目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ペーター・シモニシェック, 出演:ダニエル・ドンスコイ, 出演:サブリナ・アマーリ, Writer:ヨハネス・ロッタ―, Writer:ドロール・ザハヴィ, 監督:ドロール・ザハヴィ
¥400 (2022/09/11 18:47時点 | Amazon調べ)
ポチップ
VIDEO
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
殺し合いを繰り広げるイスラエル・パレスチナの若者が共同で管弦楽団を立ち上げる物語 当事者が既に中心に存在しない争いは、「この問題は終わった」と無理やり宣言する以外に解決の道はないと私は思う 「音楽」というモチーフを絶妙に生かして、「世界で最も解決が難しい問題」を前面に押し出す見事な映画
どれほど大きな対立であろうと、歩み寄ろうとする個人の小さな動きから改善される可能性があると感じさせられた
自己紹介記事
あわせて読みたい
ルシルナの入り口的記事をまとめました(プロフィールやオススメの記事)
当ブログ「ルシルナ」では、本と映画の感想を書いています。そしてこの記事では、「管理者・犀川後藤のプロフィール」や「オススメの本・映画のまとめ記事」、あるいは「オススメ記事の紹介」などについてまとめました。ブログ内を周遊する参考にして下さい。
あわせて読みたい
【全作品読了・視聴済】私が「読んできた本」「観てきた映画」を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が『読んできた本』『観てきた映画』を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非本・映画選びの参考にして下さい。
どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『クレッシェンド』は、「世界で最も解決が難しい問題」を「音楽」で乗り越えようとする若者たちの、実話をベースにした「奇跡の楽団」の物語
あわせて読みたい
【驚愕】本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は凄まじい。戦場は人間を”怪物”にする
デビュー作で本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)は、デビュー作であることを抜きにしても凄まじすぎる、規格外の小説だった。ソ連に実在した「女性狙撃兵」の視点から「独ソ戦」を描く物語は、生死の境でギリギリの葛藤や決断に直面する女性たちのとんでもない生き様を活写する
この映画で描かれるストーリーそのものは、実話ではない 。しかし、映画の設定は現実を踏襲している 。「世界で最も解決が難しい問題」と言われるほど複雑な歴史を持つパレスチナとイスラエル、その2国に生きる者たちによる混合管弦楽団が実際に存在する のだ。
https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/inspiration.html
お互いを憎みい、殺し合いを続ける両者が、「音楽」によってなんとか歩み寄ろうとする 。そんな物語を通じて私たちは、日本人にはなかなか馴染みが薄い対立について、その重苦しさを実感ができる作品だ。
「この問題はもう終わった」と無理やり区切りをつける以外にはない
岩手県に住んでいた頃 、度々驚くような話を耳にした。それは、「かつて南部藩だった地域」と「かつて伊達藩だった地域」の間に、現在でも”曰く言い難いしこり”のようなものが残っている 、というものだ。私は元々、日本の歴史には大変疎く、かつて両者がどうしていがみ合っていたのかよく知らない(なんとなく分かるが、説明できるほどではない)。しかし、数百年も前に起こっただろう出来事が現在にも禍根を残しているという事実には、とても驚かされてしまった 。
あわせて読みたい
【衝撃】壮絶な戦争映画。最愛の娘を「産んで後悔している」と呟く母らは、正義のために戦場に留まる:…
こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
あるいは、日本と韓国との間には、「慰安婦問題」を含め様々な「禍根」がある 。韓国との関係においては、日本は「加害者」の立場だと思うので、日本人である私が何を言っても説得力は生まれないだろう。ただ、この記事に関連して私が言っておきたいのは、「私は韓国に対して特に何も感情も抱いていない」ということである。繰り返しになるが、「加害者」側がこんな発言をしてもまったく何の意味もないし、むしろマイナスに受け取られてしまうだろう。もちろん、問題を軽視しているつもりなどまったくない。ただ、感覚として強調しておきたいのは、「戦時中の日本が韓国に何をしていたとしても、『私自身の問題』だとは感じにくい 」ということである。
さて、このような話から何を伝えたいと考えているのか。それは、「私自身は、この映画で描かれているような『対立』とはあらゆる意味で無縁だ 」ということである。「何らかの『当事者意識』を踏まえた意見ではない 」というわけだ。だから、これ以降私が書くことはすべて「机上の空論」だと思われても仕方がない。ただ私の中には、「どれだけ机上の空論だと思われようが、こう考えるしかないという結論 」がある。
それは、
「この問題はもう終わった」と無理やり区切りをつける
というものだ。
あわせて読みたい
【書評】奇跡の”国家”「ソマリランド」に高野秀行が潜入。崩壊国家・ソマリア内で唯一平和を保つ衝撃の”…
日本の「戦国時代」さながらの内戦状態にあるソマリア共和国内部に、十数年に渡り奇跡のように平和を維持している”未承認国家”が存在する。辺境作家・高野秀行の『謎の独立国家ソマリランド』から、「ソマリランド」の理解が難しい理由と、「奇跡のような民主主義」を知る
