目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ハル・グレガーセン, 翻訳:黒輪 篤嗣
¥1,760 (2022/09/27 20:19時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- 経営学の最終試験で評点Aを逃すことになった「衝撃的な問い」とは?
- 「心理的安全性」が確保されていない組織では「問う力」を伸ばすことはできない
- 「理想の従業員像」の認識を変えなければ、「判断のための正しい情報」は手に入らない
「答えを導くこと」よりも「正しい問いを見つけること」の方が遥かに重要だと理解できる1冊
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まずは、本書で最もインパクトの大きかったエピソードから紹介しようと思う。エピローグに載っているもので、証券会社チャールズ・シュワブのCEOウォルト・ベッティンガーが学生時代に経験した話だ。この出来事をきっかけに、彼は「自分がそれまで指針にしてきた問いが間違っていたことに気づいた」という。
大学で経営学を専攻していたウォルトは、猛烈に勉強し、常にトップクラスの成績を取り続けた。3年生の時には、卒業を早めるために取得単位を倍に増やしたが、そのすべてで評価Aを維持したという。
しかし最後の最後、経営戦略コースの授業でオールAが阻まれてしまった。経営学部の別館で週2回、18時から22時まで、10週に渡って行われた授業の最後に行われた試験で、彼は白紙回答せざるを得なかったのだ。
最後のテストで教授が配ったのは、何も書かれていない真っ白な紙1枚。そして生徒にこう告げた。
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「もうみなさんは実際のビジネスの世界で仕事を始められるだけの知識を持っています。ですが、そこで成功するためにはもっと別のことも必要になります」。教授は学生たちに氏名を記入するよう指示してから、最後のテスト問題を発表した。それは次の一問のみだった。「この建物の清掃を担当しているのは誰か。彼女は何という名前か」
彼はこのテストで正解を書くことができず、オールAを逃した。そしてこのことをきっかけに彼は、その後の人生で最も役立つ教訓を得たと語っている。
どうすれば優秀な戦略家として頭角を現せるかと問うのではなく、この会社の成功は誰の働きにかかっているか、それらの社員全員に卓越した働きをしてもらうには何が必要か、問うべきだと。
なかなか興味深い話だろう。
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このエピソードをまず紹介したのは、本書の印象をざっくりとでも捉えてもらうためだ。「問う力」と聞いて、「議論で相手を打ち負かすような質問をする」みたいなイメージを持った方もいるかもしれないが、そうではない。もう少しきちんと説明するなら、「『問い』を適切に思い浮かべる力」となるだろうか。
本書の著者は、マサチューセッツ工科大(MIT)のリーダーシップセンター所長ハル・グレガーセンである。彼はこれまでに様々な企業のCEOから話を聞き、多くの企業で講演を重ねてきた。そしてその経験から、「『問うこと』の重要性」が語られる機会が多いことに気づき、その事実をより広く伝えようと本書を執筆したのだそうだ。
本書の重要な主張の1つは、「『問う力』は個人の資質だけの問題ではない」というものだ。著者はこう書いている。
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本書の核をなしているのは、よりよい問いが生まれるかどうかは――仕事でも私生活でも――環境に左右されるという主張だ。
つまり、「どんな環境にいるかによって『問う力』に差が生まれる」というわけだ。この理解は、「家庭」を含めたあらゆる組織運営に有効な視点と言えるだろう。元々の資質がまったく無関係とは言わないが、本書を読めば、環境が重要なファクターであることが理解できると思う。つまり、「問う力」は「組織のあり方」を変えることによって後天的に伸ばせる力と言えるはずだ。
本書は、著者が様々なCEOから直接聞いたエピソードで占められている。とにかく、徹底的に「実例」を提示しているというわけだ。「どのように『問いやすい環境』を作っているか」という手法はそれぞれ違うが、全体を通じて「環境を変えることで『問うこと』を活性化させられる」と実感できる内容になっている。非常に実践的な作品なのだ。
