目次
はじめに
著:ちきりん
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ポチップ
この記事で伝えたいこと
「自分がどんな固定観念に囚われているか」を理解することが何よりも大事
自分の価値観は当たり前過ぎて気づきにくいので、思考力を高める必要がある
この記事の3つの要点
- 頑張らなければできないことは、最初からやらなくていい
- もっと早く色んなことを諦めた方がいい
- あなたが感じる「欲しい」という欲望は、ニセモノの欲望ではないだろうか?
「誰かの当たり前」は「あなたの当たり前」と違って当然だから気にするな
この記事で取り上げる本
著:ちきりん
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本書は、ブロガーである著者が、自身のブログに書いた記事から選り抜き、加筆修正してまとめた作品です。
私はとにかく、「考える人」が好きです。思考によって深いところにまで到達できる人、自分の頭の中を的確に言語化できる人、物事の本質的な部分に触れられる人、そういう人の存在を知ると、話をしてみたくなるし仲良くなりたいと思います。
頭が良い人はもちろん好きだけど、頭が良くないからダメってわけでもないんだよなぁ
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ちきりんはまさに「考える人」であり、本書にはその思考がふんだんに詰まっています。主張1つ1つを取り上げれば、自分とは相容れないものももちろん出てきますが、私は全体的に、ちきりんの考え方に非常に納得できるし、似たようなことを考えていたと感じます。こんな風に考えられる人になりたいと思う人です。
今の世の中には、「プチ教祖」みたいな人たちがたくさんいます。書籍やYoutubeなどで自らの主張を発信し、その考えに共感する者を囲い込んで、一種の信仰状態にするような人たちのことです。
それ自体は別にいいのですが、そういう世の中で生きていると、「自分の頭で考えること」を疎かにしがちです。「あの人が言っているから正しい」という判断基準でしか物事を捉えられないとしたら、いつまで経っても思考は深まらないし、自力で本質的な部分にたどり着くこともできなくなってしまうでしょう。
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ちきりんは、「私の言っていることを信じてついてきて!」というタイプではまったくありません。そうではなく、「私はこう考える。あなたはどう考える?」と問うようなスタンスで様々な話を展開していくのです。
本書を含め、ちきりんの本には、人生で一度も考えたことのない問いがたくさん出てきます。それらに対して、自分だったらどういう理屈や思考でどんな結論にたどり着くのか、是非とも考えてみてください。
そういう繰り返しによって、「他人の思考に依存する」という生き方から脱し、「自分の思考で自分なりの『本質』を見出していく」という生き方を踏み出すことができるでしょう。
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冒頭で、本書全体を貫くテーマについて、こんな風に書かれています。
日本社会には「社会のため全体のために、個を抑制し我慢すること」を美徳とする考えが蔓延しています。この本では、それらの社会が押しつけるガチガチの固定観念に縛られず、自由に楽しく自分らしく生きるためには、生活の様々な面でもう少し「ゆるく」、たとえばこんなふうに考えればいいのじゃないかな、とちきりんが感じたことをまとめています
あなたは人生をトコトン楽しんでいますか? 仕事、趣味や遊び、家族や友人とのつきあいはもちろん、食べること、眠ること、ボーっとする時間まで含め、楽しみながらストレスなく快適に過ごしているでしょうか?