パレスチナとイスラエルの問題にせよ、日韓の問題にせよ、既に問題は大いにこじれてしまっている 。それ故、「この問題の原因はこれで、その原因を解消するためにこのような対処を行う」というような正攻法では解決不可能 と考えるのが妥当だろう。
というのも、既に「当事者」ではない者たちが問題の中心に立っている からだ。
「直接加害を行った者」と「直接被害を受けた者」が問題に向き合っているのなら、「原因究明」「謝罪」「補償」などの手段で解決できる可能性があるだろう。直接の加害者・被害者が問題の中心にいる場合は、「根本的な解決」を目指すべき だと思う。
しかし、時間経過と共に、直接の当事者が亡くなったり、問題の中心にいられなくなったりする。それによって問題が次世代へと引き継がれる わけだが、そうなってしまえばもう「根本的な解決」など望めない だろう。何故なら、振り上げた手をどのタイミングで下ろすかを、直接被害を受けたわけではない者が判断するのはとても難しい はずだからだ。
あわせて読みたい
【意外】東京裁判の真実を記録した映画。敗戦国での裁判が実に”フェア”に行われたことに驚いた:『東京…
歴史に詳しくない私は、「東京裁判では、戦勝国が理不尽な裁きを行ったのだろう」という漠然としたイメージを抱いていた。しかし、その印象はまったくの誤りだった。映画『東京裁判 4Kリマスター版』から東京裁判が、いかに公正に行われたのかを知る
イスラエル・パレスチナの問題の場合は、さらに難しいことに、現在に到るまで何世代にも渡り双方に被害者が生まれ続けている 。「祖先の恨み」と「自身の恨み」が混じり合う というわけだ。そうなってしまえば、余計状況はややこしくならざるを得ない。両者がどこかのポイントで合意することなどまず不可能だろう 。
『クレッシェンド』は音楽映画なのだが、話し合いの場面が実に多い 。普段からいがみ合っているイスラエル人とパレスチナ人が一緒に練習をするというのだ。簡単に上手くいくはずもない。だから、まとめ役である指揮者が、幾度も話し合いの場を設けるのである。
その中で彼らが、「私のおばあちゃんが……」「僕のおじいちゃんは……」という話ばかりしているのが印象的だった。彼ら自身も、普段から砲撃や迫害を受けているのだが、自分のこと以上に「祖先が強いられた歴史」のことを語る 。そして、「だからこそ許せない」と語気を強める のだ。登場人物の1人は、
これは歴史の物語なんかじゃない。家族の話なんだ。
と言っていた。これこそが、問題の根深さの根本 というわけだ。
あわせて読みたい
【歴史】『大地の子』を凌駕する中国残留孤児の現実。中国から奇跡的に”帰国”した父を城戸久枝が描く:…
文化大革命の最中、国交が成立していなかった中国から自力で帰国した中国残留孤児がいた。その娘である城戸久枝が著した『あの戦争から遠く離れて』は、父の特異な体験を起点に「中国残留孤児」の問題に分け入り、歴史の大きなうねりを個人史として体感させてくれる作品だ
「被害」が先で「対立」が後という「最初の当事者同士の問題」であれば根本的な解決もあり得る だろう。しかしその後は、「対立」が継続することで「被害」が生まれるという逆の流れ に変わる。そしてそうなってしまえばもう、状況を根本的に解決する手段など残っていない はずだ。
だから私は、「無理やりにでも『この問題は終わった』と区切りをつけるしかない 」と考えている。「根本的な解決は不可能だ」という認識を全員が共有し、「問題の原因は取り除かれていないし、その後の被害の補償もないが、それでも、この問題はここで終了だ」と判断するしかない と思う。自分で書いていて、あまりに理想主義的な、現実離れした解決策だと感じる。しかしこれ以外に、具体的に提案可能で実行性のある手段など存在するだろうか ?
「分かり合おうとする者」同士を、他人が邪魔する権利などない
あわせて読みたい
【不安】環境活動家グレタを追う映画。「たったひとりのストライキ」から国連スピーチまでの奮闘と激変…
環境活動家であるグレタのことを、私はずっと「怒りの人」「正義の人」だとばかり思っていた。しかしそうではない。彼女は「不安」から、いても立ってもいられずに行動を起こしただけなのだ。映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』から、グレタの実像とその強い想いを知る
さて、上述のようなことを前提にしつつ、私はさらにこう考えている。それがどんな問題であれ、「他人の決断を邪魔する権利」など誰も有していない 、と。
過去の歴史を背景にした国家間の問題においても、すべての国民が同じ捉え方をしているとは限らない 。パレスチナ・イスラエルの争いにしても、「相手の国を絶対に許さない」と考えている人もいるし、「憎いが、対立したいわけではない」「個人的には恨みを抱いているが、国民としては相手を批判しないと決めた」みたいに考える人もいるはずだ。
他人の命や尊厳を貶めるような考えでなければ、それがどんなものであれ許容されるべきと考えるのが、民主主義的な発想のはずだろう。だから、他人の考えを無視して自分の思想を押し付ける人間を、私は嫌悪する 。
映画では、家族との関係が描かれる場面 もある。「”敵国”の人間と一緒に楽器を演奏するなんて信じられない」という反応 を見せる人物が出てくるのだ。
あわせて読みたい
【驚異】信念を貫く勇敢さを、「銃を持たずに戦場に立つ」という形で示した実在の兵士の凄まじさ:映画…
第二次世界大戦で最も過酷な戦場の1つと言われた「前田高地(ハクソー・リッジ)」を、銃を持たずに駆け回り信じがたい功績を残した衛生兵がいた。実在の人物をモデルにした映画『ハクソー・リッジ』から、「戦争の悲惨さ」だけでなく、「信念を貫くことの大事さ」を学ぶ
「”敵国”の人間と一緒に楽器を演奏するなんて信じられない」という考えを持つこと自体は仕方ない と思っている。決して褒められたことではないが、両国の歴史を踏まえると、個々人がそのような感情を抱いてしまうことは避けがたい。しかしやはり、どんな理由があろうとも、「自分の考えを基に他人の行動を制約すること」が許されていいはずがない と私は思う。
