【信念】原爆の機密情報をソ連に横流しした超天才物理学者テッド・ホールの数奇な生涯を追う映画:『原爆スパイ』

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はじめに

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この記事の3つの要点

  • 亡き夫に代わって妻ジョーンが語り部となり、さらに、彼らの学生時代からの物語が劇映画として組み込まれた異色の構成
  • あまりにも天才だったテッド・ホールがソ連に情報を渡した理由と、当時の時代背景
  • FBIに疑われながらも、妻と協力してどうにか逃げ切った彼らの「家族の物語」が描かれている

「テッドの行動は正しかったのか?」を判断するのは容易ではないが、私はなんとなく、正しいことをしたんじゃないかという気がしている

自己紹介記事

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません

映画『原爆スパイ』は、開発中の原子爆弾の超機密情報をソ連に横流しした天才物理学者テッド・ホールが歩んだ数奇な人生を追うドキュメンタリー

実に興味深い映画だった。やはり、ドキュメンタリー映画は面白いなと思う。で、本作『原爆スパイ』で描かれている事実については、正直まったく知らなかった「原爆の情報をソ連に横流しした人物がいる」という話はもちろん聴いたことはあるが、私が知っていたのは、本作でも描かれるようにローゼンバーグとその妻エセルだけだったのだ。この夫妻については、映画『オッペンハイマー』でも描かれていた気がするが、状況をちゃんとは理解できなかった。そして、本作においてメインで描かれるテッド・ホールのことは全然耳にしたことがないと思う。

テッド・ホールは、「第二次世界大戦中のアメリカの最高機密」と言っていいだろう「原爆開発の最深部情報」をソ連へ流出させた天才物理学者だ。彼は1999年に亡くなったとのことで、本作『原爆スパイ』ではその妻ジョーンが語り部としてメインで映し出されている。そしてそこに、生前のテッドや、テッドと共に情報流出に関わった親友サヴィの娘と息子、あるいはテッドに関するノンフィクション(邦訳版があるかは不明だが、作中では『爆弾発言』というタイトルが紹介されていたように思う)の著者など様々な人物のインタビュー映像が挟み込まれるという構成だ。さらに、ドキュメンタリー映画では珍しい構成だと思うが、「大学時代から大人になって以降のテッド、ジョーン、サヴィの人生の再現映像」も組み込まれている。かなりちゃんとしたクオリティの劇映画パートという感じで、若者たちの青春や葛藤を上手く伝えているなと思う。

というわけで内容に入ろうと思うが、その前に1つ。本作では冒頭で謝罪文が表示される。正確には覚えていないが、ざっくり次のような内容だったと思う。

「原爆投下後の様子」として組み込んだ写真は、実は、長崎や東京の大空襲後の写真でした。

字幕ではさらに、「国防総省(だったか正確には覚えていない)から提供(あるいは確認)を受けたものだったが、後で調べてみたら間違いだと判明した」というような事情についても説明されていた。もちろんミスはどんな場合も起こり得るものだが、「原爆に関する作品」でのミスだったので、日本人としては少し残念だったなと思う。

あまりには天才だったテッド・ホール、そして、彼がソ連に原爆の情報を横流しした理由

それではまず、テッド・ホールがどのぐらい天才だったかの話から始めることにしよう。

原爆開発に関わっていたので当然、テッドはマンハッタン計画に名を連ねていたわけだが、彼はなんと最年少メンバーだったそうだ。ハーバード大学在籍時に、「国が優秀な学部生を探している」という話があり、18歳のテッドが選ばれたのである。最初はウラン235の物理特性を調べるチームに組み込まれたのだが、そこで大きな成果を上げたことでより重要な部門、つまり原爆開発の心臓部に移ることになった。つまり彼は、マンハッタン計画に参加していた物理学者の中でも、原爆の核心部である「爆縮」の理論に明るかった人物の1人であり、だからこそソ連に正確な情報を流せもしたのである。また作中ではある人物が、「もし彼がスパイ行為をしていなければ、どれだけの功績を残したか分からない。驚異的な知性の持ち主だった」と話していた。

