目次
はじめに
著:宮下 奈都
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
絶望的な力量の差に圧倒されてしまう時、それでも勇気を持って前に進むために何が必要か?
私なら、スタートラインに立つことも諦めてしまいそうですけれど……
この記事の3つの要点
- 「才能」が大きな差となって現れるのは、もっとずっと後のこと
- 「顧客を満足させるための仕事」で見解が割れる理由は?
- 結局のところ、諦めない人間が一番強い
「ピアノの調律」という馴染みの薄い世界を描きながら、仕事や人生に悩む人に響く言葉が溢れています
この記事で取り上げる本
「羊と鋼の森」(宮下奈都/文藝春秋)
自己紹介記事
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本書の主人公は、ある日唐突に、ほとんど前触れもないままに、その後の人生を一変させるものと出会います。
それがピアノの調律です。
しかし彼は、ピアノを弾いたこともなければ、特別耳が良いわけでも、手先が器用なわけでもありません。調律師としてやっていくには、圧倒的に不利なところからのスタートとなります。
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わかりたいけど無理だろう、などと悠長に考えるようなものはどうでもよかった
と、彼は調律(というか、見事に調律されたピアノ)と出会った衝撃を語っています。それ以外のことがどうでもよくなるくらい、これしかないという強さで調律の世界に分け入っていくのです。
もちろんそう簡単ではありません。彼が就職する楽器店には、優秀な調律師が揃っています。彼は日々、自分の実力の無さに打ちのめされるような日々を送ることになるわけです。
怖がっても、現実はもっと怖い。思うような調律はぜんぜんできない
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しかし、彼が抱く苦しみは、非常に前向きです。
でも、つらくはなかった。はじめから望んでいないものをいくら取りこぼしてもつらくない。ほんとうにつらいのは、そこにあるのに、望んでいるのに、自分の手には入らないことだ
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彼は日々、自分の未熟さを自覚させられる中で、想像もしていなかったような高みを垣間見る機会もあります。しかし、彼は冷静に、「それは望んでいたわけではないからいいんだ」と割り切るのです。そして、自分がこの世界に足を踏み入れた時に強く望んだもの、どうしても辿り着きたいと願った場所、そこに照準を合わせて進んでいくことを改めて決意します。
彼の前進の仕方は、努力で才能に近づこうとしている人に勇気を与えるものではないかと私は感じます。
「才能がない」という言葉に逃げない
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彼は、周囲の調律師の才能に、日々圧倒されてしまいます。しかし彼は、調律師の世界に足を踏み入れるきっかけを作った板鳥氏の調律現場に立ち会わせてもらった時、その絶望的な差を痛感しながらも、こんな風に考えるのです。
そこにある、とわかっていれば、今はどんな場所にいてもかまわないのではないか
これも非常に強い言葉だなと感じます。確かに、それがどんなものであれ、視界に入らないものを目標にすることは難しいでしょう。宇宙に「ブラックホール」などというものが存在することを知らなければ、「ブラックホール」について研究しようと思えない、というのと同じです。しかし一方で、視界に入ったからといって何でも目標にできるかといえば、それも違うでしょう。
彼は、その難しさを、ひらりと乗り越えます。自分にはその地点にどうやってたどり着けばいいのかなんの見通しも持てないけれど、しかし「そこにある」と分かってさえいれば、今自分がどこに立っているかなどに悩む必要はない、という感覚は、凄まじいと感じました。
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残念ながら、彼がその地点にたどり着けることは恐らく永遠にないでしょうし、彼自身もそのことは理解しているはずです。しかしそれでも、「視界にちゃんと入っているのだから、そこを目指すためのスタートラインには立てる」という気の持ちようは、素晴らしいと感じました。
目指すべき地点があまりに遠いと、スタートラインに立つのも嫌になっちゃうけどね(笑)
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また、先輩調律師と「才能」についての話になった際の彼の内心も非常に興味深いです。当初は、「調律には才能も必要」という先輩の意見に、ちょっとホッとしたような気分になりますが、その後、
でも、調律師に必要なのは、才能じゃない。少なくとも、今の段階で必要なのは、才能じゃない。そう思うことで自分を励ましてきた。才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない
と考えるのです。
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「才能だ」で片付けてしまえば簡単だし楽です。「自分には才能がないからダメなんだ」で済ませれば、いつでも諦める言い訳ができるからです。しかし彼はふと考えます。確かに才能が必要になるステージもいずれやってくるだろう、でも、まだその段階に自分はたどり着いていない、と。
いずれ才能の差によってたどり着ける地点に歴然とした違いが出るにしても、今はまだそんなことが言えるレベルにさえいない。「才能」なんて言葉で逃げてはいけない、と彼は思い直すのです。
ピアノを弾いたことさえないからこそ、余計に、「才能」という言葉で片付けちゃダメだって思ったんだろうね
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もちろん彼は、自ら選んだこの道を突き通し続けられるのか悩むほど、普段から追い込まれます。
道は険しい。先が長くて、自分が何をがんばればいいのかさえ見えない。最初は、意志。最後も、意志。間にあるのががんばりだったり、努力だったり、がんばりでも努力でもない何かだったりするのか
