目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ケン・オーレッタ, 翻訳:土方 奈美
¥159 (2022/07/25 21:01時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
創業から4年経っても、収益化の目処がまったく立っていなかったグーグル 収益化に無関心だった創業者2人の、無邪気な理想主義 グーグルを軌道に乗せた2人の立役者と、グーグルの内奥に入り込んだ著者の奮闘
良い意味でも悪い意味でも”イカれている”創業者2人の生き様に私は強く惹かれる
自己紹介記事
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それぐらい、私たちの生活にグーグルが深く関係している 。
そんな「世界を一変させた企業 」について、あなたはどのぐらい知っているだろうか ? その問いに答えるのが本書である。著者のケン・オーレッタは、
ケン・オーレッタほど、今起こりつつあるメディア革命を完全にカバーしている記者はいない。
と評されるほど、その分野に精通したジャーナリストだ。本書はグーグルについての本ではあるが、同時に、グーグルが登場したことで破壊されてしまった世界についても描いている 。グーグルという一企業を中心に据えた、「世界のメディア産業の激変」を描く作品 というわけだ。
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ちなみに本書は、日本での単行本の発売が2010年、アメリカで発売されたのはそれ以前である。つまり、最新の情報に触れられている作品ではない 。ただ本書は、どちらかと言えば「歴史書」に近い と言っていいだろう。グーグルがどのように創業され、いかにして今のような地点にたどり着くことになったのかが描かれる作品 なので、最新の情報が含まれていないことは、本書の欠点にはならない。その点を理解して手に取ってほしいと思う。
創業当初は、売上を見込める予測がまったく存在しなかった
グーグルは、メディア産業のあり方を一変させた 。
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伝統メディアでは、コンテンツのある場所に視聴者を連れていくことが大切だった。だが新たなメディアでは、コンテンツがある場所に視聴者を連れて行くのではなく、視聴者のいるところにコンテンツを届けることが重要だ。そして視聴者は、ウェブのありとあらゆる場所に存在するんだ。
生まれながらにしてインターネットが存在する世代にとっては、「自分の元に情報が届くこと」が当たり前 だろう。しかしそれまでは、新聞なりテレビなり映画なり何でもいいが、「そのコンテンツがある場所にユーザーを連れて行く」必要があった 。そんな、伝統メディアにとって常識的だった考え方を、グーグルは創業からたった10数年で打ち破ってしまった のである。
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また、グーグルがもたらした新たな価値観として、「ネットは無料であるべき」 という考えも挙げられるだろう。
グーグルは無料サービスを通じて、「ネット上の情報やコンテンツは無料であるべきだ」という意識を広めた。それこそ伝統メディアが目下、必死で抵抗しているものだ。「”グーグル世代”とも言うべき企業は、デジタルなものはすべて無料にすべき、というシンプルな前提にもとづいて成長してきた」とアンダーソンは書いている。
グーグルの革命的だった点は、「すべてが無料」という点だ 。一般的なユーザーが、グーグルに対して何か支払いを行うことはないだろう。少なくとも私は、グーグルに対して何か料金を支払ったことはないと思う。そしてそんな、何もかもを無料で打ち出すグーグルが、最終的にとんでもない額の広告収入を得ている のだ。2008年の広告収入は、5大テレビ・ネットワーク(CBS・NBC・ABC・FOX・CW)の合計に拮抗するそうだ 。恐らく2022年現在は、2008年時点よりも遥かに増えているだろう。
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しかし、創業者2人を始めとして、グーグルがこのように収益を生み出せるようになるなどとは、誰も考えていなかった 。そこに、グーグルという企業の凄まじさがあると感じる。
グーグルがCPCという画期的な広告手法を発明し、「アドワーズ」と名付けて稼働させたのが2002年のこと 。既に創業から4年が経っていた 。つまり、この4年間、グーグルには「収入」が存在しなかったというわけだ。また「アドワーズ」にしても、起死回生の一手として生み出されたなんてことはない。これが収益の柱になるとは誰も考えていなかったというから驚きだ。
そもそも創業者の2人、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、「収益化」にはほとんど関心を示さなかった という。ただ、この表現は正確ではない。正しくは、「『検索の質を高めれば、自ずと収益化の方法が見つかるはず』という信念を疑うことなく持ち続けていた 」である。
二人ともグーグルの宣伝のためには1セントたりとも使う気はなかった。
会社には収入はほとんどなかったが、ペイジもブリンも、グーグルが完成さえすればユーザーは集まってくると信じて疑わなかった。
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本書には、「創業者2人が収益化にいかに無関心だったか」を示す凄まじいエピソード が記されている。
ついにひとりの記者がまっとうな質問を投げかけた。「グーグルはどうやって利益を上げるのか?」 「我々の目標は、検索という行為をできるかぎり快適にすることだ。収益の最大化ではない」とブリンは言い切った。