ちなみに、妻ジョーンも相当な天才である。なんと、15歳の時に飛び級でシカゴ大学に入学したのだそうだ。その時点で既に第二次世界大戦は終わっており、どうやらテッドも同じ大学にいたようである。そして2人は、ここで出会ったジョーンは元々、「18歳から10年間、28歳までは独身を楽しむ」と決めていたそうだが、テッドと出会ってしまったのでその決意を捨てることにしたそうだ。「彼を手放すなんてあり得なかった。二度と出会えないような人よ」と、その存在を大絶賛していた。

さて、そんなジョーンがテッドから戦時中のスパイ行為のことを知らされたのは、なんと「結婚しよう」とプロポーズされた直後だったという。そもそも「マンハッタン計画に参加していた」ということさえ口外してはならなかったらしいのだが、テッドはジョーンに「ソ連に情報を横流しした」と告げ、その上で「今ならまだ結婚を止められるよ」と口にしたのである。そう、先程の「彼を手放すなんて~」というセリフは、この時のことを回想して出てきた言葉だったのだ。

では、彼は何故そんな行動を起こしたのだろうか? この点が本作のメインである。彼の行動の是非を判断するのは容易ではないが、ただ、「原爆投下以前の時点でそんな先の未来まで見通していたのか」と感じさせるという意味で、彼の思考と行動力にはちょっと圧倒させられてしまった

テッドの基本的な発想はシンプルである。「アメリカがこの兵器を独占するのは危険だ」と考えたのだ。彼は原爆開発の中心にいたし、もちろん砂漠で行われた爆発実験(トリニティ実験)も直接目にしている。マンハッタン計画に参加している者からすれば「これまでの努力が報われた」と歓喜する場面だろう。しかし本作『原爆スパイ』では、「トリニティ実験の成功に沸き立つ仲間たちの反応に違和感を覚えたテッドが、その後行われたパーティーには出席せず、独りで音楽を聴いている」という再現映像が映し出される。多くの者が喜びに浸っている中、テッドだけは「これはマズいぞ」と考えていたというわけだ。原爆は異次元の力を持つ兵器であり、これを一国が独占的に保有するのはあまりにも危険だと直観したのである。

この時彼が思い巡らせていた想像は、後に現実のものとなった。それは戦後、ソ連がまだ原爆の開発に成功する前の出来事である。アメリカはいくつかの国とイランの石油利権を分け合う構想を立てたのだが、その際、当初は組み込む予定でいたソ連を外すことに決めたのだという。その決断に怒りを覚えたソ連がイランの国境付近に軍を派遣したのだが、そこで当時の大統領であるトルーマンが「48時間以内に軍を退避させなければ爆弾を落とす」と通告したのだそうだ。ソ連はもちろん、彼が言う「爆弾」が「原爆」のことだとすぐに理解した。そのためソ連は、24時間で軍を引き上げることにしたのである。

これはまさに、原爆という「他に対抗のしようがない破滅的な兵器」を一国が所有することによって世界のパワーバランスが大きく崩れてしまった分かりやすい例だと言えるだろう。そしてテッドは、早くからそんな未来を見通していたのである。実際、戦後のアメリカの経済人は「原爆の力で世界の覇権を握ろう」と画策していたという。ソ連が原爆を開発できなければ、パワーバランスの不均衡によって世界の構図は激変していたかもしれないのである。

もちろん、ソ連が原爆を開発したことで「冷戦」という緊張状態が長く続いたわけで、どちらにしても別に良いとは言えないだろう。2つ以上の現実を同時には経験できない以上、「どちらの方が良かったか」という問いに明確な答えを出すのは難しいし、その辺りの受け取り方は人それぞれでいいと思う。いずれにせよ、テッドはこのような判断から行動を起こしたのである。

「第二次世界大戦中、アメリカはソ連に友好的だった」という、まったく知らなかった事実について

本作『原爆スパイ』を観て私は、「戦時中、アメリカはソ連に対して友好的だった」と知って驚かされた。いや、私は基本的に歴史についての知識がまったくなく、だからこれは単に私の知識不足に過ぎないのだが、私はなんとなく「冷戦以前から両国は対立していた」みたいに考えていたので、ビックリさせられてしまったのだ。

