目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ダースレイダー, 出演:プチ鹿島, 出演:玉城デニー, 出演:佐喜真淳, 出演:下地幹郎, 監督:ダースレイダー, 監督:プチ鹿島, プロデュース:大島新, プロデュース:前田亜紀
ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 「普天間基地の辺野古移設問題」の経緯や本質などについて、非常に分かりやすく説明してくれる作品
- 基地移設問題と併せて、「”沖縄の民意”が無視され続けてきた」という現実が映し出される
- 結局のところ、「私たち国民が沖縄に関心を持ってこなかったこと」がすべての問題の本質と言えるだろう
「『選挙』や『国防』をひっくるめた『政治』全般に、もっと関心を抱かなければならない」と自戒を込めて思う
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
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私は選挙に限らず、「政治」全般に対してどうしても強く関心を向けることが出来ない。平均的な人と比べれば恐らく関心の度合いは高いはずだが、「いち国民としてこれぐらいの関心を抱いておくべき」というラインにはまず達していないだろう。そしてだからこそ、本作のような作品に触れると自身の「無知」を認識させられるし、個人的にそれはとても良いことだと感じている。
さて、そのような観点から本作の良さを挙げるなら、監督であり出演者でもあるダースレイダーとプチ鹿島の2人が、随所で「自分たちも沖縄について全然知らなくて」と口にしてくれることだろう。もちろん彼らは、我々一般人と比べたら遥かに知識を持っていると思う。それでもやはり、彼らがそのようなスタンスで目の前の状況に接してくれることで、観る側もあまり構えすぎずに済む気がする。そういう意味でも良い作品と言えるだろう。
今回も前作同様、前半は2人が知事選の様子を追いかけていくという展開になる。街頭演説を見たり、応援演説を聞きに行ったりするというわけだ。ただその辺りの話は後で触れることにしよう。この記事ではまず、映画後半で取り上げられる「普天間基地の辺野古移設問題」について書いていくことにする。
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普天間基地の辺野古への移設案は何故浮上したのか?
本作では選挙戦が映し出されるのは前半だけで、後半は、ダースレイダーとプチ鹿島の2人が、専門家から話を聞きながら「普天間基地の辺野古移設問題」について掘り下げるという内容になっていく。もちろんこれは、今も続く「沖縄が(もちろん正確には「日本が」ではあるが)抱える大きな問題」の1つなのだが、本作で取り上げられていたのは、これが知事選の争点の1つになっていたからである。
というわけで、作中で語られていた内容を踏まえた上で、私なりに「普天間基地の辺野古移設問題」についてまとめてみたいと思う。もし、以下の記述に何か誤りがあれば、私の知識不足・理解不足によるものだと考えてほしい。
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もちろん私も、「普天間基地を辺野古に移設する」という話を耳にしたことぐらいはある。新聞は読まないが、テレビのニュース・報道番組はなるべく見るようにしているので、そこで語られる程度の話であれば理解しているつもりだ。しかしやはり、問題の経緯や本質などについては全然理解できていなかった。
沖縄には複数の米軍基地が今も存在しており、基地を巡る問題の歴史はとても長い。普天間基地に限らず様々な問題が残っているわけだが、辺野古が関係してくるのは1996年の「普天間基地の返還の合意」ががきっかけである。そしてその条件として、「普天間基地の辺野古移設」が決まったというわけだ。
ではそもそもの話、何故普天間基地の移設の話が出てきたのだろうか? その理由は、「普天間基地が『世界一危険な基地』だから」なのだそうだ。本作でも2人が訪れていたが、普天間基地に隣接する沖縄国際大学に米軍のヘリが墜落した事件はまだまだ記憶に新しいだろう。住宅地が密集する地域に普天間基地が存在していることもあり、以前から「事故が多発して危険だからどうにかしなければ」という問題意識があったそうだ。