あるクレジットカード会社(実際にはビザ)が、グーグルのホームページに自社のロゴマークを載せ、リンクを張ってくれれば五百万ドル支払うと申し出たことがあるが、ペイジとブリンはまったく相手にしなかった。
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このスタンスこそ、まさに「グーグル」なのである 。結果としてグーグルは、CPCという手法を発明し、現在に至る「世界を一変させた企業」への道を歩んでいく。しかしCPCの開発は、あくまで偶然にすぎなかった と語っている。もしグーグルが画期的な広告手法を生み出せなかったから、グーグルは現在のような企業としては存在しなかっただろう 。
ある意味で世界を支配しているような存在でもあるグーグルの創業者が、「収益化にまったく関心がなかった」というのは驚くべき事実であるようにも感じられる 。しかしだからこそ、普通ではあり得ない企業として異端的な存在感を示すことにもなった のだとも感じた。
創業者2人の「無邪気さ」と、グーグルを大きくしたキーパーソン
それでは、創業者2人は一体何に関心を持っていたのか 。それはシンプルに、次のように表現できる。
シュミットと創業者たちの理想とは何か? それは検索をするユーザーの真意をたちどころに理解できるほどの情報を手に入れ、問いに対して唯一最高の答えのみを提示できるようになり、ユーザーにこれ以上ないというほどの満足感を与えることだ。
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なんとも理想主義的な主張 だと感じるだろう。そう、彼らは「理想主義者」だと受け取られている のだ。
ペイジとブリンを「ユートピアン(理想主義者)」と評する。「彼らは質の高い情報さえ手に入れば、誰もがより良い生活を送れると信じている。『技術さえできれば、おのずとうまくいく』と考える二人は、”技術的楽観主義”と言えるだろう」
ペイジとブリンには、別の共通点もあった。二人は共に、やや救世主めいた理想主義に燃えていた。グーグルを創業した背景には、広告は人々をだまして無駄金を使わせているという憤りや、インターネットこそ人々を開放する、民主的な精神を育むはずだという強い思いがあった。
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私は基本的に、あまのじゃくや奇人変人が大好き なので、アップル製品を1つも使っていないにも拘わらず、スティーヴ・ジョブズには興味を抱いている。同じように、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンにも強く惹かれてしまった。彼らのあまりに「理想主義的」な願望は、普通には実現不可能だろう 。2022年現在の話であればまだしも、彼らがそのように考えてグーグルを創業したのは1998年のことだ。Windows95が発売されてからたった3年、日本ではまだインターネットがまともには普及していなかった頃である。そんな時代に、「ストレスフリーの検索を実現すれば世の中はハッピーになる」と主張するのは、なかなかにイカれている と思う。しかしだからこそ面白いし、そんな異端的な創業者だからこそ、グーグルという特異な会社が生まれた とも言えるだろう。
理想主義的と言えば、
グーグルのスローガンは、「邪悪になってはいけない」
どうすれば邪悪なことをせずに成長できるか。
というスタンスも興味深い。しかし、ネットで調べてみると、この「Don’t Be Evil(邪悪になってはいけない)」というスローガンは、2018年に外された ようだ。そのことが何を意味するのかは分からないが、少なくともグーグルは「邪悪になってはいけない」というスタンスで創業され、そのスローガンと共に長い間歩んできたというのは確か である。
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さて、収益化にまったく興味がなかったグーグルが、創業からしばらくの間なんとか持ちこたえ、どうにか会社を軌道に乗せることができたのは、エリック・シュミットとビル・キャンベルの2人の存在のお陰だ 。エリック・シュミットはグーグルのCEOとして会社を率い、ビル・キャンベルは経営相談役として創業者2人をコーチした。どちらも、その世界では知らない者のいない超有名人である。
ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは共にエンジニアだ 。グーグルは「エンジニアがキングだ」という社風を持つ会社であり、その中でエンジニアにいかに力を発揮してもらうかという点において2人は抜群の能力を発揮する 。しかし、「会社経営」という点ではどちらも覚束ない。創業当初、「事業計画書を作ってくれ」と言われた2人が「何それ?」と返したというエピソードも本書では紹介されている。2人の”世話役”なくして、グーグルの成功はあり得なかった というわけだ。
本書を読めば分かるが、グーグルという会社はかなり「運」に好かれていた と言っていい。エリック・シュミットとビル・キャンベルというプロの経営者2人が関わっていたとしても、普通は乗り越えられないだろう事態が次々に起こっていたのだ。本当に、私たちが知っているようなグーグルとして今も生き残っているのは、奇跡だと言っていいだろう 。
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良いところも悪いところもすべて描き出す
著者は本書の執筆に当たり、グーグルの協力を取り付けることに苦心した と書いている。
