【豪快】これまで観た中でもトップクラスに衝撃的だった映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(監督:阪元裕吾 主演:髙石あかり、伊澤彩織、池松壮亮、前田敦子)

目次

はじめに

この記事で取り上げる映画

「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」公式HP
監督:阪元裕吾, 出演:髙石あかり, 出演:伊澤彩織, 出演:三元雅芸, 出演:秋谷百音, 出演:本宮泰風
監督:阪元裕吾, 出演:髙石あかり, 出演:伊澤彩織, 出演:水石亜飛夢, 出演:丞威, 出演:濱田龍臣
いか

この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ

この記事で伝えたいこと

第3弾しか観ていませんが、その素晴らしさに圧倒されてしまいました

犀川後藤

特に、「ストーリーにしか興味がない私」でさえ惹きつけられたアクションシーンが圧巻です

この記事の3つの要点

  • ガチのスタントパフォーマーである伊澤彩織だけではなく、髙石あかり・池松壮亮の2人もアクションが尋常ではなかった
  • ストーリーらしいストーリーはほぼないが、それでも惹きつけられたのはアクションのお陰
  • しかし何よりも好きなのは、主人公の2人、杉本ちさとと深川まひろのダルさ全開の女子トークである
犀川後藤

本当に観て良かったし、どうにか機会を見つけて第1・2弾も観たいなと思う

自己紹介記事

いか

どんな人間がこの記事を書いているのかは、上の自己紹介記事をご覧ください

記事中の引用は、映画館で取ったメモを参考にしているので、正確なものではありません

シリーズのことを何も知らず、第3弾だけを観た映画『ベイビーわるきゅーれ』は衝撃だったし、その後鑑賞したドキュメンタリー映画も圧巻だった

あまりにも面白くてビックリしました!

私は、この感想を公開した時点では、シリーズ第3弾である『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』と、その後上映されたドキュメンタリー映画『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』しか観ていません。つまり、シリーズ第1・2弾には触れておらず、「殺し屋の女の子が主人公の物語」ぐらいしか知らない状態で観たというわけです(『ナイスデイズ』鑑賞前は予告で描かれていたことぐらいしか知りませんでした)。

いか

観る前はなんとなく「漫画原作の作品かな?」って思ってたよね

犀川後藤

ってか、観終わってからもしばらくそう思ってたかも

ただ、そんな状態でも本作はとにかく面白すぎました。私には「映画館でしか映画を観ない」というルールがあるので、第1・2弾はまだ観れていないのですが、機会があれば是非と思っています。

そして『ナイスデイズ』の公開からしばらくして、ドキュメンタリー映画が公開されると知り、こちらも観に行きました。本シリーズはとにかく「アクション」が凄まじく、ドキュメンタリー映画でもやはりそこに焦点が当たっていましたが、他にも、「主演2人の関係性」や「本作が誕生したきっかけ」など様々に興味深い話が語られています。

いやホント、とにかく凄まじすぎる作品でした。

いか

主演の髙石あかりのことも、本作を観て初めてちゃんと認識したよね

犀川後藤

それが今では朝ドラ女優だからビックリだわ

「池松壮亮が凄い」という評判だけで観に行った

ではそもそも、どうしてシリーズ第3弾だけ観ようなどと思ったのでしょうか? それは、「映画『ベイビーわるきゅーれ』の池松壮亮が凄い」みたいな話題がSNSでなんとなく流れてきたからです。

私は普段から、映画に関する情報を積極的には収集しておらず、鑑賞前に作品の評価も見ないようにしています。にも拘らず池松壮亮の評判が流れてきたので、よほど凄かったんだろうと思ったのです。池松壮亮のことは元々好きで、「彼が出演しているから観に行く」みたいなことこそないものの、出ていると常に「凄いなぁ、この人」と思わされる感じでした。なので、「それなら観に行くか」と思ったというわけです。

