目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:デイヴ・バーグマン, 出演:ジュディス・ローリー, 出演:ナオミ・ハンブル, 出演:アディナ・コーエン, 出演:ジム・カミンズ, 出演:アーサー・フルニエ, 監督:D.W.ヤング, プロデュース:ダン・ウェクスラー, プロデュース:ジュディス・ミズラヒー, プロデュース:パーカー・ポージー
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この記事の3つの要点
- 希少本コレクターは、欲しい本を買うために祖母を売るような人物
- 美術品のコレクションとは違う、本特有の性質がもたらす「思い入れ」
- インターネットの出現は、稀少本の世界をどう変えたか
「物体としての本」の価値を改めて感じさせてくれる映画だと思います
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まずざっくり、映画の内容を紹介しよう。
この映画では、「稀少本コレクター」「稀少本ディーラー」と呼ばれる人たちを取り上げている。世界最大規模として知られるニューヨークブックフェアの映像から始まり、本を売る人、買う人、集める人、紹介する人など、本の世界にどっぷり浸かっている人物たちが描かれていく。
ルシルナ
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ある人物はこんなことを言っていた。
希少本コレクターは、欲しい本を買うために祖母を売るような人物だ
確かに、そう言われて納得してしまいそうになる人物がたくさん登場する。本と関わっていさえすればあとは何でもいい、というような人たちである。
そして、そんな姿を見て、私は羨ましく感じてしまう。私には、そこまで熱狂できるようなものは無いからだ。
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「無い」というか、意識としては「作らないようにしている」という方が正しい。というのも、「それ無しでは生きられないもの」を持ってしまえば、それが失われる恐怖と常に隣り合わせだと感じてしまうからだ。
だから意識的に、「ハマるもの」を作らないできた。これは自分の性格ゆえ仕方ないことなのだが、やはりこんな風に何かに偏愛できる人の存在を知ると、羨ましさを感じてしまう。
さてこの記事では主に、「稀少本コレクターが生み出している価値」と「稀少本コレクターが抱いている危惧」について触れていこうと思う。普段、街なかの本屋で本を買うのとはまったく違う「本の世界」に驚かされる映画だ。
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「コレクション」としての、「美術品」と「本」の違い
この映画を観て最もなるほどと感じさせられたのは、「美術品」と「本」の違いについてだ。「本」も「美術品」の一部のような扱いだろうと勝手に考えていたが、確かに言われてみればその違いは大きいと感じた。
美術品の場合は、版画などの例外を除けば、そのほとんどは一点物だと言っていい。だから「美術品のコレクター」は、「自分がそれを欲しい」と思うだけではなく、「他の人に所有させたくない」という気持ちを強く持つそうだ。「あいつが持っていないものを自分は持っている」という、ある種の優越感のようなものを得られるのが美術品なのである。
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しかし本の場合は違う。装幀が一点物など僅かな例外を除けば、本というのは基本的に複製が存在する。自分が所有するその1冊以外に同じ本は存在しない、という状況は、普通ほとんどない。だから、美術品の場合に生まれるような「他の人に所有させたくない」という感覚は生まれにくいというのだ。
そしてだからこそ、本のコレクターは「自分とその本との関係性」みたいなものをより重視するようになるのだという。砕けた言い方をすれば「思い入れ」ということだろう。もちろん美術品にも「思い入れ」を持つことはできるが、美術品の場合は「思い入れ」を持てなかったとしても一点物という価値がある。しかし本の場合、一点物という価値が薄いゆえに、「思い入れ」の方により力点が置かれるのだ、という指摘は非常に興味深いと感じた。
映画には、本をただ集めているだけではなく、売るために集めている人物も登場する。しかし、「売りたいと思っているのだろうか?」と感じるほど、本に対する思い入れを強く抱いているように思えてしまう。美術品の場合は、勝手なイメージだが、もう少しドライというか、金銭的な価値の方が全面に出る印象が私にはある。
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この「複製が存在する」という特徴が、本のコレクターという存在をより特殊なものにしているのかもしれないと思う。
それは、ある人物のこんな発言とも関係してくるかもしれない。
ほとんどの人がこの業界に偶然入ってくる
この映画に登場する、本と関わる様々な職業の人たちは、そのほとんどが「たまたま足を踏み入れてしまった」というような経緯で稀少本の世界にやってきている。これもまた、複製が存在する本という特殊な魅力に絡め取られたのだ、ということかもしれない。
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登場人物の中で最も興味深い経緯を語っていたのは、「子どもながらに図書館に稀少本の貸し出しを行った」という人物だ。
両親が骨董好きで、骨董店に入ると「静かにしてね」と言って毎回5セントをくれたのだという。両親があちこちの骨董店を回るので、1日で1冊本が買えるぐらいの金額になる。そうやって貯めたお金で好きな本を買っていたのだが、本人も知らない内に稀少本を手に入れていたようだ(売り主も稀少本だと知らずに売ったのだろう)。
ある時図書館が新聞で本を探しているという広告を載せ、それを見た両親から話を聞いた少年は、自分のコレクションの中にあったその稀少本を図書館に貸し出したのだ。当然、最年少で図書館への貸し出しを行った人物だそうだ。
そんなきっかけがあり、彼は稀少本の世界に入ることになった。人生、どこにきっかけがあるか分からないものである。