今の時代は、一昔前のロールモデルが通用せず、激変していくだろう未知の未来に向けて、誰もが悩んでいると言えるかもしれません。今自分がやっている仕事は10年後もちゃんと存在しているのか、何か新しいチャレンジをするとして何をすべきか、圧倒的なライバルが山ほどいる中で頭一つ抜け出せるか……などなど、考えることはたくさんあります。
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だからこそ、ピアノを弾いた経験もないまま調律師を目指した無謀な青年の物語は、今あなたが置かれた状況に立ち込めるモヤモヤを吹き飛ばしてくれるのではないかと思います。
「仕事とはどうあるべきか」についての深い問いを突きつける
この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。正しいという言葉には気をつけたほうがいい
彼はそんな風に、板鳥氏にたしなめられる場面があります。
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私たちはなんとなく、「物事には正解がある」と考えてしまいがちです。学校教育を受けている影響でしょうか、「正解」というものが存在する前提で、無意識の内にそこを目指してしまうことがあります。
気をつけないと「何も考えてない」ってことになっちゃうから危ないけど
ピアノの調律というのは馴染みのない世界であり、なかなか普段意識することがありません。だから私は、「調律」というものに対しても、「これこれこういう手順で、こういうものをこのような状態にする」という正解がありそうだ、と無意識の内に考えてしまっていたと思います。
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しかしそうではありません。そしてそうではないからこそ、この物語では「どこまで調律を行うか」について、様々な難しさが描かれます。これは、調律以外のあらゆる仕事にも関係する問題だと私は考えています。
「50ccのバイク」と「ハーレーダビッドソン」を例にとった調律の奥深さ
「どこまで調律を行うか」については、彼が所属する楽器店でも統一の見解は存在しません。
彼は、「ピアノの能力を最大限に引き出してあげるのが良い調律だ」と考えます。これだけ聞くと、まあそれはその通りだろうし、何か議論が起こって見解が統一されないなんてことがあるのだろうか、と感じてしまうでしょう。
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しかし、調律の世界はなかなか奥深いのです。
わからないだろうと思われて一律の調律しかしてもらえない人のことを思うと胸が重たくなる。もしかしたらわかるようになるかもしれない。秋野さんの調律した音を聴いてピアノに目覚める可能性だってあるのではないか
先輩調律師が行った調律に対して、彼がこう感じる場面があります。どういう意味か理解できるでしょうか? これは、「ピアノの持ち主が弾きこなせる最大限のレベルに合わせて調律する」ことに対する彼の不満なのです。
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この作品ではこの状況を、50ccのバイクとハーレーダビッドソンで喩えています。ピアノというのは調律次第で、50ccのバイク並みにすることもハーレーダビッドソン並にすることもできるそうです。しかし、ハーレーダビッドソン並の能力を引き出したとしても、持ち主が乗りこなせない(弾きこなせない)かもしれません。
だからこそ力量を見極めて、この持ち主には50ccのバイク並が最も適していると判断すれば、それに合わせた調律を行うべきではないか、というのが先輩調律師の見解です。
なるほど、と感じるのではないでしょうか。
そんな先輩調律師に対して彼は、「確かに今はハーレーダビッドソンに乗れないかもしれない。けれど乗せてみたらその良さに気づき、ハーレーダビッドソンに乗りたいと思ってさらなる練習をするかもしれない。50ccのバイク並に調律することは、その可能性を潰しているのではないか?」と疑問を呈しているのです。
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彼自身、板鳥氏が調律したピアノの音に耳を奪われてこの世界に入ろうと決めたこともあり、「最上の存在を知る可能性を潰すこと」への嫌悪感を抱いてしまいます。
書店員として働いている時は、私も常にこの問題に直面していました
一方、反感を滲ませる彼に対して先輩調律師はこう返します。
乗るつもりがあるかどうか。少なくとも、今はまだ乗れない。乗る気も見せない。それなら50ccをできるだけ整備してあげるほうが親切だと僕は思うよ
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確かにそう言われれば、それが正しいようにも感じます。あなたが調律師だとして、どちらのスタンスの方がよりお客さんにとって良いと感じるでしょうか?
「良い音」とは一体どんな音のことを指すのか?
調律には他にも難しい問題があります。それは、「何のために調律を行うのか?」です。
例えば、先ほどとは別の先輩調律師と共に顧客の家を回っていた彼は、その先輩調律師がお客さんの要望通りに調律をしなかったことを知って驚きます。
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顧客の要望は、「長い間使っていなかったピアノを、元の音に戻してほしい」というものでした。しかし先輩調律師は、そのピアノを「元の音」に調律するのではなく、より良い音が響くようにするのです。
その理由を問われて、先輩調律師はこう返します。
あの人が欲しいのは、忠実に再現されたピアノじゃなくて、しあわせな記憶なんだ。どっちみち元の音なんてもうどこにも存在しない。だったら、あのピアノが本来持っていた音を出してやるのが正解だと俺は思う。やさしい音で鳴ったら、記憶のほうがついていくさ
確かに、調律されたピアノが「元の音」かどうかを確かめる術はありません。調律師が「元の音に調律しましたよ」といえば、よほど音感があるとか、音の記憶力が良いとかでもない限り、そうなんだと受け入れるでしょう。
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先輩調律師の行為は、「顧客の要望に敢えて沿わなかった」という意味では誤りですが、しかし、「顧客のより深層に近い要望に応えた」という意味では正しいと言えます。
あなたならどうするでしょうか?