犀川後藤

だからたぶん、鑑賞した時点では「第3弾」ってことも認識してなかったような記憶がある

いか

「ナイスデイズ」って副題しかなかったからね

で、やはり池松壮亮は凄すぎました。ビックリしたなぁ。

本作『ベイビーわるきゅーれ』は明らかにフィクションで、リアルからはかけ離れていると言っていいでしょう。何せ、「『殺し屋協会』なるものが存在し、そこに雇われている女の子2人がメチャクチャ強くて無双する」みたいな話なのです。「リアリティ」みたいなことを考え始めたらツッコミどころは満載だと思います。

しかしそんな世界観の物語なのに、どことなく「もしかしたら日本のどこかでこんなことが起こっているのかもしれない」みたいに感じさせる部分がある気がしました。「明らかなフィクション」ながら、「フィクションとリアルのギリギリの境界付近」に置かれているみたいな印象だったのです。

そしてそんな印象を作り出すのに一役買っているのが池松壮亮なんじゃないかと思います。

いか

映画公開時にテレビ放送されてたドラマ『海のはじまり』(フジテレビ)も凄かったしね

犀川後藤

良い役だったし、良い演技だったよなぁ

池松壮亮はまず、演技を含めた「存在感」みたいなものが圧倒的でした。「大黒柱」とでも言えばいいのか、「その存在感によって、作品の土台を支える役割」みたいなものをずっと担い続けていた気がします。シリーズ前作は観ていないので何とも言えませんが、少なくとも本作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』に関しては、池松壮亮がその圧倒的なリアリティを担保していると感じました。

そしてその上で、アクションも凄まじかったです。

本シリーズでは当初から、主人公の1人である深川まひろを演じる伊澤彩織のアクションが注目されていました元々はスタントパフォーマー、つまり、「俳優の代わりに危険な動きを代役する裏方」だったのですが、現在は役者としての顔も持っていますそのアクションは凄まじく、『るろうに剣心』『ジョン・ウィック』などでスタントダブルを任されてきたほどです。私は決してアクションに詳しいわけではありませんが、そんな私でも「別格」だと感じられるくらいで、その尋常ではないレベルのアクションに驚かされるだろうと思います。

いか

伊澤彩織の存在も本作で初めて知ったし、ちょっとびっくりすることが多すぎたよね

犀川後藤

こんな凄い人がいたんだなぁって思ったわ

そして本作『ナイスデイズ』では、そんな伊澤彩織(深川まひろ)と本気でやり合う存在として池松壮亮(冬村かえで)が出てきました。つまり池松壮亮は、トップレベルのスタントパフォーマーである伊澤彩織と遜色ないアクションを披露しなければならなかったというわけです。

まあ、普通に考えたらそんなこと不可能でしょう。池松壮亮は恐らく、これまでアクションに関わってきた経験はほとんどないと思うし、あるとしても、『ベイビーわるきゅーれ』は「世界レベルのアクション」と言われているので、これほどの環境に身を置いたことはないはずです。にも拘らず、作中では伊澤彩織と遜色ないように見えるアクションを披露していました。もちろん、伊澤彩織の「受け」の技術の上手さみたいなものもあるのだろうけど、それにしたって、本人が一定レベル以上に動けなければ話にならないはずです。

いか

映画『ぼくのお日さま』でも、スケート未経験からスケートのコーチ役をやってたしね

犀川後藤

役者ってのはホントに凄いなと思う

さて、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズには専属のアクション監督がいます。園村健介という人物で、元々伊澤彩織と繋がりがあったことから、本シリーズのアクション監督として関わることになったそうです。で、普通に考えれば、「池松壮亮がこんな凄まじいアクションが出来るのは、園村健介が色々教えたからだろう」みたいな発想になるでしょうが、どうもそうではありません