国家間に大きな問題があるとしても、両国の個人同士による関係改善は進んでいく可能性がある 。そして、そんな個人同士による関係改善が、いずれ国全体に大きな影響を及ぼすかもしれない。しかし、他人がその行動を制約してしまえば、進むはずのものも進まなくなってしまう 。そうなれば、どのような意味においても「解決」とは程遠くなってしまうだろう。
国際情勢というのは複雑であり、もしかしたら「『イスラエル・パレスチナの問題が継続してほしいと考えている第三国』が関係改善を間接的に阻んでいる」なんていう可能性もあるのかもしれない 。そういうことまで考え始めると、もはや何から手をつければいいのか分からなくなってくるが、とにかく私としては、先程触れた通り、「この問題は終わった」と無理矢理にでも宣言するしかないと考えている 。
どうすればそんな可能性を実現できるのか、私にはなんとも分からない。しかし、この映画で描かれる物語は、そんな可能性を微かに想像させるのではないか と私は感じた。
あわせて読みたい
【驚愕】ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」はどう解釈すべきか?沢木耕太郎が真相に迫る:『キャパ…
戦争写真として最も有名なロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」には、「本当に銃撃された瞬間を撮影したものか?」という真贋問題が長く議論されてきた。『キャパの十字架』は、そんな有名な謎に沢木耕太郎が挑み、予想だにしなかった結論を導き出すノンフィクション。「思いがけない解釈」に驚かされるだろう
映画『クレッシェンド』の内容紹介
指揮者を引退した大学教授エドゥアルト・スポルク は、ある日カルラという女性の訪問を受ける。彼女は、ある壮大なプラン を持っていた。パレスチナとイスラエルから演奏家を集めて楽団を作り、和平交渉会議の場で演奏させる というものだ。彼女が言うには、スポンサーとしてEUがついている という。スポルクは政治に関わるなどまっぴらごめんだと考えており、当初は断るつもりでいた のだが、最終的にはそのまとめ役を引き受けることに決めた。
それからイスラエル・パレスチナにオーディションの情報が知らされ、会場に両国の若者が集まってくる。しかし、会場に辿り着くのも一苦労だ 。パレスチナの国境には、イスラエル人による検問所が設けられている。レイラはきちんと発行された許可証を提示したが、彼女は”嫌がらせ”としか思えない足踏み をさせられてしまう。また、父親に付き添ってもらって検問所までやってきたオマルは、所持している許可証では父親の通行は認められない と言われ、オマルしか国境を超えられない。オーディション会場までの道を知らないオマルは困惑を隠せずにいるが、幸い、検問所で足留めを食らっていたレイラと合流し、2人は無事会場まで辿り着くことができた。
スポルクは、演奏者の前についたてを置き、演奏だけで合否の判定をする 。その結果、パレスチナの合格者がほとんどいなくなってしまう とカルラに告げざるを得なくなった。「混合での楽団」という点にこそ意味があるので、この状況はとてもマズい。
あわせて読みたい
【感想】才能の開花には”極限の環境”が必要か?映画『セッション』が描く世界を私は否定したい
「追い込む指導者」が作り出す”極限の環境”だからこそ、才能が開花する可能性もあるとは思う。しかし、そのような環境はどうしても必要だろうか?最高峰の音楽院での壮絶な”指導”を描く映画『セッション』から、私たちの生活を豊かにしてくれるものの背後にある「死者」を想像する
窮状を知った、イスラエル人の合格者で、既にバイオリニストとして著名なロンは、「パレスチナ人に見えるイスラエル人を集めますよ」と提案する 。楽団のレベルを上げるためには、技量の高い演奏者を集めなければならないが、どうにもパレスチナ人はレベルが低い。だから、「イスラエル人だがパレスチナ人に見える演奏者」を集めれば、とりあえず体裁が整うんじゃないですか? と言っているのだ。その場にいたカルラがこの案を却下するが、楽団の指揮を取るスポルクとしても、「だったら腕の良いパレスチナ人を集めてこい」と言わざるを得ない。
さらなる波乱は、そんなスポルク自身がもたらした。コンサートマスターに、バイオリンの技量で劣るパレスチナ人のレイラを選んだのだ 。自分がコンサートマスターに選ばれるべきだと考えていたロンは、この決定に納得がいかない 。楽団のメンバーにはロンの生徒が多数選ばれており、ロンは報復とばかりに、自身の生徒を焚き付けてレイラの邪魔をするような行動を取る ようになる。
一方、レイラと共に会場にやってきたパレスチナ人のオマルは、イスラエル人のシーラと親密な関係になっていく 。奥手なオマルではなく、シーラの方が積極的にアプローチをかけ、2人は皆に秘密のまま関係を深めていった 。楽団の練習では、楽器を置いて話し合ったり罵り合ったりする時間が長い。そういう時2人は、全体を遠巻きに眺めている。どちらも、生まれた国の違いについてさほど意識しておらず、わだかまりも抱いていないようだ 。
あわせて読みたい
【衝撃】匿名監督によるドキュメンタリー映画『理大囲城』は、香港デモ最大の衝撃である籠城戦の内部を映す
香港民主化デモにおける最大の衝撃を内側から描く映画『理大囲城』は、とんでもないドキュメンタリー映画だった。香港理工大学での13日間に渡る籠城戦のリアルを、デモ隊と共に残って撮影し続けた匿名監督たちによる映像は、ギリギリの判断を迫られる若者たちの壮絶な現実を映し出す
環境を変えようと行われた合宿では、さらに楽器を持たない時間が増えていく 。まずはお互いを理解しなければならないとスポルクは考えるが、そう簡単にはいかず……。
映画『クレッシェンド』の感想
とても良い映画だった 。私は音楽の素養のまったくない人間だが、映画のラスト、紆余曲折あって彼らがある場所で演奏する場面では、思わず泣きそうになった ほどだ。
