目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:オードリー・ヘプバーン, 出演:グレゴリー・ペック, 監督:ウィリアム・ワイラー
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
とにかく、オードリー・ヘプバーンの魅力に溢れた作品としか言いようがない
デビュー作なこともあり、「オードリー・ヘプバーンの無垢さ」がそのまま「アン王女の無垢さ」として映し出されていたことも良かった
この記事の3つの要点
- ある種妄想的ではあるが、多くの人が夢見てしまうかもしれない「王道中の王道」が描かれている
- 「美」はなかなか時代を超えないが、その例外の1人であるオードリー・ヘプバーンが主演だったからこその古びなさ
- 「お互いが相手に自身の素性を伏せている」という設定が実に効果的に使われている
1953年公開の映画とは思えないほど魅力的な作品で、とても惹き付けられてしまった
自己紹介記事
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映画『ローマの休日』はとても素晴らしい作品でした。4Kレストア版が映画館で上映されるということで初めて観てみたのですが、「まさかこんなに面白いとは」という感じです。1953年公開のかなり古い作品ですが、今観ても全然成立する作品だと思います。
基本的に「映画館でしか映画を観ない」と決めてる人間としては、こういう「名作」を観る機会がなかなかなくて
でも最近、「リマスター版」とか「レストア版」とかが結構増えてきてるから、それは凄く良いよね
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あまり他の作品と比較するのも良くないでしょうが、以前観た映画『七人の侍』の話をしたいと思います。『七人の侍』の公開は1954年、『ローマの休日』とほぼ同時期と言っていいでしょう。そして映画『七人の侍』を観て私は、「何が面白いのかまるで分からない」と感じたのです。
鑑賞後にネットで調べてみて、なんとなくその理由が分かりました。というのも、「映画『七人の侍』は、我々が普段触れている『物語』の原型を作った作品だ」という評価を見つけたからです。私たちが何らかの「物語」に触れて「面白い!」と感じる、そのベースのような部分を『七人の侍』が作ったということなのでしょう。もしその指摘が正しいなら、「『物語の型』みたいなものに既に慣れている現代人にはさほど響かない」という可能性についても理解しやすくなるだろうと思います。
だから、「今まで触れたあらゆる物語を全て忘れたうえで、1954年の人と同じような気持ちで改めて映画『七人の侍』を観たい」って思う
仮にタイムマシンが実現したとしても、自分の記憶は消したり出来ないからねぇ
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そんなわけで、「映画『ローマの休日』に対しても同じような印象を抱くかもしれない」と思いつつ観に行ったわけですが、まったくの杞憂でした。とても面白かったです。
その理由の1つは恐らく、本作の展開が「王道中の王道」だからではないでしょうか。「物語の原型」みたいな話とはまた別に、「多くの人に好まれやすいストーリー展開」みたいなものがあると思います。そして映画『ローマの休日』では、「道に迷っている人を助けたら実はアラブの王様だった」的な、「可能性がゼロとは言わないけどほとんどあり得ない『妄想的なシチュエーション』」が描かれているのです。もちろん、そのような展開が好きな人は今でもたくさんいるだろうし、同じ類型の物語も多く存在すると思います。そのことが、「作品の古びなさ」に繋がっているのではないかと感じました。
「王道ラブコメロマンス」として、映画『ローマの休日』を越えられる作品って無いんじゃないかなぁ
なんというか、「もう正解が出てしまった」みたいな感じなのかもね
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また、いつものように具体的な設定も禄に知らずに観たのですが、王室を抜け出したアン王女と関わるもう1人の主人公である新聞記者のジョーが、「アン王女の特ダネを手に入れる」という不純な動機で行動している点も興味深いと感じました。例えばこれが、「アン王女を見て、ジョーがすぐさま一目惚れした」みたいな設定だったとしたら、恐らくこれほどの名作になってはいないでしょう。「『世間のことなど何も知らない純真なアン王女』と、『邪な思惑のためにアン王女につきまとうジョー』の2人の関係性が少しずつ変化していく」という展開がかなり魅力的に感じられたし、一方でこの設定もまた、ある種の「王道」と言えるのではないかと思います。
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このように、「王道中の王道をひた走る」という展開であることが、現代に至るまで古さを感じさせない作品に仕上がっているポイントなのではないかと感じました。
もちろん、「ある種の先行者利益」みたいなところはあるわけだけど
ただ、仮に「先行者」でいられるとしても、「良いもの」を提示できるかはまた別の話だから、やっぱり凄いと思うけどね
オードリー・ヘプバーンの美しさが不朽である
さらに、こちらの要因の方がより重要だと思いますが、「オードリー・ヘプバーンの美しさ」がとても現代的なものに感じられたのです。
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「美の基準」は古今東西で様々であり、ある時代のある国で「美人」と言われた人が、現代においてもなお「美人」と判断されるかは分かりません。極端な話をすれば、かつて日本では「お歯黒をしている女性が美人」とされていたわけです。現代の「歯は白い方が良い」という感覚からはあまりにもかけ離れていて驚かされてしまいます。また、髪型やファッションなども時代の影響が大きいので、容姿そのものではなく「着飾り方」みたいな部分で美しさの判断が変わる可能性もあるでしょう。
だから私は、「『美』は思いの外、時代を超えはしない」と考えています。
まあそもそも、「何を美しいと感じるのか」についても個人差が大きいし
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しかし、オードリー・ヘプバーンはその例外と言えるのではないかと感じます。この点については、以前観たドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』の記事で書きました。