というのも、ドキュメンタリー映画の方で園村健介が、「池松さんはたぶん、ネットで色々見ながら練習して、でも試せる相手がいなかったから、今この現場で色々試行錯誤しているんだと思う」みたいなことを言っていたからです。この発言にはちょっと驚かされました自力であんなレベルまでたどり着くなんてことがホントに可能なんでしょうか? まあ、現にやれているわけで信じるしかないのですが、本当に役者というのは、「役作り」に関してはえげつない能力を発揮するものだなと感じました。

いか

というか、そういうことが出来る人だけが残っていくってことなんだろうけどね

犀川後藤

同じ人間とは思えない(笑)

『ベイビーわるきゅーれ』シリーズにおけるアクションの特異さと、満身創痍だった役者陣

『ナイスデイズ』とドキュメンタリー映画を観た後、感想を書く参考にネットでざっくり検索をしたのですが、その際に役者陣によるインタビューを見つけました。以下にそのリンクを貼っておきます。

そしてこの中に、「『ベイビーわるきゅーれ』シリーズにおけるアクションの特異さ」に関する言及がありました。まずはこの点について少し触れておきたいと思います。

アクションというのは普通、「身体の動き」をメインにして構成されるはずです。多くの人がそう考えているだろうし、スタントパフォーマーとして様々な映画に関わってきた伊澤彩織の認識も同じでした。しかし『ベイビーわるきゅーれ』シリーズでは、監督の阪元裕吾がまず「アクションシーンにおける感情の流れ」を言語化し、それを元にしてアクション監督の園村健介が動きを付けるという作り方をしているとのこと。つまり本シリーズにおけるアクションシーンでは、何よりも「感情の流れ」が重視されているというわけです。

犀川後藤

アクションとは違う話だけど、以前菅田将暉が黒沢清監督について、「感情ではなく動きから演出を考える」って言ってたのを思い出した

いか

『ベイビーわるきゅーれ』とはある意味で真逆だし、色んなタイプがいるなって感じだよね

さて、この話を聞いて私は、以前何かの本で読んだ羽生善治の発言のことが思い浮かびました棋士は対局が終わると、その一局の駒の動きを頭から再現してあれこれ検討する「感想戦」を行うのですが、将棋の手数は100手以上になるので、好きだけど強くはない私は「よくもまあ、そんな長い手数を記憶できるものだ」と感じます。そしてこの点に関して羽生善治は、「棋士の手には『意図』があるから覚えられるんです」と書いていました。

その比較として挙げていたのが、将棋にさほど詳しくない子どもたちと指すイベントなどでの経験です。棋士同士であれば「こういう場面では普通こんな風に打ってくるよな」と相手の意図を想像しやすいわけですが、将棋に詳しくない子どもたちは思ってもみなかった手を打ってきます。そのため羽生善治は、「将棋に詳しくない子どもたちと打った対局の方が打ち筋を覚えていられないかもしれない」みたいに言っていました。

犀川後藤

この話には凄く納得したわ

いか

まあそれはそれとして、棋士には尋常じゃない記憶力があることに変わりはないと思うけどね

では、何故こんな話をしているのでしょうか。それは、「『感情の流れ』が重視されていることで、役者にとってはアクションの動きを覚えやすくなるのかもしれない」と考えたからです。もちろん、伊澤彩織のようなスタントパフォーマーであれば、提示された「身体の動き」に対して「なるほど、身体の動かし方として合理的だな」みたいな感覚を持てるのかもしれないし、それが記憶に役立つ可能性もあると思いますが、やはりそれは特殊なケースでしょう。普通は「身体の動き」を覚えるのはかなり難しいだろうし、さらに、『ベイビーわるきゅーれ』のような速さも精度もバケモノ級のアクションであればなおさらだと思います。

ただ、役者であれば「感情の動き」を覚えることは得意なはずなので、「『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのそんな特異なアクションシーンの作り方が、池松壮亮にはプラスに働いた可能性があるかもしれない」と感じたりもしました。