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私の場合、「問う段階」のことはかなり実践出来ていると感じた。つまり「問うこと」の重要性も理解していたし、「問いやすい環境」を作るという意識も昔から持っていたのである。また、多様な価値観が存在しなければ「問い」は生まれないので、「私自身の存在によって、その場の多様性が増すような言動」も割と意識しているつもりだ。
ただ、私にはその先が難しい。本書には「問いの資本」という表現が出てくるのだが、これは、「『問うこと』によって生まれた何かを実行する力」とでも言えばいいだろうか。残念ながら私には、この「問いの資本」が圧倒的に不足している。私にもしも「問いの資本」が十分あれば、起業なり組織運営なりに携わっていたかもしれないなぁ、と考えてしまった。
逆に、「問いの資本」はあるが、その前段階が不得手だという人には、本書は非常に役立つだろうと思う。
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まずはこんな文章を引用しよう。
つい最近も、革新的な企業の労働者の研究が注目を集めた。グーグル社の数百の作業チームを対象に、数年を費やして実施された「アリストテレス計画」だ。この調査では、成績の優秀なチームとそうではないチームとでは何がちがうのかが具体的に探られた。ニューヨーク・タイムズ・マガジン誌の記事によると、その結果は研究者たちを驚かせるものだった。IQの高さも勤勉さも関係なかったからだ。チームの成功といちばん強い相関が見られたのは、先に紹介した心理的安全性だった。
「心理的安全性」とは、「組織において、自分の考え・感情を誰に対しても不安を抱かずに発言できる状態」のことを言う。要するに、「こんな質問したらバカだと思われるかな」「こんなアホみたいなアイデアを口にしたらボロクソに批判されるかな」みたいな躊躇を一切感じずに、思ったことを思ったように口にできる状態を「心理的安全性」と呼ぶのである。「チームの成功といちばん強い相関が見られたのが心理的安全性だった」という事実は、人によっては意外に感じられるかもしれないが、私は当然そうだろうと感じてしまう。そして、昔何かで知った病院のエピソードを思い出した。
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ある病院には、外科手術のチームが2つある。どちらも年間の手術件数やチームの人数など様々な条件が同じだとしよう。しかし1点だけ違いがある。「手術ミスの報告件数」だ。Aチームは、年間100件の手術をこなし、手術ミスの報告は2件だが、一方のBチームは、手術ミス0件である。
さて、もしあなたが、この情報を知った上で「どちらのチームに手術をお願いしたいか」と問われたら、どちらを選ぶだろうか?
シンプルに、「手術ミスのないBチームの方がいい」と感じるかもしれない。しかしその判断は早計と言える。というのもBチームでは、「手術ミス隠し」が行われている可能性があるからだ。仮にBチームに「心理的安全性」が存在しないとしよう。この場合、Bチームのスタッフはチーム長から叱責されることを恐れ、ギリギリ隠せてしまう程度の手術ミスは報告しないかもしれないし、だからこそ「手術ミスゼロ」という報告になっている可能性があるというわけだ。
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一方Aチームでは、手術ミスが報告されている。もちろんミスは無いに越したことはないが、人間がすることだからゼロにはできない。ただ、Aチームでは恐らく「心理的安全性」が確保されているのだろう、スタッフが臆することなく自身のミスを報告できる雰囲気が存在していると推定できる。
となれば、「心理的安全性」が確保された、たぶん風通しが良いだろうAチームに手術をお願いする方が安全かもしれない、という思考も成立するだろう。こういう例を知ると、「心理的安全性」が組織において非常に重要だということが実感しやすくなるだろうと思う。
本書において「心理的安全性」は、「『未加工の情報』を手に入れること」と絡めた話として登場する。次のような理由から、上の立場にいればいるほど「生の情報」を手に入れるのは難しい。
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わたしの研究で最も深刻な隔絶が見られるのは、大企業のCEOや幹部という地位においてだ。その理由は、部下に情報の収集と取捨選択を任せてしまうことにある。それらのリーダーたちがほかの一般の人に比べて、心地よさを求める傾向が強いわけではないはずだが、日々、極度の重圧にさらされる中で、自分は有能だという自信を揺るがされたくないという心理が働く。しかも周りには、上司を不快な情報から守ることを自分たちの仕事と心得ている部下がいる。
