【家族】映画『女優は泣かない』は、蓮佛美沙子が「再起を賭ける女優」を演じる笑い泣き満載の作品(出演:伊藤万理華、上川周作)

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

「女優は泣かない」公式HP
いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

今どこで観れるのか?

公式HPの劇場公開をご覧ください

この記事で伝えたいこと

とにかく何と言っても、ストーリーが非常に素敵な作品でした

犀川後藤

設定がミニマムで、これと言った大きな展開も無いのに、強く惹きつけられてしまう作品です

この記事の3つの要点

  • お互いに「撮りたくない」「撮られたくない」と感じているドキュメンタリー撮影の様子が、コメディタッチに描かれていく
  • 主人公の家族の物語が絡んでくると、物語は一気にシリアスなトーンに変わる
  • 「女優として生きる」という要素を組み込んだ家族の確執は、ベタと言えばベタだが、一筋縄ではいかない感じもあって良かった
犀川後藤

メインの役を演じる蓮佛美沙子、伊藤万理華、上川周作の3人がとにかく素晴らしい、とても素敵な作品でした

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

映画『女優は泣かない』は、役者もストーリーも素晴らしい作品!特に蓮佛美沙子が素敵な笑わせ泣かせるハートフルコメディ

とても素敵な作品でした。正直なところ、これと言って何かが起こるような物語でもないし、舞台設定も実にミニマムです。それでも、「良い映画を観たなぁ」という感覚になれる素晴らしい作品だなと思います。

いか

特に、メインで登場する蓮佛美沙子、伊藤万理華、上川周作が良かったよね

犀川後藤

蓮佛美沙子のことは昔から何となく好きなんだけど、本作でも見事な存在感を出しているなって思った

映画『女優は泣かない』の内容紹介

主人公は、デビュー10年目の女優・安藤梨花本名は園田梨枝。元からさほど活躍できていたわけではないのだが、あるスキャンダルが報じられたことですっかり落ち目になってしまう。そんな彼女に、再起を賭ける意味を込めて社長がある仕事を持ってきた。それが、「女優・安藤梨花の密着ドキュメンタリー」である。

その撮影のために梨枝は、久々に地元・熊本に降り立った。しかし、空港には誰もいない。社長に確認すると、当初彼女に付く予定だったマネージャーは別の現場に行くことになったのだという。つまり、一人でなんとかしろというわけだ。そしてそこにやってきたのが、イダテレのディレクターを名乗る瀬野咲。梨枝が「プロデューサーとか来ないの?」と聞くと、瀬野は「予算無いんで」と返す。その後彼女は、何かある度に「予算、予算」と口にするようになる。

その「予算」の話は、宿泊場所にも影響を及ぼした。瀬野は事務所の社長から、「安藤梨花は実家に泊まる」と聞いていたそうで、そもそもホテルは押さえていない。梨枝は「自分で出すからどこかホテルへ連れて行って」と瀬野に言うが、たどり着いたのはなんとラブホテルだった。撮影地周辺に近くて安いホテルなのだそうで、瀬野はここに泊まるという。さすがにそれは無理だと思い、自力で探すことにして瀬野と別れるが、スマホの充電は切れてしまい、田舎道には人も車も無い。それでも、偶然通りかかったタクシーをどうにか止めたところ、その運転手がなんと、高校時代の同級生サルタク(猿渡拓郎)だったのだ。落ちぶれた身でもあり気まずい再会となったが、知った顔なら遠慮は要らない。梨枝はホテルに連れていってくれとサルタクに頼み、そのまま後部座席で眠りに落ちた。

しかし、着いたと言われて目を覚ますと、なんと梨枝の実家の目の前ではないか。話が違う。しかしサルタクは、梨枝が家族に会うことを単に恥ずかしがっているとでも思ったのか、梨枝を置いてそのままタクシーを走らせてしまった

覚悟を決めるしかない。実家に泊まる以外、他に選択肢はないのだ。

梨枝は、10年前に啖呵を切って飛び出した実家の玄関を久々にくぐった。母親が亡くなり、男手一つで3姉弟を育てた父とは、喧嘩別れしたままだ。そうやってしばし思い出に耽っていると、弟が帰ってきた。梨枝は弟に「帰ってきたこと、真希姉には黙ってて」と頼み込み、他の家族に挨拶もしないままドキュメンタリーの撮影に入る。

