目次
はじめに
この記事で取り上げる本
著:ピーター・ゴドフリー=スミス, 翻訳:夏目大
¥3,135 (2021/08/25 06:10時点 | Amazon調べ)
ポチップ
この本をガイドにしながら記事を書いていきます
この記事の3つの要点
- タコは人類とはまったく違う道筋で無脊椎動物とは思えないほど高度な脳を獲得した
- 何故タコは、燃費の悪い器官である「脳」を進化させたのか?
- 我々人類は、タコの意識をイメージできないだろう
知らなかった驚きの話が満載で、知的好奇心がバシバシと刺激された
自己紹介記事
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どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください
『タコの心身問題』によると、タコは我々人類にとって「地球外生命体」に最も近い存在なのだそうだ
頭足類に高度な頭脳があるという事実を知らなかった
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本書を読んで最も驚いたことは、「タコなどの頭足類には、人間のような高度な脳がある」という点だ。そんなこと、全然知らなかった。
さてこの「高度な脳」という表現は誤解を招くので、まずはこれを正確に理解しよう。
イルカやカラスなどは「知能が高い」と知られているだろう。しかし、イルカの脳は人間の脳より大きいが、カラスの脳は人間より小さい。つまり脳の大きさだけでは知性を判断することはできないということだ。
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では、体重と比較して脳がどれぐらいの大きさかという「脳化指数」で比べてみたらどうか。
カラスは、身体の大きさと比べても脳が小さいということになる。
どうやら、脳の大きさと知能にはそこまで関係がないようだ。では「脳が高度であるか否か」はどう判断されるのか?
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それは「神経細胞(ニューロン)の数」である。そしてタコやイカを含む頭足類は、この神経細胞の数が非常に多いのだという。タコは神経細胞が多く、非常に高度な脳を持っていると、まず理解しよう。
本書『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』という本の存在は昔から知っていた。しかし私は、「タコの心身問題」という表現は「哲学的な比喩」だと考えていたのだ。つまり、「タコに高度な知性はないが、しかし『ある』と考えてみた時にどういうことになるのか思考実験をしてみよう」という内容の本だと思い込んでいたのである。
だから、タコが高度な脳を持ち、知性の高い生物であるという事実にまず驚かされることになった。
頭足類は唯一無二の無脊椎動物
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そしてさらに凄い点がある。頭足類は唯一無二の存在だ、ということだ。
頭足類は、無脊椎動物の海に浮かぶ孤島のような存在である。他に彼らのような複雑な内面を持つ無脊椎の生物は見当たらない
基本的に「脳を進化させた生物」といえば脊椎動物だ。哺乳類・鳥類・爬虫類・魚類など、「脳を持っている」とイメージできる生物は基本的に脊椎動物だと考えていい。
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しかし頭足類は、高度な脳を持っているが脊椎動物ではない。無脊椎動物だ。つまり頭足類というのは、無脊椎動物で唯一「高度な脳」を進化させた存在なのである。
この点については後で再び触れるが、先に印象的だった文章を抜き出しておこう。
頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう
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「脳を持つ脊椎動物」というのは、言ってみれば「似たような進化を遂げてきた仲間」である。しかし、無脊椎動物で唯一脳を進化させた頭足類は、我々とはまったく異なる形で脳を進化させてきた生物だ。そしてだからこそ、人間にとってタコは、異星人と出会うようなものに近い、と著者は書いている。
この点に関して本書の訳者は、
昔から、異星人の想像図はタコに似た姿になっていることが多かった。最初に描いた人がなぜ、そういう姿にしようと考えたのかはわからないが、的を射ていたのかもしれない。偶然にしてはできすぎている
と書いている。なるほど、興味深い指摘だと思う。
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さらに驚くべき指摘が、本書ではなされている。まずその概要を書こう。その指摘とは、「タコとイカは、独立で脳を進化させた」というものだ。
ちょっと意味が分かりづらいだろうと思うので説明しよう。
知っての通り、タコの足は8本、イカの足は10本であり、タコとイカは同じ頭足類でありながら別の進化を遂げた生物である。つまり、「タコとイカの分岐点が存在する」ということだ。
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ここで、頭足類の脳がどう進化したのか、なんとなくイメージしてみよう。先程、無脊椎動物で唯一脳を進化させたのが頭足類だ、と書いた。無脊椎動物のほとんどは脳を進化させなかったということだ。とすればこう想像したくなるだろう。「タコとイカの共通祖先が脳を進化させ、その後タコとイカに分岐した」と。