とはいえ、そんな風に書いてはみたものの、やはり池松壮亮のアクションはちょっと尋常ではなく凄まじかったと思います。「身体の動き」を覚えることは大前提でしょうが、その上で動きがキレッキレだったのです。岡田准一のような「アクションで飯食ってます」みたいな俳優なら納得感もありますが、池松壮亮はそういうタイプではないでしょう。だから、ホントによくもまあこんなことが出来たものだなと思います。

いか

池松壮亮はインタビューの中で、「『ベイビーわるきゅーれ』シリーズから声が掛かるなんて思ってなくて」と驚きを語ってたよね

犀川後藤

でも制作側はたぶんダメ元でオファーしただろうし、受けてくれて「よっしゃー!」って感じだったんじゃないかなって思う

ちなみに池松壮亮は、「『女の子のお腹を蹴る』なんてホント無理」「でも、伊澤さんは『リアクションもあるから蹴って』って言うし、スタッフも『伊澤は絶対大丈夫だから』と言うので仕方なくやっていた」と、アクションシーンにおける戸惑いについてもインタビューの中で語っていました。しかし、「撮影を重ねる中で、『伊澤彩織がいかに強いのか』を本当の意味で実感した」と言っており、そこからは肩を借りるつもりで臨めたのだと思います。「映画の撮影が終わる頃には、『伊澤さんに引っ張ってもらったし、強くしてもらった』という感覚になれた」とも話していました。

さて、容易に想像はつくでしょうが、撮影はとにかく大変だったみたいです。ドキュメンタリー映画では、池松壮亮が休憩中に左足をアイシングしながらずっと揉んでいるシーンが何度も映し出されたし、本人も、「人間の身体って、あんなにぶっ壊れるんですね」と、想像を超える負担に悲鳴をあげていました。さらに園村健介によると、アクションシーン2日目には、「昨日は身体が痛すぎて一睡も出来ませんでした」と語っていたとのこと。撮影に先立って相当鍛えていただろう池松壮亮が限界を迎えるほどのハードさだったというわけです。

いか

ホント、ドキュメンタリー映画で裏側を観ると、作品の凄さが余計伝わってくるよね

犀川後藤

演技において「人間の限界」がここまで求められることも、なかなか無いだろうからなぁ

ただ、満身創痍だったのは池松壮亮だけではありません。ある役者は撮影中に歩けなくなるほどの状態(「筋肉断裂」と言っていたように思います)に陥っていました。また、主演を務めた髙石あかり・伊澤彩織も、タイミングこそ異なりますが、体調不良でダウンしています。さらに百戦錬磨だろう伊澤彩織は、池松壮亮とのアクションシーンの合間に「身体がぶっ壊れそうだ」と語っていました

まあそれも当然でしょう。というのも、通常の演技の場合と同じく、アクションシーンでもリハーサルやカメラテストはあるわけで、その度に何度も同じことを繰り返さなければならないからです。また、アクションではかなり細密に動きが決まっているため(ひと繋がりのアクションを分割して撮影するので、繋がりの部分で違和感を与えないようにしなければならないのでしょう)、その条件が満たされるまでやり続ける必要があります

例えばドキュメンタリー映画では、あるシーンで髙石あかりが、「盾として使っている男性の背中で銃をスライドさせて装弾する」という動きを忘れ指摘されている場面が映し出されていました。確かにこれは、ド素人の私でも理解できる指摘です。ただ、伊澤彩織と池松壮亮のバトルシーンでは、「今のは一体何がダメだったんだろう?」と感じるようなところで何度もやり直していて、求められる正確さのレベルの高さを思い知らされました。