しかし、この撮影が大問題だった。瀬野が考えてくるプランは、いわゆる「ヤラセ」ばかりだったのだ。そのことを指摘すると瀬野は、「ドキュメンタリーにも演出は必要なんで」を繰り返す。しかし実は、ずっとバラエティ畑にいた瀬野には、ドキュメンタリーの撮り方など分からないのだ。

日々、瀬野との関係が悪化していく中、当然のことながら梨枝の帰還は姉・真希の知るところとなり、燻り続けていた家族の問題が再燃する……。

コメディな雰囲気からシリアスな展開へとガラッと変わっていく物語

本作は、冒頭からしばらくの間、とにかくコメディタッチで物語が進んでいきます。構図はとても分かりやすくて、「『どう考えてもあり得ない指示ばかりする瀬野』に『ドキュメンタリーの経験がなく、どう振る舞うべきか分からない梨枝』が振り回されていく」という感じです。普通ならなかなか成り立たない設定でしょうが、本作の場合、「梨枝がスキャンダルで落ち目になっている」という状況がとてもよく機能していると言えます。それなりにキャリアがあり、そこそこ名の知れている女優が、「ドキュメンタリーの何たるか」を理解していないだろう若手ディレクターの指示に嫌々ながらも従うのは、「もしかしたらこの仕事が、復活のきっかけになるかもしれない」と考えているからなのです。

梨枝としてはとにかく、瀬野の指示に従うのは癪でしかありません。しかしだからと言って、落ち目の彼女には他の仕事など無いのです。だから、女優としてこれからも生きていくのであれば、多少プライドを捨ててでもこのドキュメンタリーをやりきるしかありません。これが、梨枝が置かれた状況です。

いか

梨枝は、「女優以外に生きる道はない」みたいに考えてるしね

犀川後藤

しんどくても、この世界で生き残れるようにどうにかするしかないってことだよなぁ

そんなわけで、冒頭からしばらくは梨枝の状況がメインで映し出されるわけですが、しばらくすると、実は瀬野も似たような状況にいることが分かってきます。彼女は元々ドラマ志望で制作会社に入社したのですが、配属されたのはバラエティでした。バラエティの仕事はどうにも向いていないとしか思えないのですが、上司にいくら相談しても、「まずは与えられた仕事で結果を出せ」と言われるばかりです。

そんな中、安藤梨花のドキュメンタリーの話が降って湧いてきます。そこで上司は瀬野に、「このドキュメンタリーで上手くいったら、ドラマ班に俺から推薦してやる」と瀬野の前にニンジンをぶら下げることを思いつきました。上司のその言葉を信じた瀬野はこうして、「何が何でもこのドキュメンタリーで結果を残さなければならない」と考えているというわけです。このような状況に、彼女は置かれています。

つまり、どちらも割と崖っぷちにいるのです。

犀川後藤

お互いに、「『やりたい仕事』じゃないのに、これをやらなきゃ次に進めない」って状況にいるわけだ

いか

こういう設定を背景に、全体をコメディ的に展開させていく感じが面白いよね

さて、そんな2人による「ドキュメンタリーの撮影」が上手くいくはずもないでしょう。そして、「これじゃダメだ」と思い始めた2人は、梨枝の家族に焦点を当てることを考え始めます。このようにして、物語の中に「家族のわだかまり」が組み込まれていくというわけです。

梨枝と家族の確執については、物語がある程度展開しないと深掘りされないので、この記事ではあまり詳しく書かないことにしますが、冒頭の方でざっくり示唆される事実には触れておくことにしましょう。梨枝は、「10年前に父親の反対を押し切って高校を中退し、そのまま女優を目指すために上京した」のであり、その時以来、どうやら家族との折り合いが悪いようです。中でも、長姉である真希との関係が最悪みたいだと示唆されていました。

そして、家族の話が絡んでくるに従って、全体のトーンが徐々にシリアスなものに変わっていくのです。それまでコメディタッチで進んでいた物語が「泣ける話」に変わっていくスライドの仕方が自然で、とても良かったなと思います。