つまり、8本足と10本足に分かれた時点で既に「脳」は発達しており、そこからタコはタコとして、イカはイカとして進化した、という仮説だ。この場合、「頭足類に起こった『脳の発達』という出来事」は1回ということになる。「無脊椎動物で唯一脳を進化させた」という事実は、非常にレアケースと捉えられるので「頭足類に起こった『脳の発達』という出来事」が1回だけ起こった、と考えるのが自然だろう。
しかし、近年のDNAによる研究で、この仮説は覆されている。実際には、「まずタコとイカに分岐し、そしてタコとイカのそれぞれが独自に脳を進化させた」ということが分かっているのだという。
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つまり、無脊椎動物のほとんどが脳を進化させなかったのに、頭足類では「脳の発達」が2回も起こっている、ということだ。このことについて、著者はこう書いている。
この事実は、頭足類が複雑な神経系を持つよう進化したのは単なる「偶然」ではないことを示唆する。単なる偶然であれば、何度も起きる可能性は低いからだ
確かにその通りだろう。では、頭足類はなぜ脳を進化させたのだろうか。
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頭足類はなぜ脳を進化させたのか
しかし、その理由を突き詰める前に、もう一つ重要なポイントに触れておこう。それは、「脳はメチャクチャエネルギーを消費する」ということだ。
私たち人間は、エネルギーの大半を食物から得ているが、そのエネルギーの四分の一近くを、ただ脳の正常な活動を維持するためだけに消費している。人間以外の動物でも、神経系がコスト高な機械であることは同じだ
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このような観点から考えても、「なんらかの理由でタコには脳が必要だった」と考えざるを得ないだろう。通常の機能を維持するだけでエネルギーを大量消費するような器官を、わざわざ発達させる必要がないからだ。
しかし一見するとタコには、「高度な脳」が必要とは考えられない。何故なら、「単独行動を好み」「寿命が短い」からだ。
群れを作り複雑な社会を作る生物であれば、様々な情報処理やトラブルへの対処などに脳を発達させる必要があったと考えやすい。しかし、タコを含む頭足類は、基本的に単独行動を好み、社会生活が存在するようには見えないという。
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また、高度な脳を持っていることを考えると驚きだが、頭足類は2年ほどしか寿命がないのだという。例えば、カラスは他の鳥と比べても寿命が長く、「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」で7~8年生きる。イルカは、50~60年生きるという。長く生きるのであれば、脳を発達させるのもなんとなく理解できる気がするが、2年しか生きない頭足類が高度な脳を持っているというのはやはり不思議だろう。
さて本書では、「頭足類はどうして脳を発達させたのか?」という疑問について、結構詳しく描かれていく。それをすべて説明するわけにはいかないので、結論だけ書いてみよう。
頭足類は、進化の過程で『殻』を捨て、そのお陰で身体の形を無限に変えることができるようになったが、その身体を制御するために高度な脳を持つ必要があった
これだけ書いても、恐らくよく分からないだろう。詳しく知りたい方は、是非本書を読んでみてほしい。
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タコの脳は腕にもある
それではさらに、頭足類の脳の不思議に触れていこう。
まず、先程あえて触れなかったタコの「脳化指数」の話をしよう。身体の大きさと比べて脳がどのぐらい大きいかを示す指標だ。おさらいをすると、
である。ではタコはどうか? なんとタコの「脳化指数」は0.026だという。あまりに小さすぎないだろうか?
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これには理由がある。脊椎動物の「脳」と頭足類の「脳」は、厳密には対応しないのだ。まったく別の進化を遂げたのだから、当然と言えば当然だろう。我々が「脳」と呼んでいる器官の大きさを比べると、タコの「脳」は異常に小さいことになってしまう。
しかし冒頭で、「脳の高度さは神経細胞の数で決まる」という話を書いた。そしてなんと、タコの神経細胞は腕にもあるのだ。つまりタコの場合、腕も脳だと言っていい、ということになる。そして、腕に存在する神経細胞まで含めると、「タコは高度な脳を持っている」ということになるのである。
さらに面白いことに、頭足類の神経系全体を見ると脳の中にあるのはごく一部にすぎない。頭足類の神経系では、重要な部分が身体のあちこちに分散している。たとえば、タコの場合、ニューロンの多くが腕に集中している。腕にあるニューロンの数は、合計すると脳にある数の二倍近くになる
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ちなみに、構造的な意味でもう一つ、タコの脳に関する衝撃の事実をお伝えしよう。それは、「食道が脳を貫いている」ということだ。
私たちから見て興味深いのは、口から入った食物を体内へと運ぶ管である食道が、頭足類の場合は脳の中央を貫いているということだ。その位置関係はあまりにもおかしいように私たちには思える
例えば我々が焼き魚を食べる時、骨が喉に刺さって痛い思いをすることがあるだろう。我々の場合、「あー痛かった」で済むが、食道が脳を貫いているタコの場合、尖ったものを飲み込んで喉(食道)に刺さった場合、それが脳を傷つけてしまう可能性もある、ということだ。不思議な話だろう。どうしてそんな構造になったのか、設計した者に聞いてみたいものだ。