「人生を楽しく、ラクに過ごすためには、もうちょっとゆるく考えたほうがいいよね」――ちきりんがそう考えはじめたのは、失われた10年が20年になり、明らかに時代が変わりつつあるにもかかわらず、今までと同じように「とにかく頑張る式」のやり方を続けることが、あまりにも非生産的に思えたからです
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本書は10年近く前に出版された本です。10年経った今、「とにかく頑張る式のやり方」をやらないと決めている人は、おそらく以前より多くなっているでしょう。世の中は少しずつ「もうちょっと緩くてもいいよね」という方向に進んでいる気がしますし、私はその傾向を良いことだと感じています。
ただ、まだまだ「昔ながらの”当たり前”」に囚われている人も多くいるでしょう。
形式的に自分を縛るもの、たとえば家族のために働く必要があるとか、介護や育児をしなければならないというわかりやすい縛りがあると、まるで自分はその縛りがなければ自由になれるかのような幻想に浸ることができます。高校生のちきりんが「経済力さえあれば自由になれる」と信じていたように、です。けれど、そういった「安直な言い訳」から解放されると、人は本当に自分を縛っているものと対峙することになります
私は子どもの頃に、「今自分は子どもだから生きていくのが大変なんだ。大人になれば変わるはず」と思い込んで子ども時代をやり過ごしていた記憶があります。でも、結局大人になっても、生きづらいことには変わりありませんでした。
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そしてそんな風に、「安直な言い訳」に頼ることができない状況に追い込まれて初めて、「自分は一体何に生きづらさを感じているのだろうか?」と考えるようになったわけです。
25歳前後かな。そこから、「当たり前とされていること」から少しずつ抜け出そうと思えるようになった
その時にちゃんと考え方を転換できて、ホントに良かったよね
自分が何に縛られているのかを理解するのはなかなか難しいでしょう。社会の中にある「”普通”という圧力」がとても強いからです。
社会の中で特に不満もなく生きていられるならなんの問題もありませんが、どうにも解消しがたいモヤモヤを抱えているのであれば、自分を縛るものの正体に思い巡らせてみるべきでしょう。
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「どうしたら頑張らずに済むか」を頑張って考える
本書を読む限り、ちきりんという人はかなり有能で、社会人スキルが高い人に思えます。社会の中では、「とてつもなく仕事ができる人」という括りに入る方なんだろうなぁ、という印象です。
だからこそ、こんな風に書かれていることが意外に感じられました。
まじめな人は、いったん高い目標を立てると最後まで頑張ってしまいます。適当に済ませることができず、「できなくてもいいや、仕方がない」と思えません。「なんとかしてやり遂げないといけない」と自分を追い込んでしまうのです。
そうなることが目に見えているので、ちきりんは最初から「頑張らなくてもできそうなこと」を目標にします
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これはもの凄く共感できる話で、私も実践しています。私は、そこまでべらぼうに有能というわけではありませんが、人並みにはいろいろできますし、割と「有能な人」に見られることもあるわけです。だからなんとなく周囲の期待を感じたりもするのですが、できるだけそういう期待から逃げるようにしてきました。「なんとかしてやり遂げないといけない」と追い込んでしまうからです。
仕事においては、「頑張ったらできるかもしれないこと」はそれなりにあります。でも、頑張っても上手くいかないかもしれないし、それでも周囲の期待に応えて何らかの成果は出さないといけません。そういうループに囚われるとしんどいだけなので、そういう生き方を端から諦めることにしたわけです。
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「大丈夫かな」と思ってやりはじめたことでも、「あっ、これはかなりの努力をしないと無理だ」とわかった時点でやめます。「お前ならできるはず」などと、おだてられてやる気になったりしないよう気をつけています
これも理解できる話です。私の場合はそもそも、「ちょっとやってみようかな」という感じで何かを始めることがあまりありません。例えばそれが、何かを習得しようとするものであるなら、継続して時間を取り続けなければ絶対に習熟しないでしょう。だから新しいことを始めるかどうか考える際は、「それを毎日少しずつでもやる時間をきちんと捻出できるか」を自分に確認します。そして、無理だなと思ったらやりません。
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こういうことは、一般的な自己啓発本にはなかなか書かれないでしょう。「こうすれば成長する」「こうすればもっと人脈が増える」など、いかにして自分を高めていくかについて書かれている本は多くありますが、ちきりんはそういうスタンスに対しても非常に鋭くばっさりと斬り込んでいきます。
「成長したい!」という人に「成長して、何がやりたいの?」と聞くと、「えっ?」と怪訝な顔をされることがあります。「成長して◯◯ができるようになりたい」ということがあって初めて、成長することは意味を持つのです
本当はわざわざ特別な会に行かなくても、日常で会う人と積極的に話していれば、世界はどんどん広がります。人脈をつくるために、日常以外の特別なイベントが必要なわけではありません。