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また、そもそも普天間基地は日本の航空法に抵触しているのだという。だから普通であれば、その存在自体が許容されるはずがない。しかし日米地位協定により、普天間基地は「国内法の適用が免除される」と決められている。そのため、航空法に抵触した状態でも基地が存続出来ていたというわけだ。そのような事情もあって、辺野古移設の話がまとまったのである。
しかし、本作に登場する沖縄国際大学の教授は、「そもそも『普天間基地を移設する』という話自体が欺瞞である」と語っていた。というのも、「世界一危険な基地」は他にあるからだ。それは、こちらも沖縄にある嘉手納基地である。沖縄返還後の事故数で比較すると、普天間基地が18件なのに対し、嘉手納基地はなんと575件、実に30倍以上なのだ。基地の広さの違いもあるとはいえ、この差は相当なものと言えるだろう。
普天間基地返還の話が出る以前は、「嘉手納基地が危険だ」という話がよく取り沙汰されていたという。しかしアメリカは、嘉手納基地をは手放したくはなかった。そのため、「普天間基地が危険だ」という話にすり替え嘉手納基地から目を逸らしたのではないか、というのである。もしそうだとしたら、日本は「まったく本質的ではない問題」に振り回されているだけなのかもしれない。もちろん、普天間や辺野古に住む人には大問題なわけだが、より重要な問題が嘉手納基地にあるのであれば、やはり「目眩まし」みたいな印象になってしまうだろう。
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さて本作では、辺野古移設についてまた違った観点からの指摘もなされていた。アメリカはなんと、1960年代に辺野古に基地を作る計画を立てていたというのである。しかし当時はベトナム戦争の真っ只中。アメリカには予算がなく、この話は立ち消えになってしまった。では、この話を踏まえた上で「普天間基地の辺野古移設」を改めて捉え直してみよう。「移設費用」は当然日本持ちなのだから、アメリカからすれば「当初望んでいた場所(辺野古)にタダで基地を手に入れられる」という状況であるとも言えるだろう。このような観点からも、「アメリカの都合が全面に押し出された計画」と言えるのではないかと思う。
辺野古の「軟弱地盤」に関する様々な憶測
ニュース番組などでもよく報じられていたが、辺野古での基地建設はなかなか思うようには進んでいない。映画撮影時点では建設はストップしており、再開の目処は立っていなかった。そしてその理由の1つに、埋め立て予定地が「軟弱地盤」だと判明したことが挙げられる。そしてこの点についても、興味深い指摘がなされていた。
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先に紹介した教授によると、辺野古に基地を建設する計画を立てた1960年代の段階で、恐らくアメリカは軟弱地盤の存在を知っていたはずだという。というのも、当時の設計図によると、辺野古移設問題で発覚した軟弱地盤の部分だけ、基地建設計画から綺麗に除外されているからである。だとすると、偶然その場所を使わなかったみたいなことではなく、軟弱地盤の存在を知っていて避けたと考えるのが妥当だろう。
さてそうなると、作中で示唆されることではないのだが、「何故アメリカは、軟弱地盤の存在を日本に伝えなかったのだろうか?」という疑問が出てくるのも当然ではないかと思う。アメリカは普天間基地を辺野古に移設する計画を知っている。であれば、あらかじめ軟弱地盤の情報を伝えておくべきだろう。アメリカが辺野古移設を望んでいるとすれば、計画の支障となり得る軟弱地盤の存在は事前に共有しておく方が双方にとって都合が良いはずだ。
しかし結局アメリカは日本にその事実を伝えなかった。その理由については、色んな可能性が検討出来るだろう。例えば、1960年当時の建設計画について詳しく知る人物が政権内にいなかっただけなのかもしれない。しかし、強かなアメリカがそんな不手際をするものだろうかとも思う。となればやはり、「敢えて伝えなかった」と考えてみたくもなるだろう。