思い当たる節があるという方、いるのではないだろうか。そして、このような環境に身を置いていると、当然のことながら、「未加工の情報」「生の情報」を手に入れにくくなってしまうというわけだ。
ビジネスであろうがなかろうか、物事を正しく判断するためには「情報」が欠かせない。しかし、最前線の現場が持っている「生の情報」が、組織の上層部に報告される過程でどんどん改変されてしまうことは想像に難くないだろう。これはまさに、「心理的安全性」が確保されているかどうかによって変わる問題だ。「こんな情報を上げたらマズいかもしれない」という心理が働けば、その情報に手を入れられてしまうかもしれない。それでは、適切な判断を下すために不可欠な「正しい情報」が手に入らなくなってしまう。
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私は別に組織を運営する立場にも、マネジメントするような地位にもいない。どちらかと言えば現場に近い場所をうろうろすることが多い人生であり、アイデア・不備・不満などが現場に多く転がっている印象を強く持っている。そしてそれらが、上の立場の人に届かず、ただ滞留しているだけの状態もよく目にしてきた。
私は、「心理的安全性」という概念を認識する以前からその重要性をなんとなく理解していたので、これまで属していた組織の中で、「問いやすい環境」を作ろうと奮闘したこともあるのだが、なかなか上手くいかなかった。特に私よりも上の世代の人たちには、「『心理的安全性』が重要である」ということがどうにも理解できないようだ。というか、「心理的安全性」そのものも何なのか分からないのだろう。そういう人たちがマネジメントをする組織では、残念ながら「未加工の情報」を手に入れることは難しい。
「心理的安全性」をいかに確保すべきか
「心理的安全性」の確保が難しい要因について、冒頭で紹介したウォルト・ベッティンガーはこんな風に語っている。
重役として成功を収められるかどうかは、意思決定の優劣で決まるのではありません。どんな重役も優れた判断を下せる率はだいたい同じで、60パーセントか、55パーセントぐらいです。ではどこがちがうかといえば、成功する重役は40パーセントないし45パーセントのまちがった判断にすばやく気づいて、それを修正できるのに対し、失敗する重役はしばしば事態をこじらせ、自分がまちがっていても、自分は正しいと部下を説き伏せようとします。
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重役が自らの間違いに気づかず(あるいは気づいていたとしても)、「自分は正しい」と部下を説き伏せるとすれば、とても「心理的安全性」の確保など望めないだろう。「こんな重役に何を言っても無駄だ」と思われてしまうだけだ。
あるいは、政治家が口にする「問い」を起点に著者がこのような指摘をしていたりもする。
(政治家たちが問いを使うのは)相手に立場をわきまえさせるためか、相手の無知を暴いて、面目を失わせるためか、あるいは相手に今していることをやめて、こちらに応じるべきであることを思い出させるためだ。権力に飢えた者は、相手より優位に立つことを求め、真実を求めようとはしない。
このことからは、なぜふつうの人があまり問いを発しようとしないのかが見えてくる。問いが権力の追求者たちによってそのように使われているのを目にしているせいで、問うことが攻撃的な行為だという印象を植えつけられてしまっているからだ。
似たような話として、「論破」という言葉を取り上げよう。2ちゃんねるの創始者ひろゆきの議論が「論破」と評され、若い世代を中心にウケている。「論破」という言葉は、「相手の意見をボコボコに粉砕する」みたいな意味で捉えられているだろう。そしてこの言葉もまた、「問うこと」のイメージを悪く見せている要因ではないかと思う。「問うこと」と「論破」が同一視されているとすれば、「問うこと」が攻撃的な行為であるように捉えられてしまうだろう。
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そのような状況を正しく理解している組織のトップは、「『問うこと』の『心理的安全性』をいかに確保するか」という課題に常に取り組んでおり、本書ではその実例が様々に紹介されている。
アニメーション・スタジオのピクサーには、制作中の映画を担当する監督に対して容赦ない意見を浴びせる「ブレイン・トラスト」というミーティングが存在するという。このミーティングは監督にとって相当過酷なのだそうだ。「ブレイン・トラスト」を終えた監督は家に帰されることが決まっていることからもその過酷さが伝わるだろう。その日はとても仕事にならないのだ。