本当は人脈が多いことより、本人が魅力的であるほうがよほど意味があるはずです。魅力的な人の周りには自然に人が集まるので、人脈なんて簡単につくれるからです。「自分が知っている人が多い」状態ではなく、「自分を知っている人が多い」状態のほうが効率がよいですよね
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こうして言語化してもらえると、「確かにそれは当たり前のことだよなぁ」と感じると思います。ただ、「成長」や「人脈」という言葉だけをなんとなく捉えていると、「それって正しいの?」と感じてしまうような状況に陥ってしまうわけです。
また、いわゆる「意識高い系」でない人にも突き刺さるだろう、こんな文章もあります。
「朝から運動して一汗流し、午後から映画を見に行って、夕食は◯◯会で大いに飲み大いに笑って、夜はベストセラー本を読む」という日曜日が、「昼頃に起きてラーメンを食ってボーっとしている間に暗くなり、夕方からテレビを見ながらビールを飲んでいたら、また眠くなって寝てしまった」という日曜日より、「充実した日曜日である」と感じる人は、みんな何かに洗脳されています
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何に充足感を抱くかは人それぞれなので、私は別に前者を「充実した日曜日」だと感じたっていいと思いますが、「前者のような日曜日を過ごさなきゃダメだ」と考えているならマズいでしょう。望んでそうしているならどう過ごそうが自由ですが、「こんな風に過ごさなければならない」という思考に囚われているのであれば、それは間違った状況にいると言っていいだろうと思います。
私は、ダラけると元に戻れない恐怖があって、休日もあんまりダラダラできないんだよなぁ
ただそんな休日に不満を感じてるわけじゃないし、別にいいよね
頑張らないために、ちきりんはこんな提案をします。
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たいていの人にとって「成長」とはスキルが向上したり、知識が増えたり、判断力に磨きがかかったりすることを意味するのでしょうが、私にとっての成長とは「できるだけ鈍感になること」「あまり考えこまないようになること」であり、振り返ればそのための「性格改造」こそが成長の目的であり軌跡であったと思います
ちきりんは、日本人は他の国の人より全体的に「諦めるのが遅いのではないか?」と感じています。そしてそれが不幸の元だと思っています。多くの人は、もっと早めにいろいろ諦めたほうが楽に生きられるはずです
特に最後の、「早めにいろいろ諦める」という話は、まさに私が20代の頃から実践してきたことです。本書を読んで、自分がやってきたことが認められたような感じがしてちょっと嬉しく思います。「諦めたらそこで終了だよ」という言葉が有名な名言としてよく登場しますが、私は、諦めたところから始まることも多々ある、と考えています。
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そもそも「欲望」ってなんだっけ?
私は「欲しいモノ」がほとんどないので、私自身の実感としてはよく分からないのですが、本書のこんな文章にハッとさせられる人も多いのではないかと思います。
けれど最近は、「自分はニセモノの欲望を押しつけられているのではないか」と感じることがあります。企業はよく「隠れたニーズを掘り起こす」といういい方をしますが、実際には潜在的な欲望が発掘されているのではなく、たいしてほしくもなかったモノを、マーケティングや広告、もしくは「売れている」「みんなが熱狂している」という話に惑わされて「ほしいような気持ち」にさせられていると感じるのです。しかも今はご丁寧に、クレジットカードからキャッシングまで用意されており、なんでもごく簡単に手に入ります。
けれど、欲望とは「モノ」のことではなく、「何かを心からほしくなる気持ち」のことです。私たちは、モノを簡単に手に入れる代わりに、「欲望」を取り上げられてしまっているとはいえないでしょうか。
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この「ニセモノの欲望」の話は、「モノを売る立場」として非常に良く理解できます。私は長いこと書店で働いており、「本当にこの本が欲しいと思ってみんな買っているのだろうか?」と感じることはよくありました。売る側としては売上になるのでありがたいのですが、正直に言って、「こんな本が売れてしまうのか……」と感じるような、価値があるとは思いにくい本も多くあります。
書店員時代によく考えていたことは、「今の時代は、『参加チケット』としてモノが売れる」ということです。モノそのものへの価値評価ではなく、「多くの人がそれを話題にしており、自分もその話題に乗るために買う必要がある」という消費のされ方がどんどん目立つようになったと感じます。
例えば食べ物にしても「インスタ映え」のことばかり考えることで、「味」や「食事をする際の雰囲気」など、食べるという行為に関してより本質的であるはずの部分への感覚が衰えてしまうでしょう。何に価値を感じるのかは人それぞれだし、「映え」こそが重要だというならそれでいいとは思いますが、結局それは「私は食べ物の味を評価する能力がありません」という意思表示でしかない、とも感じてしまいます。
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「美味しくはないけど映えるモノ」が流行っても別にいいけど、「映えないけど美味しいもの」が淘汰されるのはもったいないって思っちゃう
今の時代の雰囲気では、「映えないけど美味しいもの」は生き残りにくいよね