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では、その動機は一体何だろうか。アメリカの視点に立って考えてみよう。普天間基地の辺野古移設は日本が行うものであり、その過程で生じたことはすべて日本の責任となるはずだ。当然、「軟弱地盤が見つかって基地建設が出来ない」となれば、それも「日本の不手際」ということになる。そしてその場合アメリカは、「日本が基地移設を遂行できなかったのだから、我々はこのまま普天間基地を使い続けるしかない」という理屈を押し通そうするのではないだろうか。このように考えることで、「辺野古の軟弱地盤について伝えなかったのは、普天間基地をそのまま使用し続けるため」とも解釈できるのである。
普天間基地は「2034年までに移設する」と取り決めがなされているという。この記事を書いている時点からは10年後である。しかし、「10年後に返還する意思など無いだろう」と感じさせるくらい、今も普天間基地内には新たな建物が作られ続けているのだそうだ。もちろんその建設費が、日米どちらの予算から出ているのかによっても問題の捉え方は変わる。しかし、もし仮にアメリカの予算から出ているとすれば、「すぐ日本に返還する土地に、なぜ新しい建物を建設しているのか」と問題になるはずだろう。このような視点からも、「アメリカは普天間基地を手放すつもりがないのでは」という憶測が生まれてくるのである。
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知事選の公約として語られた「2030年までに普天間基地の返還を実現する」という発言の問題点
さて、本作で取り上げられている沖縄知事選では、このような複雑な背景を持つ「普天間基地の辺野古移設問題」が争点となっていた。その中でも特に問題視されていたのが、佐喜真淳候補の公約である。彼は「2030年までに普天間基地の返還を実現する」と主張していたのだ。ただ、知事選の様子が映し出されるのは本作前半であり、その時点で私はまだ問題の本質を理解できていなかったので、佐喜真淳のこの発言の何がマズいのか分からなかった。というわけで、ここでは少しその辺りの話に触れていこうと思う。
それでは少し、ここまでの情報を整理しておきたい。「普天間基地の返還」はそもそも、「危険な基地である」という理由から合意がなされた。さらにアメリカの理屈からすれば、「普天間基地をただ返還する」ことなど出来ないわけで、どこかにその機能を移さなければならない。そこで「辺野古に基地を移設する」という話が出てきた。また、普天間基地の返還は2034年までに行うと決まっている。つまり、「2034年までに辺野古に基地を作るので、それに合わせて普天間基地を返還する」という話になっているわけだ。しかし辺野古の基地建設は軟弱地盤の影響でストップしており、現状では2034年までに基地が完成する見込みはない。
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これが普天間基地と辺野古を巡る大雑把な現状である。
さてその上で、佐喜真淳の「2030年までに普天間基地の返還を実現する」という主張について見ていくことにしよう。彼はもちろん、「2034年までに辺野古に基地が完成するはずがない」ことは理解している。となると彼の先の主張は、「辺野古に基地が完成していない状態で、普天間基地の返還を実現させる」という意味になるはずだ。
しかし、この主張は矛盾している。繰り返すが、そもそも「辺野古への移設」の話が浮上したのは、「普天間基地の機能をどこかに移さなければ、基地の返還が出来ない」という理由からだった。しかし佐喜真淳は「普天間基地の機能を移す前に、普天間基地の返還を実現する」と主張している。となれば、普通に考えて、「もし本当にそんなことが実現できるなら、そもそも辺野古に基地を作る必要などない」ということになるはずだ。
そしてさらに、「辺野古に基地を移設しなくても普天間基地の返還が実現できるなら、何故2030年まで待たなければならないのか?」という話にもなるだろう。返還に時間が掛かる理由はやはり、「普天間基地の機能を別の場所に移してからでないと返還には応じられない」からであるはずだ。しかし、「基地機能を移すことなく返還出来る」と主張するのであれば、別に今すぐやればいい。2030年まで待つ必要などまったくないのである。
このように、佐喜真淳の公約は色んな意味で矛盾しており、とにかく意味不明でしかない。恐らく、基地移設問題について正しく理解できていないのだろうと思う。というか、選挙戦を追う2人がそんな佐喜真淳の発言の矛盾について問い質すべく、直接この点について質問をしたのだが、佐喜真淳からはなんと、「そもそも2030年までの返還は不可能です」という意味不明な答えが返ってきたのである。もはやなんのこっちゃ分からない。要するに佐喜真淳は、「不可能だと分かっていることを公約に掲げて知事選を闘っている」というわけだ。どういうことなのか謎過ぎる。そんな人物の主張を県民が支持するはずもないだろう。