いか

そりゃあ、身体もボロボロになるはずだよね

犀川後藤

そんな状態で撮影を続けていた気迫みたいなものが画面から伝わってきた気がする

「ストーリーが無い作品」を面白いと感じられたのは、アクションシーンが凄まじかったから

さて、私は本作『ナイスデイズ』を観て、自分に少し驚かされました。というのも私は、映画を観る際にはほぼ「ストーリー」にしか目が行かないからです。

映画に限らず何か「物語」に触れる場合、私の興味は基本的に「話の筋」に向かいます。もちろんそれに付随する形で、「登場人物のキャラ・会話がメチャクチャ良かった」みたいな方向にも関心は向くのですが、一方で、「映像が綺麗」「衣装デザインが素敵」「音響が素晴らしい」みたいなことにはなかなか関心が向きません。つまり、仮に他の要素がイマイチでも、ストーリーさえ魅力的で面白ければ私は興味を持てるし、良い風に捉えられるというわけです。

犀川後藤

映画を観る友人が周りにあんまりいないけど、やっぱり「映像・音響・衣装」なんかも重要みたい

いか

シンプルにストーリーだけを追ってる人間は、そんなにいないのかもね

で、本作『ナイスデイズ』ですが、まあとにかくストーリーなんてものはほぼ存在しません。本作のストーリー展開は、「ターゲットを殺しに向かった主人公2人が”野良の殺し屋”と出会ってしまい、仕留め損なったターゲットと”野良の殺し屋”の両方を殺しに行く」というだけです。それ以上でもそれ以下でもありません私の感覚では「ストーリーなんて無い」という印象だし、だから普段の私なら「面白いと感じるはずがない作品」なのです。

でも実際には、メチャクチャ面白く感じられました。だからこそ、そんな自分に驚いてしまったのです。まさか、ストーリーらしいストーリーの無い、ただ殺し合いをしているだけの映画がこんなに面白いなんて、と。

そして、やはりその魅力はアクションにあると感じました。鑑賞後に伊澤彩織がスタントパフォーマーだと知ってなるほどと感じたし、池松壮亮のアクションについては既に色々と触れましたが、伊澤彩織とタッグを組む髙石あかりも負けず劣らず凄まじかったなと思います。

犀川後藤

実は本作を観る前に、『きみの色』ってアニメ映画を観てて、髙石あかりも声優で参加してたんだけど、この時はまだ彼女のことを認識してなかったんだよなぁ

いか

あとで「『ベイビーわるきゅーれ』の髙石あかりか!」って繋がって、ビックリしたよね

もちろん、ガチのアクションスタントをやっている伊澤彩織ほどとはいきませんが、髙石あかりのアクションも、素人目には相当レベルが高いように見えました。鑑賞後に「伊澤彩織はスタントパフォーマーである」という事実を知った上で振り返ってみた時に、髙石あかりがアクションシーンをあんなに見事にこなせていたことに驚かされたような記憶があります。

ただ、実はここにはちょっとした裏話があり、園村健介がドキュメンタリー映画の中でその話をしていました。シリーズ第1・2弾を観ていない私には判断できないことでしたが、実は第3弾の『ナイスデイズ』では、髙石あかりのアクションシーンが一気に増えたのだそうです。ただそれは、園村健介の勘違いが原因でした。第2弾の撮影からしばらく時間が空いていたのでしょう、園村健介はどうも、「それまでのシリーズでも、髙石あかりは結構アクションをやってたよな」みたいに思い込んでいたそうです。だから『ナイスデイズ』では結果的に、それまでと比べて髙石あかりのアクションシーンがモリモリに増えてしまったとのこと。

いか

ホントかよ、って話だけどね

犀川後藤

まあでも、髙石あかりが「この子なら何でも出来るはず」って思わせるような人なんだろうって気もする

ただそんな、過去作と比べて一気に増えたアクションシーンを、髙石あかりは難なくこなしていったそうです。そのことに園村健介は驚かされたと話していました。不思議に思って彼女に「どこかでアクションの練習とかしてたの?」と聞いたそうですが、「いや、全然!」みたいな返答だったとか。

私の場合は別に、第1・2弾と比較して「第3弾の髙石あかりは凄い」なんて感じたわけではないので、もしシリーズを順番に観ていたらより驚いたのでしょう。ホントに、「圧巻のアクションシーン」によって、ストーリーを重視する人間さえもワクワクさせる作品に仕上がっているし、とにかく圧倒されてしまいました。