最近ちきりんは、「外から押しつけられる過剰な欲望を排して、自分のピュアな欲望を取り戻したい」と強く思うようになりました。物欲を捨てて仙人のように暮らしたいわけではありません。そうではなく「自分のオリジナルな欲望」と「つくられて付着させられているニセモノの欲望」を区別したいのです。そうしないと、ほしいモノをすべて手に入れておきながら、なぜか家の中には不要なモノが溢れているように感じるという、矛盾した状況から逃げだせません
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それこそ「外から押しつけられる過剰な欲望」だと思うし、実際は大して欲しいと思ってはいないものを買ってしまう要因なのでしょう。
またこんな文章もあります。
今や公務員や一流企業の社員であっても、35年先まで安定して給与が上がっていくとはいいがたい時代です。最長でも10年程度のローンで払える範囲のものしか買わない、というまっとうな判断に戻るべきときではないでしょうか。
これは本当にその通りだなぁ、と感じています。私はそもそも、家がほしいと思ったことはありませんが、もしそう思っていても、35年のローンを組んだりはしないでしょう。現金で買えるなら買うかもしれませんが、借金してまで買おうとは思いません。
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高度経済成長期には、「将来的に安定して給料は上がる」と信じていられたでしょうし、それを前提に人生設計ができたでしょうが、今の時代にそんな想定は無謀だと思います。それなのに、35年ローンというシステムだけが残っていて、そしてその仕組みを未だに使う人がいるということが、私にはちょっと驚きです。
「持ち家が無いことのリスク」も当然あると思うけど、私は「長期ローンで持ち家を購入するリスク」の方が大きいと思ってる
本当に「欲しい」のか、あるいは「欲しいと思わされている」だけなのか、少し考えてみる時間を取ることは大事かもしれません。
多様性の時代にも無くならない「常識の押し付け」
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今の時代はSNSなどによって、「これが当たり前だ」というある種の世論が形成されることが多々あります。ネットから生まれたそういう世論が、実際の社会の雰囲気を反映しているのかどうかは分かりませんが、そういう時代に生きていると、「これが当たり前なんだ」「その当たり前からはみ出すと炎上する」というような感覚を抱いてしまうでしょう。
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ネットを炎上させてる人って、そのほとんどが「おまえ部外者だろ」としか感じられないんだよなぁ
不倫とか特にね。文句言ってる人には、「自分はできないから僻んでるんだろうか」と思っちゃう
ちきりんが言う、「『なぜみんなと同じことをする必要があるのか?』という問いも成り立ちうる」という話は、常に意識すべきでしょう。あなたの当たり前が、別の誰かの当たり前と重なる可能性はほとんどない、と思っておく方が、誰にとっても穏やかな社会が実現するのではないかと思っています。
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本書は基本的には、「頑張らないための頑張り方」という内容で、「なんとなく頑張って生きてしまっている人」がメインのターゲットだと思います。ただ、もっと広く、「思考力を深めたい」「物事の見方を多様化したい」と思う人にもオススメできる作品です。
書かれていることを鵜呑みにするのではなく、本書で提示される「問い」に対して、自分だったらどんな考えを持つだろうかということを、是非考えてみてほしいと思います。
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早稲田大学建築学科在籍中から「建築物の設計」に興味を持てなかった坂口恭平が、「ホームレスの家」に着目した『TOKYO 0円ハウス0円生活』には、「家」に対する考え方を一変させる視点が満載。「家に生活を合わせる」ではなく、「生活に家を合わせる」という発想の転換が見事
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【驚異】「持続可能な社会」での「豊かな生活」とは?「くじら漁の村」で生きる人々を描く映画:『くじ…
手作りの舟に乗り、銛1本で巨大なクジラを仕留める生活を続けるインドネシアのラマレラ村。そこに住む人々を映し出した映画『くじらびと LAMAFA』は、私たちが普段感じられない種類の「豊かさ」を描き出す。「どう生きるか」を改めて考えさせられる作品だ
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【認識】「固定観念」「思い込み」の外側に出るのは難しい。自分はどんな「へや」に囚われているのか:…
実際に起こった衝撃的な事件に着想を得て作られた映画『ルーム』は、フィクションだが、観客に「あなたも同じ状況にいるのではないか?」と突きつける力強さを持っている。「普通」「当たり前」という感覚に囚われて苦しむすべての人に、「何に気づけばいいか」を気づかせてくれる作品
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【生き方】人生が虚しいなら映画『人生フルーツ』を見ると良い。素敵な老夫婦の尖った人生がここにある
社会派のドキュメンタリー映画に定評のある東海テレビが、「なんでもない老夫婦の日常」を映画にした『人生フルーツ』には、特に何が起こるわけでもないのに「観て良かった」と感じさせる強さがある。見た目は「お年寄り」だが中身はまったく古臭くない”穏やかに尖った夫婦”の人生とは?