一方で、彼自身もこんな調律を経験することになります。顧客の要望は、「絶対に良い音の出るピアノで孫に情操教育をさせたい」というものでした。調律を終えた彼は、顧客から「絶対に良い音か?」と問われ、こう返します。
絶対に、という言葉を使うなら、絶対にこの音がいいと僕は思っています
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彼が考えたのはこういうことでした。自分がここで「絶対に良い音です」と答えれば、顧客は孫に同じように伝えるでしょう。彼は、「孫がどんな音を好きだと感じるか」を一切無視して「これが良い音だ」と押し付ける顧客の姿と、それを押し付けられる孫の姿を想像してしまい、「絶対に良い音です」とは返答できなかったのです。
結果はどうなったでしょうか。彼は、その顧客の担当を変えさせられてしまいました。彼の所属する楽器店は、彼の返答を「不正解」と判断したということです。
このように本作では、「調律」という馴染みの薄い世界を描きながら、「顧客を満足させる仕事とは何か?」について印象深く描かれる作品でもあるのです。
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宮下奈都『羊と鋼の森』の内容紹介
ここで改めて本の内容を紹介します。
著:宮下 奈都
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出演:山﨑賢人, 出演:三浦友和, 出演:鈴木亮平, 出演:上白石萌音, 出演:上白石萌歌, 出演:堀内敬子, 出演:仲里依紗, 出演:城田優, 出演:森永悠希, 出演:佐野勇斗, 出演:光石研, 出演:吉行和子, 監督:橋本光二郎, Writer:金子ありさ
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外村がその調律師と出会ったのは、偶然だった。
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やりたいことなど何もなかった無気力な青年は、その瞬間に雲散霧消した。板鳥氏に紹介された学校に入学し、学び、板鳥氏のいる楽器店に就職した。
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彼は、正解など存在しない世界で、知識は学んだけれども経験はなく、才能はあるかどうかも分からないという不安定なスタートラインに立った。
宮下奈都『羊と鋼の森』の感想
素晴らしい作品でした。私がちょうど、自分が生きていく環境が大きく変わるまさにそのタイミングで本書を読んだことも、読後の印象に大きく影響しているとは思います。しかし、やはり作品が素晴らしいと感じました。
物語は非常に静かに、しかし揺らめくような情熱と共に展開していきます。迷いながらも、目指すべき地点はしっかりと見据えて前進しようとする外村が中心となる作品で、外村というなかなか深みのあるキャラクターが非常に面白く描き出されています。
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この記事ではこれまで、外村の仕事に対する様々な感覚を紹介してきましたが、他にもこんな箇所があります。先輩から、「外村ががんばってるのは無駄じゃない」と励ましの言葉をもらった外村は、こんな風に返すのです。
よくわかりません。無駄ってどういうことを言うのか
これはなかなか凄い答えだなぁ、と感じました。他にも、一般的な感覚からちょっとずれているような描写が結構あって、それらから感じるのは、
外村は、これと決めたもの以外見ていない
というような、正真正銘の真っ直ぐさです。
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元々やりたいことなんて全然なかった、みたいな人物だったのに、激変したねぇ
今までは打ち込めるものにただ出会えていなかっただけ、ってことなんだろうね
この作品は外村視点で描かれており、そして外村の内心は悩んでいたり不安を感じていたり困っていたりという場面が多いので、読者はなかなか彼の「正真正銘の真っ直ぐさ」には気づけません。しかし外村が、世間の有り様からナチュラルにズレてしまうふとした瞬間に、その真っ直ぐさが垣間見れるように私には感じられました。
楽器店への就職に際し、板鳥氏が外村を強く推薦したのですが、多くの人はその理由を理解できなかった、と語る場面があります。しかし、読んでいくと、おそらく板鳥氏は、外村のこの真っ直ぐさを見抜いていたのではないかと感じます。
技術では遠く及ばないものの、負けずに奮闘を続ける外村に対しては徐々に、「こういう奴こそ先に進んでいくのかもしれない」なんて評価に変わっていくほどです。
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著:宮下 奈都
¥713 (2022/02/03 23:26時点 | Amazon調べ)
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最後に
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「調律」というのは、ピアノと関わらない人からすれば非常に馴染みの薄い世界ですが、この作品はそんな「調律」を通じて、「働く上で大事なこと」について深く考えさせてくれます。仕事や生き方で悩んでいるタイミングであればあるほど、この作品で描かれる様々な状況が、自分の奥深くまで浸透していくのではないかと感じます。
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