ちなみに「ストーリーらしいストーリーがない」だけではなく、本作にはリアリティもありません(池松壮亮がある程度以上のリアルさを担保していても、です)。なにせ街中のあちこちで銃をバンバン撃つし、にも拘らず警察はやってこないし、「キャー!」と叫ぶ一般市民も出てこないわけで、「キャラクター」以外のリアルさを完全に捨てている感じがありました。でも確かに、本作にリアリティは要らないとは思います。「アクションシーンの臨場感」が圧倒的に本物なので、それ以外の部分が明らかにフェイクでも全然成立してしまうというわけです。まあ、それはそれとして、本作には、「殺し屋」が殺した死体を処理する「清掃屋」という役割の人物が出てきたりして、そういう部分で「リアルさ」をちょっと加えていく感じも、個人的には好きでした

いか

この「清掃屋」の話も結構良いよね

犀川後藤

「清掃屋」の1人である宮内茉奈を演じる中井友望をどこかで見た気がしてたんだけど、映画『少女は卒業しない』に出てたんだった

何よりも好きだったのは、深川まひろと杉本ちさとの会話

というわけで、ここまで私は「アクションシーン」に焦点を絞って本作の魅力を語ってきたわけですが、私が本作で最も好きな点にはまだ触れていません。それが、主人公の2人、深川まひろと杉本ちさとの会話です。私は男ですが、彼女たちの「ダルダルな会話」はすごく好きだし、永遠に聞いていられると感じました。というか、何ならあの会話に混じりたいとさえ思っています。

2人の会話はまったく中身が無いし、正直なところ、会話が終わった直後にはもう「何の話だったのか」を思い出せないような類のものです。でも、凄く良いずっと聞いていられますマジでクソどうでもいいことしか話していないんだけど、でも個人的には「同じテンションでそういう会話が出来る相手」ってメチャクチャ貴重だなと思うし、普通にはなかなか出会えません。羨ましいなぁと思います。

いか

しかもこの「ダルさ全開の女子トーク」を監督の阪元裕吾が書いてるんだから、それにも驚かされるよね

犀川後藤

女性の意見も取り入れてるんだとは思うけど、にしても解像度が高すぎるよなぁ

さらに良かったのが、「こういうダルダルな会話が、この2人にとっては欠かせないコミュニケーションである」ということがビシバシ伝わってくることです。印象的だったのが、深川まひろが酷く落ち込んでいる時に杉本ちさとが話しかけに行った時の会話。それまでのやり取りから、杉本ちさとがここで「元気出せよ~」みたいなことを言うはずがないことはもちろん分かっていましたが、にしても、「東京戻ったら、どういう感じにする?」なんて話しかけるとは思っていませんでした。

これは説明しなければ伝わらない話なのですが、このやり取りの前に2人は「東京の美容院を一緒に予約した」という話をしています。というのも、深川まひろは1人では美容院に行けないからです(美容師が話しかけてくるのが怖い、みたいな理由だったと思います)。そのため、毎回杉本ちさとと同じタイミングで髪を切っているとのことでした。そしてそんなやり取りをしていたことを踏まえた上で、「帰ったらどんな髪型にしよっか?」と話しかけているというわけです。

もちろん深川まひろも、「今この場面で杉本ちさとが『髪型』について知りたいなんて思っているわけじゃない」ことは理解しています。「自分を励まそうと思っていて、でも直接的に励ますようなことを言うのは絶対に違くて、だから『髪型』の件で話しかけてくれている」と分かっているわけです。そのことは、2人がスマホを見つつ「こんな感じがいいんじゃない?」みたいな会話をしながら元気を取り戻していく様子を見ていれば理解できるでしょう。