この映画はフィクションなので、物語はフィクションらしくなかなか劇的な形で展開される 。そしてそれ故に、彼らは想像してもいなかった状況で「演奏」しなければならなくなってしまう のだが、そのシーンで演奏される音楽には、震えるほどの感動を覚えた 。それは決して、「音楽そのもの」による感動ではないと思う。私はそこまで「音楽」のことが理解できる人間ではないからだ。しかし、「あの場面で楽器を手にした者たちが、どのような想いで演奏をしたのか」という想像はできる 。そして、そこに至るまでの彼らの奮闘の軌跡を知っているからこそ、彼らが演奏に込めた想いが伝わり、泣かされそうになってしまった というわけだ。
あわせて読みたい
【あらすじ】天才とは「分かりやすい才能」ではない。前進するのに躊躇する暗闇で直進できる勇気のこと…
ピアノのコンクールを舞台に描く『蜜蜂と遠雷』は、「天才とは何か?」と問いかける。既存の「枠組み」をいとも簡単に越えていく者こそが「天才」だと私は思うが、「枠組み」を安易に設定することの是非についても刃を突きつける作品だ。小説と映画の感想を一緒に書く
この演奏の場面は、セリフが一切存在せず、音楽だけが鳴り響いている 。そしてその音楽こそが、彼らの気持ちを雄弁に語っている ように強く感じさせられた。
とにかく、「音楽」によって「イスラエル・パレスチナ問題」を描き出すというこの映画の手法は見事 だと思う。
私は楽器を弾いたことがないのであくまで想像に過ぎないが、一流の演奏家であればあるほど、「全体の演奏レベルが低い」ということに自分で気づくはずだ 。そしてその理由が、「演奏家たちの気持ちが1つになっていないから」ということまで容易に察するだろう 。そのことが、観客に向けて分かりやすく示される場面もきちんと用意されている。合宿が始まった最初のリハーサルの場面で、「技術の問題もあるが、気持ちの問題も大きい」という、楽団が抱える根本的な問題が明らかにされるのだ。彼らは、「楽団を成功させるためには、民族間の対立にかまけてはいられない」とはっきりと理解している のである。
もちろん話はそう簡単ではない 。頭で理解できていても、心を変えるのはとても難しい からだ。
あわせて読みたい
【違和感】平田オリザ『わかりあえないことから』は「コミュニケーション苦手」問題を新たな視点で捉え…
「コミュニケーションが苦手」なのは、テクニックの問題ではない!?『わかりあえないことから』は、学校でのコミュニケーション教育に携わる演劇人・平田オリザが抱いた違和感を起点に、「コミュニケーション教育」が抱える問題と、私たち日本人が進むべき道を示す1冊
話し合いの場では、
でも心は変えられない。先生でも。
とはっきり口に出す者さえいた。しかし同時に彼らは、「この楽団が、キャリアにおけるチャンスだ」とも理解している 。パレスチナ人・イスラエル人混合の楽団というだけで、もの凄く注目度が高いのだ。演奏家として身を立てたいと考えている者にとってみれば千載一遇の機会 だと言っていいだろう。スポルクも「チャンスを掴め」とはっきり口にする。つまり、「心を変えて、”敵国”と気持ちを1つにすることのメリット」もきちんと認識されている というわけだ。
このような要素が上手く絡まり合うことで、「不可能としか思えない混合管弦楽団」の存在がリアルなものになっている 。「音楽」をモチーフにすることで、それぞれの国の人間としての葛藤や、演奏家としてのジレンマなどが自然と引き出される設定が絶妙だった 。
また、まとめ役であるスポルクの話も興味深い 。彼の生い立ちについて、この記事では詳しく触れないが、彼もまた、イスラエル・パレスチナ問題とは違った形で「生まれながらの対立」に巻き込まれてしまっている人物 なのだ。映画の冒頭から、「スポルクには何か、この複雑な管弦楽団の指揮者に選ばれるに値するだけの背景がありそうだ」ということが示唆される。そしてある場面で彼は、それを自ら明かすのだ。
あわせて読みたい
【圧巻】150年前に気球で科学と天気予報の歴史を変えた挑戦者を描く映画『イントゥ・ザ・スカイ』
「天気予報」が「占い」と同等に扱われていた1860年代に、気球を使って気象の歴史を切り開いた者たちがいた。映画『イントゥ・ザ・スカイ』は、酸素ボンベ無しで高度1万1000m以上まで辿り着いた科学者と気球操縦士の物語であり、「常識を乗り越える冒険」の素晴らしさを教えてくれる
スポルクは、
自分に貼り付いているものを拭うために何でもやった。
と語る。しかし結局、彼自身の努力によっては何も変わらなかった 。残念ながらスポルクは、「この問題は終わった」と宣言できるような立場ではない。その事実もまた、彼の苦しみを長期化させる要因だったと思う。そして、そんな経験があったからこそ、どう考えても無謀としか思えない楽団のまとめ役を引き受けるという決断にも至ったのだろう 。
このように、様々な葛藤に満ちた、複雑でややこしい背景を描きながら、一方で、エンタメ作品としても音楽映画としても面白く仕上げている 。なかなか想像の及ばない世界の話ではあるが、正攻法ではない形で「改善」の道を進もうとしている若者たちの姿から感じ取れることは多い のではないかと思う。
あわせて読みたい
【証言】ナチスドイツでヒトラーに次ぐナンバー2だったゲッベルス。その秘書だった女性が歴史を語る映画…
ナチスドイツナンバー2だった宣伝大臣ゲッベルス。その秘書だったブルンヒルデ・ポムゼルが103歳の時にカメラの前で当時を語った映画『ゲッベルスと私』には、「愚かなことをしたが、避け難かった」という彼女の悔恨と教訓が含まれている。私たちは彼女の言葉を真摯に受け止めなければならない
出演:ペーター・シモニシェック, 出演:ダニエル・ドンスコイ, 出演:サブリナ・アマーリ, Writer:ヨハネス・ロッタ―, Writer:ドロール・ザハヴィ, 監督:ドロール・ザハヴィ
¥400 (2022/09/11 18:50時点 | Amazon調べ)
ポチップ
あわせて読みたい
【全作品視聴済】私が観てきた映画(フィクション)を色んな切り口で分類しました