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【幻想】日本での子育ては無理ゲーだ。現実解としての「夜間保育園」の実状と親の想いを描く映画:『夜…
映画『夜間もやってる保育園』によると、夜間保育も行う無認可の「ベビーホテル」は全国に1749ヶ所あるのに対し、「認可夜間保育園」は全国にたった80ヶ所しかないそうだ。また「保育園に預けるなんて可哀想」という「家族幻想」も、子育てする親を苦しめている現実を描く
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【矛盾】その”誹謗中傷”は真っ当か?映画『万引き家族』から、日本社会の「善悪の判断基準」を考える
どんな理由があれ、法を犯した者は罰せられるべきだと思っている。しかしそれは、善悪の判断とは関係ない。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)から、「国民の気分」によって「善悪」が決まる社会の是非と、「善悪の判断を保留する勇気」を持つ生き方について考える
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【考察】映画『ジョーカー』で知る。孤立無援の環境にこそ”悪”は偏在すると。個人の問題ではない
「バットマン」シリーズを観たことがない人間が、予備知識ゼロで映画『ジョーカー』を鑑賞。「悪」は「環境」に偏在し、誰もが「悪」に足を踏み入れ得ると改めて実感させられた。「個人」を断罪するだけでは社会から「悪」を減らせない現実について改めて考える
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【葛藤】子どもが抱く「家族を捨てたい気持ち」は、母親の「家族を守りたい気持ち」の終着点かもしれな…
家族のややこしさは、家族の数だけ存在する。そのややこしさを、「子どもを守るために母親が父親を殺す」という極限状況を設定することで包括的に描き出そうとする映画『ひとよ』。「暴力」と「殺人犯の子どもというレッテル」のどちらの方が耐え難いと感じるだろうか?
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【天才】読書猿のおすすめ本。「いかにアイデアを生むか」の発想法を人文書に昇華させた斬新な1冊:『ア…
「独学の達人」「博覧強記の読書家」などと評される読書猿氏が、古今東西さまざまな「発想法」を1冊にまとめた『アイデア大全』は、ただのHow To本ではない。「発想法」を学問として捉え、誕生した経緯やその背景なども深堀りする、「人文書」としての一面も持つ作品だ
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【思考】「”考える”とはどういうことか」を”考える”のは難しい。だからこの1冊をガイドに”考えて”みよう…
私たちは普段、当たり前のように「考える」ことをしている。しかし、それがどんな行為で、どのように行っているのかを、きちんと捉えて説明することは難しい。「はじめて考えるときのように」は、横書き・イラスト付きの平易な文章で、「考えるという行為」の本質に迫り、上達のために必要な要素を伝える
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【生きろ】「どう生き延びるか」と覚悟を決める考え方。西原理恵子が語る「カネ」だけじゃない人生訓:…
西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』は、決して「お金」の話だけではありません。「自分が望む生き方」を実現するための「闘い方」を伝授してくれると同時に、「しなくていい失敗を回避する考え方」も提示してくれます。学校や家庭ではなかなか学べない人生訓
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【感心】悩み相談とは、相手の問いに答える”だけ”じゃない。哲学者が相談者の「真意」に迫る:『哲学の…
「相談に乗る」とは、「自分の意見を言う行為」ではない。相談者が”本当に悩んでいること”を的確に捉えて、「回答を与えるべき問いは何か?」を見抜くことが本質だ。『哲学の先生と人生の話をしよう』から、「相談をすること/受けること」について考える
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【逸脱】「人生良いことない」と感じるのは、「どう生きたら幸せか」を考えていないからでは?:『独立…
「常識的な捉え方」から逸脱し、世の中をまったく異なる視点から見る坂口恭平は、「より生きやすい社会にしたい」という強い思いから走り続ける。「どう生きたいか」から人生を考え直すスタンスと、「やりたいことをやるべきじゃない理由」を『独立国家のつくりかた』から学ぶ
