目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:円井わん, 出演:間瀬英正, 出演:山田太一, 出演:セイラ, 出演:清水拓藏, Writer:アンシュル チョウハン, 監督:アンシュル チョウハン, プロデュース:アンシュル チョウハン, プロデュース:茂木美那, プロデュース:海老原信顕, プロデュース:山田太一
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この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
この記事で伝えたいこと
最終的に、「よく分からんけど面白い」という感覚になれた作品です
冒頭で「大ハズレかも」と感じていたので、後半に進むにつれて印象が変わったことに自分でも驚きました
この記事の3つの要点
- 映画が始まって割と早い段階で、「この映画、ちょっとハズレかも」と感じてしまった
- 「後ろ向きに歩く男」が放っているはずの強烈な違和感を中和する主人公・ソラの存在感が素敵
- ストーリーは全然理解できないながら、印象に残るシーンが多い映画だった
上映後のトークイベントで自主制作映画だと知りましたが、自主制作映画とは思えないクオリティの作品です
自己紹介記事
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意外なことに、とても面白い映画でした。「意外」という言葉の意味は後で説明するとして、まずはざっくり内容の紹介をしておきましょう。
最終的に「面白い」ってなったけど、最初はホント「は?」って感じだったよね
映画『コントラ』の内容紹介
田舎町に住む高校3年生のソラは、退屈な日常に倦んでいた。そんなある日、唯一慕っていた祖父が突然亡くなってしまう。ソファに座ったまま亡くなった祖父の足元には、直前まで手元にあったのだろう手帳が落ちていた。パイロットだった祖父の戦時日記である。
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家族の誰も知らなかったのだが、祖父にはどうやらスケッチの才能があったようだ。綺麗なタッチで描かれたイラストと、そこに添えられた日記を見たソラは、このクソ退屈な毎日を吹き飛ばすような何かがあるような予感を得て、のめり込んでいく。
一方、ソラとその父親は、近所でとても奇妙な男と遭遇する。その男は何故か、ずっと後ろ向きに歩き続けているのだ。理由は分からない。話しかけてみても何の返事もないからだ。何の言葉も発さないし、掛けられた言葉を理解しているのかさえ分からない。
祖父の死と、後ろ向きで歩く男との邂逅。この2つの出来事が、ソラを日常の外側へと連れ出して行くことになり……。
「意外に面白かった」という感覚になった理由
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まずは「意外」という感想の意味を説明しておきましょう。
このブログの中では何度も書いていますが、私は基本的に「映画館でしか映画を観ない」と決めており、さらに、「作品についてほとんど調べないまま観る映画を決める」ことにしています。私が参考にするのは、「3行程度の内容紹介」「タイトルやメインビジュアル」「予告」ぐらいで、他人のレビューも読まなければ、監督や役者の名前で決めることもほとんどありません。「実話がベースになっている」と言われると割と観ようという気分になりますが、基本的には「なんとなくの印象」だけで決めているという感じです。
もちろんこういうやり方だと、「大ハズレ」みたいな作品を引いちゃうこともあるけどね
ただ逆に、「予想もしなかった傑作」に出会えたりもするんだよなぁ
映画『コントラ』も、ほぼどんな内容なのか知らず、予告とメインビジュアルだけで観ることに決めました。本作は自主制作映画なのですが、その事実も、上映後のトークショーで初めて知ったぐらいです。
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さて、そんな状態で観始めたわけですが、映画が始まって割と早い段階で、「何この映画?」みたいな感覚になりました。観ていても、なんのこっちゃ全然分からないのです。というか、この「なんのこっちゃ全然分からない」という感覚は、結局映画を観終えるまで続きます。最後の最後まで、分かったか分からなかったかで言うなら「分からない」作品でした。そんなわけで、割と早い段階で、「うーん、ちょっと今回は大ハズレを引いたかなぁ」と思っていたのです。
ただ、途中からどんどん面白くなっていきました。正直、「何が面白かったの?」と聞かれても、上手く答えられる自信はありません。先程書いた通り、結局最後まで「全然分からない」作品だったのですが、ただジワジワと、「よく分からないけど面白い」という感覚に変わっていったのです。私としても、かなり不思議な感覚でした。
「よく分かんないけど面白い」って作品は、ちょいちょいあるけどね
ただ今回は、観始めた時のマイナスのイメージがひっくり返ってるから、それは結構稀なケースなんだよなぁ
