目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
監督:ニコライ・アーセル, 出演:マッツ・ミケルセン, 出演:アマンダ・コリン, 出演:シモン・ベンネビヤーグ, 出演:メリナ・ハグバーグ
¥400 (2025/09/17 06:22時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- ユトランド半島の「ヒース」は何故「開拓不可能」と言われ、そしてケーレンは何故そんな土地の開拓に挑もうとしたのか?
- 「そこは俺の土地だ」と言いがかりをつける貴族シンケルからのムチャクチャな嫌がらせにケーレンは抵抗し続けた
- 「鶏を盗む少女」との関わりを起点とする、ケーレンのある驚くべき決断とは?
原題とも英題とも異なる邦題『愛を耕すひと』が実に絶妙だと感じさせる内容で、実話を元にしていることにも驚かされた
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これはなかなか素敵な映画だった。ただ、どこまで事実なのかは気になるところだ。本作で描かれているのは1755年から始まる18世紀の話であり、かなり昔の出来事である。また、主人公は確かに偉業を成した人物ではあるのだが、本作での描かれ方を踏まえると、「主人公が何か記録を書き残していない限り、事実の詳細は分からない」というのが実際のところではないかと思う。公式HPによると「実話を元にした歴史小説」をベースにしているそうなので、「ある程度創作が含まれているのだろう」という理解をしている。
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また、実話かどうかの話で言えば、ラストシーンが本当にあった出来事なのかはとても気になるところだ。最後の最後、私は劇場でリアルに「嘘でしょ」と小さく呟いてしまった。「基本的には実話なのだろう」と思いながら物語を追っていたからこその反応なわけだが、さすがにその展開はあり得ないような気がする。実際のところ、どうなのだろうか。
映画『愛を耕すひと』の内容紹介
それでは、本作の主人公であるルドヴィ・ケーレンがどんな偉業を成し遂げたのかを中心に、本作の設定について書いていこうと思う。
舞台となるのは18世紀のデンマーク。当時ユトランド半島には「ヒース」と呼ばれる不毛な土地があった。それまでにも多くの人が開拓に挑戦し入植を目指してきたものの、どの試みもすべて跳ね除けてきた荒れ地である。デンマークでは既に、「ヒースは開拓不可能」とさえ考えられていたぐらいだ。
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そんな土地の開拓に名乗りを挙げたのがケーレンである。彼は、父親は不明、母親は使用人、本人は元庭師という経歴ながら、25年かけて大尉にまで上り詰めたにも拘らず、退役後の1755年には救貧院にいたほど困窮していた。そこでこの現状を打破すべく財務省へと出向き、「ヒースの開拓をやらせてほしい」と訴えたのである。
もちろん彼の提案は鼻であしらわれた。「これまで何人も挑戦してダメだったものに、金なんか出せるか」というわけだ。しかしケーレンは驚きの提案をする。「金は自分で工面する」というのだ。困窮はしているが、軍の年金が支給されるから、それでどうにか生活するという。そしてケーレンがそう言ってから風向きが変わっていく。
というのも実は、ヒースの開拓は国王の悲願だったからだ。そのため財務省としてもただ手をこまねいているわけにもいかず、「だったらこの男を送り出せば我々の顔も立つのではないか。まあどうせ無理だろうが」みたいに考えるようになったのだ。ケーレンは、「開拓が成功した暁には貴族の称号、そして相応の土地と使用人がほしい」と条件を提示し、財務省から許可を得る。こうしてケーレンは無謀な挑戦に踏み出すことになったのである。
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たった1人でヒースにやってきたケーレンは、しばらくの間ずっと、ただ黙々と土と掘り返してはその状態を見ることを繰り返していた。少しでも良い土壌を探し、そこを拠点に開拓を進めようというのだろう。さて、デンマークの国土は九州とほぼ同じぐらいらしい。さらに作中でケーレンは財務省の面々に、「国土の1/3が未開拓なのは不名誉では?」と話していた。となると、「ヒース」の広さは九州の1/3程度、つまり「九州地方から2つの県を選んだその合計」ぐらいの広さになるんじゃないだろうか。「そんな広大な土地の土壌を手作業でチェックし最適な場所を探す」なんて作業から始まるほど途方もないプロジェクトなのである。