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【観察者】劣等感や嫉妬は簡単に振り払えない。就活に苦しむ若者の姿から学ぶ、他人と比べない覚悟:『…
朝井リョウの小説で、映画化もされた『何者』は、「就活」をテーマにしながら、生き方やSNSとの関わり方などについても考えさせる作品だ。拓人の、「全力でやって失敗したら恥ずかしい」という感覚から生まれる言動に、共感してしまう人も多いはず
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【思考】「働くとは?」と悩んだら読みたい本。安易な結論を提示しないからこそちゃんと向き合える:『…
「これが答えだ」と安易に結論を出す自己啓発本が多い中で、山田ズーニー『おとなの進路教室』は「著者が寄り添って共に悩んでくれる」という稀有な本だ。決して分かりやすいわけではないからこそ読む価値があると言える、「これからの人生」を考えるための1冊
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【貢献】働く上で大切にしたいことは結局「人」。海士町(離島)で持続可能な社会を目指す若者の挑戦:…
過疎地域を「日本の未来の課題の最前線」と捉え、島根県の離島である「海士町」に移住した2人の若者の『僕たちは島で、未来を見ることにした』から、「これからの未来をどう生きたいか」で仕事を捉える思考と、「持続可能な社会」の実現のためのチャレンジを知る
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【助けて】息苦しい世の中に生きていて、人知れず「傷」を抱えていることを誰か知ってほしいのです:『…
元気で明るくて楽しそうな人ほど「傷」を抱えている。そんな人をたくさん見てきた。様々な理由から「傷」を表に出せない人がいる世の中で、『包帯クラブ』が提示する「見えない傷に包帯を巻く」という具体的な行動は、気休め以上の効果をもたらすかもしれない
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【理解】東田直樹の本は「自閉症の見方」を一変させた。自身も自閉症児を育てるプロデューサーが映画化…
東田直樹の著作を英訳し世界に広めた人物(自閉症児を育てている)も登場する映画『僕が跳びはねる理由』には、「東田直樹が語る自閉症の世界」を知ることで接し方や考え方が変わったという家族が登場する。「自閉症は知恵遅れではない」と示した東田直樹の多大な功績を実感できる
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【逸脱】「仕事を辞めたい」という気持ちは抑えちゃダメ。アウェイな土俵で闘っても負けるだけだ:『ニ…
京都大学卒「日本一有名なニート」であるpha氏の『ニートの歩き方 お金がなくても楽しくクラスためのインターネット活用法』は、常識や当たり前に囚われず、「無理なものは無理」という自分の肌感覚に沿って生きていくことの重要性と、そのための考え方が満載の1冊
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【あらすじ】人生行き詰まってなお「生きたい」と思えるか?環境の激変を受け入れる難しさと生きる悲し…
勤務していた会社の都合で、町が1つ丸々無くなるという経験をし、住居を持たないノマド生活へと舵を切った女性を描く映画『ノマドランド』を通じて、人生の大きな変化に立ち向かう気力を持てるのか、我々はどう生きていくべきか、などについて考える
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【誤り】「信じたいものを信じる」のは正しい?映画『星の子』から「信じること」の難しさを考える
どんな病気も治す「奇跡の水」の存在を私は信じないが、しかし何故「信じない」と言えるのか?「奇跡の水を信じる人」を軽々に非難すべきではないと私は考えているが、それは何故か?映画『星の子』から、「何かを信じること」の難しさについて知る
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【葛藤】「多様性を受け入れること」は難しい。映画『アイヌモシリ』で知る、アイデンティティの実際
「アイヌの町」として知られるアイヌコタンの住人は、「アイヌ語を勉強している」という。観光客のイメージに合わせるためだ。映画『アイヌモシリ』から、「伝統」や「文化」の継承者として生きるべきか、自らのアイデンティティを意識せず生きるべきかの葛藤を知る
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【排除】「分かり合えない相手」だけが「間違い」か?想像力の欠如が生む「無理解」と「対立」:映画『…
「共感」が強すぎる世の中では、自然と「想像力」が失われてしまう。そうならないようにと意識して踏ん張らなければ、他人の価値観を正しく認めることができない人間になってしまうだろう。映画『ミセス・ノイズィ』から、多様な価値観を排除しない生き方を考える