この記事では、「今まで私が観てきた映画(フィクション)を様々に分類した記事」を一覧にしてまとめました。私が面白いと感じた作品だけをリストアップしていますので、是非映画選びの参考にして下さい。
最後に
あわせて読みたい
【信念】9.11後、「命の値段」を計算した男がいた。映画『WORTH』が描く、その凄絶な2年間(主演:マイ…
9.11テロの後、「被害者の『命の値段』を算出した男」がいたことをご存知だろうか?映画『WORTH』では、「被害者遺族のために貢献したい」と無償で難題と向き合うも、その信念が正しく理解されずに反発や対立を招いてしまった現実が描かれる。実話を基にしているとは思えない、凄まじい物語だ
ストーリーそのものは実話ではないが、混合管弦楽団は実在するし、映画で描かれるパレスチナ・イスラエルの問題も今なお現実だ 。映画全体から、どことなくドキュメンタリー映画っぽい雰囲気も感じられ、そのリアリティに圧倒されてしまった 。
私たちが生きているのはどんな世界なのか、そして、世界中に存在する問題はどのように改善され得るのか 。そんな現実と可能性を垣間見せてくれる作品である。
次におすすめの記事
あわせて読みたい
【狂気】日本開催の世界柔道がモデルの映画『TATAMI』は、上映禁止、関係者全員亡命の衝撃作
2019年に日本武道館で実際に起こった出来事を元にした映画『TATAMI』は、柔道の世界を舞台に「イランという国の異常さ」を炙り出す物語だ。自国のトップ選手に「イスラエルの選手と対戦する可能性があるから棄権しろ」と命じるイランのお偉方の考えは理解不能だし、こんな狂気を当然のように押し通そうとする国家には恐怖しかない
あわせて読みたい
【信念】映画『太陽の運命』は、2人の知事、大田昌秀・翁長雄志から沖縄の基地問題の歴史を追う(監督:…
映画『太陽(ティダ)の運命』は、米軍基地問題に翻弄され続けた沖縄の歴史を、大田昌秀・翁長雄志という2人の知事に焦点を当てることで浮き彫りにしていくドキュメンタリー映画である。「日本一難しい問題を背負わされている」という沖縄県知事の苦悩と、「2人の間にあった様々な因縁」がないまぜになった数奇な“運命”の物語
あわせて読みたい
【忌避】小児性愛者から子どもを救え!映画『サウンド・オブ・フリーダム』が描く衝撃の実話(主演:ジ…
映画『サウンド・オブ・フリーダム』は、世界的に大問題となっている「子どもの人身売買」を扱った、実話を基にした物語である。「フィクションとしか思えないようなおとり捜査」を実行に移した主人公の凄まじい奮闘と、「小児性愛者の変態的欲望」の餌食になる悲惨な子どもたちの現実をリアルに描き出していく
あわせて読みたい
【現実】「食」が危ない!映画『フード・インク ポスト・コロナ』が描く、大企業が操る食べ物の罠
映画『フード・インク ポスト・コロナ』は、主にアメリカの事例を取り上げながら、「私たちが直面している『食』はかなり危険な状態にある」と警告する作品だ。「アメリカ人の摂取カロリーの58%を占める」と言われる「超加工食品」の研究はダイエット的な意味でも興味深いし、寡占企業による様々な弊害は私たちにも関係してくるだろう
あわせて読みたい
【正義?】FBIが警告した映画『HOW TO BLOW UP』は環境活動家の実力行使をリアルに描き出す
映画『HOW TO BLOW UP』は、「テロを助長する」としてFBIが警告を発したことでも話題になったが、最後まで観てみると、エンタメ作品として実に見事で、とにかく脚本が優れた作品だった。「環境アクティビストが、石油パイプラインを爆破する」というシンプルな物語が、見事な脚本・演出によって魅力的に仕上がっている
あわせて読みたい
【衝撃】EUの難民問題の狂気的縮図!ポーランド・ベラルーシ国境での、国による非人道的対応:映画『人…
上映に際し政府から妨害を受けたという映画『人間の境界』は、ポーランド・ベラルーシ国境で起こっていた凄まじい現実が描かれている。「両国間で中東からの難民を押し付け合う」という醜悪さは見るに絶えないが、そのような状況下でも「可能な範囲でどうにか人助けをしたい」と考える者たちの奮闘には救われる思いがした
あわせて読みたい
【無謀】映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、脱北ルートに撮影隊が同行する衝撃のドキュメンタリー
北朝鮮からの脱北者に同行し撮影を行う衝撃のドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』は、再現映像を一切使用していない衝撃的な作品だ。危険と隣り合わせの脱北の道程にカメラもついて回り、北朝鮮の厳しい現状と共に、脱北者が置かれた凄まじい状況を映し出す内容に驚かされてしまった
あわせて読みたい
【脅迫】原発という巨大権力と闘ったモーリーン・カーニーをイザベル・ユペールが熱演する映画『私はモ…
実話を基にした映画『私はモーリーン・カーニー』は、前半の流れからはちょっと想像もつかないような展開を見せる物語だ。原発企業で従業員の雇用を守る労働組合の代表を務める主人公が、巨大権力に立ち向かった挙げ句に自宅で襲撃されてしまうという物語から、「良き被害者」という捉え方の”狂気”が浮かび上がる
あわせて読みたい
【現実】我々が食べてる魚は奴隷船が獲ったもの?映画『ゴースト・フリート』が描く驚くべき漁業の問題
私たちは、「奴隷」が獲った魚を食べているのかもしれない。映画『ゴースト・フリート』が描くのは、「拉致され、数十年も遠洋船上に隔離されながら漁をさせられている奴隷」の存在だ。本作は、その信じがたい現実に挑む女性活動家を追うドキュメンタリー映画であり、まさに世界が関心を持つべき問題だと思う
あわせて読みたい
【衝撃】映画『誰がハマーショルドを殺したか』は、予想外すぎる着地を見せる普通じゃないドキュメンタリー
国連事務総長だったハマーショルドが乗ったチャーター機が不審な墜落を遂げた事件を、ドキュメンタリー映画監督マッツ・ブリュガーが追う映画『誰がハマーショルドを殺したか』は、予想もつかない衝撃の展開を見せる作品だ。全世界を揺るがしかねない驚きの”真実”とは?