そしてケーレンは、ついに最適な場所を見つけた。そこからは拠点作りである。当面住む家を建てるための材料を手配し、さらに、領主の元から逃げ出した小作人夫妻を雇った。雇ったと言っても寝食を与えるだけで賃金は払わない。そしてそんな彼らとたった3人で、「不可能」と言われた開拓をスタートさせていくのだが……。
ケーレンの挑戦を邪魔しようとするクソみたいな貴族の存在
さて、こんな映画が作られるぐらいだから、「ケーレンが実際に開拓を成し遂げたこと」は明らかだと言っていいはずだし、この点に触れてもさすがにネタバレにはならないだろう。かなりの偉業と言っていいはずだし、国内で教科書に載るぐらいの知名度があるのかは分からないが(個人的には、伊能忠敬レベルの凄い人に思える)、いずれにせよ、称賛されて当然の人物であることは間違いないと思う。
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しかし本作は、「ルドヴィ・ケーレンって凄いことを成し遂げた人だよね!」みたいな内容では全然ない。さて、私は少し前に「伊能忠敬はかなりの偉人なのにあまり映像化されないのは、ただ歩いているだけで物語にならないからでは?」みたいなネットのまとめを目にしたのだが、「ヒースの開拓」にも似たところがあるかもしれない。「単に開拓物語を描く」というだけではたぶん、映画にはならなかったんじゃないかと思う。
であれば、本作では一体何がメインになるのか。それは「貴族との争い」である。ケーレンは、「お前が開拓している土地は俺のものだ」と難癖をつけてくる「貴族ゴロ」からの陰湿な嫌がらせと闘い続けなければならなかったのだ。そしてその争いこそが、本作の核となる物語なのである。
さて、本作で描かれるの争いは、大小2つに大別出来るだろう。大きい方が「貴族ゴロ」とのバトルで、まずはこちらから説明しよう。
ケーレンが「ここが最適だ」と見定めた土地の近くに、シンケルという裁判官が居を構えていた。彼は、「貴族になったことが分かりやすいように」という理由で、自分で勝手に「デ」を付け足して「デ・シンケル」と名乗っていたほど自己顕示欲が強いタイプである。親から譲り受けた広大な土地と屋敷を有する領主であり、気に入らない者がいればメイドでも誰でも殺してしまうようなムチャクチャな性格だった。それでいて、有力者であることは間違いないわけで、ノルウェーの貴族が「是非婚約者に」と自身の娘を送り込むほどだ(当のエレルにはシンケルと結婚するつもりなどまったくないのだが)。
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そしてこのシンケルが「そこは俺の土地だから勝手なことはするな」と難癖つけてくるのである。ケーレンが「あそこは王領地だ」「国王から付託を受けている」と主張しても耳を貸さず、また「お前の土地だという証拠はあるのか?」とシンケルを問い詰めても「測量図を無くしてしまった」とのらりくらりかわすばかり。そんな人物が裁判官だという事実にも絶望させられるが、さらに彼はその権力を不当に行使し、「◯◯しなければ捕まえるぞ」「◯◯すれば罪を見逃してやる」みたいな交渉をケーレンに持ちかけてくるのだ。
とにかく死ぬほど嫌なヤツである。とはいえ恐らくだが、当時の貴族としてはデフォルトというか「あるある」だったのではないかとも思う。「ここが最適」と見定めた場所の近くにたまたまそんなクソみたいな人間がいたという不運に、ケーレンは対処しなければならなかったのだ。
ケーレンはとにかく、シンケルに対して毅然とした態度を取り続け、どんな懐柔にもなびかなかった。実はケーレンのところには元々もっと働き手がいたのだが(しばらくしてから増えたのである)、シンケルが「今の2倍の賃金を出す」と言ってどんどんと奪っていくので(もちろんケーレンへの嫌がらせだ)、結局残ったのは小作人夫妻だけという状況になってしまう。それでも彼は闘い続けたのである。ちなみに、この小作人夫妻がケーレンの元を離れなかった理由はシンプルだ。彼らは、まさにシンケルの元から逃げ出したのである。シンケルに見つかれば何をされるか分からない彼らは、無給でもここにいるしかないのだ。
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しかし、ケーレンに雇われているヨハネスとアン・バーバラ夫妻も、ケーレンの元から離れたいと思っている。確かに「領主の元から逃げ出した小作人は違法」であり、そんな立場では多くを望めないと分かってはいるのだが、それにしたってケーレンの待遇は酷いと感じているのだ。詳しく触れはしないが、ケーレンは「貴族の称号を得るため」だけに開拓を目指しているので、手伝ってくれる者たちのことを大事にしようなどとは考えていないのだと思う。そんなわけで2人は、「しばらくしたらここを出よう」と相談しているのだ。そうなれば、ケーレンにとってはさらに打撃となることは間違いない。