もちろん当時のアメリカにも一部にはソ連を批判する人がいたという。しかし多くの一般市民はソ連を「英雄」だと捉えていたそうだ。「ドイツと直接闘い、ドイツの脅威からヨーロッパを、そして世界をも守るヒーロー」みたいな捉えられ方だったようである。

だからマンハッタン計画に参加していた物理学者からも、「どうしてソ連と情報共有しないんだ?」という意見が上がっていたのだという。あの有名なニールス・ボーアもそのような主張を先導的に行っていたそうだ。同じ連合国側として戦争に参加していたわけで、だから「原爆の情報を共有する」という発想も別におかしなものではなかったのである。そういう当時の世相を踏まえれば、「ソ連に情報を流す」というテッドの決断・行動も、別に「イカれたもの」とは思えなくなるだろう。

さらにもう1つ意外に感じられたのが、「アメリカが日本に原爆を投下したのは、ソ連を牽制する目的もあった」という話である。もちろんそれだけが投下の理由なわけではないが、そういう側面もあったという話自体をまったく知らなかったので、この点にも驚かされた。

先述した通り、戦時中のアメリカ国民はソ連に対して友好的な感覚を抱いていたのだが、指導者たちはもっと先の未来を見据えていたようだ。戦争が終われば覇権争いが始まり、その際にはやはりソ連が最大の脅威となる。そして、当時ソ連は日本への侵攻を検討していた(のだと思う。詳しくないので間違っているかもしれないが)。もしそれが実現すれば、終戦後の覇権争いにおいてややこしさが増すだろう。「敵国日本をどの国が降伏させたのか」という事実は、終戦後の世界において重要な要素になるからだ。

そこでアメリカは、「日本を降伏させるのはソ連ではなく、我が国の原爆だ」という考えから、もう降伏寸前だった日本に対して原爆を投下したというのである。日本人としては、どんな理由であろうが「原爆投下」など許容できないわけだが、しかしこの話を知ると、「そんなことのために多くの犠牲が生まれたのか」と感じるし、やるせない思いを抱かされてしまう。

ちなみに、これはよく知られている話かもしれないが(私は科学系のノンフィクションを読んで知った)、マンハッタン計画に参加していた科学者はトルーマン大統領に宛てて、「日本への原爆投下には不同意だ」という内容の手紙を送っていた。また、「日本の軍人を砂漠に呼び、実験を見せるべきだ」という提案もなされていたという。「原爆の威力を知ればすぐにでも降伏するはずだ」という発想だったのだろう。科学者たちは、テッドよりも遅かったとは思うが、彼らなりに熟慮し、「自分たちが生み出した兵器を使わせない」ための行動を取っていたのである。

さてその手紙は、マンハッタン計画の主導者であるグローブス(私はオッペンハイマーだと思っていたのだが、恐らくオッペンハイマーは科学者のまとめ役ということなのだろう)に渡したのだが、グローブスはその内容に賛同できなかったため、その手紙はトルーマンの手には渡らなかったそうだ。ただ作中である人物が、「(仮に手紙が届いていたところで)トルーマンの考えを変えることは出来なかっただろう」と話していた。きっとそうなんだろうなと思う。とはいえ、「科学者たちは原爆の使用を望んでいなかった」と知ることは、ほんの僅かではあるが救いになるのではないだろうか。

ソ連に情報を横流ししたことは果たして正しかったのか?