あわせて読みたい
【狂気】入管の収容所を隠し撮りした映画『牛久』は、日本の難民受け入れ問題を抉るドキュメンタリー
映画『牛久』は、記録装置の持ち込みが一切禁じられている入管の収容施設に無許可でカメラを持ち込み、そこに収容されている難民申請者の声を隠し撮りした映像で構成された作品だ。日本という国家が、国際標準と照らしていかに酷い振る舞いをしているのかが理解できる衝撃作である
あわせて読みたい
【驚愕】ベリングキャットの調査報道がプーチンを追い詰める。映画『ナワリヌイ』が示す暗殺未遂の真実
弁護士であり、登録者数640万人を超えるYouTuberでもあるアレクセイ・ナワリヌイは、プーチンに対抗して大統領選挙に出馬しようとしたせいで暗殺されかかった。その実行犯を特定する調査をベリングキャットと共に行った記録映画『ナワリヌイ』は、現実とは思えないあまりの衝撃に満ちている
あわせて読みたい
【信念】9.11後、「命の値段」を計算した男がいた。映画『WORTH』が描く、その凄絶な2年間(主演:マイ…
9.11テロの後、「被害者の『命の値段』を算出した男」がいたことをご存知だろうか?映画『WORTH』では、「被害者遺族のために貢献したい」と無償で難題と向き合うも、その信念が正しく理解されずに反発や対立を招いてしまった現実が描かれる。実話を基にしているとは思えない、凄まじい物語だ
あわせて読みたい
【デモ】クーデター後の軍事政権下のミャンマー。ドキュメンタリーさえ撮れない治安の中での映画制作:…
ベルリン国際映画祭でドキュメンタリー賞を受賞したミャンマー映画『ミャンマー・ダイアリーズ』はしかし、後半になればなるほどフィクショナルな映像が多くなる。クーデター後、映画制作が禁じられたミャンマーで、10人の”匿名”監督が死を賭して撮影した映像に込められた凄まじいリアルとは?
あわせて読みたい
【真実】田原総一朗✕小泉純一郎!福島原発事故後を生きる我々が知るべき自然エネルギーの可能性:映画『…
田原総一朗が元総理・小泉純一郎にタブー無しで斬り込む映画『放送不可能。「原発、全部ウソだった」』は、「原発推進派だった自分は間違っていたし、騙されていた」と語る小泉純一郎の姿勢が印象的だった。脱原発に舵を切った小泉純一郎が、原発政策のウソに斬り込み、再生可能エネルギーの未来を語る
あわせて読みたい
【映画】『戦場記者』須賀川拓が、ニュースに乗らない中東・ウクライナの現実と報道の限界を切り取る
TBS所属の特派員・須賀川拓は、ロンドンを拠点に各国の取材を行っている。映画『戦場記者』は、そんな彼が中東を取材した映像をまとめたドキュメンタリーだ。ハマスを巡って食い違うガザ地区とイスラエル、ウクライナ侵攻直後に現地入りした際の様子、アフガニスタンの壮絶な薬物中毒の現実を映し出す
あわせて読みたい
【狂気?】オウム真理教を内部から映す映画『A』(森達也監督)は、ドキュメンタリー映画史に残る衝撃作だ
ドキュメンタリー映画の傑作『A』(森達也)をようやく観られた。「オウム真理教は絶対悪だ」というメディアの報道が凄まじい中、オウム真理教をその内部からフラットに映し出した特異な作品は、公開当時は特に凄まじい衝撃をもたらしただろう。私たちの「当たり前」が解体されていく斬新な一作
あわせて読みたい
【生還】内戦下のシリアでISISに拘束された男の実話を基にした映画『ある人質』が描く壮絶すぎる現実
実話を基にした映画『ある人質 生還までの398日』は、内戦下のシリアでISISに拘束された男の壮絶な日々が描かれる。「テロリストとは交渉しない」という方針を徹底して貫くデンマーク政府のスタンスに翻弄されつつも、救出のために家族が懸命に奮闘する物語に圧倒される
あわせて読みたい
【衝撃】匿名監督によるドキュメンタリー映画『理大囲城』は、香港デモ最大の衝撃である籠城戦の内部を映す
香港民主化デモにおける最大の衝撃を内側から描く映画『理大囲城』は、とんでもないドキュメンタリー映画だった。香港理工大学での13日間に渡る籠城戦のリアルを、デモ隊と共に残って撮影し続けた匿名監督たちによる映像は、ギリギリの判断を迫られる若者たちの壮絶な現実を映し出す
あわせて読みたい
【あらすじ】映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』で描かれる、グアンタナモ”刑務所”の衝撃の実話は必見
ベネディクト・カンバーバッチが制作を熱望した衝撃の映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、アメリカの信じがたい実話を基にしている。「9.11の首謀者」として不当に拘束され続けた男を「救おうとする者」と「追い詰めようとする者」の奮闘が、「アメリカの闇」を暴き出す
あわせて読みたい
【あらすじ】嵐莉菜主演映画『マイスモールランド』は、日本の難民問題とクルド人の現状、入管の酷さを描く
映画『マイスモールランド』はフィクションではあるが、「日本に住む難民の厳しい現実」をリアルに描き出す作品だ。『東京クルド』『牛久』などのドキュメンタリー映画を観て「知識」としては知っていた「現実」が、当事者にどれほどの苦しみを与えるのか想像させられた
あわせて読みたい
【あらすじ】死刑囚を救い出す実話を基にした映画『黒い司法』が指摘する、死刑制度の問題と黒人差別の現実
アメリカで死刑囚の支援を行う団体を立ち上げた若者の実話を基にした映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、「死刑制度」の存在価値について考えさせる。上映後のトークイベントで、アメリカにおける「死刑制度」と「黒人差別」の結びつきを知り、一層驚かされた
あわせて読みたい
【事件】デュポン社のテフロン加工が有害だと示した男の執念の実話を描く映画『ダーク・ウォーターズ』