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このように、タコの脳と人間の脳はまったく異なっている。そして、この物理的な違いが、当然だが、機能的な違いとしても現れる。
タコの脳は、ジャズバンドのいちプレイヤーだ、というのだ。どういうことか。
「脳」と聞くと、「全身を制御する司令塔」のようなイメージを抱くだろう。しかしタコの場合、腕にも神経細胞がある。ではここで、タコが自分の腕を動かそうとするとしよう。その場合、いわゆる「脳」も司令を出すことができるのだが、一方で、腕自身も脳なのだから、腕が腕に指示を出すこともできるということになる。
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これは、指揮者がおらず、互いのセッションにその場その場で合わせていくジャズプレイヤーのような働きだと考えていいだろう。いわゆる「脳」が出した司令でも、腕は腕で別の意思を持って動くことができるのだ。このことを本書ではこう表現している。
しかし、あなたがタコになったとしたら、この境界は曖昧になる。自分の腕であっても、思いどおりに制御するのは途中までで、そのあとは腕が何かするかただ見ていることになるのだ
なるほど、不思議な感覚だ。
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ただし著者は、この文章のすぐ後で、「だが、このたとえ話は本当に正しいのだろうか」と疑問を呈している。本書全般に通じることだが、著者はとにかく、「人間の感覚で頭足類を理解しようとするのは間違いだ」と繰り返し伝えようとする。
話を戻すが、脳がジャズプレイヤーであるという見方は実は脊椎動物にも当てはまるのではないか、と考えられているようだ。かつては人間などの脳は、それこそ「指揮者」「司令塔」という役割だと考えられていたのだが、実はそのような捉え方は正しくないのではないか、という見方も出てきているという。しかし、腕に神経細胞があるわけではない人間の場合、どのようにイメージしたらいいか分からない。
なんにせよ「脳」というのはまだまだ不思議な存在なのだ。
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人間みたいだが、人間とは違うタコ
著者は哲学者でありながら、長年タコの研究もしている。何故かタコが密集して生活している(集団生活をしないタコには非常に珍しい)「オクトポリス」という場所の存在を知り、複数の研究者とそこでタコの定点観測を行ってもいるのだ。
そして、そんな著者は、タコに対して奇妙な親近感を抱いてしまうという。
私は、タコがそうした認知能力を持っているのは驚くべきことだと思う。その能力はあまりに私たちに似ていて、あまりに人間らしい。それに私は驚かされる
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頭足類を見ていると、「心がある」と感じられる。心が通じ合ったように思えることもある
本書には、論文に載ったものから著者自身が目撃したものまで、様々な「タコの不思議な行動」について触れている。一部挙げてみても、「餌ではないとわかっているものにも興味を示す」「人間を一人一人識別する」「イタズラが好きな個体もいる」など、「大して知性のない生物」というイメージとは違う姿が浮かび上がってくる。
しかしそれでも、著者は「タコと人間は違う」と理解している。先述した通り、「人間の感覚でタコを理解しようとするな」と何度も書くし、「地球外生命体に出会うのに最も近い体験」という表現もその一つだろう。
また、訳者があとがきで書いている、本書の原題に対する指摘も興味深かった。
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本書の原題は「Other Minds」である。ここで注目すべきは、「minds」と複数形になっていることだ。訳者はこの点について、
だが、本書では、仮にサルやイヌなど人間以外の哺乳類に心があったとしても、それを”other minds”とは呼ばない。彼らの心はどちらかといえば、私たちのものと同種のものとみなす。区別する基準は何かといえば、「進化」だ
と書いている。つまり、「minds」と複数形にすることで、「脊椎動物と頭足類の『mind』はまったく別物だ」ということを示しているのだという。なるほど、この辺りの感覚は日本人にはなかなか分からない部分であり、複数形の「s」一つで著者の考えが理解できる。
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さらに本書の冒頭には、「mind」に関する編集部からの注意書きもある。少し長いが、丸々引用してみよう。
この本の性格上、「心」に関連するいくつかの重要語が頻出するが、日本語訳にあたっては原則的に、原文のmindに「心」、intelligenceに「知性」、consciousnessに「意識」という訳語を当てて訳し分けている。しかし英語のmindと日本語の「心」は指している意味領域が都合よく一致してはいないので、読者には次のことに留意していただきたい。
英語のmindは、心の諸機能の中でも特に思考/記憶/認識といった、人間であれば主として“頭脳”に結び付けられるような精神活動をひとくくりに想起させる言葉である。したがって本書で著者が「心」と言うときには、つねにそのような意味合いで語られている。(そして頭足類の場合、その種の心の機能が必ずしも“頭脳”だけに結びつくとは限らないことが、本書の興味深いテーマの一つとなっている)
これも英語圏の感覚でなければ理解できない部分と言えるだろう。
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生物は何故老化するのか?