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私が「つまらない」と感じる作品は、大別して2パターンあるように思います。「ストーリーが難解or意味不明」「ストーリー以外の要素で評価されている」の2つです。前者はまあ理解してもらえると思うので、後者の説明をしましょう。
私は、映画をどんな風に楽しんでもいいと思っていますが、個人的には、映像美・音響・衣装などの「ストーリー以外の要素」にはさほど関心が持てません。究極的には、「ストーリーさえ面白ければ十分」と思っているタイプです。ただ世の中には、「映像が綺麗」「音響が凄まじい」「衣装が美しい」など、「ストーリー以外の要素」が評価されている作品もあると思います。私の場合、そういう作品には、ちょっとピンと来ないことが多いです。
そして『コントラ』は、その両方の要素を兼ね備えている気がしました。ストーリーはなんのこっちゃ分からない、けど映像は綺麗だし白黒の感じも作品の雰囲気に合っている、という感じです。普段の私なら、そういう作品を上手く評価できず、「なんかつまらなかったな」で終わってしまったでしょう。でも『コントラ』は、最初の段階でマイナスの印象になっていたにも拘わらず、後半に掛けて面白さが増して、最終的には「結局意味は分からなかったけど、観て良かった」という感覚になりました。とても不思議な映画だし、そのような意味で「意外」という言葉を使ったというわけです。
こういう作品に出会えるから、「あまり調べずに映画を観る」ってやり方はいいよね
事前にあれこれ調べてたら、もしかしたら観てなかった映画かもしれないからなぁ
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「ソラの造形」が、作品全体の違和感を抑え込んでいるように感じられる
映画『コントラ』は、主人公の女子高生・ソラの存在感によって成立していると私は感じました。ちなみに脱線しますが、ソラを演じている円井わんは、最近見た映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の主演を務めています。『MONDAYS』を観て、「あ、『コントラ』の人だ!」となったので、やはり『コントラ』での印象が強かったのでしょう。私はなかなか人の顔を覚えられないタイプなので、「人の顔を覚えている」というだけで、私にとってはなかなか凄いことだったりします。
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ソラは、ある一面では「どこにでもいそうな田舎の女子高生」でしかありません。日常を退屈に感じていて、たぶん学校も「だるっ」と思っていて、田舎から東京に出たいと思っているけど、じゃあそのために何かしているのかと言えばそんなことはない、みたいな感じ。「こういう人いるよね」とか「自分がこんな感じだ」みたいに思わせる部分がかなり多い人物というわけです。
全然関係ないけど、「キントーン」のCMは、何回か見てようやく「あっ、円井わんか」って気づいたよね
さてその一方で、ソラには普通ではない部分もあります。「普通の女子高生ならきっとこんなことしないだろう」みたいな振る舞いを、割と躊躇無くするのです。
そしてソラの面白さの源泉は、「その『躊躇の無さ』こそが、ソラという人物を最も自然に見せている」と感じられたことにあるのだと想います。先程触れた通り、ソラにはごく一般的な女子高生っぽくもあるのですが、その上で、女子高生とは思えない行動をしてもまったく不自然には見えないのです。ソラのその両極端な性質がどのように成立しているのかはよく分からないのですが、とにかく私はソラに対して、そのような相反する感覚を抱きました。
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そして、ソラがそのような両極端を内包する人物だという事実が、『コントラ』という映画を成立させているように感じられたのです。何故そう思うのか。それは、「後ろ向きに歩く男」があまりにも不自然な存在だからです。
それがどんな内容の映画であれ、「後ろ向きに歩く男」が出てくれば、どうしたってその存在は「日常感」を奪い去っていくでしょう。日常には普通、そんな奇っ怪な人物は現れないからです。しかし『コントラ』は、確かに奇妙なストーリーなのですが、「日常感」が完全に失われているわけではないとも感じました。そしてその理由が、ソラの造形にあると感じたのです。
ソラが、「日常にも馴染めるし、非日常にもするりと足を踏み入れられる」というキャラクターであることによって、普通に考えれば違和感の塊でしかない「後ろ向きに歩く男」に対する「なんだコイツ」という感覚が、かなり中和される感じがあります。彼に対しては、「もしかしたらこういうことなのかなぁ」というなんとなくの仮説を抱きはしましたが、結局最後まで謎の存在のままでした。しかし、ソラが絶妙な造形で描かれるために、「後ろ向きに歩く男」に対しても、違和感よりも「思わず笑ってしまう」みたいな感覚が強調されるように感じたというわけです。
