目次
はじめに
この記事で取り上げる映画
出演:藤⾕理⼦, 出演:⿃越裕貴, 出演:⾓⽥貴志, 出演:久保史緒⾥(乃⽊坂46), 出演:本上まなみ, 出演:近藤芳正, Writer:上⽥誠, 監督:⼭⼝淳太
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ポチップ
この映画をガイドにしながら記事を書いていくようだよ
今どこで観れるのか?
公式HPの劇場情報をご覧下さい
この記事で伝えたいこと
「世の中には、やはり『天才』がいるんだなぁ」と改めて実感させられました
私も「天才」側として生きたかったので、こういう才能に憧れてしまいます
この記事の3つの要点
- 「同じ2分間が繰り返される」という設定から、あなたならどんな物語を生み出すでしょうか?
- それぞれの2分間を、長回しのワンカットで正確に2分間撮影するという驚異の作り方
- 「制約」だらけの中、「人間模様」も絶妙に描き出す作品
客席から何度も笑い声が上がるようなコメディであり、「タイムループものの物語」における革命的な傑作でもあります
自己紹介記事
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私は普段、劇場で流れる予告映像や配布されているチラシなんかを元に観る映画を決めています。出来るだけフラットな状態で作品に触れたいので、映画を観る前の時点では可能な限り内容も評価も知らない状態を保つようにしているのです。特に、SNSやネットはなるべく見ないようにしているので、「話題になっている作品」ほど取りこぼしやすいと言えるかもしれません。
「自分の趣味趣向で観る映画を選んでしまわないように」って意識してるんだよね
誤解を恐れずに言えば、「たまには駄作にも出会いたい」ぐらいの気持ちを持ってたりもするかな
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そんなわけで、公開されるまで『リバー、流れないでよ』という映画についてはその存在さえまったく知りませんでした。公開後に、映画レビューサイトFilmarksでの評価が異常に高いことに気付いたことでその存在を知り、「なるほど、あのヨーロッパ企画・上田誠の脚本なのか」という情報だけを頭に入れて映画館に行った、という感じです。
なので、まあとにかく驚きました。まったくノーマークだった映画が、こんなにも面白いのか、と。
映画を観ながらずっと、「世の中には『天才』ってホントにいるんだなぁ」としみじみ感じてはいました。こういう天才がいるから世の中が面白いとも言えるし、また、若干「絶望」させられもする、といったところでしょうか。
やっぱり、「自分も『天才』側として生きたかった」って思っちゃうんだよなぁ
もちろん、「天才」側として生きていくのも、苦労が多いだろうけどね
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何が凄いかって、「タイムループものの物語」で新機軸を打ち出していることです。いやもちろん、世界中の物語に精通しているわけではないので、もしかしたら同じようなアイデアは既にどこかにあるのかもしれませんが、私はとにかく、『リバー、流れないでよ』で描かれる「タイムループ」が非常に斬新だと感じました。
というのも、「同じ2分間がずっとループし続ける」という物語だからです。「同じ1日」「同じ1時間」を繰り返すみたいな物語はいくらでもあると想いますが、「2分間」というのはなかなか究極的な短さだと言っていいでしょう。それに、「同じ2分間がずっとループし続ける」という設定だけ聞くと、「それ、どうやって物語を展開させるんだ?」と感じるのではないかと想います。ホント、その通りでしょう。普通に考えて、「そんな物語、成立させられないだろう」ってなると思います。
しかしホント、「よくもまあこの設定で長編映画を完成させたものだ」って感心させられる物語だよね
「この映画をどう作ったのか」みたいな部分を想像すると、きっと発狂するぐらい大変だっただろうなぁって思う
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以前観た映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』も「タイムループものの物語」として新しさを打ち出していたと思いますが、『リバー、流れないでよ』は後で触れるように、かなりの制約を乗り越えなければ作れない作品なので、よりその凄まじさが伝わる感じがしました。
というわけでまずは、大まかな設定を紹介したいと思います。
映画『リバー、流れないでよ』の内容紹介
舞台は、冬の京都。中心部から少し離れた貴船にある料理旅館「ふじや」は、女将であるキミの「とにかくお客様に素敵な時間を過ごしてもらいたい」という気概によって、長く続く伝統が守られている。
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時間帯は午後、つい先程帰りの客を見送った。今泊まっているのは、友人同士だろう男性2人組、そして筆が進まない作家と彼を缶詰にした編集者だ。宿は夕飯時を前に少し落ち着いたところで、キミは中居のミコトに、「部屋の片付けが終わったら休憩して」と告げる。ミコトは、旅館沿いを流れる川べりで一息ついてから、番頭と共に先程帰った客の部屋の掃除に取り掛かった。「サミットが開催されるからか、駅で不審物が見つかったらしい」「今度、娘の彼氏が家に来るんだよ」と、他愛のない話をしながら、テキパキと仕事をする。
しかししばらくすると、ミコトは何故かまた川べりに立っていることに気づいた。頭の中に「???」が駆け巡る。ついさっきまで客室の掃除をしていたのに。さっきと同じルートで階上へと向かい、途中で合流した番頭と一緒に先程の部屋へと向かう。なんと、ミコトの記憶では片付け終わったはずの部屋に、まだ食器が残っていた。番頭も不思議そうな顔で目の前の光景を観ている。
「この部屋、さっき片付けましたよね」「この会話、さっきもしたよね」と不思議な感覚を共有していると、ミコトはまたしても川べりに移動していた。何これ? しばらくして、「事情は不明だが、どうやらかなり短い間隔で時間がループしているらしい」ということが分かってきた。男性2人組のお客様からも、「この雑炊、しばらくすると量が増えて全然食い終わらないんだけど」と言われてしまい、状況を説明する。
旅館の者たちの知識と調査を総動員し、十数分後には、「旅館周辺のみ、2分間きっかり時間がループしている」と明らかになってきた。「2分後にはそれぞれのスタート地点に引き戻されてしまう」という制約の中、彼らは短い時間で作戦を立てながら、どうにかこのループから抜け出そうと奮闘するが……。
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あなたなら、この条件でどのような物語を作るだろうか?