さて最後に、頭足類とはあまり関係ないのだが、非常に興味深く感じた話があるので、その点に触れて終わろう。
それは、「生物が老化する理由」である。本書に書かれている仮説は初めて聞いたもので、非常に面白かった。
詳しく書くと長くなるので、ざっと説明してみよう。
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生物はこれまでに、様々な突然変異を経験してきた。そして遺伝子に起こる突然変異には、多種多様なものが存在する。その中には、「長く生きた個体にだけ影響をもたらす突然変異」もあるだろう。これを「長生き変異」と呼ぶことにする。
すべての個体がこの「長生き変異」を持っているわけではない。また、この「長生き変異」を持っている個体は、若い内にはその変異を発動しない。そして、ここでは詳しく説明しないが、様々な要因を考えることで、最初からすべての個体がこの「長生き変異」を持っていなかったとしても、結果として「長く生きた個体のほとんどが『長生き変異』を持つ」ことが説明できる(この辺りの理屈はちょっと難しかった)。
この「長生き変異」が、「老化」の正体だとしたらどうだろう。「長く生きた個体のほとんどが老化する」ということになるわけだ。
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つまり、「老化」というのは、あらかじめセットされた時限爆弾のようなものであり、それが「長生き」を理由に発動することで引き起こされる、という説明だった。
途中の論理まですべて理解できたわけではないが、この考え方は非常に納得感があると感じさせられた。生物学の世界において、この考えが主流なのかどうかは分からないが、このアイデアは数式で説明されているようで、考え方として画期的だったと書かれている。
私は「不老不死」など望まないが、この辺りの理屈がより解明されると、「不老不死」が実現される可能性もあるかもしれない。
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【幸福】「死の克服」は「生の充実」となり得るか?映画『HUMAN LOST 人間失格』が描く超管理社会
アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』では、「死の克服」と「管理社会」が分かちがたく結びついた世界が描かれる。私たちは既に「緩やかな管理社会」を生きているが、この映画ほどの管理社会を果たして許容できるだろうか?そしてあなたは、「死」を克服したいと願うだろうか?
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江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究デビュー作『QJKJQ』はとんでもない衝撃作だ。とても新人作家の作品とは思えない超ド級の物語に、とにかく圧倒されてしまう。「社会は『幻想』を共有することで成り立っている」という、普段なかなか意識しない事実を巧みにちらつかせた、魔術のような作品
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台湾のろう学校で実際に起こったいじめ・性的虐待事件を基に作られた映画『無聲』は、健常者の世界に刃を突きつける物語だ。これが実話だという事実に驚かされる。いじめ・性的虐待が物語の「大前提」でしかないという衝撃と、「性的虐待の方がマシ」という選択を躊躇せず行う少女のあまりの絶望を描き出す
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【特異】「カメラの存在」というドキュメンタリーの大前提を覆す映画『GUNDA/グンダ』の斬新さ
映画『GUNDA/グンダ』は、「カメラの存在」「撮影者の意図」を介在させずにドキュメンタリーとして成立させた、非常に異端的な作品だと私は感じた。ドキュメンタリーの「デュシャンの『泉』」と呼んでもいいのではないか。「家畜」を被写体に据えたという点も非常に絶妙
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【衝撃】NHKがアマゾン奥地の先住民ヤノマミ族に長期密着。剥き出しの生と死、文明との共存の難しさ
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世の中にはあまりに「具体的な情報」が溢れているために、「客観的、抽象的な思考」をする機会が少ない。そんな時代に、いかに思考力を育てていくべきか。森博嗣が『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』を通じて伝える「情報との接し方」「頭の使い方」
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「中学生の翔太」と「猫のインサイト」が「答えの出ない問い」について対話する『翔太と猫のインサイトの夏休み』は、「哲学」の違う側面を見せてくれる。過去の哲学者・思想家の考えを知ることが「哲学」なのではなく、「自分の頭で考えること」こそ「哲学」の本質だと理解する
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『<子ども>のための哲学』は決して、「子どもでも易しく理解できる哲学の入門書」ではない。むしろかなり難易度が高いと言っていい。著者の永井均が、子どもの頃から囚われ続けている2つの大きな疑問をベースに、「『哲学する』とはどういうことか?」を深堀りする作品
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サイエンスライターである著者は、「コロンブス到着以前のアメリカはどんな世界だったか?」という問いに触れ、その答えが書かれた本がいつまで経っても出版されないので自分で執筆した。『1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見』には、アメリカ人も知らない歴史が満載だ
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言わずと知れた大ベストセラー『サピエンス全史』は、「何故サピエンスだけが人類の中で生き残り、他の生物が成し得なかった歴史を歩んだのか」を、「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つを主軸としながら解き明かす、知的興奮に満ち溢れた1冊
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