目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
「地球で最も安全な場所を探して」HP
この映画をガイドにしながら記事を書いていきます
今どこで観れるのか?
自主上映会の案内を載せておきます
この記事の3つの要点
- トイレを作らないまま家を建ててしまうのと同じこと
- 世界の処分場だったイギリスと、原発が存在しないオーストラリアでの騒動
- 日本は「世界初」の手法
「自分には関係ない」みたいに振る舞うことは許されない、人類全体の問題です
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
映画『地球で最も安全な場所を探して』で取り上げられる「核のゴミ」は、人類全体で解決しなければならない課題だ
「核のゴミ」の問題に取り組む人々が描かれる映画『地球で最も安全な場所を探して』
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この映画では、「核のゴミ」の問題に関わる世界中の人たちが描かれる。一部だが、日本も登場する。
映画を観て初めて知ったが、原子力発電所を持たない国さえ、この「核のゴミ」と無縁ではいられないようだ。本当に、真剣に考えなければならない問題である。
世界中どの国もまだ、最終処分地の選定は済んでいない。「中間貯蔵」という、一時的にここに貯蔵します、という場所はあるが(日本の場合も、青森県六ヶ所村がそれに当たる)、最終的にここに処分します、という場所は決まっていないということだ。映画のナレーションで、
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家を建てる時には、トイレも必ず作る
と言っており、言い得て妙だと感じた。まさに人類は、トイレをどこに設置するか決めずに家を建て、現在に至るまでトイレを設置できずにいるのだ。
そのような状況に対して、様々な人間が対処しようと腰を上げており、この映画ではそういった人々の姿が描かれていく。
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ただし、出てくる人たちの考え方は様々だ。映画の中で頻繁に取り上げられるチャールズ・マッコンビーという核物理学者は、
世界各国が脱原発を推し進めている現状を危惧している
と、原子力発電所が必要だという考えを繰り返し主張していた。彼の信念には様々な意見があるだろうが、同じく彼が言った、
今原発を止めても、廃棄物の処理問題はつきまとう
という考えには、誰もが賛同するはずだ。「核のゴミ」は、放射能を出さない安全な状態に達するのに数十万年掛かると言われている。そんな核廃棄物が既に世界中に数十万トン存在しているのだ。仮に今この瞬間に世界中の原発を止めたとしても、この数十万トンの核廃棄物はどうにかしなければならない。
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原発に賛成か反対か、その考えには様々なグラデーションがあるが、出てくる人物は皆、それぞれの信念に基づいて、「核のゴミ」と対峙しようとしている。
かつてイギリスは、世界の「核のゴミ」の処理場だった
映画を観て初めて知って、最も驚いたのが、イギリスの話だ。
イギリスはかつて、世界中から核廃棄物を集めていた。確か私の記憶でも、日本の核廃棄物がイギリスで処理されていた時代があったように思う(詳しくは知らないし、この映画ではそこは描かれていない)。当時イギリスが採用していた仕組みは、原子力発電所を保有する国からすれば素晴らしいものだった。
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自国の原子力発電所から出た使用済み核燃料をイギリスに送る。イギリスで処理され、プルトニウムだけは自国へと戻ってくる。しかし、核廃棄物はそのままイギリスに残る、という方式だったのだ。
これは恐らく、国ではなく一企業が行っていたことであり、企業としては、核廃棄物の問題は後で考えよう、とりあえず世界中から使用済み核燃料を集めて処分料をもらって稼ぎまくろう、というようなことだったのだと思う。
イギリスが核廃棄物を引き取ってくれるなら素晴らしい、ということで、スイスも原子力発電所を保有することに決めた。それはあくまでも、「未来永劫イギリスが核廃棄物を引き取ってくれること」とが前提の決定だった。
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しかし1976年、突然状況が変わる。イギリス政府が上述のやり方を禁止する方針を打ち出したのだ。イギリスに使用済み核燃料の処分を頼っていた国は、自国での処理を余儀なくされる。スイスも同様であり、イギリスのその決定を受けてスイス政府は、前述したマッコンビーを招聘し、安全な処分場の選定を依頼する。
当初スイス政府は、「5年で処分場の建設地が決まらなければ原発の操業を停止する」としていた。しかし毎年のように基準が緩和され、現在に至るまで原発は操業され続けている。
映画ではそう言ってはいなかったが、イギリスが上述のようなやり方をしていなければ、もしかしたらスイスは原子力発電所に手を出していなかったかもしれない。
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原発のないオーストラリアも巻き込まれてしまう
オーストラリアには原子力発電所が存在しないそうだが、しかしなぜか、「核のゴミ」の問題と無縁ではいられない。
そもそも核廃棄物の最終処分場には、「半径100km圏内での高低差が5m以内」、つまり非常に広い範囲で平らな土地が必要とされる。そして、その条件に適していると考えられたのがなんとオーストラリアだったのだ。
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イギリス企業が多額の資金を拠出し、オーストラリアで処分地候補を選定する調査計画が極秘裏に練られた。これは「パンゲア計画」と呼ばれていたが、その資料映像が環境団体に流出してしまう。その結果、オーストラリア国内で大規模な反対運動が起こり、計画は頓挫した。