世界的大企業デュポン社が、自社製品「テフロン」の危険性を40年以上前に把握しながら公表せず、莫大な利益を上げてきた事件の真相を暴き出した1人の弁護士がいる。映画『ダーク・ウォーターズ』は、大企業相手に闘いを挑み、住民と正義のために走り続けた実在の人物の勇敢さを描き出す
あわせて読みたい
【現実】権力を乱用する中国ナチスへの抵抗の最前線・香港の民主化デモを映す衝撃の映画『時代革命』
2019年に起こった、逃亡犯条例改正案への反対運動として始まった香港の民主化デモ。その最初期からデモ参加者たちの姿をカメラに収め続けた。映画『時代革命』は、最初から最後まで「衝撃映像」しかない凄まじい作品だ。この現実は決して、「対岸の火事」ではない
あわせて読みたい
【憤り】世界最強米海軍4人VS数百人のタリバン兵。死線を脱しただ1人生還を果たした奇跡の実話:『アフ…
アフガニスタンの山中で遭遇した羊飼いを見逃したことで、数百人のタリバン兵と死闘を繰り広げる羽目に陥った米軍最強部隊に所属する4人。奇跡的に生き残り生還を果たした著者が記す『アフガン、たった一人の生還』は、とても実話とは信じられない凄まじさに満ちている
あわせて読みたい
【アメリカ】長崎の「原爆ドーム」はなぜ残らなかった?爆心地にあった「浦上天主堂」の数奇な歴史:『…
原爆投下で半壊し、廃墟と化したキリスト教の大聖堂「浦上天主堂」。しかし何故か、「長崎の原爆ドーム」としては残されず、解体されてしまった。そのため長崎には原爆ドームがないのである。『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』は、「浦上天主堂」を巡る知られざる歴史を掘り下げ、アメリカの強かさを描き出す
あわせて読みたい
【不安】環境活動家グレタを追う映画。「たったひとりのストライキ」から国連スピーチまでの奮闘と激変…
環境活動家であるグレタのことを、私はずっと「怒りの人」「正義の人」だとばかり思っていた。しかしそうではない。彼女は「不安」から、いても立ってもいられずに行動を起こしただけなのだ。映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』から、グレタの実像とその強い想いを知る
あわせて読みたい
【衝撃】権力の濫用、政治腐敗を描く映画『コレクティブ』は他人事じゃない。「国家の嘘」を監視せよ
火災で一命を取り留め入院していた患者が次々に死亡した原因が「表示の10倍に薄められた消毒液」だと暴き、国家の腐敗を追及した『ガゼタ』誌の奮闘を描く映画『コレクティブ 国家の嘘』は、「権力の監視」が機能しなくなった国家の成れの果てが映し出される衝撃作だ
あわせて読みたい
【信念】水俣病の真実を世界に伝えた写真家ユージン・スミスを描く映画。真実とは「痛みへの共感」だ:…
私はその存在をまったく知らなかったが、「水俣病」を「世界中が知る公害」にした報道写真家がいる。映画『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病の真実を世界に伝えたユージン・スミスの知られざる生涯と、理不尽に立ち向かう多くの人々の奮闘を描き出す
あわせて読みたい
【日常】難民問題の現状をスマホで撮る映画。タリバンから死刑宣告を受けた監督が家族と逃避行:『ミッ…
アフガニスタンを追われた家族4人が、ヨーロッパまで5600kmの逃避行を3台のスマホで撮影した映画『ミッドナイト・トラベラー』は、「『難民の厳しい現実』を切り取った作品」ではない。「家族アルバム」のような「笑顔溢れる日々」が難民にもあるのだと想像させてくれる
あわせて読みたい
【凄絶】北朝鮮の”真実”を描くアニメ映画。強制収容所から決死の脱出を試みた者が語る驚愕の実態:『ト…
在日コリアン4世の監督が、北朝鮮脱北者への取材を元に作り上げた壮絶なアニメ映画『トゥルーノース』は、私たちがあまりに恐ろしい世界と地続きに生きていることを思い知らせてくれる。最低最悪の絶望を前に、人間はどれだけ悪虐になれてしまうのか、そしていかに優しさを発揮できるのか。
あわせて読みたい
【弾圧】香港デモの象徴的存在デニス・ホーの奮闘の歴史。注目の女性活動家は周庭だけじゃない:映画『…
日本で香港民主化運動が報じられる際は周庭さんが取り上げられることが多いが、香港には彼女よりも前に民主化運動の象徴的存在として認められた人物がいる。映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』の主人公であるスター歌手の激動の人生を知る
あわせて読みたい
【残念】日本の「難民受け入れ」の現実に衝撃。こんな「恥ずべき国」に生きているのだと絶望させられる…
日本の「難民認定率」が他の先進国と比べて異常に低いことは知っていた。しかし、日本の「難民」を取り巻く実状がこれほど酷いものだとはまったく知らなかった。日本で育った2人のクルド人難民に焦点を当てる映画『東京クルド』から、日本に住む「難民」の現実を知る
あわせて読みたい
【危険】遺伝子組換え作物の問題点と、「食の安全」を守るために我々ができることを正しく理解しよう:…
映画『食の安全を守る人々』では、世界的バイオ企業「モンサント社」が作る除草剤「ラウンドアップ」の問題を中心に、「食の安全」の現状が映し出される。遺伝子組み換え作物や輸入作物の残留農薬など、我々が口にしているものの「実態」を理解しよう
あわせて読みたい
【課題】原子力発電の廃棄物はどこに捨てる?世界各国、全人類が直面する「核のゴミ」の現状:映画『地…
我々の日常生活は、原発が生み出す電気によって成り立っているが、核廃棄物の最終処分場は世界中で未だにどの国も決められていないのが現状だ。映画『地球で最も安全な場所を探して』をベースに、「核のゴミ」の問題の歴史と、それに立ち向かう人々の奮闘を知る
あわせて読みたい