「ブレイン・トラスト」の役割については、
制作初期の映画は、みんなゴミだからです。もちろん、そんないい方は身も蓋もないわけですが、あえてそういういい方をするのは、オブラートに包んだいい方をしていては、最初のバージョンがどうよくないかが伝わらないからです。わたしは遠回りに言ったり、控えめに言ったりはしません。ピクサーの映画は初めから傑作というわけではありません。それを磨いて傑作に仕上げることがわたしたちの仕事です。つまり”ゴミだったものをゴミではないものに”変えることです。
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と説明されている。確かに、良い映画を作るには不可欠なのだろう。一方で、「容赦のない意見を浴びせる」ためには、「心理的安全性」の確保が欠かせない。「その作品を良くしたいという気持ち」で「作品を批判している」ということが、監督を含めたその場にいる全員が共有できていなければ成り立たないからだ。
わたしが提唱しているのは、自分の考えを覆される情報にもあえて耳を傾けられる場、その結果ひらめいた問い――ひねくれているとか、腹立たしいとか、的外れだとか思われそうな問いでも――を口にしたり、聞いたりできる場としてのセーフ・スペースだ。
このように、企業のトップが意識的に「心理的安全性」の確保に取り組むことで、類まれな創造性が維持されているというわけだ。
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私は、組織ではなく個人として、このような「心理的安全性」の確保を意識的にやっている。「相手との関係性を踏まえた上で、私がどのような振る舞いをしたら、相手が『話しやすい』と感じてくれるか」を常に考えているのだ。本書には、「触媒としての問い」という言葉が何度か登場する。これは「相手の発言を促すための問い」というような意味なのだが、私の場合は「私自身の存在全体」を「触媒」として機能させようという意識を持っているというわけだ。だからだろう、周りにいる人から、普通他人には話さないだろう話を聞く機会も結構ある。
また、普通の従業員の立場としても、私は悪くない振る舞いが出来ていると、本書を読んで感じた。ここからは、本書に出てくる「確信犯的エラーメーカー」についての話をしていこう。
本書では、「『問うこと』の重要性」が浸透しない理由の1つとして、「組織が理想とする従業員像」の設定に誤りがあると指摘している。企業は、「どんな問題でも、手早く処理し、上司や同僚を煩わせない従業員」こそ理想だと考えていることが多いそうだが、そもそもその設定が間違っているという指摘だ。
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同僚のミスをかばって、和を保つ者ではなく、めざとくミスを見つけてはいい立てる「うるさいトラブルメーカー」こそ、理想の従業員だという。この章の話に合わせるなら、それは「確信犯的エラーメーカー」といえる。完璧に業務が遂行されているというイメージを築こうとするより、公然とミスを認める従業員だ。そういう従業員は、ものごとをそっとしておくことのない「破壊的な質問者」でもある。「従来のやり方を受け入れたり、守ろうとしたりする前に、まずはそれでいいのかどうか、たえず問う」者たちだ。
若い頃、私はこの「確信犯的エラーメーカー」のような振る舞いをしていたと思う。まあ、その理由の大半は「苛立ち」によるものだったが、私の中には一応、「現場で応急処置をしたところで、根本が変わらなければまた同じことが起こり得る」という感覚もあったはずだ。これまで色んな組織でこの「確信犯的エラーメーカー」のような振る舞いをしてきたつもりだが、良い結果に結びつくことが少なく、今ではそのような言動はしていない。しかし、もし自分が何かマネジメントする側に立つのであれば、このような「確信犯的エラーメーカー」こそを重宝したいと改めて感じさせられた。
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最後に
記事の冒頭で書いた通り、本書には実例が満載であり、興味深いと感じる話を紹介しようと思えばいくらでも出来てしまう。しかしそれでは、本書の内容を延々とネタバレするだけの記事になってしまうので意識的に抑え気味にした。実例を知りたいという方は是非本書を読んでほしい。
この記事のまとめとして改めて触れておきたいことは、「何よりも『問うこと』が重要」という点である。
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