シンケルが提示する条件を呑みさえすれば資金も人手も潤沢に手に入ることはもちろんケーレンには分かっていた。しかしそれは、「ケーレンがシンケルの小作人になること」を意味している。開拓が終わった後、そこからの収穫をシンケルと分け合わなければならないのだ。貴族を目指しているケーレンには、とても呑める条件ではなかった。
そこでケーレンは、”奇策”と言っていいだろう大胆な方法でこの窮地を乗り越えようとするのである。
貴族からの嫌がらせにも負けずに、ケーレンは粛々と開拓を続けていく
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開拓を始めた当初から、住処の作った鶏小屋から鶏がよく盗まれていた。少女が忍び込んで盗んでいるようだ。ケーレンには実は、その少女の存在に心当たりがあったため、ある夜、待ち伏せして捕まえた少女に無理やり案内させる形で、目的の場所へと辿り着いた。
そこは南方に住むタタール人の棲み処である。デンマークではどうやらタタール人は嫌われているようで、彼らは山の中で集団生活をしていた。少女が鶏を好き放題盗めたのも、タタール人だったからだ。ケーレンが雇った者たちに「鶏を盗む者をどうして捕まえないのか?」と聞くと、「南方の子は不吉だから」と返していた。盗みを咎めることさえ避けたいぐらい関わりたくないということなのだろう。
そしてケーレンは、そんな彼らを開拓民として働かせようと考えていた。とはいえ、当時の法律ではどうも、「タタール人を雇うこと」は違法だったようである。しかしケーレンは、そんなことは承知の上で、開拓を成功させるために彼らに手伝わせようと決めたのだ。
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こんな風にしてケーレンは、シンケルからの嫌がらせにも屈することなく、「開拓を成功させて貴族になる」という自身の目標のために突き進むのである。とはいえ、やはり貴族も強い。特に先述した通り、シンケル自身が裁判官なのだから、「シンケルは何をしても罰されない」と言える。だから狂気的な振る舞いも含め、あの手この手でケーレンを追い詰めるのだ。徒手空拳の退役軍人に出来ることは決して多くはないし、結局彼はじわじわと押し込まれ、かなりの窮地に追い込まれてしまうのだ。
それでもケーレンは、このような大変な状況の中で実際に開拓を成し遂げ、見事貴族の称号を獲得する。しかし、この話にはさらに別の要素が組み込まれており、それが小さい方の争いに関係しているのだ。
父娘のような関係になるケーレンとアンマイ・ムス、そして彼の信じがたい決断
鶏を盗んだことでタタール人の棲み処を案内させられることになった少女アンマイ・ムスは、色々あってタタール人とは離れ、ケーレンたちと一緒に暮らすことになる。なんとなく「疑似家族」のようになっていくというわけだ。しかし、ケーレンの不屈の努力によって開拓が進み、その成果が認められて実際に入植者が送られてくるようになると、彼女の存在が問題として浮上することになる。やはり、「不吉な南方の子どもがいる」という事実に対して、入植者が不信感を抱くようになるのだ。
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さて、この問題が物語の中で具体的にどう関わってくるのかについては、後半の展開に関わる話なので詳しくは触れないことにしよう。本作では、表向きはとにかく「ケーレンによる開拓」と「ケーレンとシンケルの争い」がずっと描かれている。ただその背後では、はっきりとは見えないものの明らかに「ケーレンの内的変化」が起こっていて、後半は特にその「内的変化」に焦点が当てられるというわけだ。
この変化は凄く素敵なものなので、少し抽象的な形で触れておきたいのだが、要するに「ケーレンの目的が変わってしまった」ということなのだと思う。本作ではケーレンはとにかく無口な存在なので、はっきり断言できることは少ない。ただ、恐らくケーレン自身でさえ想定していなかった変化が自身の中で起こり、そのことがケーレンの意識を決定的に変えてしまったのだと思う。そのことは、本作のラスト付近で字幕表記されるある事実によっても理解できるだろう。ケーレンのその判断・行動には、ちょっと驚かされてしまった。
そしてそういう本作後半の展開を踏まえると、『愛を耕すひと』という邦題は作品にもの凄く合っているなと思う。