ざっくり要約するとこうなります。オードリー・ヘプバーンと同時代には、マリリン・モンローも「美のアイコン」として人気を博していたと思うのですが、マリリン・モンローの場合は「時代が求めた美しさ」という印象があり、あまり「現代的」ではないように私には感じられます。一方で、オードリー・ヘプバーンはマリリン・モンローとは異なり、「時代が求めた美しさ」ではなく「普遍的な美しさ」を有しているように見えるというわけです。
なんとなくだけど、全盛期のマリリン・モンローがそのままの姿で現代に現れても、同じようには人気を集められない気がするんだよなぁ
でもオードリー・ヘプバーンなら、現代でも「美のアイコン」として人気になりそうな気がするよね
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そのような人は決してオードリー・ヘプバーンに限らないとは思いますが、決して多くはないでしょう。そして、そんな彼女がアン王女を演じたからこそ、結果として『ローマの休日』という作品も時代を超えて評価されたのではないかと思います。
さらに言えば、『ローマの休日』に出演した時点におけるオードリー・ヘプバーンが、まだまったくの無名だったという事実も重要だと言えるでしょう。というのも、オードリー・ヘプバーンの「無垢さ」が、そのままアン王女の「無垢さ」として映し出されているからです。
これも時代と言えばそれまでだけど、デビュー作でここまで世界的大スターになることもなかなかないだろうね
近年だと、映画『ハリー・ポッター』シリーズ出身の役者たちぐらいかなぁ
作中でアン王女は、「日々の退屈な公務に嫌気が差し、宮殿を抜け出した人物」として描かれており、その点だけを踏まえるなら、むしろ後のオードリー・ヘプバーンの方に近いと言えるかもしれません。先に紹介したドキュメンタリー映画で描かれていましたが、彼女は世界的に知られるようになったことで、パパラッチに追い回されるなど、なかなか困難の多い日常生活を送らざるを得なかったからです。
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しかし一方で、「初めて宮殿の外を1人で歩く開放感に浸るアン王女」と「演技の世界ではまだまったく無名の何者でもないオードリー・ヘプバーン」が上手く重なっているようにも思います。大げさですが、アン王女の「実は地面から数ミリ浮き上がっているんじゃないか」と感じさせるようなウキウキした雰囲気は、何者でもないオードリー・ヘプバーンだからこそ醸し出せたのではないかと感じました。
しかし驚いたのは、「エキストラだろうおじさんが、オードリー・ヘプバーンの口にキスしてるシーン」があったことだわ
オードリー・ヘプバーンが無名だったからこそ成立したシーンなんだろうね、きっと
物語の設定や展開も実に絶妙
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また、「物語の細部に触れていない」という設定も、本作が広く観られる要因の1つになっていると感じました。物語は全体的に「ロードムービー」的に展開され、とにかく「美しいローマの町並みを背景にひたすら移動し続ける」という形で進んでいくのですが、そのような構成もとても良かったのだと思います。
本作のような設定であれば、「アン王女が内に抱えている悩み」や「ジョーが秘めている新聞記者としての葛藤」などを掘り下げてもいいはずだし、場合によっては、そういう部分を描かなければ不自然にさえ感じさせてしまうかもしれません。しかし本作の場合は、「お互いが相手に自分の素性を隠している」という設定が実に上手く機能していると言えるでしょう。「相手が誰なのか知らない、あるいは知らないフリをしている」という設定によって、細部を深堀りせずとも不自然にはならず、そのお陰もあって「ロードムービー的な展開」だけでも押し切れたのだと思います。
結構絶妙なバランスで成り立ってる作品って感じだよね
時代背景も相まって、「お互いの素性を知らない」っていう設定もリアルに感じられたし
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さらに、「素性を隠している」という設定が、物語のラストシーンで効果的に使われているのも上手いと感じました。「楽しかった昨日」のことは忘れ「王女」へと戻らなければならない彼女は、ジョーに対して感謝やらなんやらの気持ちを伝えたいと考えます。しかし、「王女」と「新聞記者」の間に普通関わりなどあるはずがないわけで、「王女」というオフィシャルな立場でいち新聞記者に気持ちを伝えることは困難です。そういう状況において、アン王女がかなりギリギリのラインを攻めていく感じが面白いし、ラストシーンとしても実に秀逸だったと思います。
さすが「名作」と言われる作品という感じでした。素晴らしかったです。
出演:オードリー・ヘプバーン, 出演:グレゴリー・ペック, 監督:ウィリアム・ワイラー
ポチップ
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最後に
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観ながらずっと、「この感じなら、永遠に観ていられるなぁ」と思っていました。それぐらい、とても心地よい映画だったのです。シンプルな設定、王道の展開、そしてオードリー・ヘプバーンの美しさ。すべてが見事に入り混じって、普通にはまず実現しないだろう親和性が発揮された作品に感じられたというわけです。
ちなみに私が観たバージョンでは、本編の前後に「淀川長治の解説」がついていました。昔は、テレビで映画が放送される時に、彼の「さよなら さよなら さよなら」というフレーズをよく聞いたものです。とても懐かしい気分になりました。
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名作と名高い映画『ぼくのエリ』は、「生き延びるために必要なもの」が「他者を滅ぼしてしまうこと」であるという絶望を抱えながら、それでも生きることを選ぶ者たちの葛藤が描かれる。「純愛」と呼んでいいのか悩んでしまう2人の関係性と、予想もつかない展開に、感動させられる
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ルシルナ
苦しい・しんどい【本・映画の感想】 | ルシルナ
生きていると、しんどい・悲しいと感じることも多いでしょう。私も、世の中の「当たり前」に馴染めなかったり、みんなが普通にできることが上手くやれずに苦しい思いをする…
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