同社は協力を渋った。共同創業者をはじめ、同社幹部は本の電子化には熱心だが、本を読むことには大して興味がないのだ。執筆に協力するのは”時間の無駄”ではないかと懸念していた。そこで私は、本書の使命はグーグルのしていることや、メディア業界をどのように変えようとしているかを理解し、説明することであり、グーグルは私のプロジェクトを検索と同じ発想で考えるべきだと訴えた。優れた本が完成すれば、検索結果の上位に表示され、多くの人の目に触れるようになる――。何ヶ月もドアを蹴飛ばしつづけた結果、彼らはようやく私を受け入れてくれた。
こうして著者は、本書執筆に至るまでにグーグル社員に対して150回以上のインタビューを行い、その内実を探ってきた 。その過程で著者は、何度も同じような質問を受けた という。
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グーグルの社員からは、自分たちにとって好ましい本になるのか、とよく聞かれた。それに対する私の答えはいつも同じで、私がきちんとした仕事をすれば、彼らにとって好ましくない事柄も含まれるだろうというものだった。
その言葉通り、本書には良い面も悪い面も書かれている 。それは創業者2人に対しても変わらない。
著者が創業者2人を絶賛する場面ももちろん多々ある 。
創業者二人に共通するのは「常識を覆すような発想をうながす能力」だ。彼らには、”並外れた洞察力”に加えて、周囲の人々の発想を刺激する才能があることに気付いたという。
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ペイジとブリンは、どこでこうしたブレのない姿勢を身につけたのだろう? 「経験がないのには、プラスとマイナスがある。僕らは予備知識がなかったから、これまでとは違うやり方を試すことに抵抗がなかったんだ。それが明確な目的意識のおかげかはわからないな。後から考えてそうだと思うのは、単にうまく言っているだけかもしれないしね」とペイジは言う。
一方で、悪い面についても触れている 。その多くは、「創業者2人の『他人の気持ちを理解する能力』の欠如 」に関するものであることが多い。
またしてもブリンとペイジは、自分たちの意図を疑われる可能性を想定したり、数字では説明できない消費者の不安に耳を傾けたりする能力のなさを見事に露呈したのである。
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一人の人間の価値を、客観的な指標のみで測れるなどという考えはばかげている。これは若い起業家の例にもれず、社会人としてペイジとブリンの視野がいかに狭いかを物語る事例といえるだろう。彼らの成功の一因は、目標から頑なに目をそらさなかったことだ。だが創業前にペイジが経営の本を何冊か読んでいたとはいえ、二人の知識やモノの見方はきわめて偏っていた。
なんとなく、「理系男子」のようなイメージ をしてもらえればいいだろう。好きなことを突き詰め、途方もない成果を生み出すことには長けているが、「共感力」は低く、他人や社会の感覚を理解することには難がある 。それらを総合して著者は、彼らをこんな風に評している。
三人の優秀さや成功ぶりは人々に感動を与えるが、彼らの言葉やイメージはこころを揺さぶるものではない。彼らはスティーブ・ジョブズではないのだ。才能あるセールスマンでも、啓蒙的なリーダーでもない。
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最後に
本書は、巻末の訳注も含めれば650ページを超えるかなりの分量 の作品だ。私は、テック系の知識にはかなり疎い方だが、それでも面白く読める作品だった。
何かとんでもない事態でも起こらない限り、私たちは永遠にグーグルという企業と関わらざるを得ない だろう。確かにグーグルは、生活を便利にする様々なサービスを生み出してくれている。しかし、グーグルがどのようなスタンスを取るかによって、一気に「悪の存在」へと変わる危険性がある のだと意識しておく必要はあるだろう。
無料で便利だからといって、何も考えずにその有益さを享受するだけでいいのか 。本書を読んで、改めてその点について考えてみるのもいいだろう。
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【評価】元総理大臣・菅義偉の来歴・政治手腕・疑惑を炙り出す映画。権力を得た「令和おじさん」の素顔…
「地盤・看板・カバン」を持たずに、総理大臣にまで上り詰めた菅義偉を追うドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』では、その来歴や政治手腕、疑惑などが描かれる。学生団体「ivote」に所属する現役大学生による「若者から政治はどう見えるか」も興味深い
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「偏見・差別ゆえに、他人の能力を活かせない人間」を、私は無能だと感じる。そういう人は、現代社会の中にも結構いるでしょう。ソ連との有人宇宙飛行競争中のNASAで働く黒人女性を描く映画『ドリーム』から、偏見・差別のない社会への道筋を考える
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【アート】「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」(森美術館)と「美術手帖 Chim↑Pom特集」の衝撃から「…
Chim↑Pomというアーティストについてさして詳しいことを知らずに観に行った、森美術館の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に、思考をドバドバと刺激されまくったので、Chim↑Pomが特集された「美術手帖」も慌てて買い、Chim↑Pomについてメッチャ考えてみた