犀川後藤

まあ、泣ければ良いと思ってるとかじゃないんだけど

いか

前半との落差が印象的だったのと、ベタだけど王道って感じの家族の物語も良かったよね

素晴らしいと感じたのが、役者がどちらのトーンの物語にも違和感なく溶け込んでいることです。1つの作品の中で、コメディとシリアスを無理なく両立させるのは結構難しいのではないかと思うのですが、メインの役を演じる蓮佛美沙子、伊藤万理華、上川周作の3人はそれぞれ、どちらの雰囲気にもとてもよく馴染んでいました。まあ、役者としては当然のことなのかもしれませんが、私には見事だと感じられたというわけです。

シリアスなトーンになってからは、涙腺を刺激するような展開も結構多く、客席からはすすり泣くような声が上がっていたし、私も割とウルウルしてしまいました。話としては「よくある家族の物語」だと思うのですが、ただそこに「女優として生きる」という要素が加わることで、ちょっと変化球っぽい雰囲気も出ていたと思います。特に長姉との確執の根底には、まさに「梨枝が女優としての人生を全うしていること」が関係しているわけで、そんな「ちょっとだけ『ありがち』から浮き上がっている」みたいな展開もとても良かったです。

犀川後藤

しかし「女優」に限らないけど、「表に出る仕事をしている人」は大変だなって思う

いか

本人が大変なのは自業自得だろうから仕方ないとしても、その周囲の人も巻き込まれちゃうのがねぇ

「物語の展開」も「役者」もとても良かった

しかし、物語の焦点が「梨枝の家族」に移ってしまったら、瀬野との関係は一体どうなるのでしょうか? ここも展開が上手い点で、「梨枝と家族の関係がさらに悪化した」という場面には実は、瀬野も関わっています。そして、最初から馬が合わなかった2人ですが、このことをきっかけに、さらに酷い状態になっていくのです。

普通に考えれば、「家族との関係」も「瀬野との関係」も”ジ・エンド”という感じで、そこからの展開など作れないように思えるでしょう。映画を観ながら私も、「ここからどんな風に展開するんだろうか」と考えていました。しかしそれ以降の物語もとても良く、ラストの展開や全体的なまとまりも含めて、物語すべてがとても素晴らしかったなと思います。

犀川後藤

ホント、シンプルにストーリーが良かったなって思う

いか

全体的にミニマムなのに惹きつけられちゃうのはやっぱり、軸となる物語が良かったからだよね

あとはとにかく、役者が素晴らしかったです。特に、主演の蓮佛美沙子が素敵でした。「活動をずっと追ってます」みたいなファンというわけではないし、なんとなく見かける度に「良いなぁ」と感じていたぐらいですが、割と昔から注目していた女優です。そして、本作での佇まいもとても素敵でした。特に本作においては、家族や瀬野に対して見せる「嫌な感じの雰囲気」が絶妙だったなと思います。嫌な感じを出しつつ、不快感を与えるようなものではないというバランスが流石でした。

また、蓮佛美沙子とやり合う伊藤万理華もとても良かったです。テレビの世界のことなど何も知りませんが、「こういうディレクターいそうだなぁ」と思わせる「曲者感」が上手いと感じました。物語的にはとにかく、蓮佛美沙子と伊藤万理華の掛け合いが様々な場面で重要になるため、蓮佛美沙子の演技を受ける存在として良い雰囲気を醸し出せていたと思います。

あと、サルタクを演じた上川周作も素晴らしいと感じました。サルタクは、梨枝と瀬野のドキュメンタリー撮影に何故か同行することになるのですが、2人だけだったら絶対に詰んでいただろう場面で、潤滑油としての存在感を見事に発揮するのです。そのような雰囲気を上川周作が絶妙に演じていたし、さらに、単なる潤滑油というわけではない展開も後半に少しあって、その落差も素敵でした。物語を成立させる上で無くてはならない存在を見事に演じていたと思います。

役者の存在感も含め、とても素敵な作品でした。

最後に

これと言って特に何が起こるわけでもない作品なのですが、ところどころ上手い演出があったなと思います。例えば、「ファミレスのあれがまさかこんな風に繋がるとは」なんて個人的には感じたりしました。クスッと笑わせる仕掛けや、思わずグッと来てしまうような場面が随所にあって、1つ1つの展開は小粒ながらも、全体としては満足度の高い作品だと言えると思います。

普段私は、褒め言葉としてこんな表現は使わないのですが、本作は「誰にでも勧めやすい、万人受けする作品」だと感じました。観て良かったなと思います。

次にオススメの記事

いか

この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ

犀川後藤

タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます

シェアに値する記事でしょうか?
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次