もし資料が流出しなかったらどうなっていたのか分からないが、原発を保有しない国に核廃棄物を押し付けるような構図が出来上がっていたかもしれない。恐ろしい話だ。
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中国・スウェーデン・日本について
中国は、世界中がこれだけ核廃棄物の最終処分場選定に苦労している中、法改正までして原子力発電所の建設計画を承認したという。映画を観ているだけでは、この法改正以前に中国国内に原子力発電所が存在しなかったのかどうかはっきりとは分からないが、私はそうなのかなと感じた。
そして、2020年までに40基、さらにその後で18基と計58基の原子力発電所の建設計画が進められているという。これらの原子力発電所が、耐用年数である60年間で生み出す核廃棄物は、約8万6000トン。凄まじい量である。
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広大な土地を有する中国では、予定としてはゴビ砂漠に処分場を建設する計画を検討しているようだ。そこには当然、住んでいる人がいるのだが、中国なら、住人を押しのけてでも建設するのだろう。別に中国のやり方に賛成というわけではないが、少なくとも核廃棄物の問題に関しては、民主的なやり方では解決できないように感じる。だから中国が行うのだろう強制的なやり方しかないのではないか、と考えてしまった。
スウェーデンには、世界で初めて最終処分場に立候補した街がある。映画には、その街の町長も登場した。
町長は、こんな風に言う。
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関心があるから手を挙げたのだ。重要なことは、完全に自発的なプロセスだということ。強制されているわけではない。今日にでも議会を開いて、下りますと言うことだってできる
つまり、もっとざっくばらんに言えば、「手を挙げてみたらどうなるんだろう?」と考えて立候補した、というわけだ。確かに、手を挙げたからと言って強制されるわけではないし、手続きがどんな風に進んでいくのかも実際に知ることができる。さらに、「世界で初めて最終処分場に立候補した街」という称号も得られる。なるほど、面白いセレクトをした、という感じがする。日本では、「手を挙げた」というだけで批判されるだろうから、同じことをするのは難しいけれども。
さて日本については、前述のマッコンビーという核物理学者が、「日本のやり方は世界初だ」というようなことを言っていた。何が世界初なのかと言えば、「最終処分場の決定を自治体の立候補に委ねていること」らしい。日本の状況しか知らなかったから、このやり方が「世界初」だとは知らなかった。
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日本のことしか知らないと理解しにくいが、映画の中でスイスについて、「自治体の拒否権が取り上げられている」と説明されていたことから、なんとなくイメージができた。つまりスイスでは、国が「ここに作ります」と決めたら、その自治体にはNOと言える権利がない、ということだ。
それだけ聞くと、なんて横暴なやり方なのだろうと感じるだろう。しかし一方で、核廃棄物の処分場にはかなり厳しい制約が課せられる。オーストラリアの例で「まっ平らな広い土地」という条件を書いたが、他にも、地震や災害によって地盤沈下などが起こらないと考えられる場所を選ばなければならない。数十万年も安全に保管するためには、数十万年もの間地層が大きく変化しないことが絶対条件となるのである。
そして、国土が狭い国であればあるほど、そんな条件を満たす土地は限られる。とすれば、スイスが「自治体の拒否権を取り上げたこと」は仕方ないようにも感じるし、同時に、「自治体の立候補に委ねる日本」に解決の見通しがあるのだろうか、とも感じる。
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最後に、原発に関する個人的な意見を書いて終わろうと思う。
私は、東日本大震災の際に、「原発の技術には賛成だが、運営・管理主体には反対だ」と感じた。原発の技術について詳しいわけではないが、「科学的にかなり安全に制御できる」という状態にあると私は考えている。そして、福島第一原発事故のような悲劇が起こったのは、東京電力という会社(現場職員を除く)の驕りと怠慢が原因だと思っているのだ。
そして、だからこそ、原発には反対の立場を取ろうと考えている。完全にAIが管理するならともかく、「人間の組織」が原子力発電所を管理するのは、不可能だと思う。
しかし、「原発には反対だ」と主張するためには、ある程度の不自由さを受け入れなければならない。つまり、「いつでも自由に電気が使える」という環境を手放さなければならない、ということだ。
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そして私は、人類はそういう方向に進んでいくしかないだろう、と考えている。少なくとも、画期的な自然エネルギー発電が広く実用化されるまでは。
我々は、「ただ普通に便利な生活を享受している」というだけで、「核のゴミ」の問題と無縁でいられない。便利な生活は、原発が生み出す電気で成り立っているからだ。
だからこそ、我々は、関心を持ち続けなければならないのである。
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核廃棄物を宇宙に捨てられるといいが、核廃棄物を搭載したロケットが万が一にも爆発したら世界中が大惨事になる。爆発する恐れが0%である宇宙への移動手段が開発されない限り無理だろう。
だから、国内でなんとかするしかない。
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私は、そういう中から最終処分場を選ぶしかないのではないか、と考えている。
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