テッドがソ連に横流しした情報は色々とあるが、最終的には「長崎型の原爆の図解」も渡していたそうで、それらはもちろんソ連の原爆開発を早める意味で非常に重要だっただろうと思う。しかし、彼が最初にソ連側に流した情報は、「マンハッタン計画に参加している数名の物理学者の名前」だったそうである。作中では誰の名前を伝えたのかは示されなかったが、恐らく、その世界では知られた物理学者の名前だったのだと思う。

それで私は最初、「そんな情報が何の役に立つんだ?」と感じたのだが、その後の説明で何となく理解できた。どうやら当時のソ連はお財布事情がかなり厳しかったようで、「成果の出ない計画に資金を拠出することは出来ない」という状況だったそうだ。当時の認識では、原爆は「開発できるかどうか分からない代物」だったはずで、ソ連は二の足を踏んでいたのだろう。だから、「アメリカがこれだけの物理学者を集めて研究を行っている」という事実は、ソ連に「だったら我が国も原爆の開発に注力しようじゃないか」と思わせるのに十分だったのだと思う。ある人物は、「テッドの情報によってソ連の原爆開発が5年は早まったことは確かだと思う」と言っていた。ここでいう「情報」が何を指しているのかは判然としなかったが、何にせよ、テッドの貢献度はかなり大きかったのだろう

さて本作では、「テッドの行動は果たして正しかったのだろうか?」という点についても様々な形で言及がなされる。例えば、テッドと共に流出に関わったサヴィの息子は、「2人は間違ったことをしたと思う」と言っていた。彼には「父もテッドも、歴史や政治には詳しくなかった」という風に見えていたようで、「2人はソ連に肩入れしすぎていた」と感じているようだ。

そもそもテッドもサヴィも共産党に入っていたため(赤狩りが激しくなるのは戦後であり、戦前は問題視されなかったのだろう)、「一般の人以上に『ソ連』を好意的に捉えていた」と語る人もいたその当時ですら、「スターリンが国内で虐殺を行っている」というのは、アメリカでも知っている人がいるぐらいの事実だったようなのだが(確かそんな話が出てきたはず)、2人はどうもそういう知識すらないままソ連に情報を流したようなのだ。この点に関してはジョーンも次のように話していた

ソ連の残虐な行為を知っていたら恐らく、テッドは情報を渡さなかったでしょう。

とはいえジョーンは、夫の行動を間違いだったなどと考えているわけではない。これに続けて彼女は、「でも彼が情報を渡さなかったら、それもまた世界の不幸だったと思うけど」と付け加えていたからだ。この判断はとても難しいが、現在のトランプ政権の横暴さなども踏まえれば「原爆をアメリカだけが独占的に持っている世界じゃなくて良かった」と感じるし、そういう意味でテッドの行動には大きな意味があったのではないかなとも思う。

FBIに疑われながらもどうにか逃げ切った夫婦、そして、テッドが「未来を生きる人々」に伝えたかったこと

テッドもサヴィも、しばらくの間特に疑念を抱かれることもなく過ごせていたのだが、1951年2月に初めてFBIから尋問を受けたという。アメリカが解読したソ連の機密文書「ヴェノナ文書」の中に「テッド・ホール」に似た名前が記されていたことがきっかけだった。テッドが「爆縮」の研究を行っていたことは知られていたので、それもあってFBIに目を付けられてしまったのだ。

しかしテッドとサヴィはあらかじめそのような事態を想定しており、尋問にどう受け答えすべきか事前に検討していた。そしてそのお陰もあって、どうにかFBIからの追及をかわすことが出来たのだ。しかし「疑われている」という状態はその後もずっと継続し、FBIからの”嫌がらせ”としか思えない監視も続いたという。もちろん、そんな不愉快な状況をジョーンも経験させられたわけだが、どうにか2人で力を合わせて乗り切ったのである。

ジョーンは「テッドは嘘をつかない人だった」と言っていたし、ジョーン自身も嘘をつかないとかで、「こういう夫婦関係はたぶん珍しい」と口にしていた。そして「そんなテッドが人生で唯一ついた嘘が、FBIから尋問を受けた際の返答だった」とジョーンは考えているようだ。

テッドはそんな性格だったこともあり、何度も「本当のことを話したい」という欲求に駆られたという。特にそれが強く現れたのが、ローゼンバーグ夫妻に死刑判決が下った時のことである。テッドは「2人を救うために真実を話したい」とジョーンに相談したが、彼女は当然「絶対にダメ」とテッドを諌めたテッドはジョーンの意見には素直に従っていたみたいで、どうにか衝動を抑え込めていたようだ。