さて、ここまで触れてきた通り、物語の設定は非常にシンプルだと言えるでしょう。「同じ2分間を繰り返すことになってしまった旅館の面々が、いかにそのループから抜け出すか」というだけの物語です。基本的には、「2分経ったら、記憶以外のすべてが2分前の状態に戻る」と考えればいいでしょう(ただし、理由は後で触れますが、2分前にはなかった雪が積もっていたりするなど、世界線がバグったような感じにはなります)。どれだけ遠くに行こうとも、2分経ったら各々のスタート地点に戻されますし、何かを動かしたり壊したりしても、2分経ったら元の状態に戻るというわけです。たとえ命を落としても、2分経てば生き返ります。
さて、あなたが物語を生み出す側の人物だとして、このような設定からどんなストーリーを作るでしょうか?
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「2分間」というのが、絶妙に「何かするには短すぎる」んだよねぇ
何を描いても2分経ったらリセットされてしまうので、長く続くような展開は描けないでしょう。もちろん、記憶は引き継がれるので、次の2分間に持ち越すことは出来ます。ただ、毎回「スタート地点」に戻されてしまうという制約がなかなか厳しい。例えば、「作戦会議のためにみんなで集合する」みたいな状況の場合、移動のための時間がロスとなるため、決して2分間丸々使えるわけではありません。
また、これは「ヨーロッパ企画」という劇団が制作した映画だからこその制約ではあるのですが、所属する劇団員はやはり出来るだけ出演させたいところでしょう。となれば、それなりの役柄を用意する必要があります。出番の少ない役を用意しても仕方ないので、それぞれの登場人物がそれなりには物語に絡む展開が必要でしょう。つまり、1度の展開に2分間しか使えないのに、かなりの人数の物語を捌いていかなければならないわけです。
この条件だけでも、既に発狂しそうだなって思っちゃう
ホントに、よくこんな無謀な物語を作ろうと考えたなって感じるよね
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さて、まだまだ制約はあります。実は私は、映画を観ている時点ではこの事実を把握していなかったのですが、映画で描かれる「2分間」は、正確に「2分間」なのだそうです。つまり、「カット割りをせず、2分間を長回しで撮り続けている」ということになります。また、撮影現場にタイムキーパーがいて、毎回の話がきっかり2分間になるように撮影したのです。後でネット記事を読みましたが、「今ので1分53秒だったから、あと7秒伸ばしてくれ」みたいな感じで、何度も撮り直したと書かれていました。
つまりこの物語は、「それぞれの2分間が、カット割りせず長回しで撮り続けられるような展開」である必要があり、さらに「それぞれの2分間が、ちょうど2分間経った時点で、次に繋がるような意味のある終わり方になっていなければならない」のです。
普通に考えて、ちょっと想像を絶する「制約」だと私は感じました。
映画を観ている時、そういうところまで想像が及んだし、だから「よくこんな映画作ったよなぁ」って感じたわ
「きっかり2分間」って情報を知らなかったとしても、メチャクチャ大変そうなのは観れば理解できるもんね
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さらなる「制約」と、撮影期間中の大トラブル
さて、このように考えた時、そもそも大前提としての「制約」が存在することにも気づかされるでしょう。それは、「撮影場所が決まらなければ、脚本が書けないはず」という問題です。
「2分間を長回しワンカットで撮る」ためには、「それが実現可能なロケーション」が必要になります。撮影は、貴船に実際に存在する「ふじや」という料理旅館を借り切って行われたそうですが、この「ふじや」は道を挟んで両側に本館・別館が建つという構成になっており、全体の広さ的にも2分間で物語を展開させるのにちょうどいい感じです。さらに、近くを川が流れ、神社も隣接しているので、近場で色んな展開をつけやすくなっているとも言えます。
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だから普通に考えれば、「『ふじや』で撮影することが決まった後で脚本が出来上がった」と想像するのが自然でしょう。「人」ではなく「場所」に当て書きする形でしか作りようがない作品だからです。
どう考えたって、撮影場所が決まってない状態じゃ、「2分間を繰り返す」って設定だけあっても、物語は作れないからね
これが仮に、都心のビル型のホテルでの撮影だったら、また全然違う物語になってたはずだからなぁ
さてしかし、「『ふじや』で撮影することが決まった後で脚本が出来上がった」なんてことがあり得るでしょうか? というのも、上田誠の周辺に「ふじや」の関係者がいたとかなら話は別でしょうが、そうでないなら、「脚本がないまま撮影交渉をする」ことになるからです。「まだ脚本は決まってないんですが、この場所で映画を撮らせていただきたくて、なのである期間貸し切りで使わせて下さい」みたいに依頼するしかないでしょうが、そんなこと言われても「ふじや」の人も困るでしょう。私にはどうしても、「ここを使わせていただけるなら、この場所に合った脚本を書きますので」なんていう依頼が、簡単に通るとは思えないのです。