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本作ではこのように、「普天間基地の辺野古移設問題」について詳しく取り上げられている。日本全体の問題でありながら、正直なところ、私を含めた多くの人がなかなか関心を持ち得ない問題だと思う。周辺国との緊張が高まる中、日本の防衛の問題の多くがやはり沖縄県に集中してしまうし、その状況に対して無関心でいいはずがないだろう。なかなか触れる機会のない事柄だろうが、本作を観るなどして、沖縄県民以外も関心を持つべき問題だと思う。
沖縄県民の「民意」は無視され続けている
本作の後半で扱われているのは基地移設問題だけではない。いや、基地移設問題が中心に存在するのは確かなのだが、より包括的に語られるのは「沖縄の民主主義」についてである。こちらも、実に深く考えさせられる話だった。
私はテレビのニュースなどで、「国が主導する基地移設に対して、翁長雄治や玉城デニーなど歴代の沖縄県知事が異を唱える様子」を何度も見たことがある。また、基地問題を争点にした知事選で勝利したり、あるいは、辺野古移設を巡る住民投票において7割以上が反対の意思を示したりと、沖縄の「民意」もまた明らかに基地問題に対して「NO」を突きつけてきた。そのことは、基地移設問題について多少なりとも知識がある人なら皆知っていることだと思う。
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しかし国は、沖縄のそのような声を”ガン無視”している。例えば、本作中にもその実際の映像が流れたが、沖縄での住民投票の結果が出た翌日、当時官房長官だった菅義偉は会見で「粛々と工事を進めさせていただきます」と語ったのだ。ダースレイダーはこの発言について、「菅義偉がそういう人だということは理解していたが、それでも、あの発言には恐ろしいものを感じた」という主旨のことを話していた。私も同感である。
本作に登場するある人物は、沖縄の民意が完全に無視されている現実について、「沖縄の民主主義は破壊された」と表現していた。さらに彼は、「日本が沖縄を植民地化したいという意識を持っているからだ」とその背景を推測する。彼が主張する「日本」には「日本政府」だけではなく、「『内地』に住むすべての日本人」が含まれていると考えていいだろう。もちろん私も、そして多くの人も、「沖縄を植民地化したい」などと考えてはいないはずだ。しかしそうだとしても、私たちは「何もしないこと」によって無意識的に、あるいは間接的に、そのような状況に加担してしまっているのである。
以前観た『サンマデモクラシー』というドキュメンタリー映画の中に、とても印象的な場面があった。返還前の沖縄では「高等弁務官」という立場の人物が権力の頂点に君臨していたのだが、その3代目であるキャラウェイの「自治権は神話」という発言が作中で取り上げられるのだ。映画『サンマデモクラシー』の中では、「キャラウェイが元々発した英語には邦訳された日本語が有するほどの強い意味はなかったはずだ」と説明される。しかしそれはそれとして、沖縄の現状を示唆する表現として、この「自治権は神話」という言葉は残念ながら見事に当てはまってしまうように思う。そしてこの点についても、「日本全体の問題なのに、すべてが沖縄にのしかかっている現状」にこそに問題があるわけで、やはり我々も「自分ごと」として捉えていかなければならないのである。
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我々は沖縄についてもっと知らなければならない
さて、「我々は沖縄にもっと関心を持つべきだ」という話を、もう少し深めていこう。重要なのは、「沖縄県民以外も関心を高く持つことで、状況が変わっていた(変わる)かもしれない」という点である。
沖縄国際大学の教授が話していた中で興味深かったのは、「アメリカは、沖縄の基地機能をグアムに移設することを検討していた」という話だ。この件は日本の新聞にも掲載され、当時大きく報道されたという。既に戦争の主軸がミサイルに移っていたこともあり、地政学的な意味での「沖縄」のメリットが以前よりも減ったというのが主な理由なのだそうだ。