そんな2人は、ローゼンバーグ夫妻の死刑が執行されるまさにその日、上司からのどうしても断れない誘いを受けパーティーに出席することになっていた。車で上司の家まで向かうのだが、その道中にシンシン刑務所があったという(恐らく、そこに夫妻が収監されていたのだろう)。さらに、ユダヤ教の戒律(と言っていたはず)により、日没までに死刑を執行するという慣習があったそうで、だから上司宅へと向かう車中で、彼らは死刑執行の瞬間を迎えていたのだと思う。車内の2人は無言のままで、パーティーは失礼にならない程度に参加してて早めに帰ったそうだ。彼らとしては口を噤む以外の選択肢はなかったと思うが、ローゼンバーグ夫妻はある意味で2人の「身代わり」として命を落としたと言っていいわけで、どうにもやるせない気分になってしまったのだろうなと思う。

そして本作『原爆スパイ』は、そんななかなか壮絶な人生を歩んだテッドとその妻ジョーンの生涯を追いながら、「原爆の機密情報がソ連に流出した真相」について深堀りする作品である。全体としては「家族の物語」という印象で、『原爆スパイ』というタイトルから連想されるほど堅苦しい作品ではなかったなと思う。

さて、映画の最後に、インタビューアーがテッドに「結局(原爆の情報を横流しした)動機は何だったんですか?」と質問する場面が映し出される。彼はその問いについてしばらく考えた後、次のように答えていた

一番は思いやりかな。後から答えるとするならばね。

また、別のインタビューでは、「後世に何か伝えることは?」と聞かれたテッドがこんな風に答える場面がある。

後世の人たちは、認識しなければならない。世界は、大惨事が起こる寸前のところまで来ているということを。

このインタビューがいつ行われたのかは分からないが、映像はかなり古そうに見えた。かなり早い段階での指摘だったと考えていいのではないかと思う。そして私たちは今、「ロシアによるウクライナ侵攻」「パレスチナとイスラエルの紛争」「北朝鮮によるミサイル発射」「アメリカによるイラン攻撃」など様々な問題が山積する世の中に生きている

こういう状況が当たり前になりすぎてもはや麻痺してしまっているのだと思うが、私たちは今「大惨事が起こる寸前のところ」にいるのだと思う。いや、むしろ「既に大惨事が起こっている」と捉えるべきだろうか。まさにテッドが予想した未来に生きていると言っていいんじゃないかと思う。

テッドの行為が世界の悪化を遅らせたのか、はたまた早めたのか、その判断はなかなか難しいだろう。ただ、やはり私は、「アメリカだけが核兵器を保有している世界」の方がもっと酷い世の中だったのではないかという気がする。まあその是非の判断はともかくとして、私が強く感じたのは、「自分が仮に同じ立場にいたとしても、テッドのように行動できたとは思えない」ということだ。自分の決断・行動で、未来の世界全体の運命が変わってしまうかもしれないのである。そんなこと、ちょっと怖くてとてもじゃないが出来ないだろう。「ソ連に情報を横流ししたこと」をどう評価するかで、テッドの捉え方も「躊躇なき無謀」なのか「慎重かつ大胆」なのか判断が分かれるだろうが、いずれにせよ「凄い人物」であることは間違いないと思う。

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最後に

戦争によって利を得た者もいるだろうが、同じように、戦争によって害を被る者もいた。さらに、「戦闘による直接的な被害」だけではなく、テッドのように「知性を持つが故に人生を翻弄されてしまった」みたいな状況もある。戦時中は誰もが同じように感じたに違いないが、テッドなどはまさに「生まれる時代が違えば、まったく異なる人生だったはず」と思わせる人物であり、そういう点からも本作『原爆スパイ』で扱われる話には残念さがつきまとう。「何を以って『有益』なのか?」という議論は難しいが、何にせよ、テッドのような天才は「有益なこと」のためにその才能が使われてほしいものだなと思う。

時代に翻弄されてしまったテッドの数奇な人生を映し出す、実に興味深いドキュメンタリーだった。

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