いか

物語全体としては何てことないシーンだけど、凄く良かったよね

犀川後藤

この会話だけからでも、2人の普段のやり取りとか関係性が理解できるって感じ

「中身の無いダルい会話が出来ること」や「しんどい時に直球の言葉を投げかけないこと」は、それ単体で捉えても素敵なやり取りだし、さらにそこから「2人の無二の関係性」みたいな雰囲気が染み出てくる感じもあって凄く良いなと思います。さらに言えば、「そういう会話を『殺し』と『殺し』の間にしている」という違和感も際立つわけで、それらの要素が色々相まって本作の魅力になっていると感じました。

伊澤彩織と髙石あかりの絶妙な関係性

それでは、ここからは主にドキュメンタリー映画の話をしていこうと思います。ドキュメンタリーの方は、ほとんど映画のメイキングがメインなのですが、途中途中でインタビュー映像が挟み込まれるという構成です。そして、伊澤彩織と髙石あかりはそれぞれ別々にインタビューを受けていたのですが、その中で語られる2人の関係性がとても素敵だと感じました。

さて、伊澤彩織演じる深川まひろは「マイナス思考で全体的に暗めなキャラクター」なのに対して、髙石あかり演じる杉本ちさとは「底抜けに明るいキャラクター」として描かれています。そして実は、伊澤彩織・髙石あかりもそれぞれ、演じるキャラクターにかなり近い性格なのだそうです。例えば深川まひろは『ナイスデイズ』の中で、杉本ちさとのことを「自分の太陽みたいな存在」「ちさとに出会っていない人生なんて考えられない」みたいなことを言っていました。そしてドキュメンタリー映画のインタビューでも、伊澤彩織は髙石あかりについてほとんど同じようなこと、つまり「太陽のような存在」「あかりちゃんに出会っていなかったらって思うと怖い」みたいに話していたのです。

いか

ドキュメンタリー映画で主演2人の関係性を知ると、本編の見方がまた少し変わってくるかもね

犀川後藤

それぞれ、「本人の性格の延長線上に役が存在している」みたいな感じだからなぁ

また、髙石あかりもインタビューの中で、実に興味深い表現を使っていました。他者との関係性を表す言葉として、世の中には「仕事仲間」「友達」「恋人」「家族」みたいな様々なカテゴリーが存在しますが、彼女は、

伊澤さんのことは、そのどのカテゴリーにも入れたくない。一生「ちさと」と「まひろ」のままでいたいんです。

みたいなことを言っていたのです。まあもちろん、こういうことは書いても仕方ないことですが、お互いどこまで本心で話しているのかは正直分かりません「カメラの前で話す」場合、意図せずとも嘘が紛れ込むことだってあるし、あるいは、言語化する際に自分の感覚からズレてしまうこともあるでしょう。ただ、あくまでも私の感触ですが、お互いを思いやる2人の雰囲気はとても良かったし、本当に『ベイビーわるきゅーれ』での関係性がリアルでも踏襲されているみたいに思えて、素敵だなと感じました。

いか

お互いがこんな風に感じられる関係性が、1つでもあったら素晴らしいよね

犀川後藤

ホントに羨ましいなって思う

ちなみに、髙石あかりはさらに面白い言い方をしています。

私たち、「ちさと」と「まひろ」だとメチャクチャ仲良くなれるんですけど、「髙石あかり」と「伊澤彩織」だとちょっとシャイなんです。

個人的には、この言葉もとても素敵に感じられました。「『ベイビーわるきゅーれ』という作品を介さなければ仲良くなれなかった」ということなのでしょう。「深川まひろと杉本ちさとの関係性」、そして「伊澤彩織と髙石あかりの関係性」が相互に絡まりあって、作品もリアルの人間関係も良くなっていくみたいな好循環を感じさせられました。

いか

こういう時に「尊い」って言葉を使うのがいいのかもね

犀川後藤

オジサンだから使い方に自信はないけど(笑)

