じ「正しさの枠組み」を信じていた「仲間」の離脱は許されない。
そしてこの話は決して、「レイシスト」という極端な人たちだけに当てはまるわけではない。
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誰もが、自分の身の回りにいる人に対して「何らかのイメージ」を持っていて、それが崩されたくないと感じるものだろう。いつも笑顔で親切な人には、いつも笑顔で親切な感じでいてほしいと思ってしまうし、嫌いな相手から親切にされた時には、「嫌いなヤツ」というイメージを崩したくないから「気持ち悪い」と感じてしまうはずだ。
そして私たちは、自分がどんな「イメージ」で見られているのかをなんとなく察知して、無意識の内にそこからはみ出さないようにしてしまう。程度の差はあるだろうが、このような振る舞いをしてしまう人は結構いるのではないかと想像している。
また、この映画の主題とはズレるのでざっと書くに留めるが、なんらかの「依存状態」にあれば、「変わりたいという意思」をどれだけ強く持っていてもその道はかなり困難だろう。アルコール、薬物、ゲームなど様々な依存症が知られているが、依存症というのは意思の力でどうにか対処できるものではないので、変わるための大きな障害だと言える。
いずれにしても、人生を変えるために重要なのは周囲のサポートだ。この映画でも、主人公を支えるシングルマザーが登場する。恐らく、主人公だけでは変われなかっただろう。レイシストの集団から抜け出すのにはよほどの覚悟が必要であり、主人公にとってそのシングルマザーの存在が、とてつもない「覚悟」を引き出す存在になったのだ。
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シングルマザーは、彼がレイシストであることを知りながら、本質的な部分に惹かれていく。私は、様々な事柄に対する偏見は少ない方だと思うが、それでも、彼女のようにフラットな目でレイシストを見ることが出来るかは難しい。そういう意味で、彼女に凄さを感じる。
一方、彼女は3人の娘を育てている。レイシストに近づくことで子どもに危険が及ぶことは容易に想像できたはずだし、実際に危険が迫る。そういう意味で、彼女の決断に素直に賛同できない部分もある。まあ、好きになってしまったものは仕方ない、ということなのだろうが。
映画『スキン』の内容紹介
実話を元にした物語である。
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ブライアンは、顔を含む全身に差別的な刺青を入れている、筋金入りのレイシストだ。「ヴィンランダーズ・ソーシャル・クラブ」という白人至上主義団体の役員にまでなっている彼は、思想の対立を暴力によって粉砕することを厭わない。酷い家庭環境を生き延び、路上生活を経験したこともある彼は、団体の主宰者であるクレーガーとシャリーンに拾われ、以来2人を本当の両親のように慕っている。そして、彼らに一生分の恩があると感じ、レイシストとしての活動に邁進しているのだ。
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映画『スキン』の感想
映画を見ながら、「社会がきちんとチャンスを与えるべきだ」とも感じた。
「過去の過ち」によって糾弾されることそのものは仕方ないと思う。しかし、ただ糾弾するだけでは、「私たちが生きているこの社会は、やり直す機会すら与えてくれない」という実感を他の多くの人に抱かせることになるだろう。それは、広い視野で見れば逆効果にしかならない、と思う。
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まったく過ちを犯さない人間などいないと思うし、時代によって「過ちの基準」が異なるというケースもある。いずれにしても、「過ちを犯した」という事実に対しては何らかの適切な対応が必要であるが、「過去に過ちを犯したから、もう二度と復活できない」というのでは、あまりにも厳しすぎるだろう。
インターネット社会では、様々な記述・発言・映像・写真が一生残り続け、「デジタルタトゥー」とも呼ばれている。自ら望んで入れる「刺青」とは違い、「デジタルタトゥー」は避けようがない刻印と言っていいだろう。
自分の「過去の過ち」がいつ掘り起こされるか分からない。だからこそ、「やり直しが許容される社会」であるということが、誰にとっても重要な世の中になっていくのではないかと改めて感じさせられた。
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出演:ジェイミー・ベル, 出演:ダニエル・マクドナルド, 出演:ダニエル・ヘンシュオール, 出演:ビル・キャンプ, 出演:ルイーザ・クラウゼ, Guest Actor:ジェイミー・ベル, Guest Actor:ダニエル・マクドナルド, Guest Actor:ダニエル・ヘンシュオール, Guest Actor:ビル・キャンプ, Guest Actor:ルイーザ・クラウゼ, 監督:ガイ・ナティーヴ
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【考察】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』は、BLの枠組みの中で「歪んだ人間」をリアルに描き出す
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