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【幻想】心の傷を癒やすことの”難しさ”、寄り添い続けるために必要な”弱さ”と”冷たさ”:映画『心の傷を…
「優しいかどうか」が重要な要素として語られる場面が多いと感じるが、私は「優しさ」そのものにはさしたる意味はないと考えている。映画『心の傷を癒すということ 劇場版』から、「献身」と「優しさ」の違いと、誰かに寄り添うために必要な「弱さ」を理解する
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【実話】正論を振りかざす人が”強い”社会は窮屈だ。映画『すばらしき世界』が描く「正解の曖昧さ」
「SNSなどでの炎上を回避する」という気持ちから「正論を言うに留めよう」という態度がナチュラルになりつつある社会には、全員が全員の首を締め付け合っているような窮屈さを感じてしまう。西川美和『すばらしき世界』から、善悪の境界の曖昧さを体感する
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【感想】映画『窮鼠はチーズの夢を見る』を異性愛者の男性(私)はこう観た。原作も読んだ上での考察
私は「腐男子」というわけでは決してないのですが、周りにいる腐女子の方に教えを請いながら、多少BL作品に触れたことがあります。その中でもダントツに素晴らしかったのが、水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』です。その映画と原作の感想、そして私なりの考察について書いていきます
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【変人】学校教育が担うべき役割は?子供の才能を伸ばすために「異質な人」とどう出会うべきか?:『飛…
高校の美術教師からアーティストとして活動するようになった著者は、教育の現場に「余白(スキマ)」が減っていると指摘する。『飛び立つスキマの設計学』をベースに、子どもたちが置かれている現状と、教育が成すべき役割について確認する。
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【挑戦】自閉症のイメージを変えるおすすめ本。知的障害と”思い込む”専門家に挑む母子の闘い:『自閉症…
専門家の思い込みを覆し、自閉症のイメージを激変させた少年・イド。知的障害だと思われていた少年は、母親を通じコミュニケーションが取れるようになり、その知性を証明した。『自閉症の僕が「ありがとう」を言えるまで』が突きつける驚きの真実
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【爆笑】「だるい」「何もしたくない」なら、「自分は負け組」と納得して穏やかに生きよう:『負ける技…
勝利は敗北の始まり」という感覚は、多くの人が理解できると思います。日本では特に、目立てば目立つほど足を引っ張られてしまいます。だったら、そもそも「勝つ」ことに意味などないのでは?『負ける技術』をベースに、ほどほどの生き方を学びます
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【能力】激変する未来で「必要とされる人」になるためのスキルや考え方を落合陽一に学ぶ:『働き方5.0』
AIが台頭する未来で生き残るのは難しい……。落合陽一『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ~』はそう思わされる一冊で、本書は正直、未来を前向きに諦めるために読んでもいい。未来を担う若者に何を教え、どう教育すべきかの参考にもなる一冊。
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【自由】幸せは比較してたら分からない。他人ではなく自分の中に「幸せの基準」を持つ生き方:『神さま…
「世間的な幸せ」を追うのではなく、自分がどうだったら「幸せ」だと感じられるのかを考えなければいけない。『神さまたちの遊ぶ庭』をベースに、他人と比較せずに「幸せ」の基準を自分の内側に持ち、その背中で子どもに「自由」を伝える生き方を学ぶ
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【異端】子育ては「期待しない」「普通から外れさせる」が大事。”劇薬”のような父親の教育論:『オーマ…
どんな親でも、子どもを幸せにしてあげたい、と考えるでしょう。しかしそのために、過保護になりすぎてしまっている、ということもあるかもしれません。『オーマイ・ゴッドファーザー』をベースに、子どもを豊かに、力強く生きさせるための”劇薬”を学ぶ
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30代になっても未婚でコンビニアルバイトの古倉さんは、普通から外れたおかしな人、と見られてしまいます。しかし、本当でしょうか?『コンビニ人間』をベースに、多数派の人たちの方が人生を自ら選択していないのではないかと指摘する。