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デンマーク語の原題は『Bastarden』で、これは「私生児」「ロクデナシ」というような意味だそうだ。また、英題の『The Promised Land』は「約束の地」というような意味だろう。どちらも確かに、作品の内容に合っていると言えば合っている。しかし私の感触では、何よりも作品の雰囲気に合っているのは邦題の『愛を耕すひと』だと思う。まさに「耕す」という行為によって「愛」が成長していくような物語だからだ。
特に、先程も触れたが「字幕表記されるある事実」はちょっと衝撃的だった。いやもちろん、この記事の冒頭で言及した「ラストの結末」がもし事実なら驚きはそちらの方が上だが、さすがにこれはフィクションではないかという気がする。そして、「今の私の認識の中で事実だと確定していること」の中では、ケーレンのこの決断が最も驚きというわけだ。ただ、それまで物語を追ってきた観客目線で言えば、「そうであってくれて良かった」みたいな安堵感さえ抱かされるのではないかと思う。本作は様々な意味で「救いが少ない物語」なのだが、字幕で表記されたこの事実は、本作における大きな救いと言っていいはずだ。
しかしそうなると逆に、「開拓に着手する前、つまり軍人時代には『そういう経験』はなかったのだろうか」みたいにも感じるだろう。そして、ケーレンの過去についてはほとんど詳しく描かれないので詳細は分からないものの、彼がした決断を踏まえれば、やはり何もなかったと考えるのが自然なのだと思う。このように、後半で示唆されるケーレンのある行動は、ケーレンその人についても想像させるものだと言えるだろう。
そんな、実に興味深い物語だった。
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最後に
本作は、邦題やメインビジュアルなどからはちょっと想像できないハードさを含む作品で、思いがけない内容に驚かされる人も多いかもしれない。「そういう時代だったから仕方ない」と言えばそれまでではあるのだが、胸糞悪いシーンもかなり多く、不快感を覚える人も多いのではないかと思う。
とはいえ、何だかんだ良い話ではある。セリフがほとんどないのであくまでも観る側の想像に委ねられてはいるものの、「ケーレンの内的変化」の描写はなかなか良くて、ラストの展開はかなり素敵に感じられるだろう。また、この記事ではあまり触れなかったが、小作人の妻であるアン・バーバラもとても良い雰囲気を醸し出していて、特に、彼女にとって最大の”見せ場”(と言っていいかは悩ましいが)のインパクトは凄まじいものがあったなと思う。
人物の存在感にも物語の展開にもどちらも惹きつけられた、非常に印象的な作品である。
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【あらすじ】映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』で描かれる、グアンタナモ”刑務所”の衝撃の実話は必見
ベネディクト・カンバーバッチが制作を熱望した衝撃の映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、アメリカの信じがたい実話を基にしている。「9.11の首謀者」として不当に拘束され続けた男を「救おうとする者」と「追い詰めようとする者」の奮闘が、「アメリカの闇」を暴き出す
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『殺人犯はそこにいる』(文庫X)で凄まじい巨悪を暴いた清水潔は、それよりずっと以前、週刊誌記者時代にも「桶川ストーカー殺人事件」で壮絶な取材を行っていた。著者の奮闘を契機に「ストーカー規制法」が制定されたほどの事件は、何故起こり、どんな問題を喚起したのか
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【あらすじ】蝦夷地の歴史と英雄・阿弖流為を描く高橋克彦の超大作小説『火怨』は全人類必読の超傑作
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孤独・寂しい・友達【本・映画の感想】 | ルシルナ
孤独と向き合うのは難しいものです。友達がいないから学校に行きたくない、社会人になって出会いがない、世の中的に他人と会いにくい。そんな風に居場所がないと思わされて…
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