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「コレクター」による”価値創造”
コレクターというのは、「ただ本を集めるだけの人」ではない。彼らの存在が、本の”新たな価値”に光を当てることも多いのである。
例えば、『若草物語』などで有名なオルコットが、偽名でパルプ小説(低質な紙を使った大衆小説みたいなものだろう)を書いていたこと明らかにした女性コレクターがいる。彼女たちは、今以上に稀少本コレクターが男性偏重だった時代に、独自の目線で新たな価値を見出し、稀少本コレクターの世界に歴史を刻んだ。
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また、別の女性コレクターは、男性中心の世界であるが故に「女性が書く女性」を扱った本の収集が乏しいことに気づき収集を始める。そして、世界的にも稀有で有意義なコレクションを作り上げたという。
また、「カバー」の価値を認識させたのもコレクターの影響が大きい。
かつて本のカバーというのは、「本を保護する役割」でしかなかった。書店に置かれている間だけ付けてあり、家に帰ったら捨てるものという扱いだったそうだ。しかしコレクターが価値を見出し収集し始めることで、研究対象としての価値さえも生まれるようになる。例えば、版が変わる時に、作家のプロフィール表記も一緒に変わることがある。カバーの収集によって、その変遷を知ることが出来るようにもなったのだ。
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映画の中でインパクトがあったカバーの話は、フィッツジェラルドの作品に関するものだ。
カバー無しの初版本:5000ドル
破れたカバー付きの初版本:1万5000ドル
完璧な状態のカバー付きの初版本:15万ドル
このように、カバーの有無・状態によって10倍単位の差がつくのだと紹介されていた。
集めるだけではなく、稀少本を売る「ディーラー」の役割についても語られる。
稀少本ディーラーは、10年、20年、30年かけて顧客を教育していくのだ
本の真価を学習する能力を伝授しているんだ
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本の価値を見抜くのは相当難しく、膨大な知識と経験を必要とする。そして、自分が身に付けた知識を「売る」という行為を通じて次世代に伝えることで、稀少本の世界は連綿と繋がっていくというわけなのである。
この映画で紹介される、故人だが稀少本ディーラーとして非常に著名な人物は、なんと本業はカリスマ的なロックギタリストだった。ツアーで全米を回る中で書店を訪れ本を見る目を養ったことで、確かな見識を身に付けたのだ。その膨大な知識によって、百科事典的に本の価値を捉える人物であり、その類まれな博識さに業界内でも一目置かれていたのだという。
知れば知るほど深い世界だということが分かるだろう。
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インターネットとパソコンがもたらす激変
そんな稀少本コレクターの世界は、大きく変わろうとしている。その最大の要因が、インターネットだ。
映画の中である人物が「稀少本」の定義について、
見つけにくく、大勢の人が欲しがる本
と答えていた。しかしインターネットの登場によって、「見つけにくい」という部分がどんどんと解消され、「大勢の人が欲しがる」という要素もはっきりと可視化されるようになったわけだ。
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もちろんこれは、便利さという意味では非常に喜ばしい変化である。ある人物はインターネットがもたらした変化について、
インターネットは、本の需要と供給を民主化したと言える
と評価していた。しかし同じ人物は、こうも言う。
薄暗くて胡散臭くて面白い部分をどこかにやってしまった
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確かに、冒頭で触れたように、複製が存在する「本」の場合は「関係性」こそを重視するのだった。となれば、「どのように手に入れたのか」という来歴やエピソードも重要になるだろう。しかしインターネットが流通を容易にしたことで、「本をコレクションすること」の重要な要素がすっぽりと抜けてしまった、ということになるのかもしれない。
別の人物の、
インターネットは狩りを殺す
という言葉も、何が失われたのかを印象づけるものだろう。
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もう少し現実的なことで言えば、稀少本の値段が下がるという影響があった。ディーラーとしては、大打撃だ。かつては50~125ドルで取引されていた本は、今では20~30ドルになっているという。買い手としては嬉しい変化と言えるだろうが、その「安易さ」は、ディーラーが醸造しようとしている「奥深さ」みたいなものを阻害しているようにも感じられる。
インターネットによる別の変化として、「収集対象」が挙げられる。インターネットによって流通が可視化され、本ごとの情報が蓄積されていくと、本の価値というのはどんどん標準化されていくだろう。アメリカでは100ドルで買えるものが日本では500ドル出さなければ買えない、みたいなことはどんどんと無くなっていくはずだ。
そしてそれは、「稀少本」の”稀少”の意味をどんどんと薄めることでもある。
だからこそ、より稀少なものへと収集の対象が変化しているという。具体的には、手紙・葉書・手稿などだ。かつてはあまり収集対象と考えられていなかったこれらのものが、インターネットの出現によってシェアを伸ばしているという。
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しかしこれもまた、テクノロジーの変化と無縁ではいられない。
稀少本コレクターが集めている手紙などは、やはり作家のものが多くなる。創作の過程などが手紙の端々から伝わり、その時々の作家の状況に思いを馳せることができるものもあるだろう。
しかし、パソコンでの執筆、メールやLINEでの連絡が当たり前になっている時代に、「作家の創作過程をアーカイブすること」などできるだろうか?