このようにとにかく「制約だらけ」だし、だから本当に「よくも完成させたものだ」と感心させられました。
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話は変わって、先程「さっきまで雪は降っていなかったはずなのに、2分戻ったら雪が積もっている」みたいな場面転換があると書きましたが、ここには撮影時のトラブルが関係しているのだといいます。なんと撮影期間中に貴船が大寒波に襲われ、役者さえ貴船に辿り着けなくなり、一時撮影が中断してしまったのだそうです。
ずっと同じ天候の下で撮影しないと、「時間が戻ってる」って部分に説得力が生まれないからなぁ
撮影では、「ふじや」を貸し切りにする必要があるわけで、当然貸し切りで使える期間は限られていたはずです。だから撮影中断なんかがあったらもう、「繋がりなんか関係なく、撮れる時に撮るしかない」みたいな感じで撮影を続けていくしかなかったでしょう。そのような不可抗力ゆえの雪というわけです。ただ、そのような描写がメチャクチャ不自然だったかというと、全然そんなことはありませんでした。「メチャクチャ時空が歪んでる」という雰囲気を醸し出す演出みたいに見えたからです。結果オーライという感じでしょうが、最終的には上手くまとまったのだろうと思います。
これだけの「制約」の中、この設定内における「リアルさ」で人間関係を描き出す
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さて、映画の中では、「2分間が繰り返される」という状況において、登場人物たちが様々な行動を取り、それが観客の笑いを誘うことになります。登場人物たちは、冷静に考えれば割とシリアスな状況にいるはずなのですが、この世界に慣れてくるにつれて「2分間が繰り返される」という世界でしか成立しないような行動を取るようになっていき、それが笑いに繋がっていくというわけです。
「タイムループを認識して、受け入れるまでのスピード」が異常に早いよね
そういう葛藤みたいなものをすっ飛ばしたことで、「テンポの良さ」と「コメディ感」がより強調された感じがする
客観的に見ればシリアスな状況なのに、それがコメディとして成立しているのは、「現実感が絶妙に浮遊しているから」だと言えるでしょう。もちろん、「タイムループ」している時点で現実感もクソもないわけですが、一方で、「老舗旅館」という舞台装置が強い「現実感」を生み出していたようにも思います。「老舗旅館」という「重し」があることで、物語全体が軽薄には見えないものに仕上がっている感じがあって、そのどことなしに「森見登美彦的」とも言える世界観が絶妙だと感じました。
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また、2分間を繰り返していく物語でありながら、この映画には「主軸となる人間模様」が存在します。このような設定の中で「人間模様」をちゃんと描き出すのは難しいように思うのですが、見事に実現させているのです。というかむしろ、その「人間模様」の描写を成立させる上で、「現実感が絶妙に浮遊している」という設定が結構大事だったとも感じます。普通なら、「こんな状況で何してんねん」とツッコみたくなるような状況が描かれるのですが、「現実感が絶妙に浮遊している」お陰で、あまりそんな風には感じられないからです。設定と物語が絶妙に絡み合っているという印象で、この点も見事だと思いました。
しかもその「人間模様」も、「2分間でリセットされる」って設定を絶妙に利用した展開を描いてて、素敵だよね
実際に同じことをやるのは絶対に無理だけど、「こういう関係も良い!」って感じる人、結構いるだろうなぁ
エンタメ作品として、ホントに素晴らしい出来だなと感じました。
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出演:藤⾕理⼦, 出演:⿃越裕貴, 出演:⾓⽥貴志, 出演:久保史緒⾥(乃⽊坂46), 出演:本上まなみ, 出演:近藤芳正, Writer:上⽥誠, 監督:⼭⼝淳太
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また、映画についてまったく何も知らない状態で観に行ったので、乃木坂46の久保史緒里が冒頭で出てきてびっくりしました。私の一番の推しは齋藤飛鳥ですが、久保史緒里も結構好きなので、個人的にはそういう意味でも良かったです。
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文化・芸術・将棋・スポーツ【本・映画の感想】 | ルシルナ
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