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そのため教授は、「もしもこの時に日本がアメリカとゴリゴリの交渉を行っていれば、もしかしたら沖縄からすべての基地が無くなっていたかもしれない」と指摘していたのである。もちろん、「すべての基地」というのはハードルが高いだろうが、やってみる価値はあったはずだし、一部の基地が無くなるだけだとしても十分な成果だと言えると思う。
しかし、恐らく日本はそのような交渉をまったくと言っていいほどしなかったのだろう。作中では、「アメリカ軍の基地を有する世界中の国は、地位協定の改定を交渉し、米軍基地の扱いをがどんどん変えている」と指摘されていた。そして、そのような交渉をせずにアメリカの言いなりになっている国は世界でも日本ぐらいなのだそうだ。確かに日本は戦争で負けたし、戦争以外の部分でも色んなことがあったのだろうが、それにしても、「対等な関係に持ち込もうとする努力」を放棄していいはずがないだろう。
そして恐らくだが、日本がそのような取り組みをしなかった理由の1つが、「我々が沖縄の基地問題に向ける関心の低さ」なのではないかと思う。もし国民全体が沖縄の問題に高い関心を抱いていれば、政治家も動く他なかったはずだ。そしてそうならなかったのだから、「日本全体の関心が薄かった」と言わざるを得ないだろう。
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作中では印象的なエピソードが語られていた。田原総一朗が司会を務める『朝まで生テレビ!』についてプチ鹿島が言及していた場面でのことだ。既に30年以上放送が続いている番組だが、その中で沖縄問題を取り上げたのはたった5回なのだという。そして、「その理由について田原総一朗が言及していたこと」について話をしていたのだが、田原総一朗が語っていたその理由が「視聴率が取れないから」なのだそうだ。あまり具体的な言及はなかったので憶測でしかないが、恐らく「田原総一朗が『沖縄問題を取り上げたい』と思って提案しても、『視聴率が取れない』という理由で却下される」みたいなことなのだと思う。そしてそうだとすれば、この話は我々の「無関心さ」を如実に示すものと捉えるべきだろう。
私を含めた国民が沖縄の現状に関心を向けないのはちょっと異常と言える。なにせ、今も北朝鮮からミサイルがバンバン飛んできているからだ。そのような状況にあっても、私たちはどうも「国防」に対して強く関心を抱けない。国防費の増額が国会で審議されていたが、その際も、その是非について議論するのではなく、「国防費なんかより、電気代やガソリン代をどうにかしてくれ」みたいな感覚を持つ人の方が多かったのではないかと思う。私としても、「国防費の増額」が正しいのかどうか自分なりの意見を持てずにいるが、直感的にはどうしても、「国防費を上げるぐらいなら、少子化対策に力を入れてくれよ」と感じてしまう。私は結婚していないし子どももいないのだが、それでも、少子化対策こそ今の日本が注力すべきことだと認識しているのである。
「そのような状況をすべてひっくるめて『平和ボケ』と言う他ない」ということなのだと思うが、やはり今そのような状態で良いはずがないだろう。自戒を込めてではあるが、少しずつでも関心を高めていって、「日本全体の問題」として共有していくしかないだろうと思う。
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映画前半の知事選について
さてそれでは、前半で映し出される知事選の話に少し触れてこの記事を終えようと思う。
選挙戦を争うのは、現職の玉城デニー、既に紹介した佐喜真淳、そしてIRの汚職問題に関連して維新の会を除名になった下地幹郎の3人である。ダースレイダーとプチ鹿島は公示日前日から沖縄入りし、3人の選挙運動を様々に追いかけながら直接質問をしていく。彼ら自身が選挙戦を楽しみつつ、観てくれている人への情報発信も行うというわけだ。本作は映画として劇場公開されているのだが、知事選の様子は恐らく、YouTubeチャンネルの方でもほぼリアルタイムのような形で配信されていたのではないかと思う。こんな風にして「選挙」への関心を高めていくというのも、彼らの主たる目的なのである。