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まさにこれは、「本」というメディアの特異な優位性を示すものだが、すべてがパソコンの中で完結してしまうが故に、「作品」しかアーカイブできないという状況にも成りかねないということだ。
そのような危機感についても、映画の中では語られていた。
収集対象の変化がもたらす、女性の台頭
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インターネットの出現で収集対象が変化したと書いたが、これはさらに、女性コレクターの流入を増やす結果にもなっているという。
そしてそのことが、稀少本の世界を変えるかもしれない、とも期待されている。
稀少本のコレクションというのは元々、英国貴族の趣味から始まっているそうだ。関連団体も「社交クラブ」を母体にしているものが多いため、どうしても男性中心で進んできた。
先述した、オルコットのパルプ小説を多数発見した女性コレクターは、ある稀少本コレクターの団体に入会を希望する手紙を出した。しかし、「本への貢献を」と書かれた返事をもらっただけだったという。既に多大な貢献を成していたにも関わらず、女性であるがゆえに入会が認められなかったのだ。
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稀少本の世界には、僅かではあるが名の知られた女性コレクター・ディーラーもいるのだが、陰ながら大きな貢献をしたにも関わらず埋もれてしまっている女性も多くいるという。
そのような状況は今も大きく変わったとは言えず、稀少本ディーラーの割合で言えば85:15ぐらいだそうだ。しかし今後変わる可能性はある。今まで収集対象とされていなかったものへの関心が向けられるようになったからだ。
それらは、これまでの男性中心の世界では注目されていなかったのだから、女性にも活躍の機会がある。手紙・葉書などであれば値段もそこまで高くなく、女性でもコレクションしやすい。需要が高まれば、供給側も変わらざるを得ないというわけだ。
女性の稀少本ディーラーに毎年1000ドルの賞金を渡すプロジェクトを行っている女性ディーラーが、こんなことを言っていた。
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映画では、数百万や時には億を超える本の話題が次々出てくるので気が引けるが、お金を出さなければコレクターになれないわけではない。自分が好きなものを集めていれば、それがコレクションとして認められていくということなのだ。であれば、若い世代も入っていきやすいし、稀少本全体における趣味趣向が変化していく可能性もあると言えるだろう。
映画には、稀少本とは少し違った形ではあるが、何らかの形で「本」に関わろうとする若い世代のことも取り上げられている。「個人書店」がブームだというアメリカで書店を開こうとするカップルや、ヒップホップに関する昔の雑誌を収集しているウェブメディアの若手編集長などだ。
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映画に登場するのは、ちょっと行き過ぎてしまった、なかなか共感が難しいタイプの人物たちではある。しかし、本への愛着や情熱に対しては強い憧憬のようなものを抱くし、こういう人たちがいるからこそ本の世界というのはまだまだ魅力的でいられるのだろうなとも思う。
なかなか知る機会のない奥深い世界を垣間見ることができる映画だ。
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実業之日本社の伝説の少女雑誌「少女の友」をモデルに、戦時下で出版に懸ける人々を描く『彼方の友へ』(伊吹有喜)。「戦争そのもの」を描くのではなく、「『日常』を喪失させるもの」として「戦争」を描く小説であり、どうしても遠い存在に感じてしまう「戦争」の捉え方が変わる1冊
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