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【発想力】「集中力が続かない」と悩むことはない。「集中しない思考」こそAI時代に必要だ:『集中力は…
『「集中力がない」と悩んでいる人は多いかもしれません。しかし本書では、「集中力は、思ってるほど素晴らしいものじゃない」と主張します。『集中力はいらない』をベースに、「分散思考」の重要性と、「発想」を得るための「情報の加工」を学ぶ
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【天職】頑張っても報われない方へ。「自分で選び取る」のとは違う、正しい未来の進み方:『そのうちな…
一般的に自己啓発本は、「今、そしてこれからどうしたらいいか」が具体的に語られるでしょう。しかし『そのうちなんとかなるだろう』では、決断・選択をするべきではないと主張されます。「選ばない」ことで相応しい未来を進む生き方について学ぶ
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【辛い】こじらせ女子必読!ややこしさと共に生きるしかない、自分のことで精一杯なすべての人に:『女…
「こじらせ」って感覚は、伝わらない人には全然伝わりません。だからこそ余計に、自分が感じている「生きづらさ」が理解されないことにもどかしさを覚えます。AVライターに行き着いた著者の『女子をこじらせて』をベースに、ややこしさを抱えた仲間の生き方を知る
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【呪縛】生きづらさの正体とそこからどう抜けるかを、「支配される安心」「自由の不自由」から考える:…
自由に生きられず、どうしたらいいのか悩む人も多くいるでしょう。『自由をつくる 自在に生きる』では、「自由」のためには「支配に気づくこと」が何より大事であり、さらに「自由」とは「不自由なもの」だと説きます。どう生きるかを考える指針となる一冊。
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39歳で餓死した男性は、何故誰にも助けを求めなかったのか?異常な視聴率を叩き出した、NHK「クローズアップ現代」の特集を元に書かれた『助けてと言えない』をベースに、「自己責任社会」の厳しさと、若者が置かれている現実について書く。
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生きることがしんどくて、自殺してしまいたくなる気持ちを、私はとても理解できます。しかし世の中的には、「死にたい」と口にすることはなかなか憚られるでしょう。「自殺を決して悪いと思わない」という著者が、「死」をもっと気楽に話せるようにと贈る、「笑える自殺本」
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誰かとの関係性には大抵、「友達」「恋人」「家族」のような名前がついてしまうし、そうなればその名前に縛られてしまいます。「名前がつかない関係性の奇跡」と「誰かを想う強い気持ちの表し方」について、『君の膵臓をたべたい』をベースに書いていきます
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私は、安楽死が合法化されてほしいと思っている。そのためには、人間には「死ぬ権利」があると合意されなければならないだろう。安楽死は時折話題になるが、なかなか議論が深まらない。『安楽死を遂げた日本人』をベースに、安楽死の現状を理解する
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生きていると、「常識的な考え方」に囚われたり、「普通」「当たり前」を無自覚で強要してくる人に出会ったりします。そういう価値観に合わせられない時、自分が間違っている、劣っていると感じがちですが、そういう中で一歩踏み出す勇気を得るための考え方です
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苦しい・しんどい【本・映画の感想】 | ルシルナ
生きていると、しんどい・悲しいと感じることも多いでしょう。私も、世の中の「当たり前」に馴染めなかったり、みんなが普通にできることが上手くやれずに苦しい思いをする…
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ルシルナは、4000冊以上の本と500本以上の映画をベースに、生き方や教養について書いていきます。ルシルナでは36個のタグを用意しており、興味・関心から記事を選びやすく…
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