【誤解】世界的大ベストセラー『ファクトフルネス』の要約。我々は「嘘の情報」を信じ込みやすい
世界の現状に関する13の質問に対して、ほとんどの人が同じ解答をする。最初の12問は不正解で、最後の1問だけ正答するのだ。世界的大ベストセラー『ファクトフルネス』から、「誤った世界の捉え方」を認識し、情報を受け取る際の「思い込み」を払拭する。「嘘の情報」に踊らされないために読んでおくべき1冊だ
あわせて読みたい
【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』…
NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
あわせて読みたい
【驚愕】「金正男の殺人犯」は”あなた”だったかも。「人気者になりたい女性」が陥った巧妙な罠:映画『…
金正男が暗殺された事件は、世界中で驚きをもって報じられた。その実行犯である2人の女性は、「有名にならないか?」と声を掛けられて暗殺者に仕立て上げられてしまった普通の人だ。映画『わたしは金正男を殺していない』から、危険と隣り合わせの現状を知る
あわせて読みたい
【ゴミ】プラスチックによる環境問題の実態を描く衝撃の映画。我々は現実をあまりに知らない:映画『プ…
プラスチックごみによる海洋汚染は、我々の想像を遥かに超えている。そしてその現実は、「我々は日常的にマイクロプラスチックを摂取している」という問題にも繋がっている。映画『プラスチックの海』から、現代文明が引き起こしている環境破壊の現実を知る
あわせて読みたい
【課題】原子力発電の廃棄物はどこに捨てる?世界各国、全人類が直面する「核のゴミ」の現状:映画『地…
我々の日常生活は、原発が生み出す電気によって成り立っているが、核廃棄物の最終処分場は世界中で未だにどの国も決められていないのが現状だ。映画『地球で最も安全な場所を探して』をベースに、「核のゴミ」の問題の歴史と、それに立ち向かう人々の奮闘を知る
あわせて読みたい
【危機】遺伝子組み換え作物の危険性を指摘。バイオ企業「モンサント社」の実態を暴く衝撃の映画:映画…
「遺伝子組み換え作物が危険かどうか」以上に注目すべきは、「モンサント社の除草剤を摂取して大丈夫か」である。種子を独占的に販売し、農家を借金まみれにし、世界中の作物の多様性を失わせようとしている現状を、映画「モンサントの不自然な食べもの」から知る
あわせて読みたい
【意外】思わぬ資源が枯渇。文明を支えてきた”砂”の減少と、今後我々が変えねばならぬこと:『砂と人類』
「砂が枯渇している」と聞いて信じられるだろうか?そこら中にありそうな砂だが、産業用途で使えるものは限られている。そしてそのために、砂浜の砂が世界中で盗掘されているのだ。『砂と人類』から、石油やプラスチックごみ以上に重要な環境問題を学ぶ
あわせて読みたい
【恐怖】SNSの危険性と子供の守り方を、ドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』で学ぶ
実際にチェコの警察を動かした衝撃のドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』は、少女の「寂しさ」に付け込むおっさんどもの醜悪さに満ちあふれている。「WEBの利用制限」だけでは子どもを守りきれない現実を、リアルなものとして実感すべき
あわせて読みたい
【衝撃】壮絶な戦争映画。最愛の娘を「産んで後悔している」と呟く母らは、正義のために戦場に留まる:…
こんな映画、二度と存在し得ないのではないかと感じるほど衝撃を受けた『娘は戦場で生まれた』。母であり革命家でもあるジャーナリストは、爆撃の続くシリアの街を記録し続け、同じ街で娘を産み育てた。「知らなかった」で済ませていい現実じゃない。
あわせて読みたい
【勇敢】日本を救った吉田昌郎と、福島第一原発事故に死を賭して立ち向かった者たちの極限を知る:『死…
日本は、死を覚悟して福島第一原発に残った「Fukushima50」に救われた。東京を含めた東日本が壊滅してもおかしくなかった大災害において、現場の人間が何を考えどう行動したのかを、『死の淵を見た男』をベースに書く。全日本人必読の書
あわせて読みたい
【議論】安楽死のできない日本は「死ぬ権利」を奪っていると思う(合法化を希望している):『安楽死を…
私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
あわせて読みたい
【希望】貧困の解決は我々を豊かにする。「朝ベッドから起きたい」と思えない社会を変える課題解決:『…
現代は、過去どの時代と比べても安全で清潔で、豊かである。しかしそんな時代に、我々は「幸せ」を実感することができない。『隷属なき道』をベースに、その理由は一体なんなのか何故そうなってしまうのかを明らかにし、さらに、より良い暮らしを思い描くための社会課題の解決に触れる
この記事を読んでくれた方にオススメのタグページ
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
戦争・世界情勢【本・映画の感想】 | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
日本に生きているとなかなか実感できませんが、常に世界のどこかで戦争が起こっており、なくなることはありません。また、テロや独裁政権など、世界を取り巻く情勢は様々で…
タグ一覧ページへのリンクも貼っておきます
ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
記事検索(カテゴリー・タグ一覧) | ルシルナ | 映画と本の感想ブログ
ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
コメント