映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズが誕生したきっかけについて

それでは最後に、ドキュメンタリー映画の中で語られていた、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ誕生のきっかけについて触れてこの記事を終えようと思います。エグゼクティブプロデューサーの鈴木祐介は、そのきっかけを「偶然」と表現していました。詳しく話を聞いてみると、確かに「偶然」としか言いようがないエピソードで、実に興味深かったです。

発端は、監督・阪元裕吾のパソコンが壊れたことでした。当時彼は『ある用務員』という映画の編集作業をしており、パソコンが使えないのは致命的だったので、付き合いのあった鈴木祐介の会社でパソコンを借り、編集作業をしていたそうです。その時はたまたま鈴木祐介の前の席が空いていたので、阪元裕吾はそこで作業していました。そして鈴木祐介がタバコを吸おうと離席した際にたまたま、編集中の映画のあるシーンが目に入ったのだそうです。

監督:阪元裕吾, 出演:福士誠治, 出演:芋生悠, 出演:前野朋哉
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それが、髙石あかりと伊澤彩織の2人によるシーンでした。

いか

ドラマかよ、って展開だよね

犀川後藤

こういうことは、起こる時は起こるんだなぁ

たまたま見たそのシーンがとても印象的だったそうで(ただ私は同映画を観ていないので、どんなシーンなのか知りません)、鈴木祐介は阪元裕吾に、「時間が出来たらでいいから、この2人で何か脚本を書いてくれない?」と言ったのだそうです。このひと言がきっかけとなって大人気シリーズが生まれたらしいので、本当に人生何が起こるか分からないなと思います。ホントに、阪元裕吾のパソコンが壊れなかったら、『ベイビーわるきゅーれ』は存在しなかったかもしれないのですから。

ちなみに、既に少しだけ触れましたが、園村健介が『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのアクション監督を務めることになったのは、以前から伊澤彩織と関わりがあったからなのだそうです。彼女から、「私が主演する映画があるから、アクション監督やって下さいよー」みたいに頼まれたと言っていました。そんなきっかけで関わることになった園村健介が、「感情の流れ」を重視する阪元裕吾の要望にきちんと応えられたことは僥倖だったでしょう。また園村健介は、きっかけをくれた伊澤彩織に深く感謝しているそうで、だからこそ、「もしかしたら”集大成”になるかもしれない『ナイスデイズ』では、伊澤彩織(深川まひろ)にとっての”集大成”ともなるようなアクションにしようと思っていた」というほど意気込んでもいたのです。

いか

この2人の関係性もまた素敵だよね

犀川後藤

こういう「人との繋がり」がベースになって組み上げられた作品は強いよなって思う

ちなみに、先に紹介した主演3人のインタビュー記事の中で池松壮亮が、「1つの作品に『良い作品にしたい』という高い熱量を持つ人が3~4人もいれば良い作品になるものだけど、本作にはそういう熱を持った人が多すぎる」と言っていて、「なるほどなぁ」と感じました。情熱が伝播していく良い現場なんだろうし、それが作品の魅力に直結しているということなのでしょう。

とても素敵な作品でした。

監督:阪元裕吾, 出演:髙石あかり, 出演:伊澤彩織, 出演:三元雅芸, 出演:秋谷百音, 出演:本宮泰風
監督:阪元裕吾, 出演:髙石あかり, 出演:伊澤彩織, 出演:水石亜飛夢, 出演:丞威, 出演:濱田龍臣

最後に

まずは何よりも、本編第3弾『ナイスデイズ』が素晴らしかったです。アクションも会話も絶品で、「メチャクチャ良いものを見させてもらったな」という感覚がとても強く残っています。

さらに、ドキュメンタリー映画もまた素敵でした。余計なナレーションなどを入れずに、「圧巻のアクションシーン」のメイキングだけで十分成立してしまう画力が凄いし、ある種「狂気的」と言ってもいいようなモノ作りの現場を垣間見れる点も非常に面白いと思います。

どちらも観て良かったし、どうにか機会を見つけて、第1・2弾も観たいところです。

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