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さて、全体を通じて興味深く扱われていたのが、本作のタイトルにもなっている『ちむどんどん』との関わりである。3人の候補者はそれぞれ、選挙期間中に放送されていたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』について「好きだ」とアンケートで答えていた。沖縄が舞台なのだから当然だろう。しかしプチ鹿島は、「彼らはそもそも本当に観ているのか?」という観点から候補者に質問を繰り出すのである。「選挙を楽しむ」という観点からも面白い切り口だし、さらに候補者の返答が三者三様で、この点もまた興味深かった。
選挙戦に際しては、旧宜野湾市長である佐喜真淳に旧統一教会との関係が指摘されており、映画ではこの点についても突っ込んでいる。なんと彼は、台湾で行われた合同結婚式にも出席したことがあるというのだ。佐喜真淳は選挙戦初日の演説の中で、自らその点について触れていた。しかし結局のところ、疑惑を払拭して支持に繋げるような流れには持っていけなかったようだ。
また、選挙戦そのものとは関係ないのだが、本作では「辺野古を訪れた『ひろゆき』のツイート」も話題として取り上げられている。この件については、映画鑑賞前の時点で話題としては知っていた。ひろゆきは、辺野古移設に反対する者たちの座り込み抗議を茶化すようなツイートをしたのである。
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その是非については様々に意見があるだろうが、私の感覚では、本作での扱われ方と同じく、ひろゆきのツイートは「不適切」だったと思う。ひろゆきが「影響力を持つ人物」であることは間違いないし、そして私は「影響力を持つ人物は、その影響力を適切に行使すべき」と考えているのである。この「適切に」というのは、決して「良いことのために行使しろ」みたいな意味ではない。ただ私は、「悪い影響をもたらすような使い方は避けるべきではないか」と考えているのである。
ひろゆきのツイートに関しては、主張内容の正しさ云々は一旦置いておくとして、「そのツイートによって悪い影響がもたらされる」ことは明らかだったと私は思う。そして、「そのような事態があらかじめ明白に予測される状況の中で、あのようなツイートをすること」が適切だとは、私にはどうしても感じられないのである。
もちろん、誰にだって「表現の自由」はあるし、「名誉毀損」等に当たらない範囲内でなら誰が何を発信しても自由だ。だからひろゆきのツイートが「間違い」だとは考えていない。しかし同時に、やはり影響力を持つ人物には、せめて悪い状況をもたらすような発信は止めてほしいものだなと感じてしまった。
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最後に
本作は、「選挙戦の模様」よりも後半の「探究」のパートの方が興味深かったが、本作でも「選挙は祭りだ!」という2人のスタンスが如実に現れている点は良かったなと思う。また、ダースレイダーの本職はラッパーなのだが、ある場面でその本領が存分に発揮されていて、さすがだと感じさせられた。
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「文章の書き方」についてのKindle本を出版しました。「文章が書けない」「どう書いたらいいか分からない」「文章力を向上させたい」という方の悩みを解消できるような本に仕上げたつもりです。数多くの文章を書き、さらに頼まれて文章を推敲してきた経験を踏まえ、「文章を書けるようになるにはどうしたらいいか」についての私なりの考えをまとめました。
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映画『燃えあがる女性記者たち』は、インドで「カースト外の不可触民」として扱われるダリットの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」を取り上げる。自身の境遇に抗って、辛い状況にいる人の声を届けたり権力者を糾弾したりする彼女たちの奮闘ぶりが、インドの民主主義を変革させるかもしれない
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戦争・世界情勢【本・映画の感想】 | ルシルナ
日本に生きているとなかなか実感できませんが、常に世界のどこかで戦争が起こっており、なくなることはありません。また、テロや独裁政権など、世界を取り巻く情勢は様々で…
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