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【実話】権力の濫用を監視するマスコミが「教会の暗部」を暴く映画『スポットライト』が現代社会を斬る
地方紙である「ボストン・グローブ紙」は、数多くの神父が長年に渡り子どもに対して性的虐待を行い、その事実を教会全体で隠蔽していたという衝撃の事実を明らかにした。彼らの奮闘の実話を映画化した『スポットライト』から、「権力の監視」の重要性を改めて理解する
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【実話】映画『イミテーションゲーム』が描くエニグマ解読のドラマと悲劇、天才チューリングの不遇の死
映画『イミテーションゲーム』が描く衝撃の実話。「解読不可能」とまで言われた最強の暗号機エニグマを打ち破ったのはなんと、コンピューターの基本原理を生み出した天才数学者アラン・チューリングだった。暗号解読を実現させた驚きのプロセスと、1400万人以上を救ったとされながら偏見により自殺した不遇の人生を知る
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【考察】アニメ映画『虐殺器官』は、「便利さが無関心を生む現実」をリアルに描く”無関心ではいられない…
便利すぎる世の中に生きていると、「この便利さはどのように生み出されているのか」を想像しなくなる。そしてその「無関心」は、世界を確実に悪化させてしまう。伊藤計劃の小説を原作とするアニメ映画『虐殺器官』から、「無関心という残虐さ」と「想像することの大事さ」を知る
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【博覧強記】「紙の本はなくなる」説に「文化は忘却されるからこそ価値がある」と反論する世界的文学者…
世界的文学者であり、「紙の本」を偏愛するウンベルト・エーコが語る、「忘却という機能があるから書物に価値がある」という主張は実にスリリングだ。『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』での対談から、「忘却しない電子データ」のデメリットと「本」の可能性を知る
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【歴史】ベイズ推定は現代社会を豊かにするのに必須だが、実は誕生から200年間嫌われ続けた:『異端の統…
現在では、人工知能を始め、我々の生活を便利にする様々なものに使われている「ベイズ推定」だが、その基本となるアイデアが生まれてから200年近く、科学の世界では毛嫌いされてきた。『異端の統計学ベイズ』は、そんな「ベイズ推定」の歴史を紐解く大興奮の1冊だ
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「地球は一種の生命体だ」という主張はかなり胡散臭い。しかし、そんな「ガイア理論」を提唱する著者は、数々の賞や学位を授与される、非常に良く知られた科学者だ。『ノヴァセン <超知能>が地球を更新する』から、AIと人類の共存に関する斬新な知見を知る
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【人生】「資本主義の限界を埋める存在としての『贈与論』」から「不合理」に気づくための生き方を知る…
「贈与論」は簡単には理解できないが、一方で、「何かを受け取ったら、与えてくれた人に返す」という「交換」の論理では対処できない現実に対峙する力ともなる。『世界は贈与でできている』から「贈与」的な見方を理解し、「受取人の想像力」を立ち上げる
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【真実?】佐村河内守のゴーストライター騒動に森達也が斬り込んだ『FAKE』は我々に何を問うか?
一時期メディアを騒がせた、佐村河内守の「ゴースト問題」に、森達也が斬り込む。「耳は聴こえないのか?」「作曲はできるのか?」という疑惑を様々な角度から追及しつつ、森達也らしく「事実とは何か?」を問いかける『FAKE』から、「事実の捉え方」について考える
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NSA(アメリカ国家安全保障局)の最高機密にまでアクセスできたエドワード・スノーデンは、その機密情報を持ち出し内部告発を行った。「アメリカは世界中の通信を傍受している」と。『シチズンフォー』と『スノーデン』の2作品から、彼の告発内容とその葛藤を知る
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フランスのテレビ局が行った「現代版ミルグラム実験」の詳細が語られる『死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』は、「権威」を感じる対象から命じられれば誰もが残虐な行為をしてしまい得ることを示す。全人類必読の「過ちを事前に回避する」ための知見を学ぶ
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【能力】激変する未来で「必要とされる人」になるためのスキルや考え方を落合陽一に学ぶ:『働き方5.0』
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メガネファストファッションブランド「オンデーズ」の社長・田中修治が経験した、波乱万丈な経営再生物語『破天荒フェニックス』をベースに、「仕事の目的」を見失わず、関わるすべての人に存在価値を感じさせる「働く現場」の作り方
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