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ソラの描写によって「後ろ向きに歩く男」に対する違和感が中和されるお陰で、観客は、「『後ろ向きに歩く男』が存在する世界」をそのまま丸っと飲み込むスタンスになれるんじゃないかと思います。数学の試験問題によく出てくる「動く点P」のように、「なんだか分からないけど、そういうものなんだろう」みたいな理解が、押し付けがましくなく生まれるのではないかと感じました。
知り合いに「動く点P」への違和感をメチャクチャ力説してくるヤツがいるんだよなぁ
何に違和感を覚えているのか理解できないんだけど、「そういうものだ」とは受け取れないみたいなんだよね
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そしてだからこそ、「後ろ向きに歩く男」の周りで起こる奇妙な出来事に対して、素直に笑うことが出来たのだと思います。「後ろ向きに歩く男」に対する違和感は決して最後まで消えないのですが、それがあまりにも大きかったら、彼の振る舞いを「面白いもの」として捉えることはやはり難しくなるでしょう。私を含めた観客は、映画の様々な場面で声を上げて笑っていたのですが、自然とそうなれたのは「後ろ向きに歩く男」への違和感が強すぎなかったお陰だと思うし、それは、ソラが絶妙な存在として描かれているからだと私は感じました。
また、モノクロの映像だったという点も、「後ろ向きに歩く男」の違和感を薄れさせる要素だったと言っていいかもしれません。もしフルカラーの映像だとしたら、「後ろ向きに歩く男」への違和感はもっと強まっていたでしょう。どういう意図でモノクロで撮ることにしたのか分かりませんが、私はモノクロであることに必然性を感じました。
『コントラ』を観ようと思った一番の理由ってたぶん、「モノクロのメインビジュアルがかっこよかったから」だと思う
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最後に
全体のストーリーはイマイチ理解できませんでしたが、場面ごとに印象的だったシーンは結構あります。中でも、ソラと「後ろ向きに歩く男」が緊迫した状況下で対峙する場面は、とてもインパクトがありました。ここでの結局、何がどうなってそうなったのかさっぱり理解できなかったのですが、凄く圧倒された場面です。「意味不明な何かが意味不明な形でぶつかり合っている」みたいな異常さが滲み出ていて、まさに「自分は何を見せられているんだろう?」という感覚が強まったシーンでした。
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この記事を読んでも結局、映画について何も理解できないだろうと思いますが、そういうよく分からなさみたいなものが作品を魅力的なものに見せているのだと感じます。自主制作映画なのでなかなか観られる機会はないかもしれませんが、タイミングが合えば是非観てみて下さい。
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肯定派でも否定派でもない森達也が、「オカルト的なもの」に挑むノンフィクション『オカルト』。「現象を解釈する」ことよりも、「現象を記録する」こと点に注力し、「そのほとんどは勘違いや見間違いだが、本当に説明のつかない現象も存在する」というスタンスで追いかける姿勢が良い
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「聖書研究に熱心な日本人証人」として「エホバの証人」で活動しながら、その聖書研究をきっかけに自ら「洗脳」を脱した著者の体験を著した『カルト脱出記』。広い意味での「洗脳」は社会のそこかしこに蔓延っているからこそ、著者の体験を「他人事」だと無視することはできない
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美醜で判断されがちな”ルッキズム”の世の中に刃を突きつける小説『自画像』。私自身は、「キレイな人もキレイな人なりの大変さを抱えている」と感じながら生きているつもりだが、やはりその辛さは理解されにくい。私も男性であり、ルッキズムに加担してないとはとても言えない
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佐藤正午『鳩の撃退法』は、小説家である主人公・津田が、”事実”をベースに、起こったかどうか分からない事柄を作家的想像力で埋める物語であり、「小説のお約束を逸脱しています」というアナウンスが作品内部から発せられるが故に、読者は「読者の椅子」を下りざるを得ない
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ルシルナ
孤独・寂しい・友達【本・映画の感想】 | ルシルナ
孤独と向き合うのは難しいものです。友達がいないから学校に行きたくない、社会人になって出会いがない、世の中的に他人と会いにくい。そんな風に居場所がないと思わされて…
ルシルナ
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