目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:ダースレイダー, 出演:プチ鹿島, 出演:小川淳也, 出演:平井卓也, 出演:辻󠄀元清美, 出演:菅直人, 監督:ダースレイダー, 監督:プチ鹿島, プロデュース:大島新, プロデュース:前田亜紀
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この記事の3つの要点
- 作中、唯一シリアスに描かれる「安倍元首相銃撃事件を受けての大阪・参議院選挙戦」こそが、この映画製作のきっかけとなった
- 「批判」を「悪口」としか捉えられない風潮への危機意識に共感させられる
- 「私たちがやっていることと同じことが、皆さんにも出来ます」と語る理由と、「そうしたいからそうする」という欲望ベースで選挙戦を駆け回る2人の面白さ
「権力の監視」「政権の批判」みたいに構えると政治に参加しにくくなるが、その障壁をさくっと取り払ってくれるとても面白い作品
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません
「選挙はフェスだ」を合言葉に、プチ鹿島とダースレイダーが縦横無尽に大暴れする映画『センキョナンデス』の面白さ
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とても面白い作品だった。ドキュメンタリー映画なのに、随所で客席から爆笑の声が上がる作品であり、さらにそんな映画のテーマが「選挙」だという点もまたとても興味深いと感じられるのではないかと思う。
私が観た上映回は満員だった。舞台挨拶付きだったからということもあるとは思う。ただ、木曜日の時点で土曜日のチケットを確認したら完売だったので、予定をズラして日曜日に観ることにしたのだ。凄い人気である。恐らく、本人たちの「ファン」的な人も多いのだと思うが、私はダースレイダーやプチ鹿島のファンというわけではなく、彼らがやっている「ヒルカラナンデス」というYouTubeチャンネルを観たこともない。そういう人間でも、その内容で楽しめる作品と言っていいだろう。
映画制作のきっかけにもなった、安倍元首相の銃撃事件
映画は全体的に、「笑えるような面白さ」をまとって展開していく。選挙を「フェス」と捉え、ダースレイダーとプチ鹿島が各候補者らを突撃し、彼らなりに選挙戦を楽しむ様子が映し出される作品というわけだ。
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しかし、本作について取り上げる際に、避けては通れない話がある。2022年7月に起こった、安倍元首相の銃撃事件のことだ。この事件が日本社会にどれほどの衝撃・影響を与えたのかは皆さんの知るところであるが、選挙戦を楽しむ2人にも影響を与えた。彼らは元々、映画ではなくYouTube用として選挙戦の様子を撮影していたのだが、その最中、安倍元首相の銃撃事件の一報を知る。そしてこの事件が、「YouTubeではなく、劇場公開の映画として制作すべきではないか」と、方向性を変えるきっかけになったというのだ。
そこでまずは、まさに安倍元首相の銃撃事件が起こった際に彼らが現地入りしていた、2022年の大阪での参議院選挙戦の話から始めることにしよう。
本作の監督は、東大中退のラッパーであるダースレイダーと、新聞14紙を読み比べる時事芸人のプチ鹿島の2人である。そしてそんな彼らは、大阪での参議院選挙に注目した。当時、立憲民主党の菅直人が「日本維新の会はヒットラーのようだ」とツイートし物議を醸しており、しかも謝罪するどころか、「闘うリベラル宣言」を掲げ応戦したのだ。その状況に2人は「ヒリヒリしたもの」を感じていた。だからこそ、菅直人と日本維新の会がぶつかるであろう大阪の選挙戦を見届けるしかないと、彼らは大阪へと乗り込むことにするのである。選挙期間中彼らは、候補者全員の選挙演説に顔を出し、候補者たちに直当たりして声を拾ったり、支援者たちの姿を追いかけたりしていく。
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そのような最中、安倍元首相の銃撃事件が起こったのだ。彼らはその日、大阪のホテルにいた。そして翌日以降の、「銃撃事件を受けて、選挙戦が大きく様変わりした様子」をリアルタイムで捉えていくのである。
銃撃事件の報を受け、全国の多くの候補者が一時、選挙運動の中止を発表した。しかし、「暴力に屈してはならない」と、選挙運動を続行する候補者もいたのだ。2人はそんな、大阪で選挙運動を続ける候補者の元へと足を運び、その声に耳を傾ける。
あるいは、「選挙運動は止めるが、街頭演説は行う」という姿勢を表明したのが辻元清美だ。彼女は、白いシャツに黒いパンツという姿で、たすきも掛けないまま街頭に立った。そして、自身への応援を呼びかける言葉ではなく、「言論を暴力で封じることは許されない」と、まさにその時の日本が置かれていた混沌とした状況に対して先陣を切って意見する言葉を届けようとするのだ。その演説の後、彼女は歩道沿いで記者からの取材を受ける。そしてその取材の最中、安倍元首相の訃報を耳にすることになった。その一連の様子が、『センキョナンデス』のカメラに収められている。
このように本作は、「銃撃事件直後の選挙運動」を、報道などとはまた違った形で、「そのままの空気感」みたいなものを保ったまま映し出していた。しかし、当時彼らが最も意識していたのは、「目の前の光景を映像で残そう」みたいなことではなかったそうだ。映画の中でも、あるいは上映後のトークイベントでも語っていたが、彼らがその日重視していたのは、「後から振り返って『間違いだった』と分かってもいいから、今日この場で感じたことや考えたことをちゃんと残そう」という意識だったという。
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この映画が公開された時点では既に、銃撃事件を起こした犯人の動機が、いわゆる「旧統一教会」にあったことは判明している。しかし、事件の一報が入った時には当然、まだ何の情報もなかった。首相を務めた政治家を公衆の面前で銃撃したのである。テロや暗殺など、あらゆる可能性が考慮されて当然だと思う。
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そういう状況下において、彼らが考えていたことは一体何だったのか。それは「沈黙するしかない」ということだ。この点については、後でも触れる話だが、SNS上に憶測だけであらゆる情報が飛び交っていたこととも関係している。そんな状況を踏まえつつ、彼らは、「何も分からない状況に対して、憶測で何か言っても意味はない」と考えていた。そしてその上で、「言論を暴力で封じようとする行為は、いかなる理由があっても許容できない」というスタンスだけは明確に主張していたのである。
一方で政治家たちは、選挙運動期間中という特殊な状況だったという理由もあるとは思うが、「沈黙」を選ばなかった者も多い。特に、安倍元首相からすれば「政敵」とでも言うべき存在だろう辻元清美や志位和夫が、事件直後の街頭演説で、安倍元首相の存在や功績などに想いを馳せるような言葉を口にしていたのが印象的だった。
安倍元首相の銃撃事件を取り上げるパートは、当然おちゃらけた雰囲気などなく、真剣なしんみりとした雰囲気で展開されていく。映画全体で言えば、異色のパートである。しかし、このような描写が組み込まれていることによって、「2人が“真剣に”ふざけているのだ」ということが伝わるとも言えるだろう。ある意味で、映画『センキョナンデス』の核と言える部分だと感じた。
安倍元首相の銃撃事件に関連し、2人が感じた強烈な「違和感」
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先ほど少し触れたが、安倍元首相の銃撃事件の一報が報じられるや、ネット上ではすぐに様々な声が上がったそうだ。私は正直、あまりネットを見ないようにしているので、実際にどのような「酷い」ツイートがあったのか知っているわけではない。しかし、まあ大体想像は出来る。
2人は、大阪で選挙運動を続ける候補者を追いかけつつ、適宜ツイッターなどネットの情報も追いかけていたのだが、そこで交わされていたやり取りはあまりにも醜悪なものだったそうだ。実際の状況がまったく何も分かっていない中で、支持者や批判者がお互いを非難し合い、あるいは、安否についての情報がまだ出る前から「死亡した」というデマを流す者もいたという。
彼らは、そのようなネットの風潮に対して、強い憤りを抱いていた。まあ当然だろう。正直、まともな人間がやることとは思えない。一般的にはよく、「悪貨は良貨を駆逐する」と言われたりする。私自身、ツイッターなどのSNSの有用な側面はとても素晴らしいと感じているが、しかしその良さを補って余りある代償もまた生み出されてしまうのだ。酷い世の中になったものだと思う。
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このように彼らは、「ネット上の悪質な悪口」に対して「違和感」を抱くわけだが、一方でまた少し違った切り口も提示される。それは「『批判』と『悪口』の違い」に関する話だ。そして2人は、「安倍元首相の銃撃事件によって、現状がさらに悪化するのではないか」と考えていた。
映画の中で、確かダースレイダーだったはずだが、事件が起こる前の時点で、「今の日本では、民主主義は正常に機能していない」という自身の感覚について話していたように思う。理由は明確で、「民が主になっていないから」だ。しかしこれは、単に「政治だけの問題」というわけではない。何故ならこの背景には、「適切な『批判』が成立していない」という問題もあるからだ。そして、銃撃事件によってその風潮がさらに強まるのではないかと彼らは危惧していたのである。
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難しいのは、「批判」が「悪口」として受け取られてしまう状況が存在することだと言えるだろう。
「政治が正しく機能しているのかをチェックし、不備があれば批判する」というのは、民主主義における基本中の基本である。しかし今の世の中では、「それが民主主義に欠かせない『批判』であったとしても、単なる『悪口』と受け取られてしまう」と指摘されていた。確かに私も、そのような風潮を強く感じる。少し違う話だが、今の時代、飲み会などで「議論」をしていると、特に若い世代から「怒らないで下さいよ」みたいにやんわり止められるのだという。確かそのような話を何かのネット記事で読んだ記憶がある。「意見の違いを理解した上で議論すること」は健全な行為だと思うのだが、「意見の対立」を極端に避けて生きてきたのだろう若い世代には、「議論」ではなく「喧嘩」に感じられてしまうのだそうだ。恐らく同じような理屈で、民主主義の根幹とも言える「批判」が単に「悪口を言っているだけ」と受け取られてしまうのだろうし、確かにこれでは「民主主義」が成り立つはずがないと思う。
似たような指摘は、以前観たドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』でもなされていた。菅義偉を扱った映画なのだが、その中で、「若者にもっと政治参加を促す」ことを目的とする大学サークルに所属する大学生数名から意見を聞くような描写がある。彼らにいくつか質問し、そのまま意見交換してもらう様を映し出しているのだが、その中に、「若者の間で何故自民党が人気なのか?」という質問があった。この映画を観て初めて知ったが、今若い世代の間で、自民党を支持する人が増えているのだそうだ。
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そう問われた大学生たちは、各々自分なりの解釈を口にする。彼らの見解によるとどうも、私たちからすれば「かなり消極的な理由」に感じられる理由で自民党を支持しているのだそうだ。例えば、「自民党しか知らないから」「ずっと政権を握っているから」などという答えが挙がった。もちろん、自民党を支持する若者たち自身は、それを「消極的な理由」だとは感じていないはずだが、このようなある種の「思考停止」こそが、「なんとなく自民党」みたいな風潮をさらに加速させているのだろうと思う。
さて、彼らの答えの中で特に興味深かったのが、「『野党は文句を言っているだけ』と受け取られ、若者から嫌われている」というものだ。ここにも、「批判」を「悪口」と捉える風潮が関係していると言える。確かに、「そもそも野党が適切に機能しているのか」という問題は別個に存在するわけだが、一旦それは脇に置いて理想状態について考えよう。本来「野党」というのは、「政権与党を批判的にチェックする役割」を担う存在のはずである。しかし、野党がその役割を正しく担えば担うほど、若者たちは「野党は文句ばっかり言っている」と嫌い、やはり与党(自民党)支持に回ってしまうというわけだ。この状況は、日本の政治を考える上でかなり致命的と言えるのではないかと思う。
さて、ダースレイダーは、「そのような風潮を作った張本人こそ、安倍元首相だ」と語っていた。若者による「捉え方」については別途、世代間ギャップのような問題があるとは思うが、それとはまた別に、社会全体の中で「『批判』は『悪口』である」という雰囲気を生み出すのが上手かったのだそうだ。ダースレイダーは、安倍元首相が取っていたスタンスについて次のようにまとめていた。
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私にはこういう国のビジョンがある。だから私たちにすべて任せてもらって大丈夫だ。そして、そんな私たちを批判する人間は、要するに「国を愛していない人間」なのである。
なるほど、言われてみれば確かにこのような主張をしていたように思う。そして、「民主主義の根幹を成す批判」と「悪口」を一緒くたにし、あらゆる「批判」を封じるような言説を主張し続けることで、結果として「民主主義を破壊した」ということなのだろう。
事件を機に、言論が封じられてしまうことももちろんマズい。しかしそれ以上に、「権力を批判することは悪である」みたいな風潮が一層加速してしまうことの方がより危険なのではないかと指摘されていた。確かに私もそう思う。そして、ある意味ではそのような風潮に抗おうとして、彼らはYouTubeチャンネル「ヒルカラナンデス」や映画『センキョナンデス』などの製作を続けているのだろう。
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まあ、根本は「楽しいから」だとは思うのだが。
「批判的に捉える」という意識を持ちつつ、「お祭り騒ぎを楽しむ」という気分で楽しむ2人
トークイベントの中で、確かプチ鹿島だったと思うが、
この映画は、私たち2人なりの「選挙の見方」の提示に過ぎない。
と語っていたのが印象的だった。もちろんそんなことは当たり前なのだが、この言葉にはさらに、「選挙なんか、あなたが好きなように見て楽しめばいいんだよ」というメッセージも込められていると捉えるべきだろう。そして、「別にこんな風に楽しんでもいいんじゃない?」という一例を示すために、2人が率先して「現地でお祭り騒ぎを楽しんでいる」というわけだ。
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2人はとにかく、「ヒリヒリした現場を見たい」という欲求だけを燃料にして選挙戦をウォッチしに行く。もちろん彼らは、「ヒルカラナンデス」というYouTubeでもずっと政治の話を取り上げているし、より広く「時事問題全般」に常に関心を抱いてもいるはずだ。そして、そういう「新聞、テレビ、ネットなどを通じて得た知識」が「リアルな体験の場」として提示されるのが「選挙戦」だと捉えているのだろうし、そういう関心からも選挙戦に注目しているとは思う。しかし、映画に映し出される彼らの姿を観ていると、とにかく「フェスなんだから楽しんでやるぜ!」みたいな高揚感が一番強く感じられるだろう。
彼らは時に、候補者や選対スタッフに対して厳しい追及をしたりもするのだが、別にそこに「権力を監視してやろう」「有権者として批判的な立場を取ろう」みたいな感覚が感じられるわけではない。シンプルに、「俺が知りたいから聞くんだ!」という欲求の元に動いていることが伝わってくるのだ。もちろん、「YouTubeや映画を観てくれる人に、選挙の楽しさを伝えたい」みたいな気持ちを忘れることはないと思うのだが、一方で、「この候補者を応援しているから良い風に見せてあげよう」とか「有権者のためになるような情報を引き出そう」みたいな感覚は、あまり無いのだと思う。徹頭徹尾、「俺がこうしたいんだ!」に突き動かされる2人の姿が映し出されるというわけだ。
そういう雰囲気が観ていて伝わってくることが、この映画の一番の良さだと私は思う。
「権力の監視」「政権の批判」みたいな言葉で括ってしまうと、どうしても「私たちの日常には関係ないこと」のように感じられてしまうはずだ。しかし、私たち一般人が最も政治に触れられるだろう「選挙」について彼らは、「お祭りなんだから、好きなように楽しめばいいんですよ」というメッセージを存分に発信してくれる。結果的にそのような振る舞いこそが、「権力の監視」「政権の批判」に繋がっていくのだから、「みんなが選挙をフェスだと思って楽しむこと」が政治を良くしていくとも言えるだろう。
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トークイベントの中でプチ鹿島は何度も、「私たちがやっているのと同じことが、皆さんにも出来ます」と言っていた。その通りだと私も思う。確かに、ダースレイダーやプチ鹿島は知識も豊富だし、一般人より知名度もある。「そういう人たちだからこそ『フェスのように楽しむ』みたいなやり方で参加できるのではないか」と感じる人もいるだろう。しかし彼らはそうではないと主張する。そこにこそ「選挙」の特殊さがあるのだ、と。
トークイベントの中でダースレイダーが、
他人のことを追及したりしていると、「お前はどうなんだ?」とネットで絡まれたりすることがある。
と言っていた。要するに、「他人のことをあーだこーだ偉そうに言っているが、そんなお前は誰からも批判されないような高潔な人間なのか?」みたいなツッコミを受けることがある、というわけだ。このような状況はイメージしやすいだろう。そして、「彼ら2人のように選挙を楽しむという行為」もまた、「他人を追及すること」を含むものだし、だからこそ「『お前はどうなんだ?』という返り討ちに遭うかもしれない」という心配を抱く人もいるのではないかと思う。
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この点についてダースレイダーは、非常に真っ当な話をしていた。彼の主張をざっくりまとめると、以下のようになる。
政治家を含めた公人は、発言やお金の使い道がチェックされて当然だ。そして、選挙の候補者というのは、「そんな公人に自発的になりたいと思っている人たち」である。だったら、そういう人に思っていることをぶつけだって問題ないはずだ。
確かにその通りだろう。通りがかりの人を捕まえて何か詰問するようなことをすれば大いに問題だが、候補者たちは「私を国会に連れてって!」とお願いしている人たちなのだ。であれば、そういう人に対して「公人に相応しいのか」という観点から様々な質問をする権利は誰にでもあって然るべきだろう。
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だから、彼ら2人がやっているのと同じことを、選挙権を持っている人なら、誰がやろうが何の問題もないはずである。
まあ、実際にやるとなったらハードルを感じてしまう気持ちは私も理解できるが、しかし、映画『センキョナンデス』を観ることで、「なるほど、選挙ってこんな風に楽しめばいいんだな」と感じられることは確かだと思う。もちろん、最近は選挙の度に問題視される印象があるが、「断れないことを良いことに、女性候補者に近づいて無茶なことを言うオジサン」のようになるのは良くない。そこは節度を持って振る舞わなければならないだろう。ただ、「有権者なんだから、彼らに色々と聞く権利はある」という意識を持って、選挙戦に「参加する」みたいな気持ちでいれば、また違った見方で「選挙」を捉えられるのではないかとも感じさせられた。
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さて、この「香川1区」に関しては、特にプチ鹿島の鼻息が荒かった。彼は新聞14紙を購読しているそうだが、ある時点から追加で四国新聞の購読も始めたという。恐らく、平井卓也がデジタル庁の大臣になった辺りからではないかと思う。そして、「四国新聞に関する記事を書く」というのが、彼のライフワークの1つになっていくのである。
しかし、何故四国の地方紙に注目したのか。それは、平井卓也の一族が、四国新聞社を含めた香川県のメディアを一手に牛耳る存在だからである。当然と言うべきなのかは分からないが、四国新聞ではやはり、創業家の親族である平井卓也を持ち上げ、対立候補である小川淳也を貶めるような記事を書くのだそうだ。そしてプチ鹿島は、他のメディアでの報道と比べてそのような偏向が激しいと感じられる四国新聞の記事を取り上げては、ネットで度々バズっているのである。
香川県入りした彼らは、選挙戦に飛び込んでいって候補者たちの姿を追っていく。その様子ももちろん実に興味深い。「支援者の熱気が伝わる選挙戦を展開する小川淳也」と、「クローズドな集会や動員の少ないパレードなどを展開する平井卓也」の選挙戦をウォッチし、平井卓也の選挙事務所でちょっと揉め事に遭遇したりしながら、投開票日まで選挙を楽しんでいく。
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さて、まずは少し時間を巻き戻して、小川淳也の選挙事務所でのある場面について触れよう。ダースレイダーとプチ鹿島は、取材にやってきていた四国新聞社の記者を追いかけ回していたのである。プチ鹿島にはどうしても聞きたいことがあったからだ。まずはその辺りの事情を説明していこう。
選挙が始まる前、小川淳也が「香川1区から立候補しようとしている別の候補者に『出ないでくれ』と頼んだ」という話があり、そのことで彼は批判を浴びてしまうことになる。この件については、映画『香川1区』でも描かれていた。その行動には彼なりの事情があったわけだが、その辺りの詳しい話については本作や『香川1区』を観てほしい。
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さて、四国新聞社は、対立候補である小川淳也のこの「醜聞」を、紙上で何度も扱った。それは、かなり語調の強い批判記事だったそうだ。しかしそれにも拘らず、四国新聞社は小川淳也に一切取材をせず、コメントさえ求めたことがないというのだ。プチ鹿島はこの取材姿勢を、「新聞社としてあり得ない」と憤っていた。どんな記事を書くにせよ、相手の意見は聞くべきだというわけだ。それが批判記事ならなおさらだろう。
そこでプチ鹿島は、この疑問を四国新聞社の記者にぶつけることにした。直撃を受けた記者は、「今ここでは答えられない」と逃げの姿勢を見せる。そこでプチ鹿島は、「では明日、四国新聞社に回答をもらいに行ってもいいですか?」と食い下がったのだ。このような経緯があって、彼らは、投開票日翌日に四国新聞社へと乗り込むことにしたのである。
プチ鹿島は四国新聞社のロビーで、対応に当たった広報の人物に改めて、「一読者として、『記者が取材をせずに記事を書くこと』の是非を伺いたい」と問うた。しかし広報の人物は、「私では答えられないので、質問をFAXで送ってほしい」と返すのである。四国新聞社まで足を運んだのに、記者に会わせてももらえなかった。まあ、それは色んな事情から仕方ないとしよう。それにしても「FAX」である。プチ鹿島は皮肉を込めて、「もっと”デジタル”的にやれませんか?」と聞くのだが、ともかくロビーでやり合ったところで進展はない。彼らは言われた通りFAXを送ることにした。
彼らは文面を作成し、コンビニからFAXを送る。回答期限は、3日後の11月4日18時に設定した。そして回答が返ってきたのはなんと、11月4日17:59である。どんな回答だったのかは、是非映画を観て確かめてほしい。新聞社からの公式の回答とは思えない、なかなかの代物である。
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もちろん、「喋りが上手いかどうか」と「政治力があるかどうか」に関係はないだろう。それは私も理解しているつもりだ。ただやはり私は、「言葉で人を惹きつけられないような人間に、国を引っ張る力があるとは思えない」とも感じてしまうのである。「実務の有能さ」という意味で言えば、恐らく官僚の方が圧倒的に上だろう。政治家はその点で張り合う必要はないと私は考えている。それよりも、「言葉を武器に人々を”正しく”幻惑させ、進むべき方向へと導く」みたいな役割が求められているはずだと思う。
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1969年5月13日、三島由紀夫と1000人の東大全共闘の討論が行われた。TBSだけが撮影していたフィルムを元に構成された映画「三島由紀夫vs東大全共闘」は、知的興奮に満ち溢れている。切腹の一年半前の討論から、三島由紀夫が考えていたことと